【勝手気ままに映画日記+山ある記】2024年8月

 

爺が岳の上から見る鹿島槍ヶ岳双耳峰(右がこれから登っていく縦走路)(8.3)

鹿島槍への縦走路からの立山大汝山・真砂岳・別山・剣岳の絶景!(8・3)


【8月の山歩き】今月は風に吹かれることもなく、2回の縦走になんとか成功!!

8月2日~4日 爺が岳~鹿島槍ヶ岳

2日:大糸線信濃大町駅ー柏原新道登山口…種池山荘(2446m)泊
   4.4㎞ 4h54m ↗1138m↘32m
3日:種池山荘…爺が岳・南峰(2669m)爺が岳・中峰(2631m)爺が岳・北峰(2488m)…冷池山荘…布引山(2683m)…鹿島槍ヶ岳・南峰(2889m)…布引山…冷池山荘(2387m)泊      8.7㎞ 8h46m ↗841m882m 
4日:冷池山荘…爺が岳・北峰…爺が岳・中峰…爺が岳・南峰…種池山荘…柏原新道
  7.8㎞ 6h26m ↗352m↘1426m

3日間合計 21㎞ 20h6m ↗2336m↘2341m  難易度39 平均ペース70-90%(ヤマップ)

前回7月の2回目(21~22日)は唐松岳~五竜岳のつもりが、大風で五竜登頂はできずに撤退だった。今回は同じ後立山連峰、五竜の隣の鹿島槍に、反対側の柏原新道から爺が岳を通って北上するコース。なんとか鹿島槍まで行きたいと、満を持して?の山行で、軽めのトレッキングシューズと345g30㍑の海外遠征用のデイ・パックで行くことに。
今回はクラブ・ツーリズムのツアーで参加者17人(最高齢は77歳男性。男性はこの1人)、ガイドは白馬登山協会?のYさん(男性 同年齢位かしらん?ベテランだが、今回はいささかバテ気味でガイドもごはんが食べられず…)

初日は柏原新道で軽快に歩けるはずだったが、なんとも暑い、猛暑、猛暑でいささかバテ気味。それでも休みをわりとたっぷりとり水分補給もしっかりして4時間50分、なんとか5時には種池山荘へ。最近悩まされている胃腸系高山病?は暑さの中で途中からだんだん食べられなくなり、小屋の夕飯は熱いお茶のみ美味しく何杯もお代わりしたが固形物が喉を通らない。それでも食事後小屋の外であたりの山景・夕焼け空を大いに楽しんだ。

種池山荘とそこからみる蓮華岳・針の木岳(右)間の夕焼けは経ヶ岳・悪沢岳・間ノ岳方面

2日目 朝ごはんは、みそ汁に入れた米飯、大根おろし、ポテトサラダ少しとアミノバイタル。5時40分、爺が岳に向けて出発南峰・中峰・北峰を経て、9時前冷池山荘に到着。ここで荷物をデポし日帰り荷物のみで鹿島槍まで行くことになり楽になった(大事な飴を忘れ、食料には苦しんだが)縦走路からの立山・劒方面の眺望のすばらしさにうっとり(上の写真です)。しかし暑い!11時布引山を経て12時鹿島槍南峰頂上(2889m)へ。頂上の食事は葡萄(保冷パックにいれていった)と昆布スープ。三角の小さなバターパンも1つ。布引山で付近では鹿島槍の頂上が雲に隠れて雨も心配したが、着いてみるとまたまた好天で、不思議な山の天気。
帰りは下り道を楽しみ、2時半ごろには冷池山荘に戻ってくる。夕飯は食べられそう!で、売店でワンカップ『大雪渓』(北アルプスに来るとよくある酒で、意外に洗練されて美味しい・700円)を買い込み固形物はすべて流し込んで一通り食べた!何も考えず早々にぐっすり(入口際の人の通り道で最悪の場所だったにもかかわらず)寝る方は極めて快調。


3日目 朝食はやはりあまり食べられず。昨日と同じく5時40分出発の暑さの下山路(往路)爺が岳は一部頂上をさけて巻いたもののほとんどは往路通りに上り下りして8時10分、種池山荘に戻ってくる。ここまでの山道にはコマクサも。また、写真にはとれなかったもののブロッケン現象も見て皆々大喜び。冷池山荘で200㏄150円で買ってあったお湯でミルク紅茶を入れて飲む。美味しい!アンナプルナ周遊でよく供されたミルク紅茶を思い出す。これは山のエネルギー補強にいいかも!水は種池山荘小さなボトルにお願いしたら40円!(昨日は200㏄ボトルのお湯が60円だったし、ありがたい種池山荘!)さて、これで元気をだしていよいよ猛暑の柏原新道。まあ、登りほどではないのだが結構大変で、一つは虫対策を忘れたこと。顔の周りに虫がまい、結局今年もあとで病院に行った)もう一つ、みんな結構フラフラになって歩いていて、前後がすごく気になり、気を取られているうちに二度も転倒(1回は前のめりに転び、2回目はクツ底が滑って転倒しかかる)けがはしなかったがどっきり。ガイドに一番前か一番後ろに行けと言われ厶ッ!後ろに下がって写真を撮ったりしながらのんびり下りることに…とはいえ一番後ろでは77歳男性が添乗員に付き添われて下っており、さすがにその後ろでは遅すぎるので、一つ前のグループに入り写真もいっぱい撮りながらゆっくり楽しく下りて、先頭グループよりは多分5分遅れくらいで、登山口に到着の余力登山だった。

【爺が岳・鹿島槍ヶ岳・柏原新道 花と人?の写真集】
コマクサ・ミネウスユキソウ・ヤマアジサイ

ヤマハハコ・ヤマブキショウマ・もう一つヤマハハコ

ヤマハハコ・イブキジャコウソウ

ミヤマキンポウゲ・ハクサンボウフウ?


8月13日~14日 鳳凰三山

13日:中央線甲府駅—夜叉神登山口…杖立峠2100m…南御室小屋(2490m)泊
     7.7㎞ 5h59m ↗1238m↘185m
14日:南御室小屋…薬師が岳小屋…薬師岳(2780m)…観音岳(2840m)…赤沢ノ頭(2750m)…地蔵岳(2764m)賽の河原~オベリスク下…鳳凰小屋…燕頭山(2105m)…御座石鉱泉登山口   13.1㎞ 11h25m ↗711m↘2327m

2日間合計 20.9m 17h24m ↗1951m↘2512m 難易度46 平均ぺ―ス90-100%
(ヤマップ)

いつも、あのオベリスク、下から見るだけで実は行ったことがなかった鳳凰三山、ようやく行った。今回はヤマカラのツアーで15人(男性3人)なぜか壮年ぞろい?で、私と前回クラツーでも一緒だった(これはまったくの偶然)Sさん二人だけがなんかとびぬけて高齢?という感じで、ガイドのAさん(40代くらいかな、女性)ものすごく行き届いた人でありがたくはあるのだが、私たちに気を使うこと気をつかうこと。そんなに歩けないという自覚もないのだが、止まるたびに体調をきかれ歩く場所の調整をされ写真を撮るのもなんかはばかられて、だんだん気分までめげてきて食べられなくなり、少々参る。もっとも早朝出発のヘッドランプ歩きとか、最後に1時間ばかりの雷の中大雨とかでは気を使われて歩きやすい前の方に来るように言われて確かに大いに助かったのではあるが…(もっとも自覚なくよほどよろよろに見えたのなら、それはそれで大問題なのではあるが)。終わってみると今回のツアー、前回鹿島槍に比べると難易度は高い(そうも思えないのだが)がスピードもかなり速く、それについて行っているのだから上出来とすべきだとも思うのだが…。

暑さも思いのほかひどくなく、虫対策も万全に、初日は食べ物もちゃんと入るし、ゆったりとした道をゆったりとしたペースで歩いて、急登もないままに山小屋に、ということでなかなか快適だった。小屋では小屋番のお兄さん特製のブロテイン(250円)、カップワインも(山梨だからね、700円!)買い込み、夕飯は美味しいビーフシチュウ(これはご飯を混ぜて1/3ほど)1階の人通りの多い一角を割り当てられた(これも特別配慮らしく)にもかかわらず、しっかり眠って3時半、元気に起床。朝食は弁当で、暗い中稲荷ずし1個だけ食べ後は、葡萄とゼリー、イチゴミルクで元気をつけて!

南御室小屋・小屋の前にはやなぎらんの群落・ビーフシチュー

2日目は天気の具合で途中撤退もありと覚悟もしたが、何とか無事に歩ききる。体調を気にする前、薬師岳から観音岳あたりは写真を撮りながら自分のスピードでゆったり歩けてとても快適。タカネビランジホウオウシャジンなどを楽しむ。地蔵岳からの下りは長丁場ではあり、途中片足にはちょっと苦手なザレ場もあったが、転ぶこともなく元気に歩きとおせた。ただちょっと気になったのは下りてきて温泉に入ったあとビール一杯飲んだら、甲府駅に戻っての夕飯の時間なんか胃の調子が重く、なんかなあ…。最近山に行くたびにこれが最後かしらんなんてチラリとかすめるのも確かなのである。このブログに自身の登頂写真を載せているのもそれゆえの、自分への励ましということかも…ね。
薬師岳~観音岳への気持ちの良い道・タカネビランジがそこここに
ホウオウシャジン・観音岳の頂上で・トウヤクリンドウ
ヒメコゴメクサ・いよいよ見たオベリスク!
     
賽の河原・一応いったヨ、証拠に1枚・北岳間ノ岳方面?だったかな



【8月の映画日記】
ひょんなことから、この映画日記の元版になっている毎回映画の記録と感想のファイルを一瞬にしてすっ飛ばして失ってしまいました!何たること!ですので、今月は記憶に基づく再現版です。簡単に書きます。あしからず!(15本しか見ていなかったので助かりました)

①あんのこと ②お隣さんはヒトラー ③ロイヤルホテル ④流麻溝15号 ⑤風の吹く時
⑥幻の光 ⑦バナナ・パラダイス ⑧ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ ⑨リッチランド
⑩村と爆弾 ⑪墓泥棒と失われた女神 ⑫めくらやなぎと眠る女(日本語版) ⑬パスト・ラブ ⑭無言の丘 ⑮僕の家族と祖国の戦争

中国語圏映画④⑦⑩⑭ 日本(関連)映画①⑥⑫
再見?映画④⑤⑥⑦⑫⑭ 昔見たり、先月も見たりとそんな映画が多い夏でした。

8月末近くまで論文を書いていて、その後風邪をひいたり、台風が来たりであまり映画を見られませんでした。★はナルホド、★★はいいね! ★★★は是非ともおススメ!の個人的感想です。文末3桁の数字は今年映画館で観た映画の通し番号です。去年の今頃に比べると100本近く少ない…。映画を見るのも体力かもしれません。
本文中赤字からは、該当の映画について書いた号に飛ぶことができます。

①あんのこと
監督:入江悠 出演:河合優実 佐藤二朗 稲垣吾郎 河合青葉 2024日本 113分 ★

近くでやっていたときにはなんか避けて?いたのに、話題はいつま  でも沸騰、ロングラン上映もいよいよ終わり?というところで慌てて見に行った。で、さすがなかなかのできばえ。
あんという少女(ではないね、20歳くらいにはなっている)は母親に「ママ」と呼ばれながらひどい虐待を受け(というか依存されている感じ?)それでも祖母や、介護することになった老人に対してやさしさを持ち、自分はバカだからと言いながら、けっこう熱心に勉強したり、恵まれず行動も決して定まらないながらそんな一種の「聖少女」なのだが、河合優実が演じると説得力がある。それを助けようと善意でありながら結局のところ利己優先で、助けられないどころか自身が追い詰められていってしまう大人の男たちのダメさというか悲しさも十分伝わり、なるほどな、これが現代と思えてしまうわけである。(8月6日新宿武蔵野館 173)

②お隣さんはヒトラー
監督:レオン・プドルフスキー 出演:デビッド・ヘイマン ウド・キア 2022イスラエル・ポーランド 96分 ★★

1960年南米コロンビア、ナチスのホロコーストで家族を失い一人村はずれに暮らすユダヤ人男性。隣に引っ越してきたわけありげな男はヒトラーにそっくり。イスラエル大使館に駆け込み報告するが、ヒトラーはすでに死んでいるとして相手にされない。男はカメラを隣家との窓際に仕掛け、ヒトラー関連の資料を集め、隣の男がホンモノのヒトラーであることを立証しようとする。 塀際に植えられた男にとっては思い出の黒バラも隣家とのトラブルの材料になりつつ、いつの間にか二人はチェスをしたり、男は証拠のつもりもあって「ヒトラー」に肖像画を描いてもらったりして「交流」も生まれてくる…。「ヒトラー」が実は誰だったのか…というのが結構ありそうで、深刻かつ悲しい話でもあり、なるほど…。時がたち、時代は60年代に撮ってはいるもののこういうホロコーストの描き方もあるのだなと思わされた印象的な1本。人が「怖い」と思う心情の恐ろしさみたいなものも感じさせられる。(8月7日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館 174)

③ロイヤルホテル
監督:キティ・グリーン 出演:ジュリア・ガーナー ジェシカ・ヘンウィック ヒューゴ・ウィービング アースラ・ヨビッチ 2023オーストラリア 91分 ★

オーストラリアに旅にきた若い二人の女性、羽目を外し過ぎて?お金に困り、ワーキング・ホリディ制度を利用して働くことに。案内されたのは砂漠の中のさびれたパブ。そこで二人が遭遇するのは飲んだくれの店長や粗野な客たちのパワハラ・セクハラ、女性蔑視の数々。相棒のリブはその環境に結構慣れてうまくやっていくのだが、生真面目なハンナはなじめず追い詰められていき…。終わりは意外に爽快で飲んだくれ店長が倒れ、店員にしてパートナーの女性が二人にレジから未払いの賃金をとって逃げるように耳打ちしてから彼を病院に連れて行くと去る。そして…。とアクション劇になっていくのがまあ救いか…。パワハラ・セクハラ世界は確かにひどいのだが、監督・主演女優コンビが前作で取り組んだ『アシスタント』⑲のような身につまされ感はない…カナ。
(8月7日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館 175)

④流麻溝十五号
監督:周美玲(ゼロ・チョウ) 出演:余佩真 徐麗雯 連兪涵 2022台湾 109分


初見は2023年4月⑫ 日本台湾連合会というところが主催した上映会(渋谷ユーロライブ)だった。1年半で劇場上映というのは早いかも…。しかし平日午前中のせいか、何回か行われている上映会で見るべき人は皆見てしまった?(私が見た上映会も満員で、台湾の人たちも大勢でものすごい盛況だったのを覚えている)からか、会場ガラガラなのがちょっとサビシイ。もったいない。(8月9日 シネマート新宿176)


