第17回大阪アジアン映画祭2022(+大阪中之島美術館)
蔓延防止条例下、いささかの心配もしながらも、3回のワクチン接種も終わったし決行!
①おもちゃ映画で見た日中戦争②ママの出来事③アミラ④初めて好きになった人 (喜歡妳是妳)⑤ノーランズ・マン➅徘徊年代⑦宇宙探索編集部➇赤ザクロ⑨野蛮人入侵⑩修行⑪シャンカルのお話⑫ブルドーザー少女⑬アニタ⑭黄昏をぶっ殺せ(殺出個黃昏)⑮女子學校 デジタルリマスター版⑯縁起よき時 (良辰吉時)【文末番号は今年見た映画の通し番号です】
①おもちゃ映画で見た日中戦争ー黄色い大地からー
監督:太田米男 音楽・ピアノ演奏:柳下美恵 2022日本 モノクロ94分
②ママの出来事
監督:彭秀慧(キーレン・パン) 出演:テレサ・モウ ギョン・トウ ジャー・ラウ 古巨基(レオ・クー) 2022香港 127分
③アミラ
監督:モハメド・ディアブ 出演:サバ・ムバラク タラ・アッブード アリ・スレイマン ジアド・バクリ 2021フランス・エジプト・ヨルダン・アラブ首長国連邦・サウジアラビア 98分 ★私的衝撃のテーマ賞
④初めて好きになった人 (喜歡妳是妳)
監督:キャンディ・ン(吳詠珊)、ヨン・チウホイ(楊潮凱)出演:ヘドウィグ・タム(談善言)レンシ・ヨン(楊偲泳) 2021香港94分 ★ABCテレビ賞受賞
少女マンガ?と思ったら、エンドロールで「普通の女性」がこもごもに女性との恋?というか付き合いを語るので、これってレズビアンの恋がテーマの映画なのかと、ちょっと驚く。ま、全体に白がかかった画面といい、白い壁に青家のドアの学校、白い衣装と白内障の目にはいささかつらいほどのフォーカスも甘くて美しく撮られた映画であったのは確かだし、松井玲奈と井川遥をそれぞれほわッと素朴に、少し強さを抜いたようなビジュアルの二人は、高校生時代はそれなりに微妙な感情表現もよく伝わってきていい感じだったが、20代、30代、父親が亡くなったりとかいう実人生が絡んでくると、どうにもきれいごとっぽくしか見えず、いささか退屈になってしまう。もっともこれは役者というより、ストーリーの問題だとは思うが。ーABCテレビ賞受賞。わが鑑賞眼のなさ?というか老化?かもしれないーを感じさせられてしまった!(3月16日 ABCホール コンペ 069)
⑤ノーランズ・マン
監督:モストファ・サルワル・ファルキ 出演:ナワーズッディーン・シッディーキー ミーガン・ミッチェル ターサン・カーン エイーシャ-・チョープラー 2021 アメリカ・インド・バングラデシュ・オーストラリア 101分
➅徘徊年代
監督:張騰元 出演:アニー・グエン(阮安妮)スティーブン・ジャン(江常輝)グエン・トゥ・ハン(阮秋姮)陳淑芳 2021台湾 148分
⑦宇宙探索編集部
監督:孔大山 出演:楊皓宇 艾莉婭 ロイ・ワン(王一通) チミー・ジャン(蒋奇明) 盛晨晨 2021中国 111分 ★私的特別賞!
➇赤ザクロ
監督:シャリパ・ウラズバエヴァ 出演:アイヌール・ベルムカムベトワ ボラット・モミンジャノフ カディルガジ・クアンディコフ 2021カザフスタン 113分
<ちょっと一休みして、3月17日午後は中之島美術館に行きました>
2月2日開館。開館準備から40年、収蔵された6000点から400点を選んでの開館記念展 |
設立のきっかけになった山本發次郎コレクションの佐伯祐三《郵便配達夫》1928 |
マルグリット作品を見る人々。代表的な近現代美術作品コレクションの一つ |
ロートレックはじめ19c末~20cはじめのポスター・家具などのデザインもたくさん! |
《ミスブランチ》と北欧家具(撮影が難しい) |
サイズに注意 |
建物自体は威圧的で好きとは言えなかった… |
⑨野蛮人入侵
監督:タン・チュイムイ(陳翠梅)出演:タン・チュイムイ(陳翠梅) ピート・テオ(張子夫)ブロント・パララエ ジェームス・リー(李添興) ジニー・ウーイ(黃之豫) 2021香港・マレーシア 106分
⑩修行
監督:錢翔 出演:陳湘琪 陳以文 黃柔閩 2021 台湾85分
