【勝手気ままに映画日記+山ある記】2026年7月【完成版】

宝剣~空木岳縦走/東川岳から空木岳方面を見るが午後は雲に霞んで…7・21


【書きました!よかったら読んでくださいね!】

よりぬき(中国語圏)映画日記

自国で自由に生きられぬ不自由を描く— 『ハラン』『霧のごとく』『ロストランド』



TH107. 60’sアングラ,前衛,あの時代 アトリエサード/書苑新社2026・8 p136~
 

今月も順次、登った山・観た映画をご紹介していきます。映画についてはページ下方から上に向かって掲載しております。PC仕様で作っておりますのでスマホ・タブレットだと少し見にくいかも…。ごめんなさい!

【7月の山ある記】

㉒高尾山 今年5回目‥猛暑をしのいで、足慣らし歩き
京王高尾山口(10:20)…➡6号路(10:30)‥➡‥山頂(599m 11:59~13:00)…➡4号路・2号路…➡(珈琲休憩 猿園・野草園傍茶店)…➡病院道コース入り口(14:45)…➡極楽の湯 単独山行
4h25m 6.7㎞ ↗595m↘531m コース定数14(ふつう) 平均ペース130-150%(速い)【ヤマップデータ】 


猛暑の高尾山頂大見晴台から、富士山は霞んで見えず、これは隣の大山、丹沢方面7・14

こちらが本来富士山のある側

7月は11日に研究会で発表(準備大忙し)やら9月にいよいよ出そうな気配の映画本の校正や索引づくりなどのデスクワークに追われ(ということは座っているとあまりよくない足の調子もイマイチで…)なかなか山に行けず、しかし、今月はリベンジ宝剣・空木岳も控えているし…ということで暑さの中頑張って、しっかり水分だけは沢山もって(500㏄のテルモスに氷をつめ冷たいレモン水、補給用の350㏄ペットボトル、それに高尾山上の水道水)ゆっくり出を少し後悔しながら歩き出す。清滝のケーブルカー駅前広場にできた「おいなりさん」の店でいなりずし2個の「歩きながら食べられる」というのを買い込んで、コースは沢沿いで日陰が多くて涼しいと思われる六号路。暑さ・平日にもかかわらず思いのほかの人出で、大方は追い越しどうぞだが、何組かは今日はゆっくりめの私よりもさらにゆっくりという方も…。足は出だしは両腿裏の痛みが少々あったが、歩いているうちに左足の痛みは消える。右は体を前に傾ければ痛くはないが、やはり頂上近くまで違和感が消えない。しかし山頂直下のベンチで少々休みいなりずしで腹ごしらえ?等もして頂上へ。冷房の効いたビジターセンターでちょっと買い物(これから会う友人へのお土産)したり、休んだりしてから、外の木陰でではシリアルと水分補給をし、メールチェック・ライン発信などして遊ぶ。1時間近くもブラブラしてから立ち上がるとオヤ!足は全く痛くない。上半分は人っ子一人いなかった4号路の急坂を下り、2号路の最初はさらに急な坂(どちらも丸太の階段になってはいる)も、病院裏へ続く「難所}もラクラク下りて、無事に極楽の湯に。温泉も比較的すいていたので、のんびりゆっくりつかって、例によってビールとそれに夏季節限定という割子蕎麦セットを奮発して、満足の帰宅。ヤマップのデータは「速い」ということで、ゆっくり休んだからか、これも満足だった!さて、次は宝剣・空木‥ガンバルゾ!
満足の夏限定割子蕎麦・天ぷらセットと中ナマ


㉓とうとう行った、遠い遠い果てしなく遠かった宝剣岳~空木岳縦走


7・20(月)
 バスタ新宿(7:35)=〈高速バス=〈路線バス〉=しらび平…〈ロープウェイ〉…千畳敷(2638 14:00)➡宝剣山荘(2860m 15:00) 1h16m 901m ↗230m↘11m

7・21(火) 宝剣山荘(5:30)➡宝剣岳(2931m 6:15)➡檜尾岳(2728m 10:47)➡東川岳(2671m 16:10)➡木曽殿山荘(2490m 17:00) 11h37m 7.6㎞ ↗676m↘1047m

7・22(水) 木曽殿山荘(3:30)➡空木岳(2863m 6:07)➡駒峰ヒュッテ(6:40)➡池山尾根➡林道ゴール(15:30)12h6m 11.4㎞ ↗494m↘1971m

3日トータル 24h59m 20.0㎞ ↗1407m↘23030m コース定数43(きつい) 50-70%(ゆっくり)【ヤマップデータ】

数年前、まだ元気!?な時から行きたくてトライしながら天候やその他事情!で撤退を余儀なくされて、今回が3度目の挑戦。昨年に続きYツアーに申し込んだが、今回の参加者は6名、女性ばかりだが、私以外は40代~50代の若手でかなり山を歩いていそうな口ぶりの元気な方ばかり。ガイドは去年も同じコース(天気撤退)でお世話になったKM氏。ということで、安心していいのか、それとも置いていかれてしまうのか、ちょっと不安だったが、いやいやこれをむしろ私にとっての僥倖と思いつつチャンスを生かして何とか縦走・登頂を果たそうとの思いで参加する。足の痛みはなんとか前日までの調整して初日はこともなく。宝剣山荘到着後、木曽駒まで行くという皆さんを尻目にここは「体力温存」ということで昨年も行った木曽駒はパス(天気もガスってまあ、去年なみだったので)。

千畳敷からの宝剣岳/宝剣山荘
咲き乱れる花々  シナノキンバイ/ハクサンイチゲ/タカネグンナイフウロ


2日目は、朝出て、宝剣岳への岩登りは大いに楽しむ。天候良く(ただしガイド氏は夕刻から空木岳方面に沸きあがる黒雲を心配し続ける)、元気に無事に下りたのだけれど…。特に足が痛むわけではないが、島田娘を経て、檜尾岳までがなんとも遠かった。このルートは3年前風邪ひきの翌日の体調不良の中で登ったのだけれど、こんなに遠かったかしらんと思うことしきり。息が上がったりとかいうことはないが、足の進みは遅く、やはり筋力不足か…。延々と登ったり下りたりの5山?KM氏は私をトップにおいていわばペースメーカーとしてくれるが、なかなか厳しく歩は進まずで終わりの方では両足膝上の腿前が痛くなり足を踏ん張るのもつらくなる(これは本当に初めての体験、終わり30分木曽殿小屋が見えた後が特につらかった。派手にひっくり返ること1回、ストックが曲がる(ヤレヤレ)。
それでも途中には高山植物咲き乱れ、お花畑美しく、その上雲が出てきた午後には雷鳥の親子にも遭遇し、山は北アルプスほどの雄大・壮大な絶景というわけではないが、来た道、行く先が広々と見渡せて気持ちが開くような感じがとてもいい夕飯時間もギリギリの宝剣山荘に到着。ノンアルコールビール1本(500円、水400円、お湯も500円!)飲んで夕飯はおでんだったので喜んで何とか…という具合で仕度のあとはストレッチだけして早々に就寝。

↓宝剣山荘からのご来光/天気よく眺望も抜群

宝剣岳 霞む木曽御嶽山/岩場登り(下り)を楽しむ

宝剣岳/レブンウスユキソウ/チシマキキョウ 
シナノキンバイ・ハクサンイチゲなどさくお花畑/イワツメクサ/タカネツメクサ

3年前にここで撤退した檜尾岳/雷鳥の親子に遭遇


3日目 3時半出発ということで、起きてミルク(長期保存パック)と持参のブドウだけ食べて薬(いろいろ)を飲み、出かける。ガイドは多分私がついて来れなければ途中断念救助要請とかをさせるつもりだったのだろう。真っ暗な中、昨日のようなトップにおくのではなくさっさと歩き出す。一人同行の若い(私と二回り違う干支で、いわば娘の年齢)Kさんが最後からついてきてくれて、真っ暗な中で方向を見失いそうになった時に指示を出してくれる。その上、私がなんとかとどこおりなく歩き続けるのを見極めるとさりげなく先に出て、その後私はラストだが、上のほうで光る皆さんのヘッデンを頼りにソロ登山の気分で空木岳への急坂を登り、これは私にとってはこの旅随一の楽しい歩行になった。頂上下の岩場までたどり着き登っていると先に登った皆さんを見極めたガイド氏がようやく足場などの指示を出してくれる。まだ寒く、陽も上がってくるところというころ合いの空木岳頂上(最も高い一峰と少し低いが標識の立っているところと)なかなか広々景色もよくていい山頂。そのあとは緩やかに下って駒峰ヒュッテまで。一休み(昨日買ったお湯で作ったカフェラテなど)そしていよいよ2000m(実際には1300mくらい)下るという池山尾根へ。この日は登りは大丈夫だったんだが、下るにつれ昨日も痛くなった両膝上腿前が痛み出す。ガイドは私をペースメーカーに立てたが、転ぶのが心配なのかゆっくりゆっくりペースで、ちょっとイライラするほど。その上で、今のペースではあなたは夜の8時までかかるとかオソロシイことを言う。何回か「ペースを上げてください」とも頼んだが、長丁場だからか、なかなかペースを上げず、そうこうしているうちに足は痛みでいささか悩ましい。途中彼が下界と連絡を取り、この地域を担当しているYツアーの担当が初日に預けた荷物(風呂用)を引取り、山を上がって迎えに来てくれるということで、皆々ホ…。下りゴールまで1時間というところで彼に出会い若い人々は早々に下りて行き、私はKM氏と二人でゆっくり下山ということになるが、ここからが足が痛くて(でも痛いとは言えない)大変だった。それでもひいひいと心の中で呻きつつ、山道、林道と辿って、皆さんがタクシーを待っている場所まで、予定の15時半にはたどり着いたので上等というべきだろうと思う。その後はタクシーで「こまくさの湯」へ。大急ぎだったが温泉で汗を流して17時40分の高速バスで新宿へ一路帰京。

空木岳頂上/一峰の前に立つのはKさん(ライン交換もして下さった)/山標の向こうに朝日?

下りてきた空木岳方面/駒峰ヒュッテ/あとはひたすら下る下る

木の根の絡まる岩場を下りて/下山2時間目くらいに水場(豊かに冷水があふれる!)に到着



【7月の映画日記】

わたしの聖なるインド ②雲と大地のはざまで ③山の焚火  ④マーティ・シュプリーム世界をつかめ  ⑤蒸発  ⑥緑の山  ⑦海辺の一日   ユースフル・ゴースト ⑨帰ってきたドラゴン      ➉シンシン アンド ザ マウス SINSIN AND THE MOUSE  ⑪フォー・トレイルズ
今夜は帰らない    ⑬宵闇の火花 トロフィー   ⑮夢物語The Living Dragon ⑯新凱旋門物語

中国語圏映画 ⑦⑨➉⑪⑫⑬ ⑫⑬は台湾映画上映会作品
日本映画 ⑤➉⑭
その他のアジア映画 ①
下線はドキュメンタリー作品①⑤⑥⑪

★はナルホド! ★★はいいね! ★★★は是非ともおススメ!(月1~2本にしています)という、あくまでも個人的感想です。
なお、本文中の赤字部分はその映画の関連作品などを掲載したページへのリンクとなっています。



⑯新凱旋門物語
監督:ステファン・ドゥムースティエ 出演:クレス・バング  シセ・バベット・クヌッセン  スワン・アルロー グザビエ・ドラン ミシェル・フォー 2025フランス・デンマーク(仏語・デンマーク語)106分 ★

1983年フランス革命200年を祝う当時の大統領ミッテランの呼びかけにより国際コンペが行われ、デンマークの建築家ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセンの作品が選ばれた。後に完成したグランだルシュ(パリ第三の凱旋門)の原型であるキューブと呼ばれた建物。この建築をめぐりあくまでも自身の作品のアート性を追求し妥協を許さないスプレッケルセン(とその妻)、彼とミッテランとをつなぐ形でコストとアートのはざまに立って奔走する官僚シュビロン(これがグサビエ・ドランで、今までに見たことがない役柄のように思うが、こういうフツウのというか役人役もできるのね…と感動)、そしてフランスでは孤立しがちなスプレッケルセンを支え、最後にはこのプロジェクトを放り出してデンマークに帰ってしまう彼のあとを継いで建物を完成させるフランス人建築家ポール・アンドリューの3人を中心に、この凱旋門完成までのなかなかに苦しい道を描く。基本的には台詞の応酬?みたいな感じで話しは進むが、裏側に常にこの大きなキューブの影が張り付いている感じで、例えばその建物の表面に貼る大理石の品質に強くこだわる建築家と、そこまで美を追求せずともコストの面で可能な追及をしようとするフランス政府側との攻防はすごくわかりやすくて、別にすごく面白いわけではないが、なるほどな、と思わせる。最後完成した建物を見に来てフランスの路上で倒れるスプレッケルセンと、雨の中濡れながらパリの墓地で彼の墓を探し歩くアンドリューとシュビロンが哀しい。(7月29日 新宿武蔵野館 152)


⑮夢物語The Living Dragon
監督:坂本浩一 下村勇二 谷垣健治 出演:倉田保昭 武田梨奈 加藤雅也 高岩成二 谷口布実 サモハン 2026日本(日本語 広東語)78分 ★★

⑨で予告されていた80歳、倉田保昭が製作総指揮、主演した、ブルース・リーはじめ香港アクション・カンフースターへのいわば友愛とオマージュをささげたという態の、倉田にとっては多分集大成ということになるのだろう一片。3部構成(風・水・火)になっていてそれぞれ題名もついている(
「追躡」「ハート・オブ・ドラゴン 龍的心」「不思議の国のドラゴン」)オムニバス映画。監督は倉田アクションクラブ出身でそれぞれ映画界で活躍する3人。最初と最後は倉田扮する田中平蔵という老俳優の「現代」~「過去」につながる白昼夢?的世界が描かれ、真ん中はカンフー映画好きのOLに扮した武田梨奈が謎の男カトウに励まされるというか叱咤されながら老名優クラタと戦うというもので、話は3編とも割と単純だけれどそのほとんどをさまざまに若者と戦う倉田のアクションを見せるという感じで。見た目白髪しわだらけで、演技か素か闘うとハアハア息を切らせるふうもあってちょっとハラハラするのだが、蹴り上げる足の高さはハンパなく姿勢はすっきりだし、なるほどね、今見せておかなくちゃね!というところか。なお、谷垣が演出する3本目は、田中平蔵が日本の真昼の喫茶店から香港の1973年7月20日(ブルース・リーの命日)にタイムスリップし、ブルースに現代の田中が服用している心臓病の薬を届けようと走り回る話で、田中(倉田)以外はすべて広東語話者(ま、アクションの相手などは日本人もいる)、サモハンのワンシーン、倉田との立ちまわりもあり、結局ブルースには合えず傷だらけになった田中の前には若きジャッキー・チェンも現れるというわけで、この香港の50年を彷彿とさせるような、意外に大きな物語になっている。たった73分で倉田中心とはいえいろいろな要素を詰め込んでいるように見えて、倉田(田中)の「夢」でうまくまとめて、楽しみつつちょっと懐かしさや切なさも覚えるじかんであった。2週間限定上映がもう終わるというところで急いで見に行ったのだが、午前一番10時からの平日、館内は男性9.5割のけっこう満席で驚く。(7月29日 新宿武蔵野館 151)

⑭トロフィー
監督・脚本:孫明雅 出演:恒那 梨里花 原田花埜 井浦新 市川実和子 ちすん 笠松将 2026日本(日本語・ハングル)103分 ★

分福で是枝裕和監督や西川美和監督の映画に参加してきたという若い在日朝鮮三世の初監督作品。日常生活ー特に中学生の女子の日常をあまりドラマティックというのではなく、丁寧に描いているの、映画の長さのわりには長さを感じさせ少し冗長かなと思わないでもないーそれなのにというかそれゆえにか、例えば主人公の少女ソヒの父や母の言いたいことは多々あろうに抑えて言葉でではなく表現するような描き方ーなんだが、そういう意味では父役の井浦新は今回はなんかヘタ?だなという感じもある。中に何かあるのだが無表情というのはうまいのだけれど、この映画では思春期と小学生二人の父親ということで、やはり感情を出さずにはいられないが、それがちょっと類型的な感じもするのだ。
映画としては、朝鮮学校に在籍する在日四世の少女の、朝鮮舞踊(北朝鮮)、父(朝鮮学校校長―補助も打ち切られ貧しい)と、K-POPへの押し活、一緒にそれをする日本人少女(ソヒが「韓国語」をしゃべれることをとてもうらやましがる)、済州島出身である両親(父は北、母は韓国籍という設定らしい。したがって?母は父ほどには朝鮮学校的?北朝鮮的価値は信じていない感じ)、そして少女がアイドルのライブに行きたくてメルカリで売ってしまう父の勲章は結局一家の洗濯機に変わるという皮肉などなど、すごくドラマティックにではなく、ありえそうなさりげなさで描かれて、少女が舞踊の中でアイデンティティを確立?していくっていうのは、ウーン、なるほど!という映画である。公開2週間を超え、ようやく見ることができた。(7月28日 テアトル新宿 150)

 

⑬宵闇の火花(愛作歹)
監督:朱平 出演黃冠智 施名帥 范瑞君 鄭志偉 2024台湾(台湾語)78分

        

1週間ぶりの台湾映画上映会は、慶応大学三田キャンパス。40度近い熱暑の中で筋肉痛と神経痛を抱えてエッチラオッチラ(行きは目黒からバスで。帰りは田町まで歩いて…)。会場は満席(でもなかったがチケットはあっという間に売り切れになっていた。ちなみにこの映画会実はありがたい無料鑑賞)で、映画は黒社会の下っ端として生きるプアは刑務所で関係ができた兄貴分の出所を喜ぶが、兄貴分のミジーは一緒にムショにいたときとはうって変わり、プアに冷たい。前半はプアのどうして?どうして?という感じの心の動きが極めて繊細に演じられ、役者の没入ゆえの長回し(と後のトークで監督が言っていた)の静かで(ガシャガシャ音楽などが入らないという意味、プアと母の住む家の前をTRMが轟音を立てて走るなどと言う音はある)ゆえに、申し訳なし、何か所か眠ったみたい。肝心のミジーからプアへのキスシーンとかその後の二人が犯罪にかかわっていく?場面あたりは記憶なく、しかしこの映画、そういう事件より、やはりプアの心の動きや母の心配しつつ占いをする女性として息子の未来をも受け入れなくてはならないという諦念のようなものが見どころではあるのだと思う。陰影のくっきりした暗い夜や、プアが友人と働く果物市場とか、葬儀の場面とか、明暗がはっきりして美しい画面も心に残る。プアの母が息子に毎日(100日といったか?)食べさせる豚足麺は刑務所帰りが食べるものとか(韓国では豆腐だったよね…)、プアは瓜の一種で大きいけれど役立たず?ぽいヤツのこととか。そして彼は刑務所に入る兄貴分を追って自ら出頭、刑務所に入るが(この場面から映画がはじまる)、もちろん同じ房に兄貴分はいなくて、むなしく過ごしている場面から…。なお現代の「愛作歹」は「愛が悪を作る」という感じ?かな…。これが何故「宵闇の火花」になるのかはウーン。あまりわからない。
終映後は監督登壇、キュレーターのリム・カーワイ氏、この映画の字幕も作った慶応大の吉川龍生氏、それに通訳も並んで賑やかなトークイベントが1時間。(7月25日 台湾映画上映会 慶応義塾大学三田キャンパス北館 149)

監督は右端の青年



⑫今夜は帰らない(今天不回家)
監督:白景瑞 出演:甄珍(ジェン・チェン) 武家麟 韓甦 雷鳴 柯俊雄 1969台湾(国語)104分




中央大学多摩キャンパスで行われた台湾映画上映会に参加。60年代の台北のアパート(というか当時としてはわりと高級なマンション風?少なくとも日本に60年代の公団住宅アパートという雰囲気ではない)に住む3家族。受験浪人中の若い女性と宗教狂い?で娘を拘束しようとする父、夫の高雄出張を見送る若い妻、そして4人の幼子の大騒ぎに翻弄される夫婦(夫は10年仕事に没頭の経理係)と田舎から来て滞在しながら孫の面倒をみる妻の両親の一家。この3組、父の心配をよそに友人宅を訪ねた娘はそこで出会った友人の叔父に誘惑され、高雄出張と妻に嘘をついた夫はアメリカ帰りの友人と不倫の道に踏み込みそうになり、そして経理の夫は10年間で初めて出会った女性とホテルに行き、身ぐるみはがされる…この3人が一夜のダンスホールやホテルで絡み合い、すったもんだのあげくに…まあ、最後は元のさやに納まりハッピーエンド、みたいな。男は女を誘惑し、また妻の眼を盗んで他の女性と付き合おうとし、女は嫉妬して夫を探るみたいな、ウーン、50年以上前とはいえ、なんか物語としてはとっても好きにはなれないし、女性役者の声のキンキラな高い笑い声とか、男たちの助平ったらしいオジサンぽさ悪ぶって悪女に翻弄されるとか、全然楽しめないが、イタリア帰りのこの監督の狙いは、そういうところにあるというよりは、画面の色彩の鮮やかさとか、360度回転するカメラアングルとか、画面転換の目まぐるしさとか、主要人物にフォーカスを合わせ周りをぼかすー広い撮影スタジオが必要なのだとかーとして作られたオシャレでテンポのよいビジュアルや音楽を楽しませる?狙いがあるというんが、上映後1時間近くにわたって行われたこの上映会キュレーターのリムカーワイ氏と東京芸大名誉教授・映画監督の筒井武文氏のトークセッションで得られたこの映画の見方だった。 そういえば、同じ住宅に住む参加族のゴタゴタというところは『おはよう』(1959小津安二郎)なんかを思わせるところもあり、上海映画やその映画人が移転して作られた香港映画のかるみや洗練を思わせるところもあるかななどとも思った。会場は大きな教室満席に近く、やたらと詳しそうな観客もいて、へー。(7月18日 台湾映画上映会 中央大学多摩キャンパス 148)

リム・カーワイ氏+筒井武文氏



⑪フォー・トレイルズ(香港四徑大歩走)
監督:ロビン・リー 2024香港(英語・広東語) 108分 

この映画、実は私としてはチェックしたことはあったのだが、すっかり忘れていて、➉をみた映画館で引き続き上映されることを知り、急遽チケット購入(ちょうど当日はレディス・デイで950円!観客はほとんど女性)して2本目鑑賞となった。
香港島および香港外環?というか市街を囲んで4ルート、合計約300㎞におよぶトレランコースがある、それを連続して72時間以内で走るというのが、この「フォー・トレイルズ・ウルトラチャレンジ」トレイル間をつなぐ市街だけはサポート1名、ドライバー1名がついて車にのって移動することが許されているが、その他の途中のサポートはいっさいなし、トレイルの中には山道だけではなくて市街地の舗装道路もけっこう含まれ(香港だからね…)、出場者はコンビニなどで自分で食料や水を調達しながら走らなくてはならない。ポール(ストック)も携帯プレイヤーやイヤホン、腕時計、鎮痛剤の持参も禁止だそうで、なんともストイックというか過酷なレースであることが映画でも強調される。映画はこのルートを走る18人の参加者や主催者の断片的なインタビューと走る姿とかで綴られる。何といってもすごいのは空から俯瞰したトレランルートの山々の算用というかルートとその向こうに見える香港市街や海の景色で、トレランとはいかないけれど、是非ともこの山々をハイキングとして歩いて見たいなあ、特に香港島内の50㎞には現実的にあこがれてしまう。で、映画そのものはランナーたちの動機やこのトレランにかける気持ちとかの語りとかなんだけれど、意外に散発的というかアタリマエというか、走る姿もつらい、苦しいという場面が繰り返される感じで、日本のBSなどでもよくやるトレランとか山歩き系番組の描き方の上手さを今更ながらに感じさせられた気がする。カメラがランナーとともに走るのが市街地場面だけだからかもしれない。
香港では観客15万人を動員するサプライズヒットを記録し、2025年・第43回香港電影金像奨で最優秀新人監督賞、第22回香港アジア映画祭で観客賞など数々の賞を受賞した、というのだが…。(7月17日 シネスイッチ銀座147)

➉シンシン アンド ザ マウス SINSIN AND THE MOUSE
監督:真壁幸紀  出演:岸井ゆきの 曾静華 藤原季節 中田青渚 柄本時生 余貴美子
2026日本 108分

制作陣には台湾人や協力した台湾行政?などの名も入っているが、映画com.によれば、日本映画。で、主演の曾静華も一部買物のシーンなどを除いては全面日本語に挑戦していて、奮闘はなかなかなんだとは思うが、ウーン、母台湾人、父日本人、通常は父と暮らすもときに来台、母は有名女優で、あまり一緒に過ごすことはなく、台湾も日本も自分の居場所とは思えないというような青年の日本語としては、やはりちょっと無理があるかな…下手な日本語を頭の中で流暢ものに翻訳することを観客に求めているならば、それもちょっと無理がありそうな現代台北の風景や風俗の中に描かれた(あまりリアリティがあるとは言えないが)現代人の心象を描くにはやはり、ちょっと無理がありそうな…、ってこれは吉本ばななの原作小説によるもので、私も昔はよく読んでいたが最近は吉本小説にはすっかりご無沙汰でこの原作も未読。だが吉本小説って、昔から一見映画になりそうで、しかし良作は生まれにくいというのが『キッチン』のころから感じていたことのように思う。多分心象と台詞の距離が微妙を目指して微妙に遠く、さらに今回シンシンの場合には外国語までからみ、役者にとってもすごく演じにくい作品というか効果を上げにくい作品のような気がする。その意味で、今回曾静華も岸井も大健闘なのだとは思うが、その割に心に響いてくるような作品にはしあがらず、むしろ思わせぶりなところばかりが感じられ、見るのはいささか疲れた作品。台湾の景色も結局日本人観光客がちらりと見た台北の上っ面?ぽい景色(まあ、それは作品の狙い通りなんだろうが)ばかりだしね…。なお、中国語(台湾語)部分も少しはあるのだが,歌詞も含めその部分にはほぼ字幕がない、というのも要は日本人観光客の視点でえがかれているということなんだろう。あと、もう一つ主人公ちづみと彼女が介護して病で亡くなる母の関係もなんかどう見ても共依存という感じでウーン(これは吉本原作の問題かもしれないが)(7月17日 シネスイッチ銀座146) 


⑨帰ってきたドラゴン神龍小虎闖江湖)
監督:呉思遠 出演:ブルース・リャン 倉田保昭 黄韻詩 マン・ホイ ハン・クォーッアイ ディーン・セキ(石天) 1974香港 99分

実はこんな上映会があるとは知らず、出かけてから武蔵野館のサイトを検索していて見つけ、特別上映にもかかわらず料金は普通だし、急遽見ることを決める。夕方6時半からの武蔵野館1は8割5分の入りというところか。とにかく99分間のうち90分くらいはカンフー・アクションの連続で、ドラゴン(と弟子になった若者二人。これがコメディカルで狂言回し)・イーグル(女性)・ブラックジャガー(倉田)の3人が大きな真珠(テニスボールくらいの6個組)の争奪に闘うというわけで話はまあ、ともかく、当時ワイヤーもない地面にマットも敷かずハードな壁登りとか屋根からぶら下がるとかも含め、もろもろのとんだり跳ねたりを見せるという、そのエネルギーにただただ感服。2人の少年?の身軽さと、ディーン・セキ演じる宿屋の使用人の喜劇的演技がまあ、このアクション満載映画を引き締めているのかなと思える。実はすぐに公開される80歳の倉田保昭主演の『夢物語』のプロモーション上映で、終映後には倉田が歌う主題歌のビデオが流され、彼自身が登壇してブルース・リャンとの交流やかつてのドラゴンの映画作りなどについて語ったのも興味深かった。それにしてもこの映画の出演者も多くはすでに鬼籍に入っているのがウーン。(7月16日 新宿武蔵野館特別上映 145)

『夢物語』のポスターとともにポーズを決める倉田保昭氏



➇ユースフル・ゴースト
監督:ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク 出演:ダビカ・ホーン ウィットサルート・ヒンマラート アパシリ・ニティポン、ワンロップ・ルンカムチャット、ウィサルット・ホームフアン 2025年タイ・フランス・シンガポール・ドイツタイ語、英語、イサーン語) 130分

亡くなった妻が幽霊となって掃除機に憑依する?なんていうとわりとコメディタッチの映画かと思いきや、どうしてどうして環境問題から労働問題、さらにクイアの存在と愛に関する「哲学的」な会話ーこの幽霊譚自体が、「アカデミック・レディボーイ(セリフ字幕は女ことば)」を名乗るゲイの学者が手に入れた掃除機(不思議にもすぐに壊れる)と現れた謎の修理工との間で交わされる会話の中で物語られる寓話ということになっている―そして動く赤い掃除機や、それが変身する亡霊の妻(青のバカでかい硬そうな肩パット?の衣裳で家電らしさ?を出している)や、その妻を受け容れない夫の家族、夫の母の後ろに5人の高齢男女が黙ってもしくは叫びながら整列してひかえる)のアクションも目を引くが、登場する人物はみなけっこう直立不動という感じで立ったままでセリフで語るという、とーても見たことのないようなある種演劇的な要素もあるんかな?というような重い、静かな映画。映画の中の現代社会ではPCは旧式だし、スマホはいっさい出てこない、一方で除霊のための電気ショックを与える部屋の超未来的な、尖った針のような突起が並ぶ真っ白というか銀色の部屋とかSF映画的な要素も含み、これってタイ社会の複雑さでもあるのだろう。あと、ハードなセックスシーンも。一方美しい景色(霞んだ色合い)の抒情的な場面もありで、もう若い(これが第一作という)監督の意欲みなぎる長尺130分。面白いのだけれど意外に長くも感じてしまう。「夫」の存在感が極めて低いのも象徴的?(7月16日 新宿武蔵野館 144)

⑦海辺の一日(海灘的一天)4Kレストア
監督:エドワード・ヤン(楊德昌) 出演:シルビア・チャン(張 艾嘉) 胡茵夢 デビッド・マオ(毛學維) 梅芳 1983台湾 167分 ★★★

めずらしく学会発表準備、映画本の校正とデスクワークに、このところ悩んでいる神経痛の痛みも重なって、1週間ぶりの映画鑑賞は、ようやく公開された幻?の名作というか、2006年59歳で亡くなったエドワード・ヤンが26歳?で作った長編第1作。今まで40年日本公開がなく、今回が初公開、台湾ニューシネマの代表作というか始まり?の一作ともいうべき、名前だけは昔から知っていた『海辺の一日』。
さすが…だわ!のちの『台北ストーリー』にも『ヤンヤン夏の思い出』④にも『牯嶺街少年殺人事件』にも盛り込まれたテーマ?伝統や因習の残る中での自由を求める女と男をしっかり描いて、わーお。26歳の男の子が描いた(脚本は彼と呉念真なので、やっぱり当時は若い男の子?だったはず)独立して自由を求める女と因習や社会の中でからめとられて女を縛ったり、籠に閉じ込めるような男の生き方が、なんでこんなにリアリティがありかつ、ミステリアスにも描けるんだろうと、しばし椅子に張り付いたようになってしまう。『台北ストーリー』や『カップルズ』のようにわからん奴はわからなくても仕方がない、みたいなアートっぽさがなくて、ただしクリストファー・ドイルのこれも初作品?(王家衛の彼とは全然違う)はさすがのアートっぽい構図の連続で、目を引かれつつ少し作り込み過ぎではないかという気もしなくはないが、分かりやすくかつミステリアス。シルビア・チャンは当時30歳くらいだったはずだが、高校生のおかっぱ頭の制服姿から、大学生、卒業後、そして気持ちも不安定に悩む結婚生活時代、さらに兄の恋人だったピアニストのウェイチンとの大人の女としての対面まで、髪型を変えて演じ切り、最後は昔の映画の常識?画面の奥にさっそうと去っていくまで、可愛くもあり、ある時は不安定でもあり不安でもあり、最後は自分のまだまだ茨の道そうな世界にいなくなった夫を顧みず?歩き去る格好良さ。母親役の梅芳も、娘に問われて「夫は「子供」なのだ」という因習に耐える女のふてぶてしさ?みたいなものも…格好良く?印象に残る。それにしても(露骨にも)男はみんな消えていく…という映画!(7月12日 シネマート新宿 143)

⑥緑の山
監督:フレデリック・M・ムーラー 1990スイス 128分 ★




スイスの山岳地帯に持ち上がった放射性廃棄物処理場の話、山一つをくりぬいてその中に廃棄物を詰め込むというような図示された計画も含め提示され、推進しようとする関係者、反対する学者、そしてその地に住む村人も、やむないとして計画を受け容れる人、生活や自然を守るためには受け入れられないとする人々の語りがつなぎ合わされ、間にその地に暮らす家族の記念写真風(これは『『我ら山人たち』⑮』と同じ)、牧場で草をはむ牛や羊たち、そして大きく顔が映された大勢の子供たち一人一人が印象深く、賛成派も出てくるものの、もちろんこの話が子どもたちの未来にとってどんな危険な話かということが訴えられてくる。
映画の最後に監督自ら?が顔を出し、チョルノブリー事故以後自分は3つの棺を用意することになったというようなナレーションとともに棺のような鉛の?箱が映し出された。これって『マウンテン・トリロジー』の3作(『我ら山人たち』『山の焚火』③と本作)のことだろうか。なんとも強い意志の感じられる長い長い映画。(7月5日 渋谷ユーロスペース マウンテン・トリロジー142)


⑤蒸発
監督:アンドレアス・ハートマン 森あらた 2024ドイツ・日本 86分

日本では毎年8万人が失踪し、そのうち数千人は完全に姿を消してしまうという。この映画はそうして失踪し家族の元には戻っていない人々、逆に子供が失踪してしまい、探している母親―彼女の捜索を請け負う私立探偵?、また失踪しようとする人を助ける「夜逃げ屋」(この人たちも元失踪者であることもあるらしい)などなどを描いたドキュメンタリー。何よりもなかなか撮るのが難しかっただろうなあとか、特に元失踪者なんてどうやって探したのかしらんとか、そんな興味が先に立ってしまう。さすが今の映画で、家族とか知り合いに顔を見せたくない人についてはAIディープフェイクという技術で顔や声を作っているというのだが、横顔にぼかしがかかった人が振り向くとくっきり顔(実写よりもずっと)に変わり、普通に笑ったり、話したり…その声も実は本人の話し方そのままに本人とは変えてあると聞くと、ウーン。映画とは演技とは????とそんな感慨というか感想も持ってしまう。内容的には親の過保護から逃げ出し、親の元に帰る気も会う気もないという若い人の話に、んん?私も自分の子供たちと1年に1度?くらいしか会わないけれど、行方こそお互い知ってはいても、子どもの心の中にはやはり親へのうざさとかの感情があるのかな?とわが身が追われるように親の家を出たあの昔も思い出し…映画を見ながらそんな感慨にもふける。(7月3日 下高井戸シネマ141)


 ④マーティ・シュプリーム世界をつかめ
監督:ジョシュ・サフディ 出演:ティモシー・シャラメ グウィネス・バルトロウ オデッサ・アザイオン ケビン・オレアリー タイラー・オコンマ 川口功人 2025アメリカ149分

これも昨年東京国際映画祭時、マークはしたのだが、多分都内上映最終日、ようやく見る。話は1952年アメリカではマイナースポーツだった(らしい)卓球にとてつもなく能力を発揮する、しかし性格的というか、実生活的にはトンデモ野郎とでもいうべきマーティ・シュプリームが東京で開かれる国際選手権に参加しようと悪戦(まさに)苦闘をする話で、なんといっても今まで美青年のイメージだったティモシー・シャラメが口髭つきの胡散臭そうなオジサンでいながらまあ軽快な若さもあるというか行き当たりばったりに若気の過ちに走る節もあるという男を演じ、最後には「父親」の顔まで見せて新境地というところだろうか。この映画で彼はアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞はミュージカル・コメディ部門!の主演男優賞を受賞している。話は…ウーン、ま、ちっと回りくどいというか行き当たりばったりにいろんなことが起きてその場しのぎで主人公が対応していくから疲れるが、芯にあるのは不倫の恋の相手レイチェルの妊娠からひたすら逃げていたマーティが、東京でのミッション+αを終えて、選手権への出場はかなわないのだが、まあそれに見合う成功?をおさめ、出産して入院中のレイチェルを訪ね「父親」になるという人生の選び方をするまでというところだろうか。あまり深刻になる必要はない映画だと思うが、そういう芯によって語りの力を得ているのだとは思われる。なお、この物語実話ベースであるとのこと。また日本人卓球チャンピオンを演じているのはデフリンピックで3位入賞の実際の卓球選手。と、みると特殊撮影とかももちろんしているのだろうが(実際の卓球試合よりも球の軌跡がよく見えるし)ちゃんと戦っているふうを見せるティモシー、すごい!下高井戸シネマでの招待券鑑賞。(7月3日 下高井戸シネマ140)

③山の焚火(Höhenfeuer)
監督:フレディ・M・ムーラー 出演:トーマス・ノック ヨハンナ・リーア ロルフ・イリック ドロテア・モリッツ 1985スイス 120分 ★

先月末、『我ら山人たち』⑮を見た「マウンテン・トリロジー」の中心的な作品。ロカルノ映画祭で金豹賞(グランプリ)を獲り、日本でも86年、2000年代初頭とすでに二度にわたって上映されていたらしいが…。こちらもアルプス3000m?級の山地で暮らす、もともと「怒りん坊」というニックネームを持った4人家族の閉塞的な生活から生まれた寓話?的な物語。実際に怒りを胸にいつも秘めている感じの父、聾唖の息子を生んで以来?鬱っぽい症状も出る、優しいけれど病弱な母、生まれつき耳が聞こえなかったことが3歳になるまでわからなかったという弟は父を手伝い家畜の世話をするが、時に聞こえないことにいら立ち、父や姉のトランジスタラジオを水に放り込むというような行動にも出る。思春期の彼は母や姉からは「坊や」と呼ばれて特別な存在?でもある。その彼を支え、勉強を教え、また父や母との仲立ち?もし、父が毎日叫ぶ「ベッリ!」という呼び声に応えて駆け回る姉は、教師になる夢があったらしいが「下」の学校を中退している。一家の付き合いは遠い谷あいにあって双眼鏡で互いの存在をたしかめ連絡を取り合う祖父母だけである。ただ、父は時に息子もつれ、下の街に買出しに行き、子どもたちに化粧品を買ったり、息子に菓子を買ったりという場面もあり、少しホッとする感じ。思春期で心の動揺がおさまらない息子に父は石を切り出し積み重ねて石垣を作って畑にすることを教え、息子は石積み作業に夢中になる。また父が息子に草刈り機を使わせるが、これが故障。息子は苛立って草刈り機を崖下に投げ捨て、これが父の怒りを買ったため、家出をして山の家(放牧のための?)に寝泊まりする。そこに食料などを持った姉が訪ねて行き、2人は焚火を囲んで一夜(とは限らないか)を過ごす。これが題名の由来?そしてやがて弟は山を下り、もとの暮しが戻るが姉は妊娠している…意外に淡々と元の暮しが続いて寒い冬の閉じ込められたあと、姉娘は母に妊娠を打ち明け、母は気づいていたことを言って娘を受け容れ、父(夫)にもそのことを話そうとするが…父は許さず猟銃を持ち出し妻と娘を撃とうとする。と、ここからは極めて衝撃的な、山の村の閉鎖性の象徴のような、閉塞的な、つらいのだが雪景色の中では弟の父母に対する思いが凝縮するようなという終わりの数時間になだれ込むわけだ。普通の淡々部分中心の『我ら山人たち』の中の一家の物語という感じだが、劇映画になれば、これは見ごたえがあり、楽しいという感じではないが、弟も姉もなかなか魅力的でもあり、2時間を長くは感じなかった。(7月1日
渋谷ユーロスペース マウンテン・トリコロジー139)


②雲と大地のはざまで(Raíz)
監督:フランコ・ガルシア・ベセラ 出演:アルベルト・メルマ  ネリー・ウアイタ リチャード・タイぺ 2024ペルー・チリ(ケチュア語) 83分 ★

このところ気になっているペルー映画の一作。ワイド場面いっぱいに広がるアンデスの雪山景色を堪能!というところか。物語は4000mを越えるアンデス山脈の高地で犬一匹と、アルパカのロナウドをおともにアルパカ放牧をする少年フェリシアーノ。学校はなぜか(貧しいからということだろう)閉校していて、映画途中で少年が学校に忍び込みサッカーボールを持ち出す場面がある。彼は折からワールドカップ・ロシア大会に出場しそうなペルーチームのサッカーに夢中で、ラジオの電波を探しながら実況中継を聞いている。ってことは2018年の物語ということだ。山の中でアルパカの毛を売っての暮しはなかなか貧困を抜け出せない状況もあり、近くに鉱山が開発されて目先のきく村人は放牧をやめ土地を売って、鉱山の仕事をして豊かな暮らしを始めているというところ。今後の開発と伝統的な暮らしを守りたい村人の間で「集会」が開かれる場面もペルーらしい。子どもゆえに、そういう村の問題の圏外に置かれつつもフェリシアーノの暮しにも影響はあるわけで、街まで一家や知人そろって出かけて(父はアルパカ毛の値段交渉、そして家族でサッカーのTV大画面観戦)の帰り、対立の中で(犯人は示されないが)村人のアルパカが殺される事件があったり、フェリシアーノの愛犬(比較的すぐに戻ってくる)とアルパカも行方不明に…。そして大人たちは鉱山に続く道路を封鎖して争議に…という中で、アルパカ探しのためにとり、そして成功した方法とは…なるほどというまとまり具合。映画は最後になってコカの葉が出てきたリ、村の呪術師?が出てきたリで、この映画の求めるところが見えてくる。原題「Raíz」はスペイン語で「根」「根源」という意味だそう。映画そのものはケチュア語で撮られている。(7月1日 渋谷ユーロスペース138)

①わたしの聖なるインド
監督・撮影・編集:ノウシーン・ハーン 2023インド(英語)74分 ★★★

この映画、『わが理想の国』⑬-9の題名で2023年山形のドキュメンタリー映画祭で既見だった。ただ、エンドロール?というか終わりには2025年に収監中の人の名とか、2024年に「市民権改正法」が成立してしまったことなども出てくるので、2023年時の日本上映作には手も入れてあるのだとは思われる。見ているこちらは、2023年時にはあまり思いもしなかったのだが、高市政権下、入国管理法の改定とか「国家情報会議」ースパイ防止法への動きが具体化している現在の情勢では、マイノリティや国を批判する人間が、このインドのムスリムと同じような状況におかれることもありうると思うと、とても他人事とは思えず、また、同じような状況に際してこのインドのムスリムや女性たちのように私たちは闘えるのだろうかなどなど思いつつ複雑な思いを持ちながらの鑑賞だった。ノウシーン・ハーンが自身のSMSを24年来の友人(両親が与党であるからだろうとする)にブロックされてしまったショックを、自身が宗教から距離を取り、友人たちもそういう彼女を真の彼女とみていたからだろうと分析していることばが強く印象に残る…(7月1日 渋谷ユーロスペース 137)






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