【勝手気ままに映画日記+山ある記】2026年2月(決定版)
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| 手前根石岳と後ろに見える西天狗岳(2/21) |
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| 西天狗・東天狗 八ヶ岳ブルーの空も… |
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| 雲竜渓谷の滝壮観!(2/4) |
今月も見た映画、歩いた山を順次ご報告してまいります。どうぞよろしく!
【書きました! よろしければ読んでください】
幼い視線の先にある社会と人々と―『左利きの少女』『ラッキー・ルー(仮)』『大地に生きる』
TH叢書 NO.105 ハルネーション・パラダイス 偽りの王国へどうぞ
アトリエサード/書苑新社 2026・2
【2月の山ある記】日付の前の番号は、今年に入って何回目の山行かを示しています。
⑤2月4日 雲竜渓谷氷瀑トレッキング
東武日光駅(9:00)⇒雲竜渓谷登山口(9:30)…➡雲竜渓谷入口(11:49)…➡雲竜渓谷・雲竜瀑(12:30)…➡往路を戻る…➡雲竜渓谷登山口(15:00)⇒東武日光駅(15:30) 5h31m 10.1㎞ ↗614m ↘613m コース定数17(ふつう) 平均ペース110-130%(やや速い)【ヤマップデータ】
今年3回目のYツアーは、日光の名勝「雲竜渓谷」へのトレッキング。実は昨年、キリマンジャロへの同行の方が出かけた写真を送って下さり、そのワイルドな景色にちょっとあこがれていたもの。参加者は15名(男性は1名?初参加とおっしゃっていたが、そうは見えぬほどガイド?の雰囲気も持って渡渉などをリードされる) 添乗はおなじみの栃木県出身OJさん。ガイドは那須・日光を本拠地とするNPツアーのお二人(Aさん・Mさん)。
アイゼン歩行ははじめてというかたもけっこういるようなツアーだったからかとも思うが、行き届いた陣容に安心感あり。
天気もよく、風もなく、たびたびの渡渉にはちょっと緊張はするが、おおむね楽しくゆったりの、送迎車(NPツアーの車)を下りて登山口から渓谷入口までの2時間あまりが、まあ登山という感じでよじ登るような急登も2か所ほどあったけれど、渓谷自体は一番奥の雲竜瀑まで往復1時間あまりの、いわば河原歩き。心配していたのは左右太腿裏のしつこい痛みだったけれど、さほどひどくなることはなく、わりと楽に歩きとおすことができた(いちおうロキソニンを出発前に1錠だけ飲んだが…)。
途中、渓谷の入り口の少し手前の山道で突然に「ミエコさん!」と声をかけられる。同じ栃木のEBツアーのご一行。24年~25年にさんざんお世話になりキリマンジャロにもヨセミテにも連れて行ってもらったKMさん(OJさんの盟友でもある)たちが犬やオコジョの帽子をかぶって、道脇に。エーッ!昨年のツアーもEB主宰だし予想できないことはなかったものの、遭遇の時点ではまったく思ってもみなかったので、まあ!そういえば今日はOJさんも不思議な帽子をかぶっていたが、これはシマエナガ↓だそう。
東武日光駅の集合は朝9時だったが、家を始発に乗らなくてはならず、万一遅延とかがあったらアウト!ということもあり、実は前日東武日光駅近くのカプセルホテルに1泊。夕飯は日光名物の「湯葉カツ丼」(カツ丼といっても肉ナシ。ミルフィーユ上に重ねた湯葉に衣をつけてカツ状にしたもの)と日光路ビール。山行当日はほぼ行って帰るだけで温泉も土産も名物の食事もなかったが、それは前日の楽しみ!ということで、無事に山行終了!
帰りは16時すぎの東武日光線スカイツリーラインと乗り継ぎ、新越谷~武蔵野線南越谷の乗換で空腹に耐えかね(何しろ昼は時間はあったのだが、このところの厳しい雪山歩きで温かいものを持って行っても食べる余裕もないということで、今回は簡単に食べられる行動食(パンとか菓子とか)しか持って行かなかったので)夕飯を食べ一杯飲んでから武蔵野線で帰宅は夜の8時すぎ。
新宿(7:30)⇒鹿沼 日吉神社(10:20)…➡三番岩…➡二番岩(12:00)…➡岩山頂上(328m 12:40…一番岩を見に行く…13:20)往路下山…➡二のたるみ…➡東側の登山路に抜ける➡ゴール(バス道路)4h6m 4.5㎞ ↗290m↘316m コース定数7(やさしい) 平均ペース70-90%(ややゆっくり)【ヤマップテータ】
先週に続いて栃木県、同じYツアーで15名(m2)。 ガイドも先週と同じOJさん、添乗は昨年蔵王・船形山でお世話になった山形出身、元保育士、添乗員1年目のONさんと、名古屋支社から出向中というOZさん。
新宿から専用バスで行くが、朝から雨模様で鹿沼道の駅でレインウェアも着こんでの登山開始、しかし天気はありがたいことにだんだん回復して、レインが濡れることもなく、暑さもつらく途中で脱ぐ。
岩山は、高さは328mと、まあ低山で片道2時間ほどで上れるのだが、三番岩~二番岩の名のようにいくつもの岩の壁をよじ登り、また下りという繰り返しで、思いのほか変化もスリルもあって楽しめる。ヤマップの「コース定数」では7(やさしい)に過ぎないのだが(これはヤマップの傾向かもしれない。戸隠山などはなんと6!だった)平均ペースがゆっくりめなのは、15人のツアーともなると岩壁をよじ登る人を待つ時間があって、今回は私も常に後ろの方につけていたので岩に上がる前のウォーミングアップがずいぶんできて、おかげで写真もいっぱい撮れた。珍しく後ろにいて、ONさんがたくさん撮ってくれた写真に後ろ姿(赤い帽子・白い上着)もあり、特集します!(#ヤマカラ↓)
頂上では昼食時間もゆったり取れ、この冬1回目の日帰りポットおでんと甘酒を楽しむ。
眺望もまあまあで、心配した足の痛みもさほどひどくなることもなく、帰りにはOJさんおススメの黒田養蜂園により、蜂蜜や蜂蜜酒のテイスティング、蜂蜜たっぷりというジェラートも食べて満足の帰京だった。新宿には6時着。7時には自宅に戻る。
蜂蜜ジェラートとコーヒー/蜂蜜のテイスティング(黒田養蜂園)
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| バス車内から夕暮れの隅田川 |
⑦2月20日~21日 八ヶ岳:箕冠山・根石岳 雪山トレッキング
20日 茅野駅(12:50)⇒桜平ゲート(14:25)…➡夏沢鉱泉(15:05泊)
21日 夏沢鉱泉(6:00)…➡オーレン小屋(7:17)…➡箕冠山(2581m 8:37)…➡根石岳(2603m 8:57~9:34)…➡根石山荘(2550m 10:16)…(往路下山)…夏沢鉱泉(11:52~14:00 昼食・休憩)…➡桜平ゲート(14:30)⇒茅野駅(15:30)
9h 12.5㎞ ↗898m ↘898m(夏沢鉱泉往復)コース定数24(ふつう)【ヤマップデータだが最後、桜平でストップし忘れややあいまいな数値に…)
今シーズン3回目の本格的雪山ツアーは引き続きYツアