【勝手気ままに映画日記】2020年10月

 

やっと行った!秋の山 東京快晴で期待していったのに、なぜか小仏峠の西は曇り空。期待の富士山には会えず。帰り道ようやく晴れて樹間から望む三つ峠です。―10・21倉見山

①父の初七日②フェアウェル③浅田家④天竜一座が行く(龍飛鳳舞)⑤フライト・キャプテン(中国機長)⑥望み⑦82年生まれ、キムジヨン⑧ラスト・ブラックマン・イン・サンフランシスコ⑨停車⑩盗命師⑪星の子⑫異端の鳥⑬ある画家の数奇な運命⑭世界で一番貧しい大統領⑮ハッパGOGO 大統領極秘指令⑯博士と狂人⑰ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男ピエール・カルダン ⑱朝が来る⑲みをつくし料理帖⑳薬の神じゃない(我不是薬神)㉑スパイの妻

ようやく秋の映画シーズン。映画祭突入前ですが春にあるはずで延期になった「台湾巨匠傑作選2020」も行われ、これを含めて中国語圏映画(もしくは中国語が出てくるえいが)は7本、日本映画も6本、それ以外の映画7本でなかなかいいバランスです。★は1個「うん!なかなか」★★「すばらしい!」★★★「もう一度見たいほどすばらしい」という感じでしょうか(あくまでも個人的意見ですが)。


①父の初七日
監督:王育麟 劉梓潔 出演:王莉雯 呉朋奉 陳泰樺 ★★ 2009台湾93分

初見は2012年3月、その年の暮れには上映会もやり、何回も見た映画だが、『停車』を見たいと3時間前に行ったのになんと満席売り切れ!夕方の予定まで何かいい映画はと探したのだがダメで、結局これを見る。7~8年ぶりにみて、ん?私が年を取り、眼もなんだかおぼつかなく?映画に出てくる道教の葬式も前に見た時には全然知らない珍しい風習だったのが、今はあまり物珍しく感じなくなったせいか、ちょっととりとめない感じでつかみどころなく、物語世界にはイマイチ入り込めない感じがした。ただすべてが終わったあとの人々のたたずまいが、あっさりはしているのだが印象的に描かれているのは前の感想と同じ。それとヒロインと父の情愛というのがなかなかに昔より深く感じられたのも確か。エンドロールに18歳の誕生日の父娘の会話がかぶっているのもなるほどな、という感じ。(10月3日 新宿K's シネマ 台湾巨匠傑作選 165)


②フェアウェル
監督:ルル・ワン 出演:オークワフィナ(林家珍) ツイ・マー ダイアナ・リン チャオ・シュウチェン

2019米 100分4月公開がコロナで延期になって半年、ようやく見ました!幼いころ両親の移住に伴われて長春からNYに移住し、30歳を迎え学芸員求職中だがうまくいかないビリー。長春から祖母がガンで余命3ヶ月という知らせがくる。祖母には病気を知らせず、いとこの結婚式を早々にあげて、その機会に祖母を見舞おうということに。しかしその成り行きに不満(本人告知なぜしない?)なビリーの言動を不安に思った両親は彼女には来なくていいといい残し、中国に旅立ってしまう。期待していた学芸員の不採用通知を受け取ったビリーは、幼い時からかわいがってくれた祖母に会いたくて中国に旅立つ。あとは中国での一家再会や、病院医師まで巻き込んでの祖母への「隠し」大作戦? いとこの結婚(これも祖母のために急いであげる結婚式なんて、いとこはともかく、新婦はどうなのよと思うが、なんかかわいらしいというか線の細そうな日本女性「アイコ」という設定になっている)と、ビリーの何となく疑問な不服面をしり目に話が進み、結局ビリーも祖母には何も打ち明けず、別れまでが淡々と描かれる意外に肩透かし(文化のせめぎあいや葛藤はビリーの中だけでおこり、ビリーの目から見た異文化社会という描き方だ)な…。「実話に基づくウソの話」らしく、最後の演者とは違う(?)多分実物の祖母が6年後も元気というウソみたいな笑い話みたいな写真がエンドロールに現れて、それになんか救われる?と言ってもいいかも。(10月3日 新宿TOHOシネマズ 166)


③浅田家
監督:中野量太 出演:二宮和也 妻夫木聡 平田満 風吹ジュン 黒木華 菅田将暉 2020日本 127分

予告編等や出演メンバーから見るともう少し「派手な」見せ場があるのかしらとも思ったが予想に外れ、淡々と地味目に―後半震災避難所場面中心だから…ということもある―展開していく。が、もちろん役者陣のしっかりした演技、実話ベースで先が見えている?ゆえもあって安心して見ていられる。その中で主人公の「求婚」?-うーん実話ベースなのかもしれないが、幼馴染がそのまま発展したみたいな恋人の造形はリアリティがないなあ、あんなもの分かりの良い女性におんぶ抱っこしてしまえるのは二宮だからじゃないの?と見えてしまう。ただ、ひげ面刺青はどうもあの童顔には似合わないが…。(10月5日府中TOHOシネマズ 167)



