【勝手気ままに映画日記】2022年8月


さあ、これから上るぞ鳥海山、というわけで前日宿泊の宿から望む(8/4)

朝です!これから登るぞ鳥海山第2弾

早速の雪渓歩きから

8月の山歩き

4日~6日 湯殿山 羽黒山 鳥海山(新山2236m)(月山)
初日湯殿山・羽黒山のはずが、前日雨で山形新幹線が運休、予定よりも2時間あまりも遅れて9時過ぎようやく復旧した東京駅出発の新幹線で出発、結局初日は羽黒山は飛ばして湯殿山にお参り。猿倉温泉鳥海荘(秋田県)泊。
2日目は鳥海山に矢島口登山口から祓川ヒュッテ経由で登り、鉾立に下りるという全長12Kmの縦走?ルートで。 7月白山につづいて雪渓とお花畑を満喫。それに新山の岩場登りも無事にこなして、うん、まだまだ大丈夫!と安心した山行でした。
8月には富士山にはあえず、代わりにこの「出羽富士」に…。
(後ろの方に「鳥海山花特集」載せています。よろしければ見てください)
3日目は大雨!月山は弥陀ヶ原まで行って撤退、初日に行けなかった羽黒山にまわり2000段?の石段歩きで、広い神社にお参りしてきました。

16日 丹沢 畔が丸山(1209m 8.8Km)日帰り
真夏真っ盛りの畔が丸は眺望もイマイチだし、暑くて歩く人もあまりいない平日山行でしたが、すばらしい滝に凉を楽しみました!
      

 ①マルケータ・ラザロヴァ②あなたがここにいてほしい(我要我們在一起)③アンデス、ふたりぼっち④ファイナル・アカウント 第三帝国最後の証言⑤プアン/友だちと呼ばせて➅L.A.コールドケース⑦北のともしび ノイエガンメ収容所とブレンフーザー・ダムの子どもたち➇灼熱の魂⑨なまず⑩サバカン⑪天使の涙(堕落天使)⑫恋する惑星(重慶森林)⑬ブエノス・アイレス⑭2046⑮ストーリー・オブ・マイ・ワイフ⑯雪道⑰裸足でならしてみせろ⑱長崎の郵便配達⑲花様年華

今月もいよいよ迫った論文締切りにカマボコ生活(おかげでちょっと腰痛気味)論文は月末に無事完成し、査読も通りましたが、映画の方は18本打ち止めでした。そのうち⑪⑫⑬⑭⑲は王家衛(ウォン・カーワイ)特集(連日満員に近い)、➇もあわせて、6本が以前に見た作品の再鑑賞。あとは脈略なく時間の合う心惹かれた?映画ということで見ましたが、なかなか興味深い作品が多かったように思います。★は納得! ★★はさらにプラス1? ★★★はおススメという感じの個人的意見です。

①マルケータ・ラザロヴァ                                    監督・脚本:フランチシェク・ヴラーテル 出演:マグダ・ヴァーシャーリヴォヴァ― ヨゼフ・ケムル フランチェシク・ヴェレツキー 1967チェコ 166分 モノクロ ★

暗いが美しい、カメラアングルも印象的な画面。そこに走り回る男たちー若い人は今風のイケメン顔が多く、中高年はいかにもらしい、オジサン顔で最初は見分けも付きにくくなかなか人間関係がつかめない。
要は13世紀チェコを舞台にした「ロミオとジュリエット」風展開のドラマ?名ばかりの領主ラザルと対立するというか、彼から盗むことを生業としているような盗賊騎士コズリーク、その息子ミコラーシュはラザルの娘マルケータを見初め?略奪するように自分のものにするということなのだが、前半はそれが恋物語というより男たちも抗争として描かれている感じで、マルケータ自身は無表情、流されるままというような感じもして、なかなか展開についていけない。
中盤『7人の侍』を思わせるような,王家も巻き込んだ、ラザルの面前での戦シーンがあり、たくさん傷つき・死ぬものが出る。後半ではそんな戦乱の世を助け合い生き抜いているような女たちの群れとその中にいるマルケータ。彼女がミコラーシュに送り返されて生家にもどるがそこでも受け入れられず、外に新しい旅立ちを求めるまで?ミコラーシュの行く末と対比してマルケータや他の女性たちの自立性がかっこいい55年前に作られた中性ボヘミア映画というわけだ。
物語のいわば狂言回し的な役割でヒツジをつれた放浪司祭が立派な押し出し、しかし品性的には少し??という枠回りをいい感じで演じている。なにより音楽(アマデウスでアカデミー賞を受賞したテオドール・ヒステック)のインパクトがすごくてすばらしい!前半の「わからん」「分からん」が嘘みたいに引き込まれた後半だった。(8月2日 渋谷イメージフォーラム174)


②あなたがここにいてほしい(我要我們在一起)                    監督:沙漠 製作:陳国富 出演:屈楚蕭 張婧儀 2021中国 105分

3650日続いた純愛の行方,ナンて言うとどうもあまり趣味じゃないなあとも思いつつ、朝日新聞の映画評に暉峻創三氏が書いていた「社会の不正、偏見、格差などへの問題提起を織り込んだ脚本が作者の意志を浮き彫りにする」という映画評に興味をひかれ、どんなふうに「社会」が描かれているのかを見に行ったというところ。
声高に不正を叫ぶとかそういう映画ではもちろんないのだが、なるほどね。南京の同じ高校で学ぶ中で知り合った優等生の凌一堯と劣等生みたいだがまっすぐで誠実な呂欽揚が、片方は大学に片方は専科学校に進んだあたりから、道が別れる。付き合いを母親に認めてもらえないイーヤオはチンヤンに「しばらく私を養って」という。チンヤンだって豊かではないわけだし、これはすごい言葉だな…この映画男の子の一途さと生活を作ろうとする努力はすごいのだが、彼にいわば依存しつつ大学から大学院にすすみエリート(といっても銀行の窓口係。このあたりも高学歴が職業に反映されにくい中国社会を描いている?)になる彼女のなんというか、他者依存の受身ぶりがすごい気がする。
原作はネット小説で「10年間一緒にいた彼女は明日他人の嫁に行く(與我十年長跑的女友明天要嫁人了)」というのだそうだが、映画の中でも2度ほど彼女は他の男と本気か嘘か結婚すると言い、男を走らせる?しね…。男はビル工事現場の監督として頑張るが報われず、友達にも金銭的な面で裏切られたりしてにっちもさっちもいかず、とうとう新彊の測量隊に。
彼の行く新彊は無限の荒野で人っ子一人いない現場として描かれるが、これも現在の中国の新疆ウイグル対策などを見れば、皮肉として描かれている?あるいは遠回しの批判?ウーン、ウーンとい感じで置かれた社会の中でただひたすら誠実に彼女を思う彼の髪を伸ばすとちょっと若い時の大沢たかおか金城武かという甘いマスクが丸刈りになると単に精悍というか、普通の兄ちゃん風になるのにもびっくり!(8月3日 シネマート新宿 175) 

③アンデス、ふたりぼっち
監督:オスカル・カタコラ 出演:ローサ・ニーナ ビセンテ・カタコラ 2017ペルー アイマラ語 86分 ★★

2021年34歳で亡くなったという監督の、その4年前ちょうど30歳ぐらいの時の作品ということになる。ペルー、アンデス山脈の山中、標高5000メートル、村までは「かなり遠い」という所に二人だけで住む老夫婦ー並ぶとなんかそっくりな見かけー。
ほとんど固定カメラでけっこう長回しをしているのだが、ワンシーンワンシーンが完成された絵画をみるような感じで、無駄な場面は全然ない。音楽といえば老いた夫が一節吹く笛くらいで、山の静けさと自然の音がそのまま山中にいるような感じにさせてくれる。淡々と一見変化の少ないような描き方だが、けっこうドラマティクに事件がおこり、そのたびに夫がまたは妻が弱っていくー思いやりつつ日常をこなすのだから甘い言葉などはないが、二人が互いを頼りにしているー息子は遠くに出て行ったまま何年も戻ってきていないらしいーようすに、30歳だった監督の老成とういうか、こんなことが判る人だからこそ早死にしてしまったのかと哀切さえ感じさせる仕上がりだ。
最後に、夫のために織ったポンチョを荷物の一番上に置いて妻は一人でこの家(その時はもう家の「跡」だな)を出ていくが、彼女が老いて自立をはかる?ようすの強さが心に残る。そうするしかないのだろうな、パートナーとの人生は必ず終焉もくるのだし…。(8月3日 新宿K'Sシネマ 176)

羽黒山の長い石段

石畳のところどころにこんな…盃・徳利だったり瓢箪だったり

月山神社


④ファイナル・アカウント 第三帝国最後の証言
監督:ルーク・ホランド 2020英・米(ドイツ語)94分 ★★

ナチスドイツ「第三帝国」の時代に幼少期を過ごした人々が、監督のインタヴューに答えて語る。
幼少期の少年団やヒトラーユーゲントへの参加(親ともどもの信奉者もいれば、親の反対を押し切ったという人も。いずれにせよそこにあったのは政治思想の信奉というより制服や、野外活動などへのあこがれみたいだったという)から、ユダヤ人強制収容所とのかかわりー親衛隊隊員として監視者になったり、収容所の会計係だったりという人も、国防軍兵士として戦ったのだから収容所は関係ないという人、虐殺があるとは知らなかったとか、薄々感じていても怖くて言いだせなかったという人もーさらにドイツ人として罪を感じるかという、終わりに近づくにつれて厳しくなる監督の追求的問いに答えたり、言葉を濁して笑ったり「ヒトラーは悪くなかった、尊敬する」という言も飛び出す。
ただ全体として罪を感じようと感じまいと、あれほどの状況にまさに恵まれた側の当事者として立ち会ってしまったことへの罪は逃れえないという気配は描き出され、否定する人には否定する人なりの苦しみもあるのだなとも感じさせられると、やはりあってはならないことだったのだというメッセージは強く伝わってくる。
1920年代生まれ位の彼らにとってこれは本当にファイナル・アカウントであり、わたし達にとっても生の声を受け取る最後の機会となっただろうという意味においても意義ある一作だと思った。(8月10日 キノシネマ立川 177)


⑤プアン/友だちと呼ばせて
監督:バズ・ブーンビリヤ 製作総指揮:ウォン・カーワイ 出演:トー・タナポップ アイス・ナッタラット ブローイ・ホーワン ヌン・シラバン ヴィオーレット・ウォーティア オークベーブ・チュティモン 2021タイ 129分 ★★

なるほどね!ニューヨークで傾き気味のバーを経営するボス、彼のもとに元NYで一緒だった友人ウードから電話がくる。彼は白血病で余命宣告を受け、頼みがあるのでタイに戻ってほしいとボスに懇願する。タイに戻ったボスに、ウードは運転を頼み二人はウードの元カノ行脚に出発する。
3人の女性のもとを訪れウードは過去も思い浮かべつつなかなかに機知のある別れをしてそれぞれの女性のアドレスをスマホから消していく、と、オークベーブ・チュティモン扮する女優になったヌーナーとの一幕などなかなか凝った展開だが、全体としてはどうってことないじゃんという印象もなくはない前半で、男二人は思い出のカクテルを楽しむはずなのだが、ここから話は思わぬ展開、なんと『欲望の翼』の現代版みたいな話になっていく。
母が金持ちの高齢者?と再婚し何不自由ない暮らしをしながら家族からもタイ社会からも疎外されてリッチなNY留学をしたボス(これがヨディ。母へのつきせぬ思いと、うらはらな投げやり的反逆)と、バーテンダー志望の貧しい女性プリムのまあすれ違う愛と、そこにボスには知られず介入していったヌードの思いというかむしろ死を前にした後悔が絡み合い、二人の男と一人の女(この女したたかに自立しているのも『欲望の翼』と同じだけれど、やはりあちらよりは現代的)のドラマが、先行きはわからぬままに展開していくうまさ。嘘っぱちっぽくもあるが、なるほどね!としか言いようのないバズ・ブーンビリア(『バッド・ジーニアス』)とウォン・カーワイのコラボ的世界だ。(8月10日 キノシネマ立川 178)


➅L.A.コールドケース
監督:ブラッド・フォーマン 出演:ジョニー・デップ フォレスト・ウィテッカ― 2018米・英(英語・スペイン語)112分 ★

ウーン。すごい見ごたえなんだが、実話に基づくストーリーは、実話の背景というかベースを知らないと今一つ分かりにくい。
90年代HIPHOP界に東西抗争があってその中で2大スターが射殺される。一方非番のロサンゼルス市警の警官(黒人)と麻薬取締覆面捜査官(白人)が白昼車の運転をしながらいがみ合い覆面捜査官が黒人警官を射殺するという事件が起きる。この操作に関わるラッセル・プールという刑事が事件の謎からロサンゼルス市警に巣食う?陰謀を暴こうとして果たせず18年、仕事をやめ家族を失ってもこの二つの事件の謎を解こうとしている。その刑事がなぜこの事件に執着しているのかということから過去の事件に関する特集記事を書こうと近づいていくのがジャック・ジャクソンという記者で、映画はこの二人が最初は反発、プールと息子の関係を理解したジャクソンとプールの間に一種の反発的友情を生じつつ、謎のいくつかは解明されていくが…、というような展開なのだが、二つの事件の関係がイマイチわからない。でもそれはわからなくても十分に見せてしまう二人の主役の迫力と人間性を表すような演技で十分楽しめる。しかし、ロサンゼルス市警のお偉方も黒人・白人警官たちもなんか柄悪く、アメリカの闇を感じさせる世界だなあ。(8月10日 キノシネマ立川 179)


⑦北のともしび ノイエガンメ収容所とブレンフーザー・ダムの子どもたち
監督:東志津 語り:吉岡秀隆 音楽:阿部海太郎 2022年日本(ドイツ語・英語・日本語)108分

1948年4月20日ドイツ・ハンブルグのノイエンガンメ強制収容所で結核の人体実験に供された5歳から12歳の子どもたち20人が、1時間ほど離れたブレンフーザー・ダムという元小学校のナチス施設の地下室で壁に絵画を掛けるように吊るされて殺された。前年11月、ヨーロッパ各地からアウシュビッツ収容所に入れられた子どもたちは選別されて人体実験用にノイエンガンツに送られたという。右手を上げ実験の結果脇の下のリンパ節を切除された胸を見せる20人の写真が痛々しく恐ろしい。
この映画はそのショッキングな事件を描くというよりその後の80年近く、残された人々(といっても血縁者は何十年もこの事実を知らなかったという)がその出来事の記憶を残し追憶することによって子どもたちを忘れ去られないものとしようとする「仕事」の方に重点を置いて描いている。ハンブルクの高校生の子どもたちの記憶をたどる授業、子どもたちの出身国であるヨーロッパ各地の高校生が集まって追悼集会に参加しながら、自分たちの国の犠牲者について調べて発表するワークショップ、また、ドイツ人の元兵士などの子どもや孫が集まって父や祖父の人生をたどりつつ加害者の側の事績をも明らかにしていく試みなどが印象に残る。もちろん被害者の兄弟などが生き残ったアウシュビッツの生還者として高校生に語る場面なども…。この惨劇をいろいろな角度から振り返ることにより現代の私たちがこの事件を知る、記憶することの意味を深区考えさせる。戦後80年の日本だって他人事ではないとも感じさせる日本人監督の力作。ー阿部海太郎の音楽がNHKの番組「世界で一番美しい時」?と同じなのは最初ちょっと違和感を禁じえず。まあ、とても印象的な音楽なので最後はこれでよしか、とも思わないでもなかったが…。(8月16日 新宿K’sシネマ 180) 


➇灼熱の魂
監督:ドニ・ヴィルヌーヴ 出演:ルブナ・アバザル メリッサ・デゾルモー・ブーラン マキシム・ゴーデッド 2010加・仏 131分

2010年作品のデジタルリマスター公開ということで、え、見落としていたのかなと、記憶のない題名・概要に時間もちょうど合うし、ということで見に行く。が、見ているうちにあれ?これは見たような気がする(なんという情けない記憶力)…。で、帰って確認すると、以下「映画日記」があった!2011年12月に日比谷、TOHOシャンテで行ってみていた…。以下は当時の「映画日記」(まだBLOG公開していなかったし、基本的には感想はまあ同じということで)
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カナダに住むアラブ系の双子の姉弟。母としては心が開かれていなかったと感じさせる母の病死、その遺言書で姉弟は突然に、聞いたこともない父と兄を探し手紙を渡すよう指示される。乗り気でない弟を置いて、母の故郷(どことは指示されてないのだが、多分ヨルダンがモデル?とか)を訪ねた姉は母の隠された前歴を探り出し、政治犯だった母が獄中で拷問係にレイプされ、子どもを産んだという衝撃的な事実にたどりつく。姉に促され兄を求めてアラブに飛んだ弟がたどり着くのはさらに衝撃的な事実であり、母がそれを知った経緯を含め、乗り越え難い事実への母としての立ち向かい方を子どもたちは知らされることになる。サスペンス・ミステリーとして作られているが、けっこう丁寧に伏線がはられ、セリフなどにもそれが現れているので、見落とさなければその衝撃的な事実には、主人公たちよりも観客が先にたどり着けるような仕組みになっていて、もっとも事実が衝撃的だから、あ、こういうことかな、でもまさか?と思ってみていくと、やはりそうだったという映画。最後まで片時も目を話させないような吸引力で引っ張っていく。ただし、母1949年生まれ2009年死去(墓石に彫ってある)、息子1970年生まれで、この中に母の13年間の投獄、その12年目あたりでの妊娠、カナダ移住以後の18年の職歴(いずれもセリフにある)と見ていくと、この中にその衝撃的な事実を潜ませるには時間の勘定が合わないのではないのか?もしくは時間の勘定に合わせたキャスティングにはなっていないのではないかという感じが消えず、それが映画の衝撃にいささかの嘘っぽさを感じさせてしまうのは否めない。
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すごい、丁寧に理屈っぽく見ていたなあ。でも確かに…。それと今回気になったのは双子たちにとって「兄」である男のかかとに彫られた入れ墨が母子再会?のキーになるのだが、この風習(赤ん坊に入れ墨を入れるシーンもある)って?
主演のルブナ・アバザルはその後『モロッコ、彼女たちの朝』(2020)で印象深く、監督のドニ・ヴィルヌーブもこのあと『ブレードランナー2049』(2017)や『DNUE デューン砂の惑星』(2021)などを見た。砂漠映画作りの名手?
(8月16日 新宿シネマカリテ 181)

8月16日、帰りに新宿西口で「安倍国葬反対」集会に参加しました。



⑨なまず                                     監督:イ・オクソプ 出演:イ・ジュヨン ク・ギョファン ムン・ソリ 2018韓国 89分

2019年大阪アジアン映画祭ではグランプリを受賞したのだが、当時の私はノーマーク、見てもいなかった、というので見に行くが…。韓国のインディーズ映画で若い女性監督はニューウェ―ブ界の旗手とされている?とか。この映画は韓国人権委員会からオファーをうけて人権映画?として作られたとかも聞いた。ウーン。昔修道院だったが今や高級医療?を提供するとされる聖マリア病院のレントゲン室でのスキャンダラスな1枚のレントゲン映像(ハハハありえん!)からはじまって、その映像の被写体と目された看護師ユニョンと相手の男ソンウォンのしょぼい感じの同棲生活、患者以外にただ一人病院関係者として登場する副院長の3人の物語?を軸に、飼われたナマズのナレーション、病院宣伝?に励む副院長とゴリラのエピソード、街に突然出現するシンクホールなどが出てくるのだが、本当のところそれらの関係とか物語の意味というか流れがよくわからない。
飽きはしないし、眠くもならないので一種の吸引力は私にも働いているのだろうが、どうもイマイチとりとめもない中で、昔の女との関係を告白したソンウォンが突然に出現したシンクホールに呑み込まれ、ユニョンは茫然とたたずむ…というわけだが、主演イ・ジュヨンはその後『梨泰院クラス』(日本のテレビドラマにもリメイクされているが、本家のほうは残念ながら未見)でブレイクしたそうだが、『ベイビー・ブローカ―』でぺ・ドゥナの相方として張り込む女刑事をしていた人。ムン・ソリのコメディエンヌぶりも楽しかった、というところか…(8月18日 新宿武蔵野館 182)


⑩サバカン
監督:金沢知樹 出演:番家一路 原田琥之佑 尾野真千子 竹原ピストル 貫地谷しほり 草彅剛 岩松了 茅島みずき 2022日本 96分 ★

1986年、長崎県長与町の少年二人の物語を、長じて作家になったその一人の目で回想するとい物語を『スタンド・バイ・ミー』になぞらえている映画評を見たが、まったく。少年時代はつらいことも美しく、特に映像化されると、タンタン山の頂上からみた緑濃い景色、ブーメラン島の浮かぶ海のこちらはまた何とも言いようのない深いしかし透明感もある海、少年たちの住む古びた家や、かたや廃屋じみた貧しいたたずまいの家の生活感まで、なんとも懐かしい映像になっている。そこでの少年、ま、感覚としては竹原ピストル演じるお父さんのいかにも昭和くさい面持ちよりは、ぐっと現代っぽくはある。ただし見ているうちにラムネやテレビを見ない暮らしとか、妙に古臭い部分と筋ケシに夢中とか、子どもたちが寄ってたかっていじめをするとかいう昭和風俗の新しさ(貧しい竹本の家にもちゃんと電話はありというのも)の混合具合が妙に気になってきたのだが、考えてみれば、当時の子どもが見たその時代と、親世代に近い私が見たその頃ってやはり微妙にずれているのかもしれないと思い当たる不思議な感覚を呼び覚まされるところがあった。お話はーウーン意外性とかとは無縁(事件は起こるが)の少年時代の友情物語ではあるが、周りを取り囲む大人たちが乱暴ではあるが優しいし、子どもたちの行き違いの妙な理屈っぽさもリアルで、ちょっとジーンとしたりもして、まあいい感じの一本に仕上がっている。(8月22日 府中TOHOシネマズ 183)


⑪天使の涙(堕落天使)
監督:王家衛 撮影:クリストファー・ドイル 李屏賓 出演:黎明 李嘉欣 楊采妮  莫文蔚 金城武 陳萬雷 1995香港 96分

なぜか昼の回も含め連日満席に近い?(昼はさすが前5列くらいは空いた席が多いには多いが…)人出で、この人気って何なんでしょう。チラシは一人2枚までしか配らないとかそういう宣伝戦略も功を奏している?のかもしれないが。で、ともかく3日前の深夜0時すぎにまあ、望みの席を何とか抑えて出かけた特集第1本目。これは多分劇場では1回しか見ていない。とてつもないクローズアップと動き回る画面と、出てくる人物黎明と李嘉欣・莫文蔚パートのからみと金城武・楊采妮のからみとの関連性がよくわからないのだけれど、それでもなんていうのかな各登場人物の性格とか思いはよく伝わってきて孤独な人々のウォン・カーワイ世界をなつかしく見る。それにしても黎明、莫文蔚、やたらと若く、黎明(レオン・ライ)は、あれこれ?黎明?とおもうほど少年ぽいのであった。(8月23日 シネマート新宿 184)


⑫恋する惑星(重慶森林)
監督:王家衛 撮影:杜可風 劉偉強 出演:林青霞 梁朝偉 王菲 金城武 1994 102分

これも並行する無関係とも言えるストーリー。実はこちらが先で、ここで積み残したエピソードで作られたのが⑪『堕落天使』だったのだとか。こちらは有名な二人の警官223番と633番の恋のエピソードで、トニー・レオンの警官の制服姿が何とも好い…まだ全然オジサンぽくならず、CAとの恋を失って疲れてはいるのだが、疲れのそこから若々しさが浮かび上がってくるようなトニーの色っぽさは、このあと彼が何作も王家衛映画の主役を務めたこととの納得につながる。
二つのストーリー、林青霞と金城武のパートは、同じホテルで一夜を共にする(といってもぐっすり眠りこけるブリジット)ものの、二人のそれぞれの一人芝居を見ているように接点なく、でも林の老練と、それだけに台湾なまりの北京語、広東語、日本語まで駆使して相手を求める金城の若い悲しみがみずみずしく伝わってくる感じ。これは王菲の乱暴な一途さの表現にも感じられることで、こちらはしっかり画面を支えるトニー・レオンの威力?もあって、ファスト・フード店『ミッドナイトエクスプレス』は1年後ちょっとかすかにシアワセな気分につながるのである。ストップモーション多用の王菲の心情とか、あの長いエスカレーターとか、なつかしさ満載の90年代香港も…(8月24日 シネマート新宿 185)



⑬ブエノス・アイレス
監督:王家衛 出演:張國榮 梁朝偉 張震 1997香港(広東語・中国語・スペイン語)96分

接触すると言っても0.1秒?というする違いの⑪⑫から、こちらはくっついたり、離れたり、離れてもまた相手を求める男たちの物語、映画館でも、ビデオでも何回見たかわからないくらい見ている映画なのだが、やはりこれは特集見物からは外せないーしかしなんで?今回の特集からは『欲望の翼』がはずれているのは?配給権の関係だろうか。ザンネン!ー『欲望の翼』から出発したレスリーと(この映画にも最後に印象的なワンシーンを演じてはいるが)『重慶森林』から出発したトニーが、それぞれの映画で演じたような性格をちょっと引き継いだまま合体してコラボを果たしたのが本作という感じなんだけど。「やり直そう」「やり直そう」といいつつ、結局やり直すことはできず地球の裏表に別れ、ファイに捨てられるウィンの悲しみと、彼とやり直すことの無益に若いチャンを求めて捨てられるわけではないが離れていかれ、台湾の屋台で彼の写真を盗むファイのまた違った悲しみーだけどこちらには希望もあってーが、またまた、当時香港返還直前だった世相の反映に思われ、隔世の感がある。(8月25日 シネマート新宿 186) 