⑤風が吹くとき(日本語吹替版)
監督:ジミー・T・ムラカミ 日本語版:大島渚  出演:森繁久彌 加藤治子 主題歌:デヴィッド・ボウイ 1986イギリス 85分

有名なレイモンド・ブリックス原作によるアニメ。前回の鑑賞は1987年の英語版だったはず。37年前だが、アニメだからということもあるのだろうが、古く感じられない世界情勢というものに震撼とする。しかし前に見た時ほど震える感じでもないのは、私の老い?あきらめ?それともやはりこんな戦争だらけ、戦争スレスレの自分の生活にも鈍感になってしまっているせいか…。悩ましい。
日本語版は初めてだが、この英国の一昔前の老夫婦の饒舌に圧倒される感じで、日本の老夫婦の日本語のセリフがなんかそぐわない。それでも森繁久彌はいわゆる森繁節にはならず名優なのだなあ…と今更。加藤治子のほうはその顔が彷彿とする感じでいささか画面世界に入っていけない感じ。
(8月9日 新宿武蔵野館177)

⑥幻の光
監督:是枝裕和 出演:江角マキコ 浅野忠信 内藤剛志 木内みどり 1995日本 110分 ★★

これも30年近く前の作品(是枝監督の劇場デヴュー作)で、私は多分ビデオでしか見ていないと思われる。原作は宮本輝。その昔のビデオ鑑賞ではなんか暗い話で、江角扮するヒロインも暗い女という気がしていたが、そんなことはなかった。一つは彼女が暮らしていた大阪の街の風景、能登の自然、そういったものをそれこそ包む光の美しさ、もう一つは、浅野忠信(こんなに若いイケメンだったのね)と内藤剛志、二人の夫の、形は違えどなかなかの愛情深さ。そして江角マキコの若々しさー夫を失い黒装束にいつも身をっつんでいても、すっきりした立ち姿から若い力強さがにじみ出ている感じに驚く。是枝によればこの作品失敗作だそうだが、それでもやはり初期の「是枝作品」の面持ち個性がたっぷりで、静かながら心に響く。(8月10日 渋谷文化村ルシネマ・能登半島輪島支援特別上映 178)

⑦バナナパラダイス
監督:王童 出演:鈕承澤 張世 曾慶瑜 李昆 1989台湾 148分 ★ 

恒例の夏、K’Sシネマの『台湾巨匠傑作選』。この作品はすでに
2020年9月⑫上映されて見ているが、今年は王童特集で「台湾近代史三部作」(『無言の丘』『村と爆弾』とこれ)を一挙上映というので見直すことに。概ねの紹介は上記リンクと同じだけれど、今回つくづく感じたのは、主人公の妻の逞しさというかしたたかさというか…、演じる曾慶瑜はすっきりした美人だけれど、その陰に夫にも子供にも隠し通した何十年というのがあって…、その重さにいかに耐えた(というのでもないかな、彼女自身が選んだ生き方だしな…)というのが、ウーン、なんかすごい!男の軽さが強調される感じも。
         (8月12日 新宿K'Sシネマ 台湾巨匠傑作選2024 179)

ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ
監督:ぺドロ・アルモドバル 出演:イーサン・ホーク ペドロ・パスカル 2023スペイン・フランス 31分 ★★

31分と、短いのだがぎっしりと物語も情景も詰め込まれた感じがする。スペインの監督が作ったスペイン・フランス合作映画だが、舞台は1910年ごろのアメリカ西部。保安官をするジェイクのもとにメキシコ人の旧友というか元カレであるシルバが訪ねてくる。再会を喜ぶ二人は飲みかわし、ベッドインもするのだが翌朝、実はシルバには訪ねてきた秘密があり…、ジェイクはそれを振り切り自分の仕事に向かうというなかなかドラマティクな展開だ。これはアルモドバルから『ブローク・バック・マウンテン』(2005アン・リー)への返答だそうなんだが、フーン。なるほど30分あまりでオシャレにまとめてるとは…
(8月15日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館 180)