ウーン。打って変わってリアル?な台湾家庭映画(台湾の現代家庭の問題を描いた映画はとてもリアルに見えるのはなぜなんだろう)。夫婦関係は「修行」という意味か。すべきことはきちんとするが夫に心通わず不機嫌そうな妻ーヨガ?を中心とする身体運動を伴う新興宗教に打ち込む。一方、職場ではだらだらお茶を飲み、帰りにはコンビニで時間をつぶし、家に遅い時間に戻るとものも言わず出された食事だけを食べて寝てしまう、これも不機嫌で自堕落っぽい夫。間もなくできちゃった婚をする息子と、老愛犬テリーだけがまあ夫婦を繋いでいるのだが、その関係さえも夫婦間には大きな落差があってギクシャク。そこへ執拗にかかる国際電話。もと夫の秘書だった入院中の孫柯蓉を見舞ってやってほしいという、その姉からの電話で、秘書はつまり夫の浮気相手だったということ?で妻は電話を断固拒否するのだが…。しかし、様子見のあと、やがて妻は夫を連れて孫のいる精神病棟を見舞い、老犬の性病・不妊手術騒ぎがあり、妻が予約し犬を入院させた病院から、犬を連れ出した夫が出奔、行方をくらます。妻は探偵を雇って夫を探し、最後は夫を探して乗り込んだ安ホテルで、そこだけはなかなか衝撃的な展開をする。息子の結婚式にそろって出席する夫婦…。展開的にはあまりドラマティックとも言えず、場面的にも日常的な家庭とその周辺。妻は宗教に打ち込み、映画では節目節目に鈴の音が鳴り響くーこの宗教組織がある日封鎖されることが妻の行動の転機にもなってはいるのだが、しかし、ウーン宗教が描かれる意味もあまりよくわからないなあ。で、驚くべきは不機嫌な表情を崩さず繊細に心情を演じ分けていく陳湘琪の演技か。妙に老成した中年婦人でもあり、そこに安住はしない不安や揺らぎも見せる「若さ」も取り交ぜて、すごくリアルに繊細に迫ってくるのである。さすが!(3月17日ABCホール 台湾電影ルネサンス2022 075)
⑪シャンカルのお話
監督:イルファナ・マジュムダール 脚本:ニタ・クマール 出演:ジャイヒンド・クマール シュリージャ・ミシュラ アドヴィク・マートゥル グラーム・ピール・ムハンマド アルヴィンド 2021インド 93分
⑫ブルドーザー少女
監督:パク・イウン(박이웅) 出演:キム・ヘユン(김혜윤)パク・ヒョックォン(박혁권)イェソン(예성) 2021 韓国 113分
思ったより現実的。もっとバリバリに「ドラゴンタトゥの女」ぶりを発揮するかと思ったが、そうでもなく。悪役チェ会長の自宅にブルドーザーで突っ込むまではよかったが撃たれて、そのまま捕まり懲役。で、チェ会長の方は本当に懲らしめられる結果になったのかどうかわからないまま、仮釈放になった彼女が小学生の弟と暮し、飲食店で働くところに郵便が来て彼女に幸福?をもたらす、というのはウーン、勧善懲悪でもなくややご都合主義的なまとめ方でもあるような。もっとも超人的に描かれずタトゥも普段は隠して「若気の過ち」風に描かれるのが韓国的シニカルというかまとめ方かな…。主役もたくましいとか鋭いというよりむしろ「かわいい」タイプ。(3月18日 ABCホール コンペ 077)
⑬アニタ(Anita 梅艶芳)
監督:リョン・ロクマン(梁樂民)出演:ルイーズ・ウォン(王丹妮)テランス・ラウ(劉俊謙)フィッシュ・リウ(廖子妤)ルイス・クー(古天樂)林家棟 中島歩 岩城滉一 楊佑寧 楊千華 2021 香港 137分 ★観客賞 コンペ部門スペシャル・メンション
1960年代、姉とデュエットでどさ回りをしていた少女時代から、歌謡コンテストに応募してAから始まる英名をつけ、姉アンは落選アニタだけがデビューを果たすという初期。キャバレー出演で観客の注目をひきつけ、受けなかった共演者レスリー・チャンを励まし、将来互いに無料で香港コロシアムのコンサートに客演し合おうと決意を分かち合う場面。『ルージュ』でのレスリーとの共演シーン。(レスリー・チャンを演じたテレンス・ラウ。ウーン横顔などは確かにレスリーを彷彿させるがレスリーの愛嬌と色気というか華にはやはり欠ける?)。そして他の人々は実名で出てきてそのたびに会場ではふっとため息や笑いが起こっていたが、ここだけは「後藤雄輝」という名で出てくる中島歩演じる日本のアイドル。二人のシーンは日本の古風な庭園付きの旅館のシーンでとても背景が美しく撮られているが、その美しさを入れるために、この頑張る偉大な歌手アニタの少しチープというかお手軽にも見える日本人との恋愛に説得力を持たせるために入れた気がする。そして互いの社長などの介入もあって別れた二人の終わり近くの再会場面も…。さらにマフィアとのかかわりが取りざたされタイに隠れ住んでいた半年(ここでの相手役は楊佑寧)と復活。そしていよいよ2003年、サース禍の始まった香港でのレスリーの死(このあたりの映像は葬儀シーンなども含めほぼすべて実物映像。アニタとレスリーは同じ事務所だったので、レスリー映像や歌の版権使用は問題なかったとか?)そしてその後のアニタのガン闘病、その中で香港を励ますために企画した最終コンサート(死の45日前)、昔からついているデザイナー・エディ(ルイス・クーの熱演、だけどどうなんでしょうあまりデザイナーという雰囲気ではないよね。