⑭2046
監督:王家衛 出演:梁朝偉 章子怡 鞏莉 劉嘉玲 張曼玉 王菲 木村拓哉 董潔 張震 蕭炳林 2004香港(北京語・広東語・日本語)

1960年代数年間の12月24-25日をワン・ポイントに、作家チャウの生活と関わる女性たち。『花様年華』の実らぬ恋の相手だったスー・リーチェンを心の奥にとどめながらシンガポールにわたった彼と、同名のスー・リーチェン(黒蜥蜴)の出会いと別れ、香港に戻り2407室に住む彼と2046の隣人バイ・リンの付き合い、並行して日本人会社員タクとホテルの娘ワン・ジンワンの父に反対される恋。そしてバイリンと別れたチャウがワンジンと付き合いののち、彼女を日本に送り出すというか去られるというか…一方2046の前の住人ルルは『欲望の翼』のヨディの恋人で、チャウとも遭遇し、ヨディ似(もう少し精悍か)のCC1966 の影もちらちら…。これらに並行してチャウが書くSFの2046という世界。そこのヒーローはタクがモデルで、そこに向かう列車の中でアンドロイドのワン・ジンと、ルル/ミミがタクに出会い…
60年代三部作の三部目はレスリーの死を受けて彼へのオマージュというか本当だったらタクの位置はレスリーだったかもと思えるような作りでもあり、大スターたちがぞろぞろ出てくるのだが、彼らはチャウを一応芯にはするものの、それぞれが映画で出会うことなく(つまり多分撮影時も彼らはほとんどであってはいない)いくつかの恋や話が並行していくというのは、そういうことによる作りの結果なんだなと、再度深く納得するような、なかなかの工夫の構成でさすが、と思わされた作品ではある。しかし、会わない人々の総合体みたいなのは、なんだか寂しいなあとも思わされてしまうのである。(8月25日 シネマート新宿 187)

⑮ストーリー・オブ・マイ・ワイフ
監督:イルィデコー・エニェディ 出演:レア・セドゥ ハイス・ナパー ルイ・ガレル 2021ハンガリー・ドイツ・フランス・イタリア(フランス語・英語) 169分

『心と体と』(2017)も『私の20世紀』(1989)も印象深く、ユニークで面白かった…が、映画内容と長さでちょっと腰が引けたが、彼女の監督作だからきっと何かあるだろうと期待して土曜日朝いちばん8時50分からの上映に。もちろんすでに1日1回にはなっている(多分終映も間近)のだが、案外観客が多くて、なるほど!
で、さて映画は・・主人公の船長ヤコブの過ごす海の世界の色合いの美しさがすばらしい。ということは彼にとって海こそが安寧の世界として描かれているということ?その海上で体調を崩し食欲をなくす彼に、船のコックが妻帯をすすめるところからーこのコック後の方で老妻と若い二人の妻を自分の母に監視させ監禁していると語る場面があるー(これがイルィデコー・エニュディの世界だよね。気を付けてみていないと見逃しそうだが)。
休暇で陸に上がったヤコブは友人(この友人の存在もまたエニェディ的かな?上り下り浮き沈みで要所要所に現われる)にこの店に最初に入った女性に求婚すると宣言しそして実際に求婚・結婚をする。相手リジーを演じるのがレア・セドゥ。まあこの映画、最初の場面での彼女がどうやって食っているのかわからないのだが、船長の高給(これもわからないがそうなんでしょうね)に養われ、彼の帰りを待ちつつ、優雅な暮らしぶりで、船長ヤコブは次第に苦しむようになるわけだが、意外と貞淑で実は夫を深く愛しながら、表面はファム・ファタルという何とも不思議な(多分男から見るともっとそうなんだろう)依存的っポイ(ではないのだが)でありつつ自立している女性像で、男は振り回され苦しみ自殺まで図ったりするわけだ。しかし、なんかちょっとバカみたい?というかウーン、やはり海で船(まさに女の暗喩になっている?しかも乗っているのは男ばかりで真っ裸で大勢の男が水浴する場面があったり)を操っているのがいいんじゃない?と思っているとその通りになっていく。しかもというかだから?「妻を連れて」といいつつ結局最後まで妻が船に似ることはない。
展開としては最初のスピード感が嘘のように後半はタラタラと7章(6章+7年後)の展開で、最後にはウーン(男の喪失、というかあ、やっぱりバカだね、というか)と意外性もなく終わる169分。不思議と眠くはならないがでもやっぱり長すぎるなあ…。アングルのユニークさは健在という感じ。一つ一つの場面が絵のように構成されている。二人のベッドシーンは二つくらい向こうの部屋から撮ったという引きで、これも含めて…(8月27日 新宿ピカデリー)


⑯雪道
監督:イ・ナジョン 脚本:ユ・ボラ 出演:キム・ヨンオク キム・ヒャンギ キム・セロン 2015韓国 121分

『アジョシ』『冬の小鳥』『私の少女』で印象的だった子役キム・セロン15歳の作品で細身ながらスラリと伸びて目元も幼い頃の印象のまますっきりした美少女になっている(その後の20歳過ぎの彼女の写真はどうも整形した?と思えるほどに目の印象が変わってしまっているので)のに感動??日本軍に強制徴用された従軍慰安婦の韓国の少女たちの物語で、深刻な話にあるまじき感想ではあろうが…。
話の展開はまあ予想通り?日本軍の描き方も類型通り?というか類型から外れた部分はなんか日本軍じゃないよなという感じは否めず、梅毒に侵された少女が銃殺されるという荒々しい恐ろしさの場面以外は、わりと描き方も間接的で、慰安婦としてというより、単に半監禁されているような場面が目立つし、少女たちも意外に清潔?な感じだが、これは光復70周年記念に作られたTVドラマの劇場版なのだそうで納得…。日本軍は撤退に際して朝鮮人慰安婦を「始末」として銃殺する。その現場を逃げ出した幼馴染の二人の少女の一人が、逃亡途中撃たれて死んだもう一人を看取り、さらわれるようにして徴用されて記録がないので、記録のある死んだ少女の名を名乗って帰国補助を受け、86歳まで彼女の面影とともに暮らす。、最後に家のない現代の中学生の少女を助け、従軍慰安婦補償を訴える闘いに参加していくというのも、なんか出来過ぎの感もあるがよくできている。そしてロマンスも幽かに加味してさすがの韓国映画だ。
劇場公開の上映運動をしている会の主催した上映会で、名前だけは知っていたシネマハウス大塚は50何人とかの小劇場で、ついた上映15分前にはほぼ満席、最後の1席になんとか…と思ったら、多分なるべくたくさんの人に見せたいのか、あるいは前売り鑑賞券をもってぎりぎりに来る人もいるのか、真ん中の通路に丸椅子を持ち込みまだまだ詰めるわ、詰めるわ。こういうの、って消防法に触れないのだろうかと心配になるぎっしり。主催者は「今のうちにトイレに行ってください、上映開始を遅らせます」と叫び、映画慣れしていない観客も多いようで最前列には大きな男が陣取り(ま、それは仕方がないのだが)そのうちの一人はキャプのつばを立てたままの映画鑑賞。字幕を見るのに首をあちらに傾けこちらにねじりという感じで大変疲れた。私は映画館のチラシでこの上映会を知ったのだが、見たところ多分慰安婦関係の運動をしたりしている人が多いのかもしれない。9月12日から15日に追加上映があり、劇場公開のためのカンパというのも集めていたが、ウーン。映画そのものは悪くないが、この上映環境はね…コロナの感染も心配になるほどだ。(8月27日 シネマハウス大塚 189)


⑰裸足でならしてみせろ
監督:工藤梨穂 出演:佐々木詩音 諏訪珠理 伊藤歌歩 甲本雅裕 風吹ジュン 2021日本 128分 ★

病床にいる盲目の養母のために、世界各地を旅行したとして、近くのあちこちや、家の中で音を作り出して録ったテープを送る槙。ひょんなことから彼と知り合って、一緒に録音をする中で彼に惹かれ、彼のほうもひかれていくが互いになかなか相手にその思いを告げることはできず、取っ組み合うことにしか昇華できない、父の不用品回収の仕事を手伝う直己がこの映画の主人公ということになるが、砂場で砂漠の音を録ったり、山の方の滝に行ってイグアスの滝の音を録る、槙の職場だったプールに回収した不用品の中にあったゴムボートを浮かべ青の洞窟の音を録る…なんかある意味荒唐無稽のような話ではあるが、二人の思いがしっくりそこに落ち着いて美しい情景になる。直己は録音を手伝えというマキを自分の仕事に誘い、二人は一緒に働くようになって、養母を連れて本当の世界旅行に行こうと話し合うが、養母美鳥がなくなり、直己の父は事業の不調で息子の貯金に手を付け、金もあてもなくなった直己は事件を起こす…。二人の青年の愛ゆえの不器用さというか、が映画全体を覆い切ない気分にさせつつ、終わりはそれまでのゆったりした展開からあっという間に時は過ぎ、大人なった二人は…?という感じで、これも予想の外ではないし、それを映像に表した手腕はなるほどとうなづける。あまり期待せず、単に『ブエノスアイレス』の影響を受けたー「音と青年」というテーマかな?というので見たのだが、いや、PFFスカラシップを受けて作られたという若い女性監督のこの映画広いものというか、見つけものだったという感じ。(8月29日 渋谷ユーロスペース190)