⑨リッチランド
監督:アイリーン・ルスティック 出演:川野ゆきよ 2023米 93分 ★

リッチランドはワシントン州南部に、マンハッタン計画の中の核燃料生産拠点として作られた町。とてもきれいな郊外の街だが、周辺では汚染除去作業が今も続き(先住民の土地を奪って作られたとか)町の人々は「川の魚は食べない」という。いっぽうで
原爆は戦争の終結を早めた国益に寄与しているのだと誇りを持つ人もいて、町の高校のスクールマークは「キノコ雲にR」。核反対を語る高校生が着ているトレーナーにこのマークがついているのが、なんとも…。このスクールマークについては廃止変更を求めて運動を続けた高校教師も出てくる。というわけで核の恩恵を受けながらも恐れる人々の複雑な心境をインタヴューによって描き出していく。日本人被曝三世というアーティスト川野ゆきよがこの街で、住民たちと対話しパフォーマンスをする様子も描き出される。チラシにある原寸大原爆を模した布製のオブジェクトは川野によるもの。(8月15日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館181)


⑩村と爆弾(稲草人) 
監督:王童 出演:張柏舟 卓勝利 林美照 文英 楊貴媚 柯俊雄 呉炳南 1987台湾(台湾語・日本語)98分 ★★★


出だしはスーザフォンに太鼓、チャルメラ?2本という感じの小さな村の軍楽隊の演奏とともに戦死者の遺骨が村に帰ってくるところから。一瞬で日本支配下日本軍の兵士(軍属か?)として前線に持っていかれる農村の苦しみが描き出される。そんな村で田畑を耕し貧しい暮らしをしている兄弟(両方の妻、子どもたち、夫が戦死して発狂した妹も一緒に住む)。原題「稲草人」はかかしのことで、兄弟の畑にはぼろをきた案山子が「役立たず」とののしられながら立っているが、むしろこちらの題の方が映画の全貌に近いかも…。一家の命綱の大事な牛が日本軍に徴用されたり、地主が土地を売って自身は日本に移住すると、立ち退きをせまったり、なかなかに苦しいことばかり。そんな中で空襲も!(台湾東部のこの農村あたりは製糖工場があったりして米軍機の空襲もさかんにおこなわれたあたり)兄弟の畑に1発の不発弾が落ちたことから話が動いていく。不発弾を届け出れば褒美がもらえるという情報で、村の駐在所の巡査も一緒に兄弟は町の警察にこの爆弾を運んでいくことになるのだが…。結局のところ結果はわかっているようなものではあるが、そこまでが一種のロードムービーとしてこっけさも悲しみも含んで描かれて行き、最後は爽快とも、むなしいとも言えるような結末で、いや、本当に娯楽作品としてもうまくできている。軽快な感じがあって、王童映画としてはもっとも洗練された感じがするのは、女性(王英も楊貴媚も出ているし、妹役の林美照などは大熱演だが)がわりと軽くて、「男の子」映画っぽく作られているからかもしれない。台湾語と日本語(日本人役も、台湾人の日本語もあるが)が抜群にうまくてリアルだった。(8月20日 新宿K'Sシネマ 台湾巨匠傑作選2024 182)

⑪墓泥棒と失われた女神 
監督:アリーチェ・ロルバケル 出演:ジョシュ・オコナー イザベラ・ロッセリーニ アルバ・ロルバケル 2023イタリア・フランス・スイス 131分

この監督の映画は『幸福なラザロ』⑨(2019)がかなり印象に残っていて、不思議な映画を作る人だなあと思っていたが、今回の映画もまあそういう感じ。現実と幻想の間を行き来するような作りはあいかわらずで、ただし、今回は物語のせいか、わが体調のせいか、今一つ映画の世界に入り込めないうちに終わってしまった…。
1980年代トスカーナ地方、地中の古代の墓・遺跡を見つけるアーサー(名前もだしイタリア語はあまりできないイギリス人?という設定。演じているのはジョシュ・オコナーなので役者優先の設定?かも)は墓荒らしの仲間としてくらしている。刑務所を出て行ったのがいなくなった恋人の実家。そこで暮らしながら恋人と、掘り当てた女神像を重ね合わせ?というまさに現実と幻想を行ったり来たりするような感じの話で、ウーン。遺跡から出てきた品を買い付けるディーラー?を演じるのがアルバ・ロルバケルでこの人は監督の姉。原題のイタリア映画への露出度ナンバーワンと言ってもいいかもしれない女優サン。
(8月21日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館 183)