④天竜一座が行く(龍飛鳳舞)
監督:王育麟 出演:郭春美 呉朋奉 タイ・パオ ワン・リーウェン 2012台湾 111分 ★

『父の初七日』の王育麟監督の第2作目。王監督作品は、次の『阿莉芙・ザ・プリンセス』もそうだが、映画的にはわりと無名(少なくともメジャーなスター俳優ではない)の役者を主人公に、まわりに主人公に負けるとも劣らない個性的な面々を配し、そこを呉朋奉が引き締めるという感じで作られている、ある「社会」を描いた群像劇という感じで、さまざまな人が個性を発揮しつつ複線的な話で進んでいくので意外に作品世界を納得理解できるまでに時間がかかる感じがする。この映画は3作の中ではその傾向がもっとも強い感じで、まずは高尾・鳳山の歌仔戯(コアヒ)の一座の看板女優(実際にその方面でのスターだという)が交通事故がもとで怪我をして足が動かなくなり、事故を起こしたバイクの青年がなんとその女優にそっくりというわけで代役に仕立てられる、周りを囲む一座の面々の慌てぶり、それぞれの思惑。女優の兄?で元は名優だったのに身を持ち崩し妻と、劇団の女優の間でうろうろという男を呉朋奉が演じて後半では実際にコアヒも演じて活躍する(彼はこの5月に亡くなったとか…残念!)というわけで、その間足の治らぬ女優がインドに旅行して新しい男と知り合い、やきもきする彼女の夫で座を支える「入り婿」的な男とか、話が絡んで雑駁な感じがして少し面倒くさい。が、コアヒの演目や一座の面々にはとても楽しめて、一つ台湾の側面を知ったような感じがする。(10月7日 新宿K'sシネマ 台湾巨匠傑作選 168)


⑤フライト・キャプテン(中国機長)
監督:劉偉強 出演:張涵予 欧豪 杜江 袁泉 張天愛 李沁 2019中国 111分

2018年5月14日四川航空8633便が重慶からチベットラサに向けて飛行中、操縦室のフロントガラスが突然破損、副操縦士が外に半身を吸い出されそうになり、その後なんとか操縦席に戻したものの、零下30度の上空での必死の操縦のもと成都になんとか着陸して事なきを得たという実際の事件から、2か月後に企画され9か月後に完成したという「実話に基づいたドラマ」。

航空機のパニック映画というのは難しいなーというのは実際の航空会社に応援を頼むとすればその航空会社の人為的な事故などは描けようもないし、実録ものでも大勢の死者を出したような映画は描きにくい(記録片であればともかく)―御巣鷹山の事故を描いた『クライマーズ・ハイ』(2008原田真人)も事故そのものというより、それを報道する立場を描いた映画だったー思い当たるところでは『ハドソン川の奇跡』(2016クリント・イーストウッド)くらいかと思われるが、あちらはまあ、850m上空からの生還で、こちらはヒマラヤの雪山上空1万メートル(6700m以下の飛行は危険とかいう指示が出る)を窓から半身出したままの飛行というわけで迫力の差は歴然。まあ、誇張はあるだろうが(ガラスにはヒビが入っただけという話も聞いたが、それでも大変だ!)実際に起きて死者が出なかったからこそ、ただもうその飛行シーンと危機シーンの迫力だけで見せる映画だ。といっても飛行機の乗員、地上の面々、観客の個性などもそれなりに描かれているし、飛行前の航空機での人々とか、事故に対する中国の民間航空の対応なども緊迫感あり、かつなかなかしっかりしたものと思わせるような描き方をしている。

機長の働きを賞賛して「愛国映画3」の1本として評判、観客動員したらしいがその割には「愛国的」な色調は強くないーというか愛国であろうとなかろうと、こういう事故が起きたら対応は一つだよね。ただラサが目的地ということもあり、やはり「チベットはオレのもの」とさりげなく主張している感じはなくもない(同じ「愛国映画」とされた『クライマーズ』ほどではない)。原題『中国機長』で張涵予が幼い娘の誕生日を祝おうとする私生活部分も含んで描かれている(他の登場人物は私生活まではほとんど描かれない)が、実際の遭難場面での活躍はそれほど傑出したリーダー性で描かれるわけでなく、むしろ体を外界に飛ばされそうになり怪我をしつつ耐える欧豪や、帰りを担当するサブの操縦士として乗務したものの、氷点下で操縦する機長を支え体をさすり続けたり助言をする杜江、そしてパニックに陥る乗客をなだめるための印象的なアナウンスをする袁泉などの活躍が目立って、あえて「機長」の名を冠するほどではないなあというのが正直なところ。

①出発前のブリーフィングで機長が「共産党員は?」と乗員に聞くのが中国?、②無事着陸後の描写が延々と、それこそ機長の家庭(娘の誕生パーティまで)続いて少し疲れるというかダレル。

その機長も操縦士も搭乗前には帽子をかぶらず、帰宅時だけ立派な帽子をかぶる(帽子着用の戒めは『ハッピー・フライト』にあった)。なんと事故1年後の乗員のパーティまでが描かれ、そこでは強面だった機長がすっかり明るく軽い?違ったオジサンになってしまっていることとか気になるところはあるし、最後に演者とモデルになった実際の乗員が並んだツーショット写真が延々続くのもサービスとはいえ、少し過剰な感じではある。映画では危機を救った英雄の活躍ばかりが強調されるが、この裏に「窓の劣化」を見過ごした整備担当、製造者とか、そういう人々の責任が問われたはずだと思うし、責任を問われたであろうはずの彼らの立場を思いやるとうーんともなってしまう。

翌日授業で『ハッピー・フライト』(2008矢口史靖)を久しぶりに上映。ANAの協力を得たとはいえ完全フィクションでバードストライクと台風で、そもそも多分墜落するほどのアクシデントではないがそれなりに緊迫感のある状況を作り出し、ウソっぽさや時代の限界(コンピュータに関する話など)はあるが、要所要所に笑いがおこるコメディに仕上げたこちらは『中国機長』よりはずっと緩いが、それだけに安心して見られる品の良い作品だなといまさらながら思ったり。 (10月7日 シネマート新宿 169)


⑥望み
監督:堤幸彦 出演:堤真一 石田ゆり子 岡田健史 清原果耶 加藤雅也 市毛良枝 松田翔太 竜雷太  2020日本 108分

サッカーで怪我をしチームをやめ目標を見失い、同じく退部仲間とつるんで夜帰ってこない息子。その息子の仲間の一人が殺され、現場から二人の青年が逃げた、ということで息子にも疑いがかかる。所沢・坂戸?あたりの戸沢市で建築事務所を開く父、出版社の請負で校正をする母、優等生で有名女子高校を志望する中学生の妹が、周りの目や、マスコミの攻勢、息子の行方が分からない不安、犯人なのかという不安、そしてやがて現場にいた少年は三人だという報も入り一人は殺されているのかもしれないということで被害者なのかもしれない、しかし周りからは犯人の家族として冷たい糾弾的態度をとられるということで、父の設計した瀟洒な現代的な住宅の中で暗いつらい正月の1週間を過ごすという話。父は息子が犯人のはずはないと望みをかけ、母は、息子が被害者でないことをひたすらに願い、妹は悩みつつ、自分の将来を考えて兄が犯人でないことを祈る―ということはつまり死んでいた方がいいということにもなるということで、観客もともにその悩みと希望を悩み…終わりの急展開は予想のつく予定調和的で、まあ一種のハッピーエンドとしてうまくまとめられ、事件の顛末には息子の怪我の事情も絡み、そこから立ち直ろうとしていた息子の姿も描かれて娯楽作品としては納得のいく仕上がりだ。けど、ちょっとこの息子はいい子すぎる描き方かもね。その結果彼を巻き込んだ主犯は救いようのないワルということにもなって、ちょっとかわいそうな気もした。  (10月10日府中TOHOシネマズ 170)


⑦82年生まれ、キムジヨン
監督:キム・ドヨン 出演:チョン・ユミ コン・ユ 2019韓国118分

結婚・出産して仕事をやめ専業主婦になって2歳になる娘を育てるキム・ジヨン。韓国ベストセラーはすでに読了済みだが、味わいとしては同じ、しかし出てくる彼女を取り囲む様々な問題がなんというかアジアの普遍?というか自分の時代の日本でもそうだったかなと思える感じで、原作通りかどうかはなんかあまり印象にない。嫁姑問題、男の子偏重の兄弟の扱い(『はちどり』もそうだったが、韓国はこれが日本以上に強いみたいだ)、職場の男性たちの、本人はたちはそれとも意識しないような気軽なセクハラ的言動とか、建前OKしかし取ることが本人のその後に響くような男性社員の育児休暇とか…。そんな中で追い詰められたキム・ジヨンはときどき、姑や母、また友人などが憑依してその人が言っているようなセリフでジヨンをかばい相手を責めるというような言動をするようになる。心配した夫は精神科医に相談に行くが…。若いころ兄弟の学費を稼ぐために働きに出て教師への夢をあきらめたというジヨンの母がいまだに息子だけを尊重し、嫁に行くだけが女の幸せみたいに言う夫に反撃し娘たちの味方をするのが格好いい。それと夫の描き方も、力不足・逡巡もあってジヨンに責められつつも誠実を貫き彼女を助けようとする姿は、我々の時代にはなかったかも?と思わせられる好ましさ。(10月11日 新宿ピカデリー 171)


⑧ラスト・ブラックマン・イン・サンフランシスコ
監督・脚本:ジョー・タルボット 出演:ジミー・フェイルズ ジョナサン・メジャーズ ロブ・モーガン 2019米120分