⑱長崎の郵便配達
監督:川瀬美香 出演:イザベル・タウンゼント 谷口稜暉 ピーター・タウンゼント 2021日本(英語・仏語・日本語) ★★

聞き覚えのあるピーター・タウンゼントはもともとは戦時中英空軍のパイロットだった。マーガレット王女との恋が取りざたされるも周囲の事情で破局(で、この恋が『ローマの休日』のモチーフになったのだとか)その後1年7か月?にわたるランドローバーを駆っての世界旅行を仕遂げた後、ジャーナリストになる。80年ごろから?、長崎で谷口稜暉(スミテル)氏を取材、84年に『THE POSTMAN FROM NAGASAKI』を発表。谷口氏は郵便配達をしていた16歳の時長崎で被爆し、背中一面の火傷の治療がアメリカの記録フィルムにも残されている人で、自らの被爆体験を語りつつ核廃絶を叫んで運動を続けてきていた人。この映画は著書を読んだ日本人監督が、谷口さんと会い、タウンゼントの娘イザベルと連絡を取ることから、イザベルの父への思い、父の友だった谷口氏を通しての長崎・原爆へとつながる思いを描いた作品。
ピーター・タウンゼントはすでに亡く、谷口氏も2017年に亡くなったが、タウンゼントが残した谷口氏へのインタビュー録音、谷口氏周辺の人々や、取材に立ち会った通訳などを、長崎を訪れたイサベル(一家・夫・ふたりの娘)を訪ね、父のたどった道を再びたどりつつ父の残した録音を聞くという感じで、視覚的にも音源的にも、そして挿入される音楽や自然音(タウンゼントが好きだった)などもぴったり調和して、明るさや落ち着きのある心地よい映画に仕上がっている。
中でもイザベラが二人の娘を伴って原爆資料館などを見に行く姿、また英語学校(タウンゼントは戦後パリに移住したとかでイザベラもフランス在住らしい)の中学生たちの演劇クラスを指導して、「子供と戦争」というテーマで、強制収容所から帰還した少女の話に、原爆やこの長崎の郵便配達の少年なども絡めて演劇を作って上映するあたりの映像が、過去の父親たちの友情からだけでなく、未来に向けて平和を求めていく活動の表れとしてなんとも好ましい、というか、この映画のすばらしさを支えていると思えた。(8月31日 シネスイッチ銀座191)

⑳花様年華
監督:王家衛 撮影:杜可風 李屏賓 出演:梁朝偉 張曼玉 レベッカ・パン(潘迪華)2000香港 98分



今回の王家衛特集最後の1本。要は思い切って自分を解放することはできないような夫婦の関係性とか、伝統のくびきとかの中で近代化した男女の行為のあまり伴わない?不倫(マギー・チャン扮するスー・リン・チェンが盛んに「一線は越えられない」と拒む)の話で、なんか、なんで?と思ってしまうような?内容なのだけれど、それゆえに、不思議な陰影を伴って心に残るという傑作なんだなあ。
同じアパートの違う家主(この家の構造が、いかにも香港なのだろうけれど、ちょっと理解しにくいところもあり)の部屋に偶然間借りする2組の夫婦の、片方の夫と片方の妻がすでに不倫、日本の会社に勤める夫は日本出張のときに自分の妻と隣家の愛人に同じハンドバックを買ってきたりするー社長の妻と愛人の土産を隣家の夫に頼んだり、出張に行く隣人に、同じアパートの面々が電気釜の購入を頼んだり、これってやはりいかにも中国的だよなあ。そういう中での不倫はなかなかにすさまじいものがあり、そのすさまじさは一方は声だけ、一方は互いに相手に不倫をされた者どうしが、そのことを話し合いながら近づいていくというなんやらこれもあり得ぬすさまじさにつながっていくわけだが、それが何というか、美しいマギー・チャンのチャイナドレス(ヘアスタイルも60年当時の流行かもしれないが、影になると妙に頭でっかちの三角形という感じでちょっと妙)と、神経質そうでオジサンくさいスタイルなのだが、妙に色気をにじませるトニー・レオン、杜可風風モダンと李屏賓風しっとり色合いのビジュアルにかぶっていく京劇風だったり歌謡風だったり、印象的なテーマ音楽で落ち着かせてしまう、これはまあ奇跡のコラボかも。そして最後までチャウは追い、スーに心を残し、スーは意外に冷たくどこかで暮らしていくというふうな喪失が2046につながっていくわけだ。(8月31日 シネマート新宿)

        (夏の高山植物特集…7月に続いて 鳥海山特集 です)

ミヤマハハコグサ

ハクサンフウロ
シラネセンキュウ

イブキトラノオ

チングルマーもう、綿毛に

ミソガワソウ

鳥海山新山はこんな岩山です

岩の上に咲くチョウカイフスマ

シナノキンバイとアキノキリンソウ

ヤマゼリとヨツバシオガマ

チョウカイアザミ

ダイモンジソウ

イワイチョウ

チングルマ・こちらはまだ花

以上でした! 9月に入って2日目、台風11号が沖縄方面に停滞していて心配ですが、
明日から雲ノ平~裏銀座縦走(雲ノ平~祖父岳~真砂岳~野口五郎岳~烏帽子岳)予定。
さあ、どうなるのでしょう。途中撤退もあり得そうな天候ですが、一応出かけます。
顛末はまた、来月に(笑)。
どうぞ、みなさまお元気でお過ごしください。

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