【勝手気ままに映画日記】2019年3・4月


長野の入院先から戻ってきて、なんとか見ました!府中郷土の森の桜

①グリーン・ブック ②葡萄畑に帰ろう ③小さな独裁者 The Captain  ➃あなたはまだ帰ってこない La douleur ➄翔んで埼玉 ⑥マイ・ブック・ショップ ➆ローマ ➇ビール・ストリートの恋人たち(If Beale Street Could Talk)➈ナポリの隣人 ⑩立ち上がる女⑪芳華 ⑫盆歌 ⑬セメントの記憶 ⑭若葉のころ(5月1號)⑮未来を乗り換えた男 ⑯天才作家の妻 40年目の真実(THE WIFE)(TRANSIT) ⑰美人が婚活してみたら ⑱私の20世紀 ⑲シンプル・フェイバー ⑳ふたりの女王 メアリーとエリザベス ㉑ラブ ゴーゴー(愛情来了)㉒キングダム                      

3月は最後の週に3本だけの映画鑑賞。3,4月まとめてアップします。
🌸はあくまでも個人趣味によるおススメ作品です!


①『グリーン・ブック』
監督:ピーター・ファレリー 出演:ヴィゴ・モーテセン マハーシャラ・アリ リンダ・カーデリニ 2018米 130分

オスカーの作品賞と脚本賞、それに助演男優賞(アリ。確か『ムーンライト』でも同じ賞だった?)を受賞し、白人視点描いた作品だということでスパイク・リーらは大いに反発したと聞いていた作品。ようやく間に合って鑑賞。ウーン、実話ベースということで、特別な才能を持ち、それを伸ばす機会にも恵まれて育った黒人ピアニストと彼の運転手兼マネージャー?をつとめることになったイタリア系の白人が一緒に黒人差別の意識が強い60年代のアメリカ南部を演奏旅行するという物語。脚本はモデルになった運転手(後にコパの支配人にまで上り詰めた)トニー・バレロンガの息子ニックが書いているとかで、わりと抑制された差別表現の描き方だが、それを敏感に感じつつ耐えたり時に意志を貫こうとしたり、権威(なんとロバート・ケネディ司法長官)に頼りつつ、それを苦悩し、しかもゲイという複雑なピアニスト、ドクター・シャーリーの造形もうまいし、演技もさすが。一方のトニーはイタリア系の移民仲間のつながりによくも悪くも支えられ、家族にも恵まれていて、教養はないが知恵は滅法回り、腕っぷしも強くて頼りがいのある男で、造形的には意外に単純な気もするが、最初は差別主義者と言ってもいいくらいに無意識な彼が、音楽のすばらしさや、支えたり諭されたりの人間的交流の中で人種意識よりも友情を重んじる男に変わっていく姿は描かれ方も繊細だし、演技も繊細と言ってもよく説得力がある。差別に対する強い主張とかより、白人がかつて(今もか?)差別意識の強かった自分たちを反省する?ような視点で描かれている部分もあるのが気にはなるし、オスカー受賞に反発が出たのもわかるけれど、でもこれはこれで作者からすれば自分の立場で描かざるを得なかった、という映画なのだろうとは思った。ところで、エンドロールに出てきたドクター・シャーリーの実物はアリより よほどイケメン、バレロンガも恰幅のいい、大人の趣。時にふっと笑いの出るような、派手ではないが良質のユーモアにつつまれた映画でもあった。(3月23日 府中TOHOシネマズ)


②『葡萄畑に帰ろう』
監督:エルダル・シェンゲラヤ 出演:ニカ・タヴァゼ 二ネリ・チャンクヴェタゼ ナタリア・ジュゲゼ 2017ジョージア 99分 

自らも国会の副議長を務めていた監督が、政界を退き21年ぶりに作った映画、主人公ギオルギも大臣(なんと難民対策、要は追い出しを仕事とする省)の要職に在り、執務用に豪華な1点もの?の椅子を買ったりして地位を満喫しているが、突然に失脚、大臣在職中に得た家も不正に得たとされて差し押さえ追いたてを食らうことになる。妻を亡くし、その姉、ちょっと折り合いが悪いがもう独立し、反政府派?の青年と結婚してしまった娘、まだ幼い息子を、そして難民対策の中で知り合い結婚した若い妻…、それを抱え、無職になってさあ、ギオルギどうするか?という映画。買い入れた立派な椅子があたかも命あるもののように、主人公の権力意識をくすぐり、また田舎に向かって疾走しと、いかにも映画だからこそというような、ユーモラスで、それでいて皮肉さもあふれた画面作りが秀逸!主人公のしょぼくれハンサム?振りもなかなかで、面白いけれど、終わりが数年後までいつまでもいつまでも続くのは、世の中が変わらにということを表しているのかな?少し疲れる。(3月29日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


③『小さな独裁者 The Captain』
監督:ロベルト・シュヴェンゲ 出演:マックス・フーバッヒャー ミラン・べシェル フレデリック・ラヴ・ヴィクトリア 2017独・仏・ポーランド 119分

第2次大戦末期1945年4月、ドイツ軍から脱走した19歳の兵士が、道端で自動車とその中に置き去られたナチス将校の軍服をみつける。それを着こみ、はぐれた兵士を部下にして、将校の特別任務と称して田舎を回り、であった兵士たちを引き連れ、脱走兵の収容所に乗り込み、そこで90人の脱走兵たちを処刑、さらに収容所が爆撃を受け燃えてしまったあとは、私的な「即決裁判所」を結成、街で目に付くものを粛正、立派なホテルを接収して女性を侍らせて遊ぶ、仲間内を粛正しと…、最初は自分の嘘や偽りの身分がバレないかと緊張感いっぱいでいるヘロルドがどんどんエスカレートしていき、それとともに威厳を身に着け、まわりには盲従するだけでなく、疑いの目を持ちつつ自分を納得させて付き従おうとするもの、どうしても命令に従えず自殺してしまうものまでさまざまな目を配しつつ、最後の最後まで嘘を重ねて、そして敗戦後のドイツ軍の目は逃れつつ、戦後1年イギリスに捕らえられて死刑になった青年(このとき21歳!)あまりに若い実在の人物の人生に驚愕。そしてエンドロールでは現代のベルリンの街にあらわれたこの即決裁判所のメンバーが現代の人々に絡みものをとりあげ傍若無人にふるまう様子。なるほどね、この描き方でこれが歴史に隠れていた物語ではない、現代にも通じるような話しであることを示しているわけだ。怖い映画だよね…。ネットで見た実在のヘロルド、演じたマックス・フーバッヒャーよりも人好きのしそうな「かわいらしい」?容貌であったのにまたびっくり。
(3月29日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


④あなたはまだ帰ってこない La douleur
監督:エマニュエル・フィンケル 出演:メラニー・ティエリー ブノワ・マジメル バンジャマン・ビオレ  2017 仏・ベルギー・スイス(フランス語)126分

マルグリット・デュラスの自伝的原作『苦悩』の映画化。第二次大戦中ナチス占領下のパリ、地下レジスタンス活動をしていた夫がゲシュタポにつかまった30歳のマルグリット(自らも夫とともにレジスタンスにも参加していた)が夫を待つところから。差し入れを持ち、状況を問い合わせに行った彼女は第三帝国の勝利を信ずるヴィシー政権の手先であるラビエに言い寄られる。ラビエを演じるのは久しぶりに見たらなんだか貫禄十分ですごくオジサン化したブノワ・マジメル。西欧人(ラテン系)の男性の中年化ってこういうパターンがあるのかとは、私の勝手な思い込み? 夫の情報を得るために彼に付き合うマルグリット、しかし途中で彼は収容所に送られ、空襲下で接近はあるものの、ラビエこそが夫を捕まえた張本人であることも明らかになり付き合いはそれまでとなる。スパイ目的で近づいた「敵方の男」とのラブロマンス的展開映画?と思ってみていると全然そういう展開にはならず、その後は延々と、すっかり参ってしまうマルグリットと彼女を支える同じレジスタンスの男(彼は愛人?みたいだが、夫を待つ彼女を同じ目線でひたすら支える)の姿が延々と描かれ、最後に瀕死の状態で夫が帰って来る。しかしいざとなると夫に会いたくないと涙し、戻ってきた夫が回復した数年後には夫と離婚する彼女…というわけで、夫の帰りをひたすら待つ純愛的・反ナチズム社会派映画というわけでもなく、要はもしかしたら本来はとっくに別離するような関係であったにもかかわらず、社会的状況により引き離されたことにより続けざるを得なかった愛の苦悩を描いた…という、まあ言ってみればモノローグ映画。デュラス自身の文章を基調とするようなモノローグ的ナレーションの中で、それほどにドラマティックなアクションがあるわけでもなく、相手の男と話したり、ソファやベッドで苦しんで沈潜したり、街を歩いたり(これはファッション的にさすがに格好いい)というようなシーンの連続で、演じるにはなかなか難しそうだが、そのあたりは大変よく演じられているし、またカメラアングルや光の具合が、いかにもおしゃれかつ沈潜した雰囲気を表していて、そのあたりは比較的単調な流れの物語飽きさせない。
(4月5日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


⑤翔んで埼玉
監督:武内英樹 出演:二階堂ふみ GACKT 伊勢谷友介 ブラザー・トム 麻生久美子 島崎遥香 中尾彬 京本政樹  2019日本 107分


魔夜峰央のマンガ原作で、登場人物の人選、ビジュアルともに「らしく」作ってあって、そこにともに埼玉県人でありながら結納を東京で、新居も東京にという娘とその両親が東京の結納会場に向かいつつ、カーラジオで埼玉対東京戦争(千葉もからむ)を聞きながら行く、その劇中劇が主たるストーリーになっているという構成、ま、あまりにバカっぽく東京が埼玉をバカにし、都会度満点に身をやつした?埼玉県人が「通行手形」排除のために戦うというのは、あほくさく笑えるが、その裏に自分の中にも差別し、差別されることを忌避する同じような意識があるのにぎょっとするという、これは映画というより多分原作の中にある主張なんだろうね。ま、とにかくぶっ飛んだという典型的なというかなビジュアル化と、差別意識の絵はなかなかで、楽しみつつうすら寒く、でも笑える。しかし(東京都知事とそこにへつらう神奈川県知事)は現実とは全く違う造詣ながら、実は現実を皮肉っているというふうにも見えて、ちとコワかった。
(4月6日 府中TOHOシネマズ)



⑥マイ・ブック・ショップ
監督:イサベル・コイシュ 出演:エミリー・モーティマー ビル・ナイ パトリシア・クラークソン 2017スペイン・英・独(英語)


ブッカー賞をとったペネロピ・フィッツジェラルドの原作の映画化。1959年イギリスの田舎の海岸の街で書店を開いた女性を描く。彼女・フローレンスが借りたオールド・ハウスと言われる空家屋は7年も空き家だったのに彼女が入ると、街の有力者ダカート夫人が追い出してアートセンターを開こうともくろみ、さかんにいやがらせを繰り返す。フローレンスはブラッドベリの新作や、ナボコフのロリータを紹介するなどして書店はそれなりに繁盛するが追い詰められる。このいやがらせのしかたが「法律」を立てに取るようなやり方でいかにもイギリス?権威主義と理屈っぽさでいやらしい。彼女を援助するのは40年も引きこもり、あらぬ噂を立てられている老紳士ブランディッシュだが、彼はダカード夫人に談判に行くものの歯が立たず、帰り道で倒れて死ぬ。そしてフローレンスは結局、新しくできた法律によって家を追われ、街を去ることになるが…。ここで大きな働きをするのが彼女に雇われていた少女で、この少女公式HPなどでも名前がクレジットされてないのだが、生意気そうで役にあっていてなかなかの名演技。ハラハラドキドキしつつ最後は挫折、の物語なのだが、この少女の存在が(とても皮肉な形でだが)希望になり、そして少女が大人になった後が最後にあっさり、というきわめて品のいい作りの作品である。
立川シネマシティは4月1日からシルバー割引が70歳以上に。会員制に少しお得?もあるらしいが、スタッフがまったく説明の意欲もないようなのでふーん。 
(4月7日立川シネマシティ2)



➆ローマ
監督:アルフォンソ・キュアロン 出演:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ 2018メキシコ・米 135分 🌸

全画面モノクロで奥深い白と黒、カメラアングルの印象的な美しさ…という評判通りの映画だった。メキシコシティの一家とその家の住み込みの家政婦の生活―一家の主人夫婦は離婚の危機から離婚にいたり、家政婦は知り合ったボーイフレンドに妊娠させられるが、こっぴどい状況で男に捨てられる。そして臨月、一家の妻の母、と運転手と一緒に街に出て政治紛争に巻き込まれ、自分を捨てたボーイフレンドが反対派を射殺する場面に遭遇、破水して死産してしまう。夫と別れることになった一家の妻は、彼が荷物を取りに来る日、4人の子どもたちと家政婦を海に連れ出し、そこでおぼれそうになった子供2人を泳げない家政婦はなんとか救う。救いつつ自分が死んだ子供の誕生を決して望んではいなかったという罪の意識を告白する、と結構波乱のストーリーなのだが、それが淡々と日常生活の普通の場面に埋め込まれるようにして描かれていき、しかも各場面が(たとえ汚い場所であっても)モノクロの際立った美しさで描かれ、目を離せない感じ。さすがすごい映画だと思った。ネットフリックスの配信からはじまった映画だが、劇場の大画面で見れてよかった。 (4月11日 アップリンク吉祥寺)


➇ビール・ストリートの恋人たち(If Beale Street Could Talk)
監督:バリー・ジェンキンス 出演:キキ・レイン ステファン・ジェンキンス レジーナ・キング 2018米 119分 🌸

1970年代のニューヨーク。幼なじみ、家族ぐるみの付き合いの中から恋をはぐくんだ19歳のティッシュと22歳のファーニー。いかにも育ちがよさそうな物腰で、幸せそうな二人だが、ファーニーは彼に目をつけた白人警官の罠にかかり、無実のレイプ犯として収監されてしまう。しかもおりしもティッシュは妊娠していることがわかる。この映画は、心揺らがずファーニーを信じ愛するティッシュ(ただし、彼女自身は彼を救うなんらの手立てを持たない)と彼女を支え彼を救おうとするティッシュの母を中心とする家族たちの奮闘を描き、それでも彼らの働きは実効を生まない、という絶望的な状況が描かれ、しかし彼を愛して動じないティッシュの心によって、希望の感じられるラストに…という、なんていうか愛の映画。70年代の黒人の差別的状況もモノクロの写真で挿入され、理解者はいるものの、特に黒人の可愛い女の子を性的対象として凌辱しようとする白人男とか、黒人青年を罪に陥れようとする警察とかが描かれる、そういう社会的視点を持ちながら、この映画の中で黒人たちはときに生活のために犯罪すれすれの行為に手を染めつつ、一方で神を信じ、よくも悪くも家族愛で結ばれ、良識的であろうとする、そういう存在として描かれ、しかもそのような良識が力を持ちえない社会状況も描かれ、しかも美しい恋愛映画に仕上がっているところがすごい。ファーニーの家族は労働者階級らしい父をのぞいて、熱心というより狂信的なクリスチャンの母や、姉たちはティッシュの妊娠を悪魔の所業として非難し、ファーニーの無実を信じながらも神が救ってくださると祈るしかしない、この映画の他の登場人物の意志に比べると特異に感じられるのだが、むしろそちらが普通で、ティッシュの両親や姉のような意志的に娘・妹を救おうとする意志のほうが物語として語られるべきものなのだろう。アカデミー賞では『グリーン・ブック』に敗れたけれど、これはやっぱり「白人受け」しなかったからだろうかなあ…。
(4月12日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)



➈ナポリの隣人
監督:ジャンニ・アメリオ 出演:レナート・カルペンティエーリ ジョバンナ・メッソジョルノ ミカエラ・ラマゾッティ エリオ・ジュルマーノ グレタ・スカッキ 2018イタリア 108分

ウーン、重い、息苦しく、老いの悲哀?に若さ(といっても子持の中年だが)を感じさせられ続けて最後まで、ほとんど救われない―というか最後はちょっとは希望を感じさせられる終わり方といっていいのだろうが、それも現実を考えればね…2人の子とは不仲で、1人、妻の残したマンションに住む高齢の元弁護士ロレンツオ。心臓を病むが子どもにも告げず退院してしまい家に戻り、隣(といってもちょっと面白い作り。もとは彼の持ち家で、ベランダから向かい合った階段伝いに行けるようになっている)に来た一家と知り合いになる。特に一家の妻とは心を開き孫と同年代の幼い子どもたちとも親しくなるが、一家の夫はなんか不安定な雰囲気でその意味ではちょっとミステリアスな不安が漂い…そして案の定、という展開。隣人は実子とは不仲な老人にとって決して救いになったり家族よりも親しくなるような存在としてはここでは描かれず、後半人事不省のまま死んで行く一家の妻への、自分を父と偽り病院に通う老人の執心はなんとも痛ましい感じで見ていられない。ま、それゆえに娘の気持ちを引き戻した?といえるのかもしれないが。「隣人」がテーマではあるが隣人によって救われたり幸せになったりするのではないという意味ではホントに皮肉な描き方で、結局そういう父から離れられない娘、また出演は短いが不安定な息子が自分の妻や子を殺してしまう、その言わば後始末に出かけて来る母(グレタ・スカッキがさすがの名演技)など逃れられない血縁を描いた映画ともいえるのかなあ…(4月12日 川崎市アートセンター・ア


⑩立ち上がる女
監督:ベネディクト・エルリングソン  出演:ハルドラ・ゲイルハルズデッティル ヨハン・シグルズアルソンズ ヨルンドゥル・ラグナルソン 2018アイスランド・仏・ウクライナ 101分 

アイスランドで合唱団講師をするハットラは環境活動家「山女」として地元のアルミニウム精錬所に反対して送電線を切って回るという実力行使の抗議行動をしていた。彼女の双子の姉アウサ(ハルドラ・ゲイルハルズデッティルの1人二役)はヨガ講師で平和主義者?―この映画、大統領の案内でアルミニウム精錬所の視察に来るのが中国人の団体(皮肉味たっぷり)だったり、ハットラの太極拳シーンもあったりと、アジアンテイストがさりげなく織り込まれている―とともに、4年前に養子縁組の申し込みをしてあった(アイスランドは独身女性49歳も養親になれるのだ)が、ウクライナから紛争で両親や祖母を失った4歳の少女をあっせんするという申し入れが来る。さあ、そこで「山女」はアルミニウム精錬所と最後の決着?をつけるべく、「いとこもどき」とされる男の助けも得て、戦いを挑む。この戦いはボーガンを使って送電線に鉄ロープを渡し、高圧電流で送電線を切ったり、鉄塔ごと倒したりと結構原始的かつ荒っぽい。追手のヘリや、ドローンを逃れて走り回るシーンも含め、アクション映画を見るようなハラハラ感も。実際に中年の女性が演じているのがいい。そして彼女の行動の背景にあらわれるのがピアノ・チューバ・打楽器やアコーディオンなどの楽隊やウクライナの女声合唱団3人組で彼女の行動や内面を表すような楽曲を奏でるところもなかなかに映画的というか演劇的手法で面白く、真面目なテーマの映画でありながら妙なユーモアや、すっとぼけたセンスが漂うのも前作『馬馬と人間たち』にも通じるこの作者独自の資質なのだろう。最後は二人の女性が双子であることを生かした皮肉っぽいハッピーエンドで、ウーン?と思いつつシアワセな気分にさせつつ、またまた不安も…という不思議な終わり方(ハットラはウクライナの少女を無事に迎え大雨で水のあふれた川を渡ろうとするが…)。
(4月14日 アップリンク吉祥寺)


⑪芳華
監督:馮小剛 出演:黄軒 苗苗 鐘楚曦 伍陌 2017中国 135分

恵比寿ガーデンシネマ・ロビーにて

昨年3月中国映画祭電影2018で見たときは、こういう題材(1970頃の文工団の青春~中越戦争~戦後高度成長期?)が今の中国で受ける意味ばかり考えてしまい、映画そのものを今一つ楽しんだり味わったりできなかった気がするので、1年後の劇場公開(リニューアル後見にくくて仕方ない武蔵野館を避けて、恵比寿まで行き)を見ることに。そしてなるほど、どの世代にも、どんな考え方の人にも受け入れられるような一種の群像劇―ただし、そこで中心的に描かれるのはこの文工団からはみ出してしまった人々であるところが作劇の妙―として仕立てたこの映画(原作未読だが原作もそうなのかな?)の巧みさに、なるほどと納得した。文工団のシーンでは時間をたっぷりとって群舞のシーンを見せ、父が労改送り、母は継父と再婚、その一家からも排斥された何小萍がここでもいじめられる、彼女がひそかに慕う雷峰にもたとえられる「完璧な人」劉峰は腰を痛めて歌舞団からは脱落、しかも別の少女丁丁を愛し、彼女にふられるばかりか、陥れられて前線送りになってしまう。文工団のこんな状況に愛想をつかした小萍も自ら志願して前線の野戦看護婦になる、ということで舞台は文工団と並行して生々しく残虐な戦場シーンをたっぷり描く。ここでは中越戦争の前線を「防衛戦」という言い方で紹介するが、外から見れば侵略じゃない?と思えるが、国内の目線では反対派も賛成派も納得できる定義のしかたなのかもしれない。しかもこの戦争の描き方、決して肯定的ではなく、2人の主人公の1人は腕を失い、1人は精神の均衡を狂わせてしまうということで、一応ある意味戦争の悲惨さを強調して批判もしているのである。戦後文工団は使命を終えて解散、最後まで残った団員達もそれぞれに外国のパスポートを取りに行ったり、恋を実らせ結婚したり、大学に進学したりするが、文工団に心を残すのは結局途中で放逐された劉峰や何小萍であるという描き方は何かあざといほどに心憎い感じがする。そして実らない恋に(もう一人、語り手の穂子の恋も片思いで実らない恋であり、この映画いわば青春の実らぬ片思いを一つの芯にしているとも言えそう)心を焦がした2人が最後に寄り添い、それでも結婚はせずパートナーとして生きることになったという、語り手穂子による語りだけの終わり方のうまさ、他の仲間に比べて多分2人はもっとも貧乏なのだが最も心豊かにお互いを愛する境地にいたっているのであろうと感じさせるうまさ…とにかく巧い映画だわ…。
(4月17日 恵比寿ガーデンシネマ)


⑫盆歌
監督:中江裕司 2018日本 134分  

震災と原発事故で街を出ることになった福島県双葉町の人々が盆歌や太鼓の伝統を守り続けようとするようすを描いたドキュメンタリー。それぞれ仕事も違い避難している場所もバラバラな人々の営為を描くわけだから、描かれる行動や場面は多様で、ハワイ・マウイ島に福島の盆歌を伝承している日系人のグループ(というか町?)があると聞けば、ハワイまで行って、自分たちの歌や踊りを伝え、伝承してもらうことにより、将来双葉町に戻れた時には逆輸入しよいというような意表をついたというか、とても現代的なグローバルな行動も描かれ、なるほど…その過程で故郷を離れて異郷で暮らす者どうしとしての共感が描かれるのも納得できる。そこから飛んで?富山から双葉町に来た1人のルーツをアニメを使って描くというのは(声の出演者も豪華でこの映画のウリになっているみたいなんだけれど)どうなんだろう…、なんかあれもこれも詰め込んで、長い長い映画になってしまった感じで少しくたびれる。終わりのほうの震災後初めて開いた櫓競演の場面はなかなか見どころというよりか聞きどころで、迫力があってよかったが、そこも長いし、そこにたどり着くまでが長いし……。しかたがないのかなあ。
(4月19日 川崎市アートセンターアルテリオ映像館)
  

⑬セメントの記憶
監督:ジアード・クルスーム 2017独・レバノン・シリア・アラブ首長国連邦 アラビア語 88分 🌸

戦争で破壊されたシリアから、ベイルートの建設現場に出稼ぎに来た難民・出稼ぎ労働者たちの仕事風景、劣悪な生活環境、間に挟まれる海底の廃船?の景色、爆弾の炸裂する街、戦争で破壊されたシリアの街の瓦礫の下から掘り出される被災者たちとインパクトのある、しかも色彩的にもアングル的にもきわめて美しい、不安をかきたてられるような美しさで描かれる映像詩。父が出稼ぎに出たシリアの少年の視線で描かれる。出稼ぎから帰った父の手の、洗っても落ちないセメントの匂い(これがものが題名になっている)とか、海の絵のはなしとか、「労働者は戦争が国を破壊するのを待っている」―破壊されれば新たに建設が始まる?とか、映像のみならず印象的なことばがちりばめられ、表立って反戦とかは言わないものの、戦争の残酷さが詩的な視点から語られて強い印象を残す。
(4月9日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館。…たった1週間の上映ではあるものの、この映画館のセレクトに感服! もっとも映画、先日はNHKBSのニュース番組でも紹介されていたほどの話題作になっているようだ)


⑭若葉のころ(5月1號)
監督:ジョー・グーダイ 出演:ルゥルゥ・チェン リッチー・レン アリサ・チア シー・チーティェン 2015台湾 110分 

ビージーズ『若葉のころ』に乗せて語られる、一種のミュージックビデオ映画?台湾・中国の恋愛映画は中年の今から過去の青春期を振り返るというものが多いが、この映画は母と娘の17歳の恋を並行して語るのだが、母は物語の最初のほうで交通事故で人事不省状態になっているという設定(寝ている姿は管の1本もついていない、きわめて美しいもので、ま、しかたないとはいえ嘘っぽい)。なのでルゥルゥ・チェンが1人2役で演じる娘と、17歳の母がそれぞれの思いつつも打ち明けられない恋を演じる前半はなんか冗長で、特に娘のほうの恋―20年前の母と違うのは、彼女の性的行動がきわめて直接的というところでやはり現代?―は物語に必要かな?などと、少々あくびをかみ殺し。母のほうは英語スピーチコンテストでそれぞれ1位2位になった少女・少年に、少年の憧れだった英語の先生がビージーズのレコードを与え、歌詞を中国語に訳すという課題を出したことから始まる、このレコードを介した2人のつながりに大きなすれ違いが生じ、少年の憧れの先生とその憧れが打ち砕かれるような事件の結果、少年が学校を去るという、まあなんというかけっこうドラマティックな事件の20数年後ということになる。人事不省になった母のPCにかつての少年(音楽会で偶然再会するが、男のほうは彼女に気づかない)への未送信メールを見つけ、送信してしまうところから。つまり母の不在が娘の行動を駆り立てるわけで、これってなんかヘンなドラマ構成じゃない?という気がしなくもなく。ウーン。ま、雰囲気はとても品よく、緑の滴る現代の画面と、ちょっとセピアがかった過去の画面の対比も美しく、ほわーっとしてしまうような映画ではあるのだが。(4月20日 新宿K`sシネマ 台湾巨匠傑作選2019 初日。1本目の『熱帯魚』は開始45分前には完売だったそう)


⑮未来を乗り換えた男(TRANSIT)
監督:クリスチャン・ベツォルト 出演:フランツ・ロゴフスキー パウラ・ベーア 2018独・仏 102分

原作は1942年、マルセイユに亡命したドイツの作家アンナ・ゼ―ガスの小説。当時のナチズムの侵攻から逃れ、亡命しようとするユダヤ人を、現代の難民に置き換えて描くいわば近未来小説?―実際にドイツのファシズムがフランスに侵攻し、移民・難民を武力で抑圧しているというのは、ドイツから見たらちょっと極端な描き方ではないかという気もするが、いかにも現代というマルセイユの街で、40年代ともまがうような不安で不穏な難民への抑圧が起こっているというのは、近未来のリアリズム的な不安さを感じさせ、なかなかすごい発想と思わされる。ただそこに登場する人物は、主人公も含め、見かけも、精神的な構造もわりと現代人ぽくなくて、むしろ40年代を思わせるような古風さもあり、ウーン、そこが何と言うかなあ…。限界かもしれないけれど、面白さでもあるのかな…。入院中に見そこなった映画の1本で、ようやく下高井戸シネマに見に行く。(4月23日 下高井戸シネマ)


⑯天才作家の妻 40年目の真実(THE WIFE)
監督:ビョルン・ルンゲ 出演:グレン・クローズ ジョナサン・プライス クリスチャン・スレイター 2017スェーデン・米・英 101分

40年前妻子があったにもかかわらず、才能ある自分の学生と恋愛の果て妻にし、自らの着想に肉付けして作品に仕上げる妻の存在を力として40年後にノーベル賞を受賞することになった作家と、そのゴーストライターとして「キングメーカー」に甘んじてきた妻の物語。40年前女性が才能があっても世に出られず、むしろ客観的には付け込まれるがごとくに師に愛され妻として取り込まれてしまったというジェンダー(セクハラ、パワハラ問題でもあるが、グレン・クローズの貫禄はさすがその部分を詳細に描くことを許さない感じ)問題もだし、内助の功を「喜んで」受け入れさせられてしまった結婚問題も、いわば夫がノーベル賞をとって世界的にチヤホヤされることによってあらわになっていくが、物語の展開そのものや場面、最終的な物語の帰結はまあ予想の範囲。でもとにかくこの映画あざとささえ感じさせるような妻・グレン・クローズの表情の変化だけによる妻の内面変化の表現の妙こそ見もの。さすがにゴールデン・グローブ賞主演女優賞(でも、ノミネートはされても、やはり彼女オスカーは獲れないんだね…)(4月24日 下高井戸シネマ)


⑰美人が婚活してみたら
監督:大九明子  出演:黒川芽衣 臼田あさ美 中村倫也 田中圭 2019日本 89分

内容にあまり期待は持てないかなとは思いつつ(失礼!)、現代の30代前半くらいの婚活期男女のことばがどのように描かれるのかという興味(仕事がらみでもある)で見に行く。ウーン、美人というけれど、もちろん不美人ではないが、黒川芽衣ってそんなに皆が振り返るほどの美人かな?むしろきっぱりくっきりという意味では競演の臼田あさ美のほうが人を引き付けるオーラのようなものを強烈にはなっている感じだけどな…、ただし映画でもこの「美人」は必ずしも造作の問題ではないらしい。というわけで、その美女が30代もまもなく半ば近く、婚活に励む決意をするという話で、だが、現れる男たちがなんかどうしようもないヤツらばかり(他はあからさまに描かれるが、主演の中村倫也扮する園木も、田中圭扮する歯科医もどちらも)結婚相手としてはどうも…というヤツラばかりで、彼女がきっぱりと別れを告げて自立の道を歩みだすというのが、全然ドラマティクではなく描かれて、なんか妙に緩んでいるけどくたびれるという映画であった。現代には珍しく男女が「ですます体」でしゃべる映画なのは、まあ、婚活を通じてあったんだから当然と言えば当然か…。 (4月25日 新宿シネマカリテ)


⑱私の20世紀
監督:イルディコー・エニェディ 出演:ドロタ・セグダ オレーグ・ヤンコフスキー 1989ハンガリー・西ドイツ 103分 🌸

これは、結構むずかしい…いろいろな要素が満載てんこ盛りという感じで投げ込まれていて一見脈略がない感じもするが、実は1900年の視点から、20世紀にそれまでの時代にはなかった、人間の生活を大きく変えるたものー電灯や映画の発明、電気の実験、ジェンダー論的視点、アナキズム、ロバから動力機関へ、パブロフの実験や、ジャングルでチンパンジーをとらえて見世物にする、そして電信の発明というようなものを投げ込み、それを1880年ブダペストで生まれ、幼くして別れ別れになる双子の姉妹リリとドーラ(これもリリアンとドロシー・ギッシュ姉妹と重ね合わさっているらしい)が互いにそれとは知らず、気弱なテロリストと華麗な詐欺師に育って1900年の大晦日、オリエント急行に乗り合わせ、謎の男Zとそれぞれかかわりを持つという物語が縦糸のように織り込まれていく―この姉妹は20世紀の持った2つの要素、東と西、社会主義と資本主義、知的懊悩と享楽的進歩主義?みたいなものを体現しているのでもあるようだ。というわけで、20世紀が終わる10年前にこんな映画をデヴュー作として作った、この女性監督(『心と体と』も不思議な味わいを持つ映画だったけど)の才能に敬服。そして私たちの生きたこの20年、地球が小さくなるような通信、デジタル化はますます、私たち人間のありようをかえ、この先の人類の行く末を変えていきそうな時代にさしかかっている。そんな時にこの映画を見るということの意味もまた考えさせられた。(4月25日 新宿シネマカリテ)


⑲シンプル・フェイバー
監督:ポール・フェイグ 出演:アナ・ケンドリック プレイク・ライリー ヘンリー・ゴールティング 2018米・カナダ 117分


そのカッコよさにあこがれていたママ友が、自分に子どもを預けたまま突然に失踪。探し出すと次々に彼女の謎が現れてというのは、ちょっと古風な家庭推理ドラマみたいな筋立てかと思いきや、夫とその兄(実は自分の異母兄でもある)を亡くして、その生命保険金とblog運営で食べているシングルマザーのヒロインが、後半とんでもない行動力を発揮して謎解きにかかり、友人の思いもかけない境遇や、それにからむ犯罪をあばき、銃を持ち出してのアクション?まであるという、動的展開がきわめて現代的?でへーっと感心させられる。そうしてみると、最初はなんだか頼りなげな可愛らしっポイ造形のヒロイン(アナ・ケンドリック)がなるほどの主役であるのも納得した。


⑳ふたりの女王 メアリーとエリザベス
監督:ジョージ―・ルーク 出演:シアーシャ・ローナン マーゴット・ロビー ジャック・ロウデン ジョー・アルゥイン ガイ・ピアーズ 2018英 124分


「ふたりの女王」と銘うってはいるが、これ、シアーシャ・ローナン扮するメアリー・スチュワートがフランス王に死に別れスコットランドにもどってからの宗教がらみの宮廷の陰謀の中で、自らをイングランド王室の(ということはもう一方のエリザベスの)正規な後継者と認じ、きりりと頭をあげ毅然と立ち向かうも、どんどん追い込まれていく様子に主眼がおかれている。マーゴット・ロビー扮するエリザベスのほうは余裕の姿で対するが、実は彼女自身も女王という意味では紙一重の危うい環境にいて、その中でメアリーを救うことはできない「お姉さん」という感じ。髪が薄くなりカツラを被っているとか、白塗りの化粧とかそういうなんというかグロイ形象を見せながら、意外に繊細な心の動きがそこに透けるという意味では、純粋きりり一方のメアリーに比べるとさすがの貫録。男たちは、といえば酒や、男色、権力争い、狂信(何しろカトリックのメアリーに追い打ちをかけるプロテスタント派の憎々し気なこと)渦巻き、どうしようもないよな、という感じである。メアリーは黒から真っ赤なドレスに早変わりし断頭台に頭を置くが、そのことによって息子をエリザベスの後継者としてイングランド・スコットランドの王にしてしまった(これはある意味男たちを欺いたエリザベスとの陰謀である)というちょっとハッピー・エンディングが」女性監督の視点みたいで面白い。


㉑ラブ ゴーゴー(愛情来了)
監督・脚本:陳玉勲 出演:堂娜 施易男 陳進興 廖慧珍 馬念先 邱秀敏 1997台湾 113分


台北を舞台に、1軒のシェアハウス?に住む3人の男女、その中のさえない太目のパン職人阿盛の職場に来た小学校の同級生麗華への思い、そのパン屋に防犯グッズをセールスに来る若者阿松と美容師である麗華の出会い、麗華の失恋。そして落としたポケベルを介して知り合うシェアハウスのこれこそ太っちょ女、莉々の電話の声だけでつながる恋、といくつかの恋模様がオムニバス映画のようにつながって、街の片隅に住む貧乏であまり冴えない、でもひそかな夢だけはある若者たちの切ない恋が綴られる。まさに綴られるという感じだが、そこに阿盛の作る意匠満々のケーキとか、阿松が屋上に描く大きなバースデイ・ケーキとか、なかなかに面白い場面もちりばめつつ、ウーン、なんか全然パッとしない風貌の彼らが愛おしくなるような映画。ヒロイン麗華の堂娜は80~90年代に大人気だった歌手だけど交通事故で大怪我を負い、ヨガで復活?したとか。この映画でもずっと足を引きずっているのが(今私も足を引きずっているから)なんかすごく痛々しいけど頑張っている感じ…というのは事故のせいなのかな…。物語としては足が悪いという必然性はないみたいだし。(4月27日 新宿K`sシネマ 台湾巨匠傑作選2019)


㉒キングダム
監督:佐藤信介 出演:山崎賢人 吉沢亮 橋本環奈 長澤まさみ 本郷奏多 高島政宏 大沢たかお 2019日本 134分


公開から10日目、連休中とはいえまだ満席の映画館でようやく見た。まあ、全編日本語・日本人俳優による中国春秋時代、秦の中華統一劇というのもどうなんだろうということで、中国で撮影したという各場面のスケールと迫力ぐらいしか期待していなかったのだが、全体に若い役者を中心に頑張りがにじみ出ているような映画でよかった。橋本環奈が山の民の末裔の貂(テン)という野生児?の割には現代的なかわいらしさにすぎるのではないかとか、長澤まさみが山の民の王で見せ場たくさんの剣戟シーンとかは格好いいんだが、こういう映画の常?で肌の露出度が高すぎるなあとか、そもそもクーデターを起こした側が悪であり、武力で討伐されるべきであり、武力による侵略平定でのみ500年の戦乱を沈め中華統一が果たせるとか、見ていてそういう価値観でいいの?と思える場面はけっこうあるが、ま、それこそ原作漫画の価値観であると言ってしまえば仕方ないことかも。悪役の本郷奏多の憎々しさもなかなか見ごたえあり。大沢たかおの王騎将軍のとぼけたセリフ回しも面白かったし…。見ごたえはあったと言っていいだろう。
(4月29日 府中TOHOシネマズ) 





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