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【勝手気ままに映画日記】2019年 2月

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①メアリーの総て②マスカレード・ホテル③まぼろしの市街戦④うちへ帰ろう The Last Suit⑤七つの会議⑥ナディアの誓い➆バジュランギおじさんと、小さな迷子➇ビクトリア女王、最期の秘密⑨半世界⑩女王陛下のお気に入り⑪おかえり、ブルゴーニュへ ①メアリーの総て 監督:ハイファ・アル=マンスール 出演:エル・ファニング ダグラス・ブース ベル・ハウリー スティーブン・ディレイン トム・スターリッジ 2017英・ルクセンブルク・米 121分  詩人シェリーの妻で『フランケンシュタイン』を書いたメアリー・シェリーの物語。トレーラーを見たときに、夢見る文学少女が身勝手な夫に翻弄され、子どもを失いその苦悩から死者の復活を願う物語を描いたという感じに読めて、思想家と婦人解放運動家(メアリーの出産時に死亡)の間に生まれ、自由恋愛主義者の夫に共感して、義妹連れで駆け落ちし、18歳で「ディオダディ荘の怪談談義」のあと、『フランケンシュタイン』を書いた後、夫の元妻の自殺後には彼と結婚し、夫とともに旅行したりしながら暮らし、夫の事故死(ともに行ったイタリアからの帰途の船の遭難)までいわば添い遂げたという、私たちの知っている「実像」?とはずいぶん違う描き方で、ジェンダー主張の物語になっているのかなと思った。が、実際にはそのような実際の要素をきちんと?取り込みつつ、単に失った子供を死者に重ね合わせるというのではなく、自分も共感し、愛した夫の「自由恋愛主義」を理念としては理解しつつ自分は彼しか愛さないと言い切り、夫の自由と言えば自由、勝手と言えば勝手な行動の中で、自分がモンスターになっていく、それをフランケンシュタインに重ねたという感じで、トレーラーの中で重大事件として描かれていることは大きな物語の一部に過ぎない描き方。そりゃ、そうだよな、いくら本人も社会の中では「新しい女」であったとしても、夫とともに元妻の死にもめげず自由な恋愛を謳歌したとしても、なんの苦悩もなく『フランケンシュタイン』なんか書けるわけないものな…と納得させられる。シェリーなんて、詩人としてどうかわからないけれどどうしようもない男と思っていたけれど、この映画のシェリーは貧乏で、バイロンとのヨーロッパ周遊とかのシーンもなく行動は身勝手だが、わりと地味目だし、最後には匿名でしか本を出せなかった妻を盛り上げる見せ場も

【勝手気ままに映画日記】2019年1月

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①いつだってやめられる―闘う名誉教授たち➁バルバラ・セーヌの黒いバラ③ぼけますから、よろしくお願いします④世界一と言われた映画館⑤にがい米⑥ゼロ地帯(KAPO)⑦蜘蛛の巣を払う女 ➇ガンジスに還る⑨生きているだけで、愛⑩台北暮色(強尼・凱克)⑪華氏119⑫ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー⑬迫りくる嵐⑭ピアソラ 1月2日 お正月は恒例の高尾山からみた東京!! ①いつだってやめられる―闘う名誉教授たち 監督:シドニー・シビリア 出演:エドワルド・レオ ルイージ・カーショ ステェファノ・フレージ グレタ・スカラ   2017イタリア 119分  ようやく今年第1本目の映画は、昨年6月、9月に(2作目、1作目の順で)見た『いつだって辞められる』シリーズの第3作完結編。今回は2作目から登場した敵役(といってもこちらも研究費削減の大学でそれが理由の事故によって恋人を失い大学からも追われたという悲劇的な背景を抱える研究者)ルイージ・カージョの格好いい犯罪アクションから始まる、つまり見せ場はどっちかというと彼のほう?という構成。ヴァルテルが大学関係者への報復を企てたくらむテロを、今や皆屏の中にいる10人の教授たちが阻止しようとして、24時間を期限に認められる脱獄(つまり24時間以内に戻れば脱獄とは認めないというのだが、イタリアにはそんな仕組みがあるの?ホント?)をして知恵を合わせ、2作目で彼らを協力された女性警部の力も借りて、テロを防ぐという話。1作目に比べると、ポスドク?の切実さは薄い(だってみんな一丁前の「犯罪者」になって獄中にいるわけだし?)、2作目に盛り込まれたカーチェイス・列車飛び乗りとかの息もつかせぬアクション場面はないけれど、10人がそれぞれにささやかな感じではあるが個性(つまり専攻)を発揮して目的に迫るという点では、退屈はしないし、なるほどよくできている。それにしても彼らを切り捨て大々的な受賞?パーティが行われるその研究環境格差みたいなものは切り捨てられる側にとっては切実で、どちらかと言うと(見栄えもいいし?)ヴァルテルに同情してしまうなあ…。テロを防ごうとする側の行動は面白いけれど、動機については描き方が常識的というかあまり説得されない感じもある。10人が体制側によってしまったという感じだからかな…。  (1月7日 下高