⑫めくらやなぎと眠る女(日本語版) Saules Aveugles, Femme Endormie
監督:ピエール・フォルデス 日本語版演出:深田晃司 翻訳:柴田元幸 出演:磯村優斗 玄理 塚本晋也 古舘寛治 内田慈 木竜麻生 柄本明 2022 フランス・ルクセンブルク・カナダ・オランダ 109分 ★★

先月の英語版⑭に引き続き日本語吹き替え版を見る。ウーン、やっぱり村上春樹も日本人、私も日本人だからかしらん、英語版よりずっと入りがよくて、物語を堪能できた感じ?英語版で耳に着いた「翻訳字幕になっていないことば」という邪魔者はないし、アジア人的風貌の登場人物のビジュアルに日本語がなじむ感じ。吹き替える役者も、それぞれの人物になり切っている感じで、役者の顔が目の前にちらつくような発声でもなくて、映画の世界の一部になっている。ただし、古舘寛治のカエル君だけは、演じるのが人間でないから?かもしれないが、カエル君というよりは古舘寛治だった。その点ではホテルオーナーの柄本明は、柄本が演じているとわかっても柄本に聞こえないすばらしさ。(8月21日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館 184)

⑬パスト・ラブ
監督:セリーヌ・ソン 出演:グレタ・リー ユ・テオ ジョン・マガロ  2023米・韓国106分

ウーン、なんというかなあ…24年前、12歳だった少女と少年は少女の移住によって離れ離れになる。12年後の20代、SMSを通じて連絡が取れるが、それっきりに…。そして36歳のニューヨーク、女は20代に知り合った男性(作家)と結婚し自身も劇作家として活躍している。そこに韓国から元少年が訪ねてきて旧交が復活する?かどうかというような話で…。韓国の一流大学を出て、20代中国でも仕事をしていたという男の英語のあまりの稚拙さ?はありえないでしょうという感じだし、むしろ今やNYでしっかり暮らしている女の葛藤と見守る夫に不安・動揺とそこからの夫婦の回復の物語として見るべきか??夫アーサー(ユダヤ人系アメリカ人)を演ずるのは『ファースト・カウ㉜』(2019ケリー・ライカート)のジョン・マカロ(あ、なるほどという感じ)、女はグレタ・リーでこれはなかなか格好いい人! (8月26日 下高井戸シネマ 185)

⑭無言の丘
監督:王童 脚本:呉念真 出演:澎恰恰 黄品源 楊貴媚 文英 陸仙梅 任長彬 陳博正 陸筱琳 1992台湾(台湾語・日本語) 175分




こちらは大正時代の金瓜石とその少し下にある九份の娼館が舞台で、親の墓を作るために金山に出稼ぎにきた若い兄弟の鉱山暮らしと、取り巻く人々の物語。兄弟はまあ真面目に一生懸命働くが中々報われない様子と、その中でのひそかな恋情という感じでそれほどにはインパクトある存在というわけではないが、この映画、何よりすごいのは女性のインパクトだろうか。兄弟が下宿する家の未亡人(楊貴媚)のしたたかな逞しさ、九份の娼館の女将(王英)の図々しく我が物勝手のように娼婦を搾取しているように見えて、時に見せる情とか、なかなかに見ごたえがある。薄幸な病気の娼婦や、下働きから水揚げされて倒れるまで客を取らされることになる琉球出身の少女とか、その彼女にひそかに心を寄せる、母は娼婦父は日本人という少年ーこの映画で最も悲劇的な見せ場を作っている役だが、この映画以後どんな役者に育っているのか?あるいは??あまり台湾映画で名前も顔も見た記憶がないので、ちょっと気になっている。彼らは日本支配の台湾で幾重にも差別された人々なのだが、そのような存在に対する眼が行き届いた映画だと思われる。
この映画は以前台湾のDVDでは見ていたが、劇場では今回が初めて。DVDの時にはまだ金瓜石も九份も行ったことがなかったが、コロナ直前の2020年2月、天燈揚げに行ったときに、このあたり歩いたなあと、三角の基隆山?の独特な山容を含めて懐かしく思い出した。
(8月27日 新宿K’Sシネマ 台湾巨匠傑作選2024 186)