ルイス・クー。実物のエディさんもあんな感じなのかなあ。一方アニタ・レスリー両方のプロデューサーだったフローレンスを演じているのはミリアム・ヨンで、こちらは本人の感じをよく出していた気がする)が作ったウェディング・ドレス(これは実物映像も出てきたが、微妙にデザイン違いで、しかも本人アニタと役のアニタの雰囲気にちゃんとあわせてあって、実物映像を使いつつ配慮すべきところはしている?ーデザイン権の問題で同じデザインは使えなかったのかもしれないが)で「夕陽之歌」を歌って去っていくところまで、本人の迫力ある映像と、若い時はいいのだが晩年近くにはやはり本人映像には迫力負けという感じはするが、でもかなり頑張って、役者ルイーズ・ウォンが演じるアニタ・ムイをちゃんと造型していたルイーズの好演も印象的。どの場面も印象的ーそしてアニタ、レスリー、その他の人々の実物映像もしっかり入れて一種ドキュメンタリー仕立てにすることによって往年の彼女・彼のファンをも納得させ、ウルウルさせてしまうような構成ぶりもなかなかすごい。やはり迫力・迫真の一本というべきだろう。わざわざ大阪に見に行った甲斐があったと感じさせてくれる作品でもあり、満席、熱に満ちた会場反応でもあった。当然の?観客賞。
⑭黄昏をぶっ殺せ(殺出個黃昏)
監督:リッキー・コー(高子彬)製作:林家棟 出演:パトリック・ツェー(謝賢)フォン・ボーボー(馮寶寶)林雪 鍾雪瑩 サム・リー(李燦琛) 2021 香港 99分
もともと敏腕でならした殺し屋3人組が老いて、いまだ殺しを請け負っているが、病み着いた夫婦に頼まれての自殺ほう助のような殺しとかで、実際に手を下すチャウ(謝賢)は嫌気がさしている。そんな時に請け負った殺しの現場に踏み込んで見つけたのは一人の孤独な女子高校生。彼女はチャウにつきまとい、話が妙な展開に。仲間のフォン(馮寶寶)は息子夫婦に援助をしつつ家族からはないがしろにされ、経営している家も店も息子が売り払い老人ホームへと入れられてしまう。もう一人の仲間運転担当のチャウ(林雪)は太った体に病を抱えつつ、通う風俗店の若い女性に新たな恋を求めて貢ぐが結局彼女は別の男との結婚を決める…というわけで、それぞれに不如意な老後を送っているわけだが、実は妊娠しているにもかかわらずボーイフレンドに捨てられたこの高校生を助けるというかかわりを通して、まあ、3人が新たな生きがいを見出していくという展開。
⑮女子學校 デジタルリマスター版
監督:ミミ・リー(李美彌)出演:秦漢 恬妞 周丹薇 沈雁 林南施 1982 台湾92分
屏東女子中学を舞台に撮ったというが、実際には高雄なども含め台湾南部らしい景色とそれにもかかわらず暑すぎずー(とはいえ、映画のすべての場面で中学生は夏制服姿だが)さわやかな雰囲気に撮られている学園ドラマ。とはいえ内容は全然さわやかではなく、二人の女子中学生(というか日本風に言えば高校生)の友情が、クラスメートの「同性恋(同性愛)」ではないかという密告、教師(一人は当事者の姉というのが、まあこういう設定でないと、女性教師を悪者にせず介入させるのは難しそう)の不当というより、善意とはいえ不要な介入により二人が傷つき、その修復にはとんでもない犠牲を払わなければならなかったと、簡単にいえばそういう話だ。当事者二人のうち一人は父母が離婚家庭ををかえりみない父と暮す廖智婷、もう一人は失恋して妹と同じ学校に異動してきた姉と同居する楊佳玲というわけで二人の不如意な日常が絡んでいるところもいわゆる同性愛を描いたというよりは、当時の窮屈でつらい社会環境や教育の場でのものの見方を描いたという感じで、こういうふうに当時はモノを見ていた、見られていたのだという意味ではとても面白い歴史の記録みたい。このあと台湾ニューウェーブへと進んでいくのだろうが、この時点ではまだ全編にリリカルな感じで音楽が流れたり、割と古風なメロドラマ風に作られている。(3月19日 シネリーブル梅田4台湾電影ルネサンス2022 080)
⑯縁起よき時 [良辰吉時]
監督:ホアン・シー(黃熙) 製作総指揮:侯孝賢 出演:李康生 マイケル・ホアン(黃仲崑)デヴィット・ウー(吳大維)周采詩 ケニー・イェン(顏毓麟)シルビア・チャン(張艾華)2022 台湾・シンガポール 54分
一瞬晴れた?帰り新幹線の車中から。富士山には会えず。 |
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