【勝手気ままに映画日記】2018年12月

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あけましておめでとうございます。  あたらしい年、平和に暮らせますように。今年もたくさん映画を見て、みなさんにお知らせしていきたいと思っています。どうぞよろしく! そうは言いつつ、まだ「師走」?から逃れられない…。12月に見た映画は11本だけ、中国語圏映画は1本だけでした。見損なって念願だったジョージア「祈り」三部作は見ることができました。 山は足利の妙義山(大小山)大坊山へ。300m余の低山ですが、上り下りありの縦走コース、岩場もあって、とても楽しめる山でした!            12月12日 ①斬②ボヘミアン・ラプソディ③パットマン④銃⑤東南アジアとポピュラーカルチャー(ドキュメンタリー上映会)⑥宵闇真珠(白色女孩)  ⑦鈴木家の嘘➇希望の樹 ⑨祈り➉顔たちところどころ ⑪懺悔 ①斬 監督:塚本晋也 出演:池松壮亮 蒼井優 塚本晋也 前田隆成 中村達也 2018日本80分 真っ暗な画面の中にめらめらと燃え上がる炎からはじまって、最後は主人公都築杢之進が消えていく暗い森まで、描かれた自然が暗い迫力をもって迫ってくる。音楽はちょっと仰々しくてこれも迫力はあるが品がない感じも…これは今までも塚本作品を手掛けてきた石川忠が亡くなったあと、それを受け継いで塚本自身が編集・完成させたのだとか。で、物語は幕末、腕はめっぽう立つが、実際に人を切ったことはなく、人を切れないと葛藤する浪人都築。彼は江戸近郊の村の農家に寄宿し、農作業を手伝いながら、その家の息子に請われ剣術の稽古に明け暮れる。そこへ江戸を目指し時代の移り目に自分の生きる場所を得ようとする沢村という男があらわれ、都築を誘うが…そこにやってきて村人を脅かすならず者集団とのいざこざ、彼らと切り合うのではなく関係を結ぼうとする都築と、躊躇なく切り殺しその結果村がさらに襲われる結果を作る沢村。ならず者に襲われながら二人の行く末激しいまなざしで見つめる農家の娘ゆう。そして…全体に緊張感はあり時代考証?もされてはいるらしいが、この緊張感や登場人物の精神のありようはどう考えても近代人のもので、ことばも皆きれいな標準語のですます体、というわけ時代劇に形を借りた、その、なんというか、様式美追求ドラマみたい? ならず者と村を守ろうとする浪人のくだりはちょっと『七人

【勝手気ままに映画日記】2018年11月

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①恋とボルバキア②29+1(劇場版)③十年④日々是好日⑤名前⑥1918劉以鬯⑦東西 BOUNDARY 也斯⑧無名之輩⑨你好,之华·⑩ゲンボとタシの夢見るブータン ⑪エンジェル、見えない恋人  ①恋とボルバキア 監督:小野さやか 出演:王子 あゆ 樹梨杏 蓮見はずみ 井上魅夜 相沢一子 井戸隆明 2017日本 94分 そもそもはTVの『僕たち女の子』と題された深夜ドキュメンタリーで女装する男性を描いたのがきっかけで劇用作品に発展した映画ということのよう。若い女性監督は自らカメラを担ぎ、自費で5年近くにわたってあちこちを飛び回り彼ら(彼女ら)を追ったとのことで、時間も長いし、全体の雰囲気としても劇映画のような統一的な物語の流れがあるわけではないが、その混沌が納得という感じのドキュメンタリー。表記出演者たちは、身体的に両性具有的な要素を持った人、性同一障害として自身の男性という性に違和感を持って生きてきた人、女装はするが性認識は男性だという人、また、女性性を生きようとする元男性だが自身がレズビアン(女性を愛してしまう)であることに気づく人などさまざまで、トランスジェンダーとかクロスジェンダーとか、あるいはクロスドレッサーとかいってもそれぞれが違うひとくくりにはできない存在である(年齢もさまざまだし)ことを強く感じさせられるとともに、どんな存在であっても自らの愛や感情を貫こうとするものすごく真面目な意識の持ち主たちであるのだなということは強く感じさせられる。性的には一応「ストレート」だと思っている自分はそういう意味では実に不真面目で「性愛」なんて信じてないところもあるしなあ…。ともやもやも残りながら…。 川崎市の「しんゆり映画祭」でみた1本。新百合ヶ丘は「日本映画学校」の拠点で、小野監督もその卒業生。しかし内輪こじんまりの映画祭なのでトークショーがやたらと長く内輪話みたいなのと、監督へのプレゼント贈呈とか、悪いけど余計な儀式?が多くて疲れる。映画だけで勝負しようよ、語ろうよというところ。「ボルバキア」は雄雌変異するというバクテリアの一種だとか。なるほど!の題名。 (11月2日 川崎市アートセンター・小劇場 しんゆり映画祭) ②29+1(劇場版) 脚本・演出・出演 キーレン・パン(彭秀慧) 出演:ベン・ヨン(楊尚斌)

第19回 東京フィルメックス 2018/11月

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①期待②象は静かに座っている③幻土④幸福城市幸福城市⑤轢き殺した羊⑥8人の女と1つの舞台⑦シベル⑧夜明け ああ忙しい、忙しいといいながら、仕事の合間を縫って駆け回り、時間が合うことを優先に?(でも中国映画はやっぱり押さえておきたいし…)ということで、なんとか8本押さえました! 前半が終わったところで、中国へ旅行、帰ってきたらすぐ仕事においまくられ、でアップが遅くなりすみません。 ①期待 監督:アミール・ナデリ 出演:ハサン・ヘイダリ ソフレ・ガフレマ二  1976イラン 43分 初期作品として特集上映。イラン南岸の小さな町で祖父母と暮らす少年。パンツ1枚の裸で駆け回り祖母に言いつけられて水くみや買い物などの用事をする。家の棚に陽ざしを浴びて輝くガラスの鉢。少年の歓びは祖母の「氷をもらっておいで」ということば(セリフはこれが2階と、「氷をもらってきてもいい?」と祖母に聞く1回のみ)従ってガラスの鉢をもち氷を買いに行く。大きなドアからは手のひらをヘナで赤く染めた手がでてきて鉢を受け取り氷を入れて返してよこす、その氷の溶けた水を大事そうに飲むのも歓び、それらを通して赤い掌でしか会ったことのない女性への若い少年の性的な憧れみたいなものも描かれる。繰り返し繰り返し描かれるのがナデル映画らしさだが、それはすでにこの映画にもたっぷり。間に男たちの宗教的な祭り?や家の中での女たちの狂ったような祈りの儀式も描かれ、一つ一つの意味については実のところよくわからないのだが、自然光だけで描かれた美しいというよりくっきり印象的な、現実とも夢ともつかないような街全体をつつむ渇望の世界に引き込まれて行く。 (11月18日 有楽町・朝日ホール) ②象は静かに座っている 監督:胡波 出演:章宇 彭昱暢 王玉雯 李从喜 2018中国 234分 暗い!長い!重ーい!ただきわめて力のある、というか力の入った映画であるのは確か。それが長所でもあり、ここまで書き込む必要があるかと思わせるような「短所」?でもあるのかなと思う。4人の登場人物、携帯が盗まれたの盗まれないのという争いから友人と争い、はずみで友人が階段から落ちて大怪我?した高校生、その級友の女子高校生は副主任の教師と不倫。2人の写真がSNSでばらまかれ窮地に。高校生と街で偶然会い、家出して金がほしい高校生に

第31回 東京国際映画祭 2018/10月

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東京国際映画祭会場TOHOシネマズ六本木ヒルズ10.25~11.3 アジア映画、中国映画を中心に頑張って通いましたが、ウーンなかなか… ①輝ける日に サニー(ベトナム版)②海だけが知っている③音楽とともに生きて(In the Life of Music)④母との距離(Distance)⑤それぞれの道のり(Journey)⑥武術の孤児(武林孤児)⑦十年⑧トレイシー(翠絲)⑨詩人⑩はじめての別れ⑪プロジェクト・グーテンベルク⑫ブラ物語⑬冷たい汗⑭家族のレシピ⑮ワーキング・ウーマン⑯まったく同じ3人の他人 ①輝ける日に サニー(ベトナム版) 監督:グエン・クアン・ズン 出演:ホン・アイン ティン・ハン ミ・ウエン トゥエン・マップ ミー・ズエン 2018ベトナム 117分 2011年の韓国版『サニー・永遠の仲間たち』(カン・ヒョンチョル)をリメイクして、この秋、大根仁監督で日本でも公開された『SUNNY 強い気持ち・強い愛』と期せずして?同時期にリメイクされたベトナム版(この3国競演は昨年は『怪しい彼女』。いずれも韓国発祥というのがチカラを感じさせるところだ)。ただし、韓国版・日本版はそれぞれ製作された時点を現代として25年前の高校時代と重ね合わせるとなっているが、このベトナム版は2000年を現代として75年ごろの高校時代を重ね合わせている、一種の「時代劇」になっている。75年は南北統一の年で政治は動乱期、街では反政府デモなどが行われ、そこに巻き込まれて乱闘する少女たち「荒馬団」というのは日本版には考えもよらぬ場面で、これはこれでベトナムらしさを出したところなのだろう。韓国版では7人だった「サニー」の仲間は、日本版とベトナム版では整理されて6人に。韓国版・日本版ではブラック企業で苦労していた「おでぶ」のラン・チーが小規模ながら質屋を経営し、心臓病の娘の手術台に苦労しているという設定で、かつての仲間探しにも下町の隣人たちを総動員してあたるという、少し人情ものっぽい話の濃度が強くなっている??韓国版では主人公ナミ(専業主婦)の未来がどうなっていくのかという不安定さを感じたが、絵が上手で本を書きたいというフォンの未来は「本を書け」と死んでいくミ・ズンに示唆されるし、日本版ではドラッグをやり、傷害事件を起こす同級生が校内であまり問題にもならずに

【勝手気ままに映画日記】2018年10月

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①タリナイ②愛と法③輝ける人生④クレージー・リッチ⑤ゲッペルスと私⑥運命は踊る➆判決、ふたつの希望⑧バッド・ジーニアス⑨オーケストラ・クラス⑩寝ても覚めても⑪君の鳥はうたえる⑫童話せんせい⑬恥知らずの鉄拳⑭僕はチャイナタウンの名探偵2⑮止められるか、俺たちを  blogにしてから星取表をつけていませんでしたが、つけてほしいとリクエストあり。  私なりのおススメ作品(あくまでも勝手気ままな私見ですけど)に💮(ハナマル)  つけてみます。月に2~3本、かな?? ①タリナイ 監督:大川史織 出演:佐藤勉 末松洋介(ナレーション)藤岡みなみ 2018日本(日本語・英語・マーシャル語)93分  1989年生まれの監督・ナレーションもしているプロデューサーの2人は私が勤務した都立国際高校の卒業生だそう。朝学校に行ったら、当時からいる元?同僚が是非行ってくれとポスターと、監督の著書を持ってきた。ただし、2人は私の赴任する1年前の卒業生で、私自身の教え子というわけではない。上映は1日1回、2週間くらいということで日程を見てみると、まあ何とか行けるのは今日だけ?ということで急遽チケットを予約してぎりぎり駆け込みで見に行く。大川は高校3年の春(2007年)はじめての海外旅行としてマーシャル諸島に行って以来、興味を持ち続け大学卒業後3年は現地の企業に就職していたという。そこで休みを利用して、カメラを回し現地の戦跡や戦争体験の取材をはじめ、知り合った佐藤勉氏の父親冨五郎氏が終戦間際のマーシャルで補給を断たれ餓死同様の戦死を遂げたことを知り、その鉛筆書きの日記を掘り起こし解読した。この映画はその佐藤氏の父の死の場所を探してのマーシャル諸島への旅を描いたドキュメンタリーだが、特徴的なのは現地の自然や戦跡とともに、日本語で歌う彼の地の人々の姿をたっぷりと描いていることだろうか。冨五郎日記という素材を得て、日本統治下というより戦争末期の置き去りにされた日本軍兵士の悲劇と、統治時代の文化的・言語的影響を残した現在のマーシャルの姿を描こうという意図が結びついたということなのだろうが、ウーン、それぞれは独立して描かれている感じもあって、現地の人々が「戦争はコワかった」と言ったり、佐藤勉氏がポロリと「日本は悪いことをしていたんだね」というセリフなどはあるが、そもそ