⑮僕の家族と祖国の戦争
監督:アンダース・ウォルター 出演:ピルウ・アスベック カトリーヌ・グライス=ローゼンタール ラッセ・ピーター・ラーセン モルテン・ヒー・アンデルセン ペーター・クルト  2023デンマーク 101分

1945年4月、敗戦間近のドイツから2万人ともいう難民が。当時ドイツに占領されていたデンマークに流れ込んだ。受け入れる側のデンマークとしては、未だナチス軍に従わざるを得ないが、国内にはレジスタンスがしっかりと活動を続けドイツ人に対する反感も強い中で、ナチスから学校の建物を難民に提供するように命ぜられ、難民受け入れの最前線に立たされた市民大学学長一家の葛藤と苦悩を一家の少年の視点で描いている。難民たちは寝る場所だけは市民大学の体育館を供されるが、ナチス軍は彼らに食料を供するなどはせず、難民たちはジフテリアに感染して子どもたちを中心にバタバタと倒れ死んでいくが、医師はただ一人のみ、薬もなく、学長夫妻はその状況を見ていられず、手を貸し、父とともにいる少年はその行為に巻き込まれてもいく。それは同時に隣人たちから批判・非難のみならず暴力的な排撃さえ受け、その矢面に立たされるのは子ども同士の関係の中で残酷にいじめられる少年でもある。半裸にされて木に縛り付けられ放置されたのを救ってくれたのはドイツ人難民の少女だった。一方、少年は大学の音楽教師のレジスタンスに触発されその手伝いも始めたり、矛盾と板挟みに苦しみ悩む姿が身につまされる。後半、ドイツ人少女の病を知り動き出す少年の姿を描くあたりから、ちょっとリアリティないかなという気もしないでもないが、子どもの意志がおとなをもレジスタンスをも動かしていくという、まあ感動的な描き方。そして敗戦後職を追われて旅立つ一家の晴れ晴れとした表情で映画は幕を閉じる。声高に叫ぶわけではないが、故国にいられなくなったウクライナ人、パレスチナ人、ミャンマー人などなど私たちの周りにもあふれている今、自分が何をしたらいいのか、何ができるのかを今更ながら、いつもながら考えさせられる。(8月28日 キノシネマ立川 187)

以上、ながながお付き合いいただき、ありがとうございました。
8月末、停滞してなかなか動かない台風10号、電車にのって街に映画を見に行くのも恐ろしく(大雨になって帰れなくなったら困る)、締切りの近づいた原稿を書いたり、研究誌論文査読をしたり、いつになくマジメにおとなしく過ごしていたのですが、なななんと、今年も風邪をひきました(去年もこの時期風邪をひき空木岳で撤退した!)。そのうえ、蜂窩織炎(傷から感染して足が腫れあがり真っ黒になった。これは実は鹿島槍の帰り道のこと。なぜか痛みはほとんどなく、めげず鳳凰三山も歩ききってしまったのでした)、歯の治療(昔かぶせてあった冠が古くなり交換を勧められ)後に口内炎になりと、自らの免疫力の衰えを感じざるを得ない夏の終わりです。そういうわけで、8月はこれで映画も山もおしまい。

体力回復して9月は元気にすごしたいなあ…
みなさまもどうぞくれぐれもお元気で!!

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