【勝手気ままに映画日記+山ある記】2025年11月 + 韓国最高峰漢拏山登頂記

韓国最高峰・漢拏山(1950m)上からのぞむ海と済州の街(11・10)

 

広い茶畑の向こうにそびえる左側が漢
きれいな円錐形で海からそびえているところは鳥海山みたいでした。(11・11)


【11月の山ある記】

㉚11月10日  韓国最高峰・拏山(ハンラ山) (今年30回目の登山です㉚)

済州市内HTグロスター出発(6時)➡登山口(86時45分)⇒城板ルート⇒ツツジ畑コントロールセンター⇒拏山山頂(1950m・11時50分)⇒観音寺ルート観音寺登山口(16時40分)➡レストラン夕食(この日は焼肉夕食)➡HTグロスター(8時)

9時間52分 18.8㎞ ↗1265m ↘1437m コース定数34(きつい?)平均ペース110- 130%やや速い。歩数は約34000歩くらいでした。

#韓国ing

拏山に行こうと思ったのは2019年コロナ前、5月の韓国第1峰の拏山(1950m)と2峰の智異山(チリ山・1915m)を登るツアーを見つけて申し込んでいたのだが、2月にスキーで大怪我、半年ほどは山にも登れない状態になり、やむなくキャンセルしたのだった。それから6年目、満を持してのリベンジ?登山は紅葉の季節にした。今回は今年は大分御世話になったYツアー。参加者11人。男性はうち2人。おかげで下山翌日の観光コースは「女性向き」だそう。添乗員は福岡支社からの男性SDさんと、海外旅行企画全般を担当しているという女性のSKさん。現地ガイドは日本居住経験もあるとかいう気さくでお喋りな、まあそういっては何だけどオジサンの朴さん。それに登山ガイドの二人、朴さん(男性)と全さん?(女性)下山の翌日観光コースにはこの方もなかなかユーモアセンスにあふれた女性姜さんというわけで、こちらの人数のわりにはなかなか行き届いた陣容である。ただし歩く前のツアーメンバーやガイドの顔合わせもなく、時間が来たら「さあ行きます」とばかりにガイドは歩きだし、メンバーは慌てて追いかけるという感じで、このあたりは日本の登山とも、今まで行った海外、キナバル・玉山・キリマンジャロとも違う。まあ国柄というよりもガイドの個性かもしれないが…。
拏山は遠景は日本でいうと鳥海山という感じ。山道というほどでもないタラタラした少し上り下りのあるような長い長いすそ野を歩き、最後にやや急こう配になるが、そのあたりからは、こちらはあたかも伯耆大山のように木段の架け橋を渡して頂上まで登っていくようになっている。韓国のガイドさんは普段の日本のガイドよりも少々ペースが早めで、それについてせっせと登るのが3~4人、あとは写真を撮ったり花をめでたりしているうちにどんどん置いていかれ、中ほどを歩く私などは前にも後にもツアーメンバーは誰もいない一人歩き状況に陥り、勝手に休むとますます置いて行かれそうだし、いや、いっそ一人歩きをしていいなら自分でペースを調節するのにと思いながら前を追ってセコセコ歩くのにはけっこう疲れる。中途の休憩でようやく前団に追いつくが後続最後が追いついたのはそれからさらに10分以上後、私たちが休んで寒くなるし出発しようというあたり。その後はSDさんに頼んで列の中間に入ってもらい、先頭グループはともかくとしてもできるだけ列が切れないように歩くことにして全体がある程度見えるようになりだいぶ楽になった。途中には2か所ほどトイレも立派なのがある広い避難小屋というか休憩所(コントロールセンター)があるが、その2か所目、ここから頂上山道というところで、待っても待っても全さんがこない。どうしたのかと思ったら途中で転んで足をねんざしたのだという。まあ~こんなこともあるのが山だと言えば山なんだけど…。それでもさすがはプロというか頑張り屋の全さん、ほんの10分くらいの遅れで全行程を歩ききり追いついてきたのにはビックリ。
天気は抜群だったが、意外に?温度は低くて風もあり、特に山の上は晴天ゆえに激しい風に吹き飛ばされそうな感じも。それと山の上になんとも大勢の「善男善女」の群れがいたのにもちょっと驚き。まあ、気持ちの良い登山日和のデモ、平日?なんだけど。
続きは「山の写真集」で…

●夜明けの登山口/歩き始める/道にはところどころ看板があってきわめてわかりやすい
●最初はこんな山道をどんどん登ってい行く
●途中の休憩所にはマユミの実がたわわに実った木が…
●途中噴火口への分岐看板には日本語も/もう一度登山口/そして大山風木段に
#ヤマカラ↓
●絶景の展望が開ける
●いよいよ頂上に到着/人がいっぱいの頂上だった
●頂上からカルデラを望む。実は向こう側の頂上の方が高いが現在は立ち入れない。
●寒いのだ!つららも…/お弁当タイム 今回は朝サンドイッチ、昼キムパップ(海苔巻き)が出たが、どちらもなかなか美味しくて、涼しくなったからか胃の不調も全くなくて、とても美味しく毎食食べることができた!
さらに下って、最後の休憩後、観音寺口の駐車場に無事到着!お疲れ様!

夕飯は済州特産の黒豚焼肉(ぶあつい!)




ついでに到着の初日は「ハタダ」(日本語みたい)という店でアワビとサバ(大きな)!

HTグロスターもなかなか豪華なホテルで、しかも絶景の角部屋に満足!
ホテルの部屋からの済州の街。一応遠くにではあるが海も見えるオーシャン・ビュウ


アフター登山観光(11・11)  ➡は専用バス移動 ⇒は歩いて移動

「女性向きの観光」というのは、ヨガ、足浴、ミカン狩りでのビタミンC補給と体をいたわり大切にする?という意味だったみたい。グルメ旅でもあって、この日はまた済州島名物黒豚焼肉(前日とはちょっと違う焼き方)、海鮮(さしみいっぱい!)と、翌12日帰国日の朝のビーガンレストランまで、美味しいものをいっぱい食べてマッコリや焼酎も楽しんだ3泊4日の満足旅だった。

済州市内HTグロスター出発(9時)
城山日出峰(10時15分 峰には登らず、周囲散策。ジェットボート遊覧をする予定だったが、これは強風波高く中止になった)

海の絶景と、海岸に咲き乱れるのはハマギク?
済州島は馬も名産、元寇の時にモンゴル兵が持ち込んだものだという。

チュイダサンリゾート(11時~12時 ヨガ体験45分)
さすが、自分のヨガ写真は撮れず。ヨガをやるなどと知らなかったからデニムで行ってしまったが、知っていたらヨガパンツとは言わないがもう少し動きやすい服装で行ったのにとちょっと心残り。だが山歩きの翌日のヨガはいいストレッチになり体は快適に!


➡昼食 (12時半~13時20分 焼肉レストラン。マッコリを半瓶(2000₩)

済州民俗村(13時半14時15分 古民家見学)
みんなで感銘を受けたトイレ!—排泄物は家畜が始末してくれるんだそう…
門前に渡した横棒は家人の留守、ちょっとそこまで、とかとかを表すらしい。済州には泥棒と乞食はいないのです、と自慢げなガイドさん(ま、それだけ貧しかったので助け合い社会になったのだとか)
門前には土産物?乾燥タラ?とかワラビとかを売るオバちゃん。一袋1万₩とか/コスモスもいっぱい咲いていた…

오늘은 녹차 한잔(14時20分~15時10分 オヌルン・ノッチャ・ハンジャン 今日は緑茶を一杯)で緑茶足浴 ⇒茶畑・洞窟写真撮影スポットなどを散策


茶畑の向こうにそびえるのは拏山
すすき、茶の花、それになにより沢山あったのはつわぶきの花。秋を感じます。
これが撮影スポットからのアート写真です #ヤマカラ



ミカン狩り(16時20分~50分)
弟さんのミカン園を切り盛りしているのは、日本人と結婚して中野在住50年というお姉さん。農繁期で一時帰国お手伝い中、明日は日本に帰ると言っていましたが、翌日帰りの飛行機に乗り込んだらなんと隣席に。帰り道中もご一緒したのでした。
ミカンは袋一杯取り放題食べ放題というのだけれど、毎食おなか一杯、明日は帰国、生ものは検疫を通過しないというわけで2個だけ(笑、実は初日夜ホテル内のセブンイレブンで買い物を手伝ってもらった方にも小さいけれど甘くておいしいミカンをたくさんいただいた。)。代わりにオレンジジュースをお土産に購入。


➡夕食(18時45分~19時半 海鮮レストラン 今回は焼酎「ハンラ山」5000₩)

バス車内から、沈む夕日、いよいよ旅も終わりに近づいて…


HTグロスター帰着(20時すぎ

オマケは最終日帰国前のビーガン朝食 店主はもともと在日韓国人の妻がカフェ、夫はヨガ教室?をやっているとかいう、おしゃれなカフェ901にて

ともかくもグルメ旅を堪能。このあと2時間半、ミカン園の彼女(なんと元大韓航空のグランドスタッフだったそう)と話したりしながら、珍しく窓際の席(大韓航空、ツアー旅行にもかかわらず自前でチェックインしなくてはならなかった。前日スマホでチェックインしたらすでにアイルシートは満席、窓側も2席しか空いてなくて、その最後に滑り込んだ)に座っての帰国でした。


㉛ 11月26日 高尾山(ソロ登山)

高尾山口駅(10:25)~稲荷路~高尾山(11:50)~もみじ台(12:10 昼食)~5号・3号路~病院道出口(14:10) 
3時間55分 7.6㎞ ↗605m↘536m コース定数14(普通)平均ペース130~150%(速い)[ヤマップ資料]
 
11月からようやく開通?した稲荷路を経て、文字通り紅葉のもみじ台まで。今年5回めの高尾山。家を9時半に出るという遅出だったし、久しぶりの単独行でもあり、無理せずのんびりの気分で歩く。紅葉の繁忙期?で、高尾山口の駅から清滝のケーブルカーまでは長蛇の列だったが、往復の登山路をすべて歩くという人はまあそんなに多くはなく、快適気分を味わえる。山頂の食堂もまた長蛇の列で、もみじ台まで行き、ほんとに真っ赤な紅葉(紅葉は10月くらいからけっこう見た年だったけれど、黄葉が多くて、ここまでの真っ赤な紅葉を見たのは今年初めてかも)に、満足の1日だった。山頂の見晴らし台の富士山には少し雲がかかっていたが、もみじ台まで行くと雲も晴れ、うれしい。ハイキングシューズ・ポールなしはちょっと足にきたが、まあ元気に、これも繁忙期料金の極楽温泉に入り、ビールを一杯飲んだ後、中央線経由で有楽町へ。東京フィルメックスの『東北短編集』(張耀元監督)を見て、それこそいっぱいいっぱい遊んだ映画祭中日だった。



【11月の映画日記】

①てっぺんの向こうにあなたがいる SPIRIT WORLD スピリットワールド ③ミーツ・ザ・ワールド④旅と日々⑤ひとつの机、ふたつの制服 ⑥サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー  ⑦音楽サロン ⑧季節はこのまま  ⑨見はらし世代 ⑩愛殺     ⑪女性の休日 ⑫旅人の必需品
⑬べ・ラ・ミ気になるあなた ⑭佐藤忠男、映画の旅 ⑮TOKYOタクシー   ⑯動くな、死ね、甦れ ⑰ひとりで生きる

中国語圏映画⑤➉⑬
日本映画①②③④⑭⑮
映画祭がらみもあって日本映画をよく見た11月でした。★はナルホド! ★★はイイね! ★★★はおススメ、是非見てね、のあくまでも個人的評価です。
文中赤字からは、該当番号の映画があるページに飛ぶことができます。


⑰ひとりで生きる
監督:ビターリ・カネフスキー 出演:パーべル・ナザーロフ ディナーラ・ドルカードラ エレーナ・ポポワ トシヒロ・ワタナベ  1991ロシア・フランス 100分

⑯の続編。前作から2年後のワレルカが、ひょんな悪ふざけ?から退学になり、ひとり家を出て旅に出るという話。スーチョンの町に抑留されている日本人兵士はヤマモトという名を持つ一人の男に集約されて、「荒城の月」など日本歌曲も含む、音楽はバラエティに富む感じ。2年前のガーリャの悲劇的な死のあと、彼はガーリャの妹ワーリャ(ガーリャと同じくディナーラ・ドルカードラが演じている。が、見かけは当然だがガーリャとまったく同じで、前作ガーリャの死は悲劇の必然だったとしても、ウーン??)を心の支えとしているが、ワーリャの手紙に返事を出すことはしない?前作と違い薄墨色に近くはあるが一応カラーで、15歳になったワレルカは3作の中では最も美少年ではあるが、前作のようなインパクトは感じられず、また
『ぼくら、20世紀の子供たち』①のような、ちがった意味での意欲作というのでもない、私の中では少し期待外れのような気も…。ただワレルカを退学にする校長の生徒へのセクハラ(というよりかレイプ)場面にはビックリ。女の子のお尻丸出しという場面、ワレルカの性器までむき出しの全裸場面もあり、ウーン、ダメだ、私の感覚には受け入れられないワ…(11月28日 下高井戸シネマ 298)


⑯動くな、死ね、甦れ
監督:ビターリ・カネフスキー 出演:パーべル・ナザーロフ ディナーラ・ドルカードラ エレーナ・ポポワ 1991 ソ連 モノクロ 105分 ★★

10月に見た『ぼくら、20世紀の子供たち』①に続く『カネロフスキー・トリロジー』の2本目、実は前回2017年の公開で見ているはずだが、ちょうど時間も合ったのでもう一度ということで見に行く。2人の主役、少年ワレルカと少女ガーリャ、それと少年の母などのイメージは鮮烈に残っていたのだが、後半特に物語が動き出し、少年と少女がスーチャンの町に帰るあたりから最後の悲劇・その後のガーリャの母の発狂などはなんか頭から飛んでいた感じでえええ?(逆に楽しめた?けれど)という感じでナサケない。カネフスキーはこの映画で54歳の新人監督賞受賞になったという。彼自身の少年期の記憶に基づいて描かれたといい、時は第2次大戦後のシベリヤの町が舞台で、そこには日本兵が抑留されていて、バックにはきれいな日本語の「五木の子守歌」「炭坑節」なんかが流れるのもなんか不思議な感じだが、とにかく貧しい、教育もいきわたらず、風紀も???、酔っ払いも横溢し、子どもたちは言ってみれば野放し状態という感じで、ソ連は戦勝国だったはずなのに…と???ワレルカは古典的な悪ガキという感じで、『ぼくら、』時代の青年の現代風に近いイメージとはかなりかけ離れていて、それは社会主義の貧しい戦勝国ソ連と、その国の解体後のロシアが相当にかけ離れた世界であることも示しているのかななどとも思える。
(11月27日 下高井戸シネマ 297)



⑮TOKYOタクシー
監督:山田洋次 出演:倍賞千恵子 木村拓哉 蒼井優 優華 迫田孝也 神野三鈴 イ・ジュニョン 中島瑠奈 笹野高史 2025日本 103分 ★

東京国際映画祭のセンターピースとして上映されたこの作品、『パリタクシー』⑯(2022クリスチャン・カリオン)が原作ということで、まあ、どうしても比較したくなる。映画本筋はほぼ同じで、生活的に不如意続きの中年タクシー運転手が、施設に入る老女を乗せて東京(パリ)を走り回りながら
老女は過去の人生を振り返って話し、互いに心を開き、運転手の人生は変わっていくという話だが…。老女の刑務所に入った過去の事件というのはほぼ同じような展開(しかし、「凶器」がパリはバーナー、TOKYO は熱湯というのが、ちょっとお国柄?刑はパリ25年で13年目の釈放、TOKYO 9年というのも…)ではある。その老女の人生、パリではナチスの侵攻による父の死、TOKYOでは東京大空襲による父の死から、パリはバックアップ?にきたアメリカ軍の兵士との恋愛、妊娠、別れ(こちらは探した相手が結婚して2人の子持ちになっていたという悲劇)、TOKYOは帰国事業で北朝鮮に帰ってしまった在日朝鮮人青年との恋(帰国後の彼の消息は不明)と、ナルホドね、さすがの山田洋次こう来るか!という感じではある。さらに暴力夫から守った子どもの死も、パリはベトナム従軍?カメラマンのとしての死、日本は中学生時代?のバイク事故ということで、まあ、国柄、社会に合わせたわけだが、それに伴って老女の年齢も、パリは2020年に93歳、TOKYO は25年?に84歳とかいう設定で、10年くらいの落差がある。パリを見た時気になったのは、そんな人生を送ってきた女性がいかにして売って相当にお金が残るような家に住み、高級施設?にはいれるのか?とか、老女の死に直面した運転手に公証人が遺産の存在を明かす過程があまりに安直?(墓地で偶然に会って、身分証明も何もなしに財産が譲与されるって?…とか)とかだったのだけれど、そのへんはTOKYOは意識されたのか、案外に納得のいくような描き方になっていて公証人=司法書士役(笹野高史)の比重が大きくなっている。老女は美しいネイルをしているが、息子を幼くして失ったからこそ、身一つでアメリカに渡りネイルを学んで店を出したというのも時代状況を考え合わせるとうまくできている気がする。あと、パリでは描かれなかった運転手の娘の進学問題というのもなるほど現代日本の問題でもあるし、そこで家族の比重がぐんと大きくなっているのは山田映画ならではだな…と思える。ただし、ちょっと気になったのは、今都民は私学の高校進学に際して授業料は無償になっているということだ。もちろん音大付属などと言えばレッスン料とかなんやかやお金がいることは確かだろうけれど、「授業料が」「授業料が」という連呼?セリフは小池都知事としてはムムムじゃないかな?それと妻の実家の信州の土地を売るっていう話も、田舎の売れる土地??いいなあ、うらやましいことと、売れない田舎の土地2つ、固定資産税だけがかかってくる状況を抱える(一つは自分がはらっているわけではないんだけれど)私としては、そんなに貧しいのかなあと、まあ日本の中産階級を描きたいのが山田映画とすればこんなものかもしれないが…なお、ビックリするほど美しく懐かしく撮れている東京・横浜各所の風景は、270度LEDスクリーンに映し出された光景とその中のタクシー(セット)で撮られているのだそう…。光のさし具合とかはその場でスタッフが調整しているのだそうで、フーン。映画がほんとに「人工」の産物なのね、という感も強く、感心もしつつ、ちょっと寂しい気も。(11月25日 府中TOHOシネマズ 295)


⑭佐藤忠男、映画の旅
監督:寺崎みずほ 出演:佐藤忠男 佐藤久子 秦早穂子 イム・グォンテク G・アラビンダン 2025日本 98分 ★★★

東京国際映画祭アジアの未来部門特別オープニング作品だったが、すでに劇場公開も決まっていたということで高い映画祭チケットを敬遠、ようやく見に行くことができた。映画は25歳の佐藤忠男の日記も含む、彼の映画に対する考え方、来し方や家族の様子も含む生活?を写真や、日本人のみならず、アジアの監督やプロデューサーなどの映画関係者が語る部分と、その佐藤がいちばん好き(普通の映画ファンには『東京物語』、映画をよく知っている人には『魔法使いのおじいさん』だそう)というインド映画を映しつつ、その関係者、出演者まで追ってインドを旅する作者(寺崎。日本映画学校の教え子とか)を描き、その配分が絶妙な、まさに映画好きがもっと映画知ることができる(って、まあ自分もその端くれと思っているわけだが)映画だった。
『魔法使いのおじいさん』(G・アラビダン 原題=Kummatty 1979インド)は調べてみたら2021年の東京フィルメックスで上映されたようだが、私はノーマークで残念ながら未見。今回映画の中に現れるシーンは村に現れた魔法使いのクマッティと呼ばれる老人と子供たちのからみだが、映像も美しく、佐藤が言うように素朴・無邪気にかなうものはない?というような映像みたい。是非レストア版とかでの公開をしてほしいもの。
佐藤忠男氏には2007、8年頃香港映画祭に通っていたころに、一度香港でお茶をごちそうになったことがある。書かれたものや、今回の映画の中の人々の語りでも、かなり厳しく断定的な物言いというか意見を言われる側面もあったようだし、彼をプロデュースした?妻久子さんはもっと厳しい方だったようでもあるが、香港でお会いした時の佐藤氏は確かお一人で、私のような素人駆け出しの映画ウォッチャーにも(だからこそかもしれないが)にこやかに映画の話をしてくださったのが印象に残っている。その後も映画祭などでよみうりホールの入り口階段付近のなどの入場待ちの列に並んでいるのも何回かお見かけして、こんな高齢・高名の方がこんなふうに一般の人に交じって映画を見るのかと驚いたことも…。晩年になってそういう形でお会いすることはなくなっていたが、映画の中の佐藤氏は妻を亡くし、車椅子に乗られ、そしてなくなる15日前姪の家に引き取られる老い衰えた姿まで映し出され、あんなにお元気ですらり矍鑠としていた方もやはり最期は来るのだと思うと、それは今回の映画のちょっとショックなというか、自分の行く末(もちろん佐藤氏とは比べるべくもないが)も考えてしまい、その中で例えば今の興味を問われて「書くことによって考えも疑問も明確になる」と最後まで書き続けていらっしゃったということばとか、本当に触発されることばもたくさん出てきて、今更にアジア映画を国境を越えたものとして世界に紹介し続けたその巨人振りに感銘を受ける(あと、一つ?25歳~の若き日のイケメンぶりもね…)。
映画後、寺崎監督と、元東京国際映画祭プログラミングディレクターの矢田部吉彦氏の対談トークあり。矢田部氏の質問はさすがで映画をみて観客が感じること(おもにインド映画部分)を聞いてくださったのもありがたかったし、また、ある映画祭での、第二次大戦中の出来事を描いた佳作について、審査員の一人として矢田部氏が呈した「この時代に加害のことが描かれない」ことへの疑問について他の審査員が反対する中、佐藤氏が「『二十四の瞳』と全然変わっていない」と端的に述べて賛意を示してくれたという話にこれも感銘を受ける。
人はパラパラという感じだが、とーってもいい映画の日、だった。(11月19日 新宿K’sシネマ 283)
 魔法使いのおじいさん(画像)/トーク後フォトセッションの寺崎監督と矢田部氏


⑬べ・ラ・ミ気になるあなた(漂亮朋友)
監督:耿軍  出演:徐剛 張志勇 薛寶鶴 2024フランス・ポルトガル 116分モノクロ・カラー ★

25年3月の大阪アジアン映画祭で『イケメン友だち』の題名で上映されたが未見だった。この映画、中国国内で撮影された中国語作品だが国内での検閲を通さず(当然に上映許可はでるわけもない?)台湾金馬奨に出品、主演男優賞(張志勇)、撮影賞、編集賞、観客賞の4冠を獲ったとも。で、要は同志間の「ロマンティクコメディ」(監督談)で、モーパッサンの『べラミ』が下敷きだそうだが、イケメン・べラミ(Bel Ami)は一人も?現れず、主人公の大餅屋徐剛は床屋の恋人にフラれ、太目の小男、ちょっとだけ斜視の気もある志勇は妻との間がうまくいかず、それぞれに男友達を求め、すったもんだのあげくに結ばれ、間に踏み込み自分も仲間に入れろと迫ってくるハゲ男は突然現れたUFOになぎ倒され、というかなり皮肉ぽっくもありシュールな印象もある展開ののちのまあ、ハッピーエンドという感じ。2人にからみ床屋に精子提供を持ちかけるレズビアンカップル(こちらは2人とも決して不美人ではないというか美人)が最後にカラー映像で結婚式というのもなかなか印象的におもしろい。この役者たちは黒竜江省の俳優で耿軍監督の映画の常連だそうだ。で、今まであまり知られていない人?たちなのかもしれないが、特に張志勇の独特な風貌はなんか中国映画で見た気がするんだけれど…そして女性二人も見た気がする人たちだった。映画はモノクロだが、この二人が最後に結婚写真を撮るシーンだけはきれいなカラー映像で、それもなんか対比的な幸せをかきたてる構造だ。監督は「中国のジム・ジャームッシュ」と言われているとか。
(11月18日 渋谷イメージ・フォーラム 282)

⑫旅人の必需品
監督:ホン・サンス 出演:イザベル・ユベール ハ・ソングク イ・ヘヨン クォン・ヘヒョ チュ・ユニ  2024韓国(英語・韓国語・フランス語)90分

ソウルで、フランス語の個人教師をしながら年下のボーイフレンドとともに住むフランス人中年女性のイリス。イザベル・ユペールが今までに見たことがないほどに軽やかな感じで可愛らしい。そのある半日の出来事をいわば淡々と描く。1つ目の科家庭教師はの生徒は若い女性、その仕事のあとで食堂でビビンパップとマッコリを飲んで、次の家に。今度は相手も中年女性でその夫も同席。授業は一軒目とまったく同じ段取りで進むのだが、散歩に出た夫婦とイリスは詩碑の前で日本で死んだ詩人尹東柱の詩について語る。やがて夫婦と別れ家に戻ったイリスは若い恋人にもらってきた月謝をわたし、夕飯にパンを焼いてと所望、彼は彼女にサラダ造りを頼む…そこへ突然やって来たのは恋人の母、イリスは家を出て公演へ。その後はなぜか?恋人と母の議論というか半ケンカ、そして母の帰宅後イリスを探しに出た彼はマッコリを飲んで眠り込んでいる彼女を見つける…とまあそんなふうな感じで、登場人物どうしの会話で話が進んでいくホン・サンス劇はここでも…。母と息子の会話は少々疲れないでもなかったが、おおむね軽みもあり、ホン・サンス世界としてはわかりやすい?ところもあって楽しめる。
(11月18日 渋谷ユーロスペース 281)

⑪女性の休日
監督:パメラ・ホーガン 出演:ビグディス・フィンボガドッティル グズルン・エルレンズドッティル  2024アイスランド・アメリカ(英語・アイスランド語)71分 ★★

期待して見て、期待通りという一作。1975年10月24日アイスランドの女性の90%が参加して行われた『デイ・オフ』という名(これも女性たちの意見の食い違いの場で「まとめる」ためにある女性から提案されたという過程が映画の中に出てくる)の実は「ストライキ」の過程や経験を当時の映像や、女性たちの状況や若い希望などを描くアニメーション映像も交えて参加した女性たち(皆多分70代後半~80代だが、なんとも格好いい!しゃべる英語がちょっと訛りはあるがきわめてわかりやすい=母語ではないから? のも親しみがあっていい)やその子供・孫?、この行動を先導したレッドストッキングという女性グループに参加した男性までのインタヴューで綴っている。ま、ほぼ同世代ということもあるのだろうが、当時の女性の置かれた状況(女は船長や法曹家にはなれない、女は農業組合に参加できない、もちろん同じ仕事をしていても男より低賃金とかとか)は日本も同じで、自分がそのような差別の中でバタバタしてーしかも女同士の連帯という意味でも、私などはワガママ女のたわごとみたいな言い方ではじかれることが多かった。70年代の日本では共働きは、夫の給料だけでは暮らせない女がするものと位置づけられ、自身のキャリアや生きがいを求めるなんて言うのはワガママとしか見ないフシもあり「健気に保育運動をする」女たちから仲間外れ的扱いをされたことも実はあったーところで一人で実践家?(連れ合いとの対等・協業、別姓とかに定住してしまったのかなーという、それしかしかたがなかったけど、そうしかできなかったことが、日本の現在やそこにある自分の位置を決めてしまったのかなという反省も、漢字ながらの少々苦みもある鑑賞だった。(11月17日 渋谷 シアター・イメージフォーラム 280)

⑩愛殺
監督:パトリック・タム(譚家明) 出演:ブリジット・リン(林青霞) 張國柱 秦祥林 許鞍華 1981香港 91分 ★

東京国際映画祭の作品だったが見損ない、東京フィルメックス・プレイベントとしての上映を見に行く。夜9時の上映にトーク付き!(トークは前半7分ほどM+という旧作映画修復についてのビデオ?のみ見る。『董夫人➉』とこの作品のみが紹介されていた)
このころのパトリック・タム作品と言えば『烈火青春』(1982)のトンデモ凄まじさだけれど、その1年前のこの作品も負けてはいない。張叔平による鮮烈な色合いの美術、時にものすごくおしゃれなカメラアングル、遠近自在という感じでひいたり近付いたりのカメラ、冒頭末尾は何処かわからぬ砂漠の風紋の丘を真っ赤なドレスで歩くヒロインの孤独…というわけで目を奪う映像の中に繰り広げられるのは、香港から遠く離れたサンフランシスコを舞台にサイコパスを愛してしまった女性と、香港にいる妻子を殺してまで彼女に執着する男。彼女を求め、隠したとして同じアパートメントの同宿女性たちを次々に殺し縛り上げ殺す…真っ白な上下の男(これが張國柱で、いまや張震の父という方が通りがよさそうな気もするが、まだ若い彼が眉毛脱色という感じで不気味イケメンを演じているのにはちょっとびっくり)の前身を覆う鮮血、最後屋上シーン、干してある青や白、赤のシーツの間で純白衣装の男女が対置し刃物が踊り、血まみれシーツにくるんだ男を抱き寄せる女ーという、まあとにかく展開はかなりご都合主義的ではあるが、目を奪うような色合いがおどろおどろしいトンデモ映画だわ…そして白・赤のドレス基調で、真っ赤なオープンカーを運転するブリジット・リンはなんとも格好良い。若きアン・ホイ監督が殺される食いしん坊の同宿女子を演じている。(11月15日 ヒューマントラスト有楽町 279)





⑨見はらし世代
監督:団塚唯我  出演:黒崎煌代 木竜麻生 遠藤憲一 井川遥 菊池亜希子 2025日本 115分

実はほとんど見たいとも思わなかったのだが、どうしても空いてしまった夕方5時~9時の4時間にすっぽりはまり夕飯も食べる時間があるというのがこの作品しかなく、しかし金曜夕方からの回が結構席が埋まっているのに驚く。そして見て、ウーン。20代の監督のデビュー作だそうだが、若い感性がこのようなものとすれば、やはり私にはもはやついて行けない老いが…と悩ましい。出だしは夫婦に小中学生くらいの姉弟の子ども二人連れが別荘?にやってくるところから。夫は一人車から荷物を出し子どもたちに「荷物を持て」と叫ぶが子どもたちは知らん顔。そして部屋に落ち着き、父は息子と庭でサッカー?するとそこに電話。夫は妻に「コンペに入選しそうで、打ち合わせに出かけなければならない」というと、妻は「いつもそうだ」と夫をなじる。そのギクシャクは、夫の仕事の成功さえ認めないという感じで、
相当妻には屈託があるのだとは思われるが、専業主婦の妻の依存性?さえ感じさせ違和感もある。で、次はすでに10数年後、小学生だった息子が成長してこの映画の主人公として花屋(イベントなどに胡蝶蘭を配達する)の配達員になり、姉娘のほうは間もなく結婚しようとする20代後半、父は長らく海外にいたが最近帰ってきたらしいという3人になっている。
母はすでに亡く、父とも6,7年疎遠だったという姉弟の、新しい仕事(プロジェクト)や女性との関係も持とうとしている父との再会の夜までを、なぜか「お父さんしか見えない」母の出現という映画的非現実まで含めて描くのだが…この映画、子どもたちは今は独立しているがそこに至るまで父は面倒をみなかったのだろうか?とか、このあとどう考えても子どもたちと父の距離が縮まるのでもなく、要は家族の感情的再結成?を夢見ていた息子が現実(家族の離散的距離)を認識する過程を描いたということなのか…、母の亡霊の許しを得ることにより父が永遠の苦悩に突き落とされる?話なのか、どうもさっぱり分からん。カメラ位置も全体に人とも、また父がランドスケープデザイナーとかいう設定で渋谷の風景などが丁寧に描かれはするものの被写体との距離が遠視的に遠い感じで(これが題名「見はらし」の由縁?)、なんかすべて外側から傍観的に見ている感じで、その中で怒鳴ったり泣いたり激しい遠藤憲一の父だけがなんか浮き上がっている感じも…主役黒崎煌代の声がまたばかに低いのも映画全体を暗く沈めている感じもして…この暗さに耐えられるのはやはり若い感性だけなのかもと思えてしまうのだ。(11月15日 新宿シネマカリテ 278)

⑧季節はこのまま
監督:オリビエ・アサイヤス 出演:バンサン・マケーニュ ミーシャ・レスコ ナイン・ドゥルソ ノラ・ハムザィ 2024フランス 105分 ★★

オリビエ・アサイヤスが幼時に過ごした郊外の家(母が2006年に亡くなるまで住んでいたらしい)で、コロナのロックダウン期間を過ごす映画監督のポールと音楽ジャーナリストの弟エティエンヌとそれぞれの恋人(というかパートナー)の4人の暮らしぶりを、幼時や母との記憶なども織り込みながら描いていく。ドラマは一応フィクションだがポールのかつての仕事として『イルマベップ』などの名前も出てくるし、まあアサイヤス監督そのもの?と言ってもいいのだろう。半ドキュメンタリー?とも言えるような…と想像してしまう。主演の兄役バンサン・マケーニュよりは弟役のミーシャ・レスコの方が見かけ的にはオリビエ・アサイヤスに近いような感じではあるが…。2人はゴミ処理とかコロナ対策をはじめとして日常生活的にはかなり感覚の違いがあって結構激しく罵倒と言いうか口論もしながら夜には恋人もふくめ4人でワインを飲んだり、またポールと恋人モルガンのテニスや散歩シーン、またポールの元妻との間の娘とのオンライン会話、終わりの方では彼女が母の元からポールの所にやってくるまでとか、その合間に心理カウンセラー?とオンライン診療を受けたりと、彼の日常が描かれて興味深い。なにより印象的なのはこの郊外の緑の野や林に囲まれた中に家々が離れて立ち並ぶようなロケーションのなんともいいようのない美しさ。フランスの(多分高収入上流階層?のものではあろうが)優雅な住宅状況にうらやましさも感じてしまう。画面に満ちる深山ではないが自然いっぱいな緑の環境に癒される。こんなんだったらコロナで閉ざされた環境に住むのも悪くないかも…なんて。もちろん描かれない苦労はいっぱいあったのだろうとは思いつつ。(11月14日 下高井戸シネマ 277)

⑦音楽サロン
監督:サタジット・レイ 出演:チョビ・ビッシャシュ コンガボト・ボシュ カリ・ショルカル ボッダ・デビ 1958インド モノクロ・35m 100分

7月~8月に文化村でやっていた
「サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025」では『ビッグシティ』②(1963)、『チャルラータ』④(1964)の2本を見たが、3か月後下高井戸までやってきたこの特集の最終日・最終回、2作に先立つ58年のサタジット・レイ監督4作目というこの作品に駆け込む。
20世紀初頭のベンガル、没落貴族の主人公は経済的に困窮しつつありながら屋敷内の「音楽サロン」に知人を招き、有名な音楽家たちを呼んで音楽や舞踊を楽しむというより耽溺する日々。最初は張り合おうとする新興貴族の事業家ガングリを鼻の先であしらうような初っ端から地位逆転でバカにされる感じになって逆襲するまでの間に、妻と息子を事故で失い絶望し、経済的にも追い詰められ音楽サロンも閉じたままになる。召使も皆いなくなり最後に執事と献身的な召使だけが残るが、この二人の対比が結構よく描けていて面白い。残り財産が300ルピーになったところで200ルピーをかけて有名音楽家を呼び、客を招いて宴を催し、羽振り欲やって来たガングリに逆襲、そして翌朝…。無一文だしこのあとどうなるのかなと思って見ていると、ナルホド!想像もできるし、ビックリもするようなつまり、これが(ちょっと古典的だけど)映画的展開だなあと思わせられるようなラストにも感心というか懐かしい感じも。映画には有名音楽家・舞踊家が出演しているそうで、いわゆるマサラ映画の音楽やダンスとはちょっと違う古典的というか格調高い?音楽・舞踊が満載されている。 
(11月14日 下高井戸シネマ 「サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025」 276)

⑥サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー
監督:アントニオ・メンデス・エスパルサ 出演:マレーナ・アルテリオ ロドリゴ・ポイソン アイタナ・サンチェス=ヒホン ホセ・ルイス・トリホ 2023スペイン・ルーマニア 112分 ★

時間が合うのがここだけ、というので見たのだけれど、何だか不思議な読後感(?なんというのかな、見た後の感じ)マドリードで、IT技術者(けっこう有能そう)として働き、老いた父親の介護をする中年の独身女性というのはわりとリアル感があり、その描写もおどろおどろしい音楽で不安をかきたてられる以外は極めてリアルな感じに描かれていくのだが、社長の横領?で半年間の給料未払いのまま会社は倒産、彼女レイラは乗ったタクシーの女性運転手に触発されて思い切って自身も講習を受け中古車を買いタクシー営業を始める。同じ時期に住んでいるマンションの階上の部屋から聞こえてくるオペラ『トゥラントッド』の歌曲の音に引かされておずおずながら大胆に階上を訪ねた彼女は、その曲を流していたカラフ(
『トゥラントッド』の王子の名)と名乗る俳優に恋し、誘い一夜をともにし、そして彼が突然姿を消すという顛末。レイラなぜか彼との再会を確信しながらタクシーで街を流すことになる。最初の客でその後も親しくなるプロデューサー女性、彼女に誘いをかける作家、そして泥酔したかつての社長との邂逅。『タクシードライバー』とか『ナイト・オン・ザ・プラネット』みたいに話が進んでいくのかなと思いきや、そうでもなくて、とてもおどろおどろしい事件へと話が展開して、終わりは映画の最初から彼女が親友として信頼していた女性まで巻き込んで、レイラの現実なのか幻想なのかわからないようなトンデモ展開になり、ハッピーエンドなのかそれとも超絶望なのかもわからないーいや幻想でまぶしてはあるが超絶望とみるべきなんだろうなあ…。しかも物語の軸は俳優との愛(というより性愛)で、中年男女にしては激しいセックスシーンというか男女の全裸もいっぱいあって、ラテン民族の肉食性?みたいなものも感じさせられてしまう、なかなかすさまじく、ウーンな展開。レイラはカラフとの再会を夢見る運転手としてはいつもいつもいろいろな中国風衣服に髪のオダンゴには簪として箸?やをさしていたリするが、幻想が覚めたシーンでは普通のジーンズやワンピースに。それもなかなか興味深く、主演のマレーナ・アルテリオはゴヤ賞(スペインアカデミー賞)の主演女優賞を獲得している。(11月13日 新宿シネマカリテ 276)


⑤ひとつの机、ふたつの制服(夜校女生 The Uniform)
監督:荘景燊 出演:陳妍霏 項婕如 邱以太 季芹 黄稚玲 鄭志偉 涂善存 2024 台湾 109分 ★★

脚本家の夜間校経験をもとに描かれた物語だそうだが、時は1995~7年の台北。名門第一女子高の入試に失敗し、夜間部(それでも合格率は6%だというセリフがある、やはり難関校みたい)進学することになった小愛。高校では1年次は昼間生と夜間生が教室を共用することになっていて同じ机を使う昼夜の学生は桌友(字幕では机友)となってお互いに仲良くうまく付き合う?ことも勧められていたらしいーで、机友になった夜間部のほうの少女から見た二人の学校生活とその中で一人の男子生徒をともに好きになり…夜間部の方は自分が夜間生であることも言えず、劣等感というか自己肯定感の低さで恋に悩む、みたいな話はまあ、月並みな展開ではあるのだが、小愛は、貧しいシングルマザーで塾教師で稼ぎ娘たちにもより高い教育を受けさせたいと考える母への反発、自分ペースで
彼女を引き回す昼間部の机友敏敏。なんとこの子はまあ、自分本位に昼夜の制服を取り換えて少愛をさぼらせ遊びに連れて行ったり、けっこう自己中に見えるのだけれど、実は彼女なりの秘密を抱えていたことが最後になってわかる。ただ自分が得意とする卓球で、好きになった一校男子のルーク(路克)と対等になれるという感じはなんか解放感もあって…台湾大地震も組み込んで傷心の小愛が母と和解し、やがて敏敏に秘密を明かされて「昼間、夜間で区別はない」「ここまでではなくこれから見ていく」ということで統一試験に向けて頑張り出すというような展開もよくできているし、何より感心したのは統一試験の結果ルークは台湾大学医学部とか進学先を映画内で言っているが、小愛と敏敏については希望は果たしたような描き方ではあるが大学や学部名までが明示されないこと。これは名門・エリートと自分の差に悩むというようなことを文字通り否定した?コンセプトというか品の良さでナルホド!なお、台湾の制服の胸の校名や学籍番号(この映画ではクラス名まで)は専門にミシン刺繍をする業者がいるとは知っていたが、その作業風景ははじめて映画で見た。主演の
陳妍霏は2022年フィルメックスで見た『無聲』⑥(柯貞年)が印象に残っている。
(11月8日 新宿武蔵野館 275)


④旅と日々
監督:三宅唱 出演:シム・ウンギョン 堤真一 河合優実 高田万作 斉藤陽一郎 2025日本(日本語・韓国語) 89分 ★

つげ義春の二つの作品を原作に映画化したというが、その組み合わせ方がなかなかね、面白い。何となくしっかりしているがちょっと沈んだ雰囲気もある、韓国出身の脚本家(シム・ウンギョン)が書いた脚本によってつくられた映画(これが1本目?)を大学の授業で学生たちが見る、そこでの質問「自分は才能がないと思った」と答える脚本家は、ひとり雪国に旅に出る。予約なしではどのホテルにも宿泊を断られ、山あいの主人一人で営む(営んでいるのかどうかもわからない)民宿にようやく宿をとっての数日…この宿の主人ベン造はなかなか面白い造型で、堤真一の演技というか化けっぷりもなかなか。2人のコラボレーションをなかなか面白く見た。同じつげ作品の映画化で昨年のTIFF上映作品だった『雨の中の欲情』⑧(片山慎三2024)みたいな激しさはないけれど、さりげないのになんかすごーいシュール感があるのはやはり原作由来なんだろうとも思われる。
(11月7日 キノシネマ立川 274)


③ミーツ・ザ・ワールド
監督:松井大悟 出演:杉咲花 南琴奈 板垣李光人 渋川清彦 蒼井優 筒井真理子
2025日本 126分

ちょっとしっかりした、「今」を描くような日本映画をみたいなという思いもあり、金原ひとみ原作小説の映画化でもあるというこの映画を鑑賞。で、まあ、ナルホドねという感じか。主演の杉咲花のリアルな演技力の妙に支えられているという感じが強い。物語はわりと原作に忠実に?描かれているのかなと思われるが、それだけに映像になると全体的には実感が薄い作り?例えば、キャバクラ嬢ライはキャバクラ嬢として働く場面はなくてひたすらゴロゴロしたり遊んでいるし、姿を消す場面も唐突だしな…。主人公ゆかりの設定も、昼間の金融関係(と本人がいうシーンあり)で仕事をしている様子が、まあタフという設定ではあるがああは行かないんじゃないの?という感じであまりリアリティが感じられず、ひたすら杉咲が演技で状況を補っている?感じ、まあ繊細微妙にみんな悩んではいるんだろうが、なかなかこういう映画を観客(若くたってだ…)に説得力をもって訴えるのは難しいのではないかなという感想を持つ。ただし未読の原作小説、どう描かれているのか、どう映画化されているのかという興味は喚起され、それがケガの功名?みたいな映画ではある。 (11月7日 キノシネマ立川 273)


SPIRIT WORLD スピリットワールド
監督:エリック・クー 出演:竹野内豊 カトリーヌ・ドヌーヴ 堺正章 風吹じゅん でんでん 吉田晴登 2024日本・シンガポール・フランス 97分 ★ 

映画祭で『コピティアムの日々』のエグゼクティブ・プロデューサをしたエリック・クー演出、カトリーヌ・ドヌーヴが来日して演じるヒロイン、映画祭中有楽町でも上映されていたが時間が合わず、ということでこれも延長戦という感じで久しぶりに立川で映画デイ。
20年前にヒットを出したもののその後は不調のアニメ映画監督ハヤト、高崎に住む老父が急死し駆けつける。父が行くことになっていたのは折から来日公演中のエメル・クレア。ハヤトは父の代わりに公演に行きサインをもらう。その夜クレアは(何とも屈託ありげに)一人で飲みに出かけて、その場で急死。そこから生者には見えない死者、クレアとハヤトの父ユウゾウの世界が現世に並行して現れるという映画的というかアニメ的というか、SF的幻想世界というかが現れる。父の遺言でハヤトは幼いころに家を出て行ったままの母メイコに、彼女が残したというサーフボードを届ける旅に父の古い愛車に乗り千葉の海岸に出かける。その後部座席にはスピリットのクレアとユウゾウが同乗しているという寸法である。ま、そして海で失った娘への後悔というか追憶に悩むクレア、自らの生き方への懐疑でアル中気味のハヤト、別れた妻に残る愛情?からかやはりこの世をさまようユウゾウの魂といったものが、この海岸の町で幸せに暮らすメイコ一家(再婚し子どもも大きな孫もいる)とふれあいぶつかり…そこに最後には過去にハヤトが作りレストア化されたアニメ映画もつながって、大変にわかりやすく考えなくても情感が盛り上がってくるような作品に仕上がっていて、まあ癒されると言ってもよいかな。カトリーヌ・ドヌーヴの歌唱も含め、その存在感が映画を支えている。エリック・クーの『家族のレシピ』(2017)で主演した斎藤工がなぜかこの世に残る魂と(あと多分、ハヤトのアニメの主演人物の声も?)でワンシーン出演。(11月7日 キノシネマ立川 272)


①てっぺんの向こうにあなたがいる
監督:坂本順治 出演:吉永小百合 佐藤浩市 天海祐希 のん 工藤阿須加 茅島みずき
木村文乃 若葉竜也 2025日本 130分

東京国際映画祭のオープニング作品だったし、登山家田部井淳子がモデルというかまあ彼女の伝記?映画でもあり、当然エベレストとかその他いろいろな山の絶景も見られるだろうということで、期待して「映画祭」延長の気分で、自宅傍のTOHOシネマズへ。で、まあ坂本順治作品でもあるし、という期待もあったのだけれど、坂本作品にしてはなんともボヤ~とした生ぬるい感じのの家庭ドラマという仕上がりにガックリ…。期待の山歩きシーンにも、まあ役者が本当の登山家のようには歩けないのは仕方がないとしても、あまりリアリティを感じられず(ザックの装備とか、その重さの演技=クッションかなんかを詰めているとしか思えないとか、また、高校生を連れての集団登山でのリーダーの行動振りとか)それは、まあモデルのいる実話物語というか原案は本人自身の著作であるという作品で、つまり田部井淳子氏のガンバリぶりとか、家族の良い人・理解者ぶりが反映しているわけだから仕方がないかなあ…とも思いつつ。まだまだ家族や周辺人物の生きている実話ベース・モデル映画の難しさをつくづくと感じさせられた。中国映画週間でTOHOシネマズのポイント鑑賞でタダで見られたので、まあよしか、というところ。
(11月6日 府中TOHOシネマズ 271)




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