【勝手気ままに映画日記+山ある記】2025年11月(中途速報版)

韓国最高峰・漢拏山(1950m)上からのぞむ海と済州の街(11・10)

 

広い茶畑の向こうにそびえる左側が漢拏山
きれいな円錐形で海からそびえているところは鳥海山みたいでした。(11・11)

映画祭第1弾(中国映画週間・東京国際映画祭)が終わった11月、月末にはフィルメックスも始まりますが、その間に見た映画(行った山も)を順次アップしていきます。中途篇ですが、早めの情報を!ということで…。ところで山の方は、10日に韓国最高峰、済州島の漢拏山(ハンラ山)に登りました。以下にUpします。アフター登山の観光もなかなかステキでしたが、それはまた後ほどに…

【11月の山ある記】

㉚11月10日  韓国最高峰・拏山(ハンラ山)

済州市内HTグロスター出発(6時)➡登山口(86時45分)⇒城板ルート⇒ツツジ畑コントロールセンター⇒拏山山頂(1950m・11時50分)⇒観音寺ルート観音寺登山口(16時40分)➡レストラン夕食(この日は焼肉夕食)➡HTグロスター(8時)
9時間52分 18.8㎞ ↗1265m ↘1437m コース定数34(きつい?)平均ペース110- 130%やや速い。歩数は約3400歩くらいでした。

拏山に行こうと思ったのは2019年コロナ前、5月の韓国第1峰の拏山(1950m)と2峰の智異山(チリ山・1915m)を登るツアーを見つけて申し込んでいたのだが、2月にスキーで大怪我、半年ほどは山にも登れない状態になり、やむなくキャンセルしたのだった。それから6年目、満を持してのリベンジ?登山は紅葉の季節にした。今回は今年は大分御世話になったYツアー。参加者11人。男性はうち2人。おかげで下山翌日の観光コースは「女性向き」だそう。添乗員は福岡支社からの男性SDさんと、海外旅行企画全般を担当しているという女性のSKさん。現地ガイドは日本居住経験もあるとかいう気さくでお喋りな、まあそういっては何だけどオジサンの朴さん。それに登山ガイドの二人、朴さん(男性)と全さん?(女性)下山の翌日観光コースにはこの方もなかなかユーモアセンスにあふれた女性姜さんというわけで、こちらの人数のわりにはなかなか行き届いた陣容である。ただし歩く前のツアーメンバーやガイドの顔合わせもなく、時間が来たら「さあ行きます」とばかりにガイドは歩きだし、メンバーは慌てて追いかけるという感じで、このあたりは日本の登山とも、今まで行った海外、キナバル・玉山・キリマンジャロとも違う。まあ国柄というよりもガイドの個性かもしれないが…。
拏山は遠景は日本でいうと鳥海山という感じ。山道というほどでもないタラタラした少し上り下りのあるような長い長いすそ野を歩き、最後にやや急こう配になるが、そのあたりからは、こちらはあたかも伯耆大山のように木段の架け橋を渡して頂上まで登っていくようになっている。韓国のガイドさんは普段の日本のガイドよりも少々ペースが早めで、それについてせっせと登るのが3~4人、あとは写真を撮ったり花をめでたりしているうちにどんどん置いていかれ、中ほどを歩く私などは前にも後にもツアーメンバーは誰もいない一人歩き状況に陥り、勝手に休むとますます置いて行かれそうだし、いや、いっそ一人歩きをしていいなら自分でペースを調節するのにと思いながら前を追ってセコセコ歩くのにはけっこう疲れる。中途の休憩でようやく前団に追いつくが後続最後が追いついたのはそれからさらに10分以上後、私たちが休んで寒くなるし出発しようというあたり。その後はSDさんに頼んで列の中間に入ってもらい、先頭グループはともかくとしてもできるだけ列が切れないように歩くことにして全体がある程度見えるようになりだいぶ楽になった。途中には2か所ほどトイレも立派なのがある広い避難小屋というか休憩所(コントロールセンター)があるが、その2か所目、ここから頂上山道というところで、待っても待っても全さんがこない。どうしたのかと思ったら途中で転んで足をねんざしたのだという。まあ~こんなこともあるのが山だと言えば山なんだけど…。それでもさすがはプロというか頑張り屋の全さん、ほんの10分くらいの遅れで全行程を歩ききり落いついてきたのにはビックリ。
天気は抜群だったが、意外に?温度は低くて風もあり、特に山の上は晴天ゆえに激しい風に吹き飛ばされそうな感じも。それと山の上になんとも大勢の「善男善女」の群れがいたのにもちょっと驚き。まあ、気持ちの良い登山日和のデモ、平日?なんだけど。
続きは「山の写真集」で…

●夜明けの登山口/歩き始める/道にはところどころ看板があってきわめてわかりやすい
●最初はこんな山道をどんどん登ってい行く
●途中の休憩所にはマユミの実がたわわに実った木が…
●途中噴火口への分岐看板には日本語も/もう一度登山口/そして大山風木段に
#ヤマカラ↓
●絶景の展望が開ける
●いよいよ頂上に到着/人がいっぱいの頂上だった
●頂上からカルデラを望む。実は向こう側の頂上の方が高いが現在は立ち入れない。
●寒いのだ!つららも…/お弁当タイム 今回は朝サンドイッチ、昼キムパップ(海苔巻き)が出たが、どちらもなかなか美味しくて、涼しくなったからか胃の不調も全くなくて、とても美味しく毎食食べることができた!
さらに下って、最後の休憩後、観音寺口の駐車場に無事到着!お疲れ様!

アフター登山観光(11・11)




【11月の映画日記】

①てっぺんの向こうにあなたがいる SPIRIT WORLD スピリットワールド ③ミーツ・ザ・ワールド④旅と日々⑤ひとつの机、ふたつの制服 ⑥サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー  ⑦音楽サロン ⑧季節はこのまま  ⑨見はらし世代 ⑩愛殺


⑩愛殺
監督:パトリック・タム(譚家明) 出演:ブリジット・リン(林青霞) 張國柱 秦祥林 許鞍華 1981香港 91分

東京国際映画祭の作品だったが見損ない、東京フィルメックス・プレイベントとしての上映を見に行く。夜9時の上映にトーク付き!(トークは前半7分ほどM+という旧作映画修復についてのビデオ?のみ見る。『董夫人➉』とこの作品のみが紹介されていた)
このころのパトリック・タム作品と言えば『烈火青春』(1982)のトンデモ凄まじさだけれど、その1年前のこの作品も負けてはいない。張叔平による鮮烈な色合いの美術、時にものすごくおしゃれなカメラアングル、遠近自在という感じでひいたり近付いたりのカメラ、冒頭末尾は何処かわからぬ砂漠の風紋の丘を真っ赤なドレスで歩くヒロインの孤独…というわけで目を奪う映像の中に繰り広げられるのは、香港から遠く離れたサンフランシスコを舞台にサイコパスを愛してしまった女性と、香港にいる妻子を殺してまで彼女に執着する男。彼女を求め、隠したとして同じアパートメントの同宿女性たちを次々に殺し縛り上げ殺す…真っ白な上下の男(これが張國柱で、いまや張震の父という方が通りがよさそうな気もするが、まだ若い彼が眉毛脱色という感じで不気味イケメンを演じているのにはちょっとびっくり)の前身を覆う鮮血、最後屋上シーン、干してある青や白、赤のシーツの間で純白衣装の男女が対置し刃物が踊り、血まみれシーツにくるんだ男を抱き寄せる女ーという、まあとにかく展開はかなりご都合主義的ではあるが、目を奪うような色合いがおどろおどろしいトンデモ映画だわ…そして白・赤のドレス基調で、真っ赤なオープンカーを運転するブリジット・リンはなんとも格好良い。若きアン・ホイ監督が殺される食いしん坊の同宿女子を演じている。(11月15日 ヒューマントラスト有楽町 279)





⑨見はらし世代
監督:団塚唯我  出演:黒崎煌代 木竜麻生 遠藤憲一 井川遥 菊池亜希子 2025日本 115分

実はほとんど見たいとも思わなかったのだが、どうしても空いてしまった夕方5時~9時の4時間にすっぽりはまり夕飯も食べる時間があるというのがこの作品しかなく、しかし金曜夕方からの回が結構席が埋まっているのに驚く。そして見て、ウーン。20代の監督のデビュー作だそうだが、若い感性がこのようなものとすれば、やはり私にはもはやついて行けない老いが…と悩ましい。出だしは夫婦に小中学生くらいの姉弟の子ども二人連れが別荘?にやってくるところから。夫は一人車から荷物を出し子どもたちに「荷物を持て」と叫ぶが子どもたちは知らん顔。そして部屋に落ち着き、父は息子と庭でサッカー?するとそこに電話。夫は妻に「コンペに入選しそうで、打ち合わせに出かけなければならない」というと、妻は「いつもそうだ」と夫をなじる。そのギクシャクは、夫の仕事の成功さえ認めないという感じで、
相当妻には屈託があるのだとは思われるが、専業主婦の妻の依存性?さえ感じさせ違和感もある。で、次はすでに10数年後、小学生だった息子が成長してこの映画の主人公として花屋(イベントなどに胡蝶蘭を配達する)の配達員になり、姉娘のほうは間もなく結婚しようとする20代後半、父は長らく海外にいたが最近帰ってきたらしいという3人になっている。
母はすでに亡く、父とも6,7年疎遠だったという姉弟の、新しい仕事(プロジェクト)や女性との関係も持とうとしている父との再会の夜までを、なぜか「お父さんしか見えない」母の出現という映画的非現実まで含めて描くのだが…この映画、子どもたちは今は独立しているがそこに至るまで父は面倒をみなかったのだろうか?とか、このあとどう考えても子どもたちと父の距離が縮まるのでもなく、要は家族の感情的再結成?を夢見ていた息子が現実(家族の離散的距離)を認識する過程を描いたということなのか…、母の亡霊の許しを得ることにより父が永遠の苦悩に突き落とされる?話なのか、どうもさっぱり分からん。カメラ位置も全体に人とも、また父がランドスケープデザイナーとかいう設定で渋谷の風景などが丁寧に描かれはするものの被写体との距離が遠視的に遠い感じで(これが題名「見はらし」の由縁?)、なんかすべて外側から傍観的に見ている感じで、その中で怒鳴ったり泣いたり激しい遠藤憲一の父だけがなんか浮き上がっている感じも…主役黒崎煌代の声がまたばかに低いのも映画全体を暗く沈めている感じもして…この暗さに耐えられるのはやはり若い感性だけなのかもと思えてしまうのだ。(11月15日 新宿シネマカリテ 278)

⑧季節はこのまま
監督:オリビエ・アサイヤス 出演:バンサン・マケーニュ ミーシャ・レスコ ナイン・ドゥルソ ノラ・ハムザィ 2024フランス 105分

オリビエ・アサイヤスが幼時に過ごした郊外の家(母が2006年に亡くなるまで住んでいたらしい)で、コロナのロックダウン期間を過ごす映画監督のポールと音楽ジャーナリストの弟エティエンヌとそれぞれの恋人(というかパートナー)の4人の暮らしぶりを、幼時や母との記憶なども織り込みながら描いていく。ドラマは一応フィクションだがポールのかつての仕事として『イルマベップ』などの名前も出てくるし、まあアサイヤス監督そのもの?と言ってもいいのだろう。半ドキュメンタリー?とも言えるような…と想像してしまう。主演の兄役バンサン・マケーニュよりは弟役のミーシャ・レスコの方が見かけ的にはオリビエ・アサイヤスに近いような感じではあるが…。2人はゴミ処理とかコロナ対策をはじめとして日常生活的にはかなり感覚の違いがあって結構激しく罵倒と言いうか口論もしながら夜には恋人もふくめ4人でワインを飲んだり、またポールと恋人モルガンのテニスや散歩シーン、またポールの元妻との間の娘とのオンライン会話、終わりの方では彼女が母の元からポールの所にやってくるまでとか、その合間に心理カウンセラー?とオンライン診療を受けたりと、彼の日常が描かれて興味深い。なにより印象的なのはこの郊外の緑の野や林に囲まれた中に家々が離れて立ち並ぶようなロケーションのなんともいいようのない美しさ。フランスの(多分高収入上流階層?のものではあろうが)優雅な住宅状況にうらやましさも感じてしまう。画面に満ちる深山ではないが自然いっぱいな緑の環境に癒される。こんなんだったらコロナで閉ざされた環境に住むのも悪くないかも…なんて。もちろん描かれない苦労はいっぱいあったのだろうとは思いつつ。(11月14日 下高井戸シネマ 277)

⑦音楽サロン
監督:サタジット・レイ 出演:チョビ・ビッシャシュ コンガボト・ボシュ カリ・ショルカル ボッダ・デビ 1958インド モノクロ・35m 100分

7月~8月に文化村でやっていた
「サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025」では『ビッグシティ』②(1963)、『チャルラータ』④(1964)の2本を見たが、3か月後下高井戸までやってきたこの特集の最終日・最終回、2作に先立つ58年のサタジット・レイ監督4作目というこの作品に駆け込む。
20世紀初頭のベンガル、没落貴族の主人公は経済的に困窮しつつありながら屋敷内の「音楽サロン」に知人を招き、有名な音楽家たちを呼んで音楽や舞踊を楽しむというより耽溺する日々。最初は張り合おうとする新興貴族の事業家ガングリを鼻の先であしらうような初っ端から地位逆転でバカにされる感じになって逆襲するまでの間に、妻と息子を事故で失い絶望し、経済的にも追い詰められ音楽サロンも閉じたままになる。召使も皆いなくなり最後に執事と献身的な召使だけが残るが、この二人の対比が結構よく描けていて面白い。残り財産が300ルピーになったところで200ルピーをかけて有名音楽家を呼び、客を招いて宴を催し、羽振り欲やって来たガングリに逆襲、そして翌朝…。無一文だしこのあとどうなるのかなと思って見ていると、ナルホド!想像もできるし、ビックリもするようなつまり、これが(ちょっと古典的だけど)映画的展開だなあと思わせられるようなラストにも感心というか懐かしい感じも。映画には有名音楽家・舞踊家が出演しているそうで、いわゆるマサラ映画の音楽やダンスとはちょっと違う古典的というか格調高い?音楽・舞踊が満載されている。 
(11月14日 下高井戸シネマ 「サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025」 276)

⑥サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー
監督:アントニオ・メンデス・エスパルサ 出演:マレーナ・アルテリオ ロドリゴ・ポイソン アイタナ・サンチェス=ヒホン ホセ・ルイス・トリホ 2023スペイン・ルーマニア 112分

時間が合うのがここだけ、というので見たのだけれど、何だか不思議な読後感(?なんというのかな、見た後の感じ)マドリードで、IT技術者(けっこう有能そう)として働き、老いた父親の介護をする中年の独身女性というのはわりとリアル感があり、その描写もおどろおどろしい音楽で不安をかきたてられる以外は極めてリアルな感じに描かれていくのだが、社長の横領?で半年間の給料未払いのまま会社は倒産、彼女レイラは乗ったタクシーの女性運転手に触発されて思い切って自身も講習を受け中古車を買いタクシー営業を始める。同じ時期に住んでいるマンションの階上の部屋から聞こえてくるオペラ『トゥラントッド』の歌曲の音に引かされておずおずながら大胆に階上を訪ねた彼女は、その曲を流していたカラフ(
『トゥラントッド』の王子の名)と名乗る俳優に恋し、誘い一夜をともにし、そして彼が突然姿を消すという顛末。レイラなぜか彼との再会を確信しながらタクシーで街を流すことになる。最初の客でその後も親しくなるプロデューサー女性、彼女に誘いをかける作家、そして泥酔したかつての社長との邂逅。『タクシードライバー』とか『ナイト・オン・ザ・プラネット』みたいに話が進んでいくのかなと思いきや、そうでもなくて、とてもおどろおどろしい事件へと話が展開して、終わりは映画の最初から彼女が親友として信頼していた女性まで巻き込んで、レイラの現実なのか幻想なのかわからないようなトンデモ展開になり、ハッピーエンドなのかそれとも超絶望なのかもわからないーいや幻想でまぶしてはあるが超絶望とみるべきなんだろうなあ…。しかも物語の軸は俳優との愛(というより性愛)で、中年男女にしては激しいセックスシーンというか男女の全裸もいっぱいあって、ラテン民族の肉食性?みたいなものも感じさせられてしまう、なかなかすさまじく、ウーンな展開。レイラはカラフとの再会を夢見る運転手としてはいつもいつもいろいろな中国風衣服に髪のオダンゴには簪として箸?やをさしていたリするが、幻想が覚めたシーンでは普通のジーンズやワンピースに。それもなかなか興味深く、主演のマレーナ・アルテリオはゴヤ賞(スペインアカデミー賞)の主演女優賞を獲得している。(11月13日 新宿シネマカリテ 276)


⑤ひとつの机、ふたつの制服(夜校女生 The Uniform)
監督:荘景燊 出演:陳妍霏 項婕如 邱以太 季芹 黄稚玲 鄭志偉 涂善存 2024 台湾 109分

脚本家の夜間校経験をもとに描かれた物語だそうだが、時は1995~7年の台北。名門第一女子高の入試に失敗し、夜間部(それでも合格率は6%だというセリフがある、やはり難関校みたい)進学することになった小愛。高校では1年次は昼間生と夜間生が教室を共用することになっていて同じ机を使う昼夜の学生は桌友(字幕では机友)となってお互いに仲良くうまく付き合う?ことも勧められていたらしいーで、机友になった夜間部のほうの少女から見た二人の学校生活とその中で一人の男子生徒をともに好きになり…夜間部の方は自分が夜間生であることも言えず、劣等感というか自己肯定感の低さで恋に悩む、みたいな話はまあ、月並みな展開ではあるのだが、小愛は、貧しいシングルマザーで塾教師で稼ぎ娘たちにもより高い教育を受けさせたいと考える母への反発、自分ペースで
彼女を引き回す昼間部の机友敏敏。なんとこの子はまあ、自分本位に昼夜の制服を取り換えて少愛をさぼらせ遊びに連れて行ったり、けっこう自己中に見えるのだけれど、実は彼女なりの秘密を抱えていたことが最後になってわかる。ただ自分が得意とする卓球で、好きになった一校男子のルーク(路克)と対等になれるという感じはなんか解放感もあって…台湾大地震も組み込んで傷心の小愛が母と和解し、やがて敏敏に秘密を明かされて「昼間、夜間で区別はない」「ここまでではなくこれから見ていく」ということで統一試験に向けて頑張り出すというような展開もよくできているし、何より感心したのは統一試験の結果ルークは台湾大学医学部とか進学先を映画内で言っているが、小愛と敏敏については希望は果たしたような描き方ではあるが大学や学部名までが明示されないこと。これは名門・エリートと自分の差に悩むというようなことを文字通り否定した?コンセプトというか品の良さでナルホド!なお、台湾の制服の胸の校名や学籍番号(この映画ではクラス名まで)は専門にミシン刺繍をする業者がいるとは知っていたが、その作業風景ははじめて映画で見た。主演の
陳妍霏は2022年フィルメックスで見た『無聲』⑥(柯貞年)が印象に残っている。
(11月8日 新宿武蔵野館 275)


④旅と日々
監督:三宅唱 出演:シム・ウンギョン 堤真一 河合優実 高田万作 斉藤陽一郎 2025日本(日本語・韓国語) 89分

つげ義春の二つの作品を原作に映画化したというが、その組み合わせ方がなかなかね、面白い。何となくしっかりしているがちょっと沈んだ雰囲気もある、韓国出身の脚本家(シム・ウンギョン)が書いた脚本によってつくられた映画(これが1本目?)を大学の授業で学生たちが見る、そこでの質問「自分は才能がないと思った」と答える脚本家は、ひとり雪国に旅に出る。予約なしではどのホテルにも宿泊を断られ、山あいの主人一人で営む(営んでいるのかどうかもわからない)民宿にようやく宿をとっての数日…この宿の主人ベン造はなかなか面白い造型で、堤真一の演技というか化けっぷりもなかなか。2人のコラボレーションをなかなか面白く見た。同じつげ作品の映画化で昨年のTIFF上映作品だった『雨の中の欲情』⑧(片山慎三2024)みたいな激しさはないけれど、さりげないのになんかすごーいシュール感があるのはやはり原作由来なんだろうとも思われる。
(11月7日 キノシネマ立川 274)


③ミーツ・ザ・ワールド
監督:松井大悟 出演:杉咲花 南琴奈 板垣李光人 渋川清彦 蒼井優 筒井真理子
2025日本 126分

ちょっとしっかりした、「今」を描くような日本映画をみたいなという思いもあり、金原ひとみ原作小説の映画化でもあるというこの映画を鑑賞。で、まあ、ナルホドねという感じか。主演の杉咲花のリアルな演技力の妙に支えられているという感じが強い。物語はわりと原作に忠実に?描かれているのかなと思われるが、それだけに映像になると全体的には実感が薄い作り?例えば、キャバクラ嬢ライはキャバクラ嬢として働く場面はなくてひたすらゴロゴロしたり遊んでいるし、姿を消す場面も唐突だしな…。主人公ゆかりの設定も、昼間の金融関係(と本人がいうシーンあり)で仕事をしている様子が、まあタフという設定ではあるがああは行かないんじゃないの?という感じであまりリアリティが感じられず、ひたすら杉咲が演技で状況を補っている?感じ、まあ繊細微妙にみんな悩んではいるんだろうが、なかなかこういう映画を観客(若くたってだ…)に説得力をもって訴えるのは難しいのではないかなという感想を持つ。ただし未読の原作小説、どう描かれているのか、どう映画化されているのかという興味は喚起され、それがケガの功名?みたいな映画ではある。 (11月7日 キノシネマ立川 273)


SPIRIT WORLD スピリットワールド
監督:エリック・クー 出演:竹野内豊 カトリーヌ・ドヌーヴ 堺正章 風吹じゅん でんでん 吉田晴登 2024日本・シンガポール・フランス 97分 

映画祭で『コピティアムの日々』のエグゼクティブ・プロデューサをしたエリック・クー演出、カトリーヌ・ドヌーヴが来日して演じるヒロイン、映画祭中有楽町でも上映されていたが時間が合わず、ということでこれも延長戦という感じで久しぶりに立川で映画デイ。
20年前にヒットを出したもののその後は不調のアニメ映画監督ハヤト、高崎に住む老父が急死し駆けつける。父が行くことになっていたのは折から来日公演中のエメル・クレア。ハヤトは父の代わりに公演に行きサインをもらう。その夜クレアは(何とも屈託ありげに)一人で飲みに出かけて、その場で急死。そこから生者には見えない死者、クレアとハヤトの父ユウゾウの世界が現世に並行して現れるという映画的というかアニメ的というか、SF的幻想世界というかが現れる。父の遺言でハヤトは幼いころに家を出て行ったままの母メイコに、彼女が残したというサーフボードを届ける旅に父の古い愛車に乗り千葉の海岸に出かける。その後部座席にはスピリットのクレアとユウゾウが同乗しているという寸法である。ま、そして海で失った娘への後悔というか追憶に悩むクレア、自らの生き方への懐疑でアル中気味のハヤト、別れた妻に残る愛情?からかやはりこの世をさまようユウゾウの魂といったものが、この海岸の町で幸せに暮らすメイコ一家(再婚し子どもも大きな孫もいる)とふれあいぶつかり…そこに最後には過去にハヤトが作りレストア化されたアニメ映画もつながって、大変にわかりやすく考えなくても情感が盛り上がってくるような作品に仕上がっていて、まあ癒されると言ってもよいかな。カトリーヌ・ドヌーヴの歌唱も含め、その存在感が映画を支えている。エリック・クーの『家族のレシピ』(2017)で主演した斎藤工がなぜかこの世に残る魂と(あと多分、ハヤトのアニメの主演人物の声も?)でワンシーン出演。(11月7日 キノシネマ立川 272)


①てっぺんの向こうにあなたがいる
監督:坂本順治 出演:吉永小百合 佐藤浩市 天海祐希 のん 工藤阿須加 茅島みずき
木村文乃 若葉竜也 2025日本 130分

東京国際映画祭のオープニング作品だったし、登山家田部井淳子がモデルというかまあ彼女の伝記?映画でもあり、当然エベレストとかその他いろいろな山の絶景も見られるだろうということで、期待して「映画祭」延長の気分で、自宅傍のTOHOシネマズへ。で、まあ坂本順治作品でもあるし、という期待もあったのだけれど、坂本作品にしてはなんともボヤ~とした生ぬるい感じのの家庭ドラマという仕上がりにガックリ…。期待の山歩きシーンにも、まあ役者が本当の登山家のようには歩けないのは仕方がないとしても、あまりリアリティを感じられず(ザックの装備とか、その重さの演技=クッションかなんかを詰めているとしか思えないとか、また、高校生を連れての集団登山でのリーダーの行動振りとか)それは、まあモデルのいる実話物語というか原案は本人自身の著作であるという作品で、つまり田部井淳子氏のガンバリぶりとか、家族の良い人・理解者ぶりが反映しているわけだから仕方がないかなあ…とも思いつつ。まだまだ家族や周辺人物の生きている実話ベース・モデル映画の難しさをつくづくと感じさせられた。中国映画週間でTOHOシネマズのポイント鑑賞でタダで見られたので、まあよしか、というところ。
(11月6日 府中TOHOシネマズ 271)









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