滅びゆく?サンフランシスコの町で、祖父が建て、90年代に手放したという邸宅(登記簿によれば実は建築はそれよりさかのぼること100年前と知らされるのだが、実のところはよくわからない)を取り戻し住みたいと熱望するジミー(原案を出したジミー・フェイルズが実名で出演)と、友人の演劇青年(というかアート系)のモントの物語。映像が少しくすんでさびれた町や郊外を映して極めてきれいだが、映画そのものはとっても品よく、ちょっと暴力系の青年たちが出てきても迫力はあまりなく、主役の二人もアート系というかわりと穏やか・静的で知的な描かれ方で、ストーリーの運びもゆっくりという感じで、うーん、興味深いのだがセリフが続くとちょっと意識が遠のいてハッとしたりということはままあり。主要人物はほぼ黒人というキャストだが、特に中高年男女の役者の魅力的な人がたくさん出てくるのにちょっと驚く。 (10月11日 新宿シネマカリテ 172)


⑨停車 
監督:鐘孟宏 出演:張震 桂綸美 高捷 戴立忍 杜汶澤(チャップマン・トウ)  2017台湾 109分 ★

台北承徳路2段109号?あたりの路上、仕事帰りに妻にケーキを買おうとした男陳莫(張震)は二重駐車されて車が出られなくなり、目の前の理髪店(わけありそうな片腕の店主=高捷)にきいて持ち主を聞いて3Fにあがっていくと、老夫婦と幼い女の子の一家に帰ってきた息子(女の子の父)扱いされ…というところから話がどんどん転がっていって、二重駐車は解消されないまま男は殴られ気を失って河原に捨てられ、それでも起きてまたまた承徳路に戻って…というブラックムービー仕立て、合間に絡んでくるそれぞれの人物(撫順からリストラされて流れて着た女性、彼女を連れてきた悪徳女衒、注文を自分の寸法で仕立ててしまったテーラー、片腕の元ヤクザ理髪店主、それに3Fの死刑になった警備員など。それに主人公と妻の不妊のエピソードも)などのエピソードが挟み込まれていく。なんかきっちり話がつけられずずるずる流されていっていったいどうなっていくのかという、主人公のお人よしさ優柔不断を演じる張震のイケメンぶりともミスマッチっぽく、しかしイケメンであればあるほどむしろイライラさせられる…という感じなのだが、最後近くにトンでも決断をして、ようやく自宅に向かって笑みを浮かべて車を走らせる陳莫、その隣にはテーラーが、そして後部座席には幼い少女が…。エンドロールもそうだがこの映画、張震は陳と3Fの死刑になった警備員の二役を演じるはずだったらしく、警備員シーンはほぼカットされているもののロッカールームで制服でいる1シーンのみなぜか残され印象的にこのエピソードと主人公を繋いでいる。色彩の暗い美しさと言い、物語展開のブラックさといい、さすがチョンモンホン!という感じ。(10月11日 新宿K'sシネマ 台湾巨匠傑作選 173 )


⑩盗命師
監督:李啓源 出演:王陽明(サニー・ワン) 陳庭妮(アニー・チェン)喜翔 陸弈静 廖峻 2017台湾 109分 ★

『河豚』(2011)の李啓源監督作品。映像はきれいというか、凝っていて、これは『河豚』の世界と近いというより進化しているかな。明るさとしてはずっと暗いのだが。物語は臓器移植(脳死ー臓器移植にかかわる闇の外科医が主人公だが、この請け負い方はまあ、すごくウソっぽいというかあれでは移植できないでしょう、医療事故とかのもとになりそうという感じ。そこだけ受け容れれば、鳩レースの方は事情がよく分からないということもあって、海上のスタートシーンの迫力はじめ、なかなか。サニー・ワンが有名な?タトゥも見せつつ演じる外科医のうさん臭さ、もう一人施設の教会を運営しながら鳩レースの胴元でもあり、腎臓を病む妹を案じ、アスペルガー症候群という少女の面倒を見るというもうひとりの男、その名も肉仁(ロウレン)(品川徹を若くしたような喜翔)もうさん臭いが、あとの登場人物はまあどちらかというと純真系いい人という感じで、物語もそこそこヒューマンドラマでもあり、でも誰が腎臓病の妹に臓器を提供するのかというあたりは意表を突くようなミステリーもあってなかなかよくできている。ヒロインはポールダンサーという設定で金髪のウィッグ、半裸の登場なのだが、その冒頭シーンが終わると普通の女の子っぽくなってしまうアニー・チェンでこれもなかなかの存在感。『河豚』の登場人物には私はどうにも共感が持てなかったなあと思うが、こちらはそれなりに共感を感じられる。特に最後のシーンうれしそうな笑い顔が映画の後味をさらによくしている。                   (10月12日 新宿K'sシネマ 台湾巨匠傑作選 174)

             

盗命師海報


⑪星の子
監督:大森立嗣 出演:芦田愛菜 原田知世 永瀬正敏 蒔田彩珠 岡田将生 大友康平 高良健吾 黒木華 2020日本 110分

かつての教室ドラマの定番?『告白』のとき、殺される幼い少女役だった芦田愛菜が制服を着た中学3年生というのはなんか「隔世の感」という感じ?しかも教師役はあの時もこの時もイケメンだが軽薄?教師不向きとしか思えない役柄の岡田将生で、こちらはなんか「かわらんなあ」という感じ。ま、物語自体はあの悪意の中学生連中とは打って変わって、少女の自立性のゆえか、へんな宗教に凝る親をもつ友人とも教師のようには特別扱いせずに付き合う友人もちゃんといるところが救いみたいな気も…。姉は宗教に凝る両親を捨てるが、自分の病気を治すためにそのような宗教にのめりこんだことを知っている少女は親に対して決して全面的に受け入れられるわけではないのだが、大好きな両院だからこそ、彼らとともに生きていこうとする。そういう自立の道を歩むというのは大変に稀有な少女で、親にとってはそれこそこんな娘を持ったことで救われるのだろうなあと…外から演じる姿を見るせいか、少女目線で書かれた原作を読んだ時よりも強く感じられるできばえだったのは、やはりひとえに芦田愛菜の演技力のせいか…。 (10月15日 府中TOHOシネマズ 175)


⑫異端の鳥
監督・脚本:ヴァ―ツラフ・マルボウル 出演:ペトル・コトラール ステラン・スカルスガルド ハーヴェイ・カイテル ジュリアン・サンズ バリー・ペッパー 2018チェコ・スロヴェキア・ウクライナ(スラヴィック・エスペラント語 ドイツ語)169分 ★★

原作はポーランドの作家イェジー・コシンスキの1965年の小説『ペインティング・バード』。世界的なベストセラーになったそうだがポーランドでは発禁書だとか…というのは残酷描写?ここではナチス側もコサック兵も、スターリンのソ連軍もみなみな人々の虐殺を行い、その人々がまた異分子を排撃しリンチにかけというような存在として描かれる。

少年はナチスの迫害を恐れる両親によって東欧の(どことも知れない村‥‥あえてどことしれないように設定してあるとかで、ことばも「スラヴィック・エスペラント」というのが使われている。こういう映画は初めて。セリフは従って少なくて、特に主役の少年などはほとんどしゃべらない)の親戚―独り暮らしの老婆の家に預けられ疎開する。飼っている猫?を子どもたちに焼き殺される場面から始まって、動物、人、次から次へと死ぬ映画でもある。まずは厳しいながらも少年に気を配る老婆が突然死、驚いた少年が落としたランプの火で家も全焼。行き場を失って家をめざす少年の放浪が始まる。最初は第2次大戦ごろとも思えないような土俗的な野卑な感じの村々で少年は大人たちに暴力を見舞われ、最初は占い師の老婆から始まって助けてくれる人は現れるが、この人々はすぐに死んでしまうか、あるいは思いもかけなった姿を見せるなどで、少年は転々と流浪していく。その中で暴力的に性に目覚めさせられ、また暴力には暴力で返し、死体から盗むことや、動物を殺したり、やがては人を殺して持ち物を奪うまでに変わっていく様子が描かれる。

少年はソ連軍に拾われソ連撤退に伴って連れていかれて孤児院に入れられるがそこも逃げ出し、市場で少年をユダヤ人の泥棒とあざけった男を撃ち殺しなどなどの結果親と巡り合う。父が田舎に預けたのはやむをえなかったというと、少年は父の用意したスープの皿を放り出して出ていく。しかし翌日帰りのバスの中、眠る父の腕に収容所の囚人番号の刺青を見て、初めてバスの窓に「ヨスカ」と自分の名前を書く最後が感動的というか秀逸だ。

それにしても長くて長くて3時間近く終わりは一体どうなるの?この少年悪意にまみれて死ぬしかないの?と思ってきたということによるのかも。少年を助ける神父、ナチスの老兵などけっこう知った顔が出演していて、作成時から評価された映画なのだなと思う。モノクロで昔っぽいきれいな映像。そして少年がこれでもかこれでもかと迫害されるが、あれって本当に撮っているのであれば、演じた少年の心に影響を及ぼさないかと思われるほどの迫真的つらい画面でうーん。(10月16日 キノシネマ立川 176)


⑬ある画家の数奇な運命
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 出演:トム・シリング セバスチャン・コッホ パウラ・ベーア サスキア・ローゼンダール オリヴァー・マスッチ 2018独 189分 ★

最初はナチス台頭の1937年ドレスデン、叔母エリザベットと退廃アート展を見に行く少年クルトから。自由を愛しアートにも自由な目を持っていた叔母は時代の中で精神のバランスを崩す。かかったナチス党員の医者の采配で精神病院に送られ、やがて断種手術を強要される。この時の産婦人科医はエリザベットに懇願抵抗され断種手術を他の医師に任せるものの、彼女のカルテに安楽死対象としての赤いクロスマークをつける。叔母はガス室に送り込まれ、クルトの父はナチ党員でないことにより教師の職を失うが、妻の勧めでやむなく党員になる。しかし今度はそのために戦後職に就くことができず掃除人になる。

一方少年クルトは成長して看板屋で才能を発揮、東ドイツの美術学校へ。そこでも力を発揮し人民芸術としての絵画を描く。いっぽう大学で知り合った服飾化の女性は叔母に似た面影のその名もエリザベート(エリー)。彼女と仲を深めていくが、彼女の父親は認めずやがて妊娠したエリーを病気とだまして中絶手術。また、ナチ時代に安楽死を指揮した上司が捕まったことなどもあり自分の罪が発覚することを逃れ西に出国する。人民芸術に疑問を持ったクルトも彼女ともども西側に。デュッセルドルフを拠点に現代アートの集団に属して大学にも入りなおす。そこで知り合った教授に彼自身の迷いの中にある作品を根底から否定され、義父からは定職につかないことを心配されて病院の掃除人の仕事を紹介され…という中でやがて、自分の芸術を開花させるある試みを考えつく。それは元ナチ高官の安楽死事件の責任を問われた逮捕の写真をきっかけに、叔母との昔の写真や、パスポート用の写真を預けられた義父のポートレートなどからの複製的な絵画なのだが、それが評判になり、やがて…というような展開で少年期から20年以上を描いて過不足がない。ゆえに189分という長尺。飽きさせはしないが、さすがにちょっと疲れる。以前の監督作品『よき人のためのソナタ』のような衝撃性はないけれど、そして青年画家の内面にはあまり深く切り込まない、わりと情緒的な描き方という気もするが、それゆえの明るさが全体を覆い、そこに隠れる叔母に悲劇、同じような認識から父に手術されてしまい不妊に苦しむ妻の心情などは、明るさゆえに切々と伝わってきた。 (10月16日 キノシネマ立川 177)


⑭世界で一番貧しい大統領
監督:エミール・クリストリッア 出演:ホセ・ムヒカ ルシア・トポランスキー 2018アルゼンチン・ウルグアイ・セルビア (スペイン語)74分 

出だし、バンと、エミール・クリストリッツアとムヒカ前大統領がマテ茶を飲み、語るシーンから。そして映画全体が時々写真は挿入されるものの結構「語り」に終始してムヒカ大統領のファン?(クリストリッツアはまさにそうらしい)とかには面白いのかもしれないのだが、社会事象や歴史や、その中での筋金入りだったともいえるムヒカ自身の闘争の話が淡々と語られるというのは、がっちり肉体労働をしたあと、雨の中なんとか劇場にたどり着いた身としてはいささかつらく、画面も、会話も右から左へと流れていった感あり。最後の方に大統領夫妻の若い時からの写真が挿入されるが、大統領の方は若い時代の闘争家らしい面持ちが自然に年取り、現在の、好々爺っぽいが気をつけないと足をすくわれそうな鋭さも目の端に染み出る風貌に自然に移行しているのに対して、夫人の方の変化変貌ぶりはちょっとショック(キュートな若い時代、すっきり格好いい中年時代、そして老いの影忍び寄るころから太りだし、今は杖を突いて歩くオバアサンというのが…)ちなみに夫人も筋金入りの政治運動家なのだという。 (10月19日 下高井戸シネマ178)


⑮ハッパGOGO 大統領極秘指令
監督・脚本:デニー・ブレックナー アルフォンソ・ゲレロ マルコス・へッチ 出演:デニー・ブレックナー タルマ・フリードレル グスタホ・オルモス ペペ・ムヒカ 2017ウルグアイ・米国 75分

同じウルグアイ、ホセ・ムヒカ前大統領が友情出演したという「フェイク」って言うべきか劇映画。事実ではないといいつつ、いろいろなホンモノが交じっているので幻惑されてしまうところがミソか。2013年ウルグアイでは大麻合法化案が実際に議会提出され国民が真っ二つに割れての大論議のすえ合法化された、その事実に基づいて、法案は通ったものの(これは一つには密輸の横行を防ぐため。合法化して正規に関税をかけて輸入しようというのであればこれはまたなかなかにすさまじい法律だが)国内で大麻が供給できない。そこで大統領の極秘ミッションにより、大麻密輸ブラウニー生産で収監中だった薬剤師(監督デニー・ブレックナー自身が演じる)が実母の化学者(演じるのはやはり監督の実母)とともに、ムヒカ大統領がオバマ大統領と会談する予定の25日前にアメリカに乗り込み実在するアメリカの大麻展示会に乗り込み大麻を調達しようとする旅の話。

実在する組織、そうではないらしい組織、そしてそこでの監督の母の実際の演説、業界のだれに出会うかも予定された演出ではなく…ということで何ともまとまりはない感じだが、話の奇異さで引っ張るというところか。ミッションの担い手が若い薬剤師(といてっても30代?)、その母の中年女性(場面によって結構「ステキサ」が変わるのが絶妙)そして監督自身の友人の大学教授(警官役。貧しい母子はこの警官のホステルに同居し、母と警官が??な関係にとか)というのもなんかありそうでなさそうな妙な面白さ。こういうものを面白がるムヒカ(とオバマ)の度量を楽しむべきかも。                (10月19日 下高井戸シネマ 179)


⑯博士と狂人
監督:PB・シュムラン 出演:メル・ギブソン ショーン・ペン ナタリー/ドーマー エディ・マーサン スティーブ・クーガン 2018英・アイルランド・仏・アイスランド(英語) 124分

原作はサイモン・ウィンチェスターのノンフィクション。オックスフォード辞典の編纂に学者として当時の主流ではなかったマレーと、精神病院の入院患者だったマイナーが果たした仕事の大きさという点では原作を踏襲しつつ、マレーに対する妻の理解・愛情とか、マイナーが人違いで殺した男の妻との関係―愛に至るが、娘の(当然?ながらの)無理解でマイナーが追い詰められ、病気が悪化するーというような部分が比重重く描かれており、それに対する精神病院長の「治療」によりマイナーがますます悪化するとか、彼を救ってアメリカに帰すためにマレーが尽力するとか、あと、原作ではかなり強調されていたマイナーの性的な指向の問題が薄められていて映画内でマイナーが自分の性器を切り落とす場面が唐突な感じで映画の流れから浮いてしまうーとか、そういう脚色部分がなんか鼻につくというか作りすぎという感じがしないでもない。役者も画面も時代のイギリスの保守性も含め雰囲気を出しているのはさすがなのだが。(10月22日 立川キノシネマ 180)


⑰ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男ピエール・カルダン 
監督:P・デヴィッド・エバーソール &トッド・ヒューズ 2019米・仏 101分

予告編がカラフルでポップだし、カルダンがイケメンだし、とついつい見に行く。まあ、予告編以上の展開はないかなというのと、カルダン間もなく100歳?現役の元気さはさすがだが若い時からの写真や動画で縷々つづられると、老いが見かけに及ぼす残酷さというのも感じられて、ちょっと楽しめない。でもとにかくすごい人ななんだな。20世紀の巨人かもしれない。出てくる人々皆が絶賛するが、そこに本人の多分アクの強さというか、目立ってのし上がっていく能力もあったんだろうなとは感じさせられてしまうのではあった。(10月22日 立川キノシネマ 181)


⑱朝が来る
監督:河瀬直美 出演:永作博美 井浦新 蒔田彩珠 浅田美代子 2020日本 137分

物語としてはいくつかの部分(夫婦とそれぞれの親との関係、ひかりの職業部分など)をカットしながらも大筋原作に従っているが、この映画何よりも「日本の風景」というか自然の描写によって雄弁に情感的に物語を進行している感じ。さらに大胆なクローズアップ映像を重ね、ビジュアル的には極めてアーティスティックというか美しい写真や肌というふう。役者の出演場面は相対的に案外少なくてなんか特異な河瀬ワールド…河瀨直美がこの、わりとゴシップ的要素さえも含みかねない特別養子制度にかかわる「ミステリー」を料理するのだろうかという期待に関してはなるほどなという感じではあるが。原作にはない「養父母はどちらかが専業親であること」とかひかりが「金を求めて」こどもの養父母に近づく経緯と雇い主の関係とかがすっ飛ばされてわかりにくく、1ヶ月もたってから養母のほうが実母を探し出すということのわかりにくさなどもあるかも。(10月24日 府中TOHOシネマズ 182)


⑲みをつくし料理帖
監督・脚本:角川春樹 出演:松本穂香 奈緒 若村麻由美 浅野温子 窪塚洋介 小関裕太 中村獅童 石坂浩二 2020日本 131分

ウーン、これも一応原作に近く作ってあるが、花魁の境遇のおどろおどろしさは原作ほどではないかな。あと、やはり登場人物の造形が非常に「近代的」でそれゆえに親しみやすくわかりやすくなっている側面と、リアリティ?に欠ける面があるかも。役者の贅沢な使い方はさすが角川映画。反町隆史、薬師丸ひろ子、榎木孝明、松山ケンイチ、永島敏行、鹿賀丈史、村上淳 藤井隆などなど…。中村獅童は廓に生まれた私生児の板前には見えにくいー堂々としすぎ?-が、主人公澪に絡む男性陣と比べて存在感が抜群でこの映画のヒーローになっているような感じ。  (10月25日 府中TOHOシネマズ 183)


⑳薬の神じゃない(我不是薬神)
監督:文牧野 出演:徐崢 王伝君 周一囲 譚卓 章宇 楊新鳴 2017中国 117分 ★

中国公開されたころ、向こうで見た友人たちに一種評判で、すごく話題になったゆえにぜひ見たいと思っていた作品。徐崢主演だしもうちょっとはっちゃけた系のコメディかと思ったらどうしてどうして、社会派ドラマで、実話ベースのマジメ系コメディ?。中国内白血病患者への高い特効薬のインド製ジェネリックを患者の懇願にほだされ密輸入して罪に問われた男の話で、実話では本人は患者だったとのことだが、映画では妻に見捨てられ、再婚した妻が息子を移住させようとするのに抵抗するがままならぬ、経営する強壮薬の店の家賃も払えない、どうしようもない男。彼が、中国なまりの英語をしゃべる牧師とか、凱里出身のチンピラ(『象は静かに座っている』の章宇が20歳に金髪男を演じて、あちらとは全く違った雰囲気。この人も結構化ける人だ)とか、白血病の娘を持つダンサーとかを仲間にして、安いジェネリックで大儲け、しかし偽薬で競合する男が現れたり、途中で一度挫折、最初にこの話を持ち掛けてきた患者が悪化して亡くなったり、という苦難のシーンもありつつ、もはやジェネリックの製造も止まるというときに大逆転的思い切り行動に出,侠気発揮(おなじく突如侠気発揮のチンピラを失うが)という苦みもありつつ、中国社会のいわば暗部を告発もしつつ、主人公の妻の弟を、主人公を追う警察官に設定したりし、理解しつつ「正義」との間で苦しむ?とか―最後にはこのような薬の問題の政府による解決過程が字幕で示されたりして「龍マーク」をちゃんと獲得するという、いわば今後の中国の商業娯楽映画にして政府検閲をすり抜けるというすれすれ線で作られている感じだ。(10月26日 新宿武蔵野館 184)


㉑スパイの妻
監督:黒沢清 出演:蒼井優 高橋一生 坂東龍汰 東出昌大 笹野高史 2020日本 115分 ★

中国映画週間を朝から3本見た後、うーん体力が持つか…とも思ったが、ちょうど同じ日本橋TOHOシネマズでまあまあの上映会(夜7時20分からの最終回。中国映画週間の後、夕飯+一杯をやり、スタバでPC仕事をしてから出かけるという今秋第一回目の無理無理鑑賞。で、眠くなることもなく、複雑な蒼井優の演技に「お見事!」(彼女の映画内のセリフ)

1940年からの神戸、豪邸に執事とメイドがいる、まだ若い夫婦というのが蒼井・高橋の設定だが、ま、夫がやりての実業家(貿易商?)ということかなんというかおしゃれで洋風の暮らしぶり勝ちと、当時の日本というより、張愛玲の上海小説を読むというか見ている感じ。夫が満州に出かけ恐ろしい「日本の秘密」を知りかかわった女を連れて帰ってくる(女の下船にも気づかない妻から夫への抱擁、なんて当時だったらそれだけで周りの目を引き大騒ぎ?だったんではないかと思われるが、蒼井の堂々たる演技の前にはそういう非リアリティという批判も歯が立たず)。夫は知った秘密を日本というより世界のために公にすべきと思うが妻には秘密にする。妻は問いただし、夫の金庫を探り、そして秘密を見つけ出すとそれを憲兵の幼馴染に届ける…え?なんで密告者になるの?というところからなんと、急展開、妻の変化のすさまじさ。実は密告にもちゃんと裏というか訳があって、二人はともに秘密をたずさえ、危険を回避して二人は別々に夫は上海、妻はアメリカへと密航・亡命しようとするのだが…。前半モダンなおしゃれな洋装の妻は後半一転して病衣ーというか獄衣のようでもある衣装のみで、空襲下の神戸をさまよい、終戦を迎えて海辺をさまよう。そして…夫の行方は明かされず、妻は「夫と離れたくない」とばかり言っていたが実はもっともっと強い自立性を持った女だったのだということが強調されるような、さすがの硬質なロマンティックに彩られた見ごたえ。高橋がこの時代の日本にはいたとは思えないような男を演じて違和感ありつつも、あ、でもこういう夫にしてこういう妻ありなんだなとは思わせられるような雰囲気ではある。ヴェネチア銀獅子賞監督賞受賞の貫禄はある。            (10月27日 日本橋TOHOシネマズ 188)


さて、このあとはいよいよ映画祭週間、中国・東京映画週間、東京フィルメックス、東京国際映画祭が10月末から11月上旬にかけてほぼ同時開催、もう、息もつかずに映画館巡りをしている感じです。今年はなかなか見ごたえのある中国語圏映画・アジア映画があるなと思っています。詳細は映画祭一段落の11月中旬に…ではお楽しみに。


TH(トーキング・ヘッド/アトリエサード社)84号に『よりぬき中国語圏映画日記ー香港映画はどこに行く?-「国家安全維持法」後の香港と映画『追龍』』という一文を書きました。よろしければ読んでください。

コロナ禍まだまだおさまらず、インフルエンザも少々コワい(予防接種済)どうぞ皆様くれぐれもお大事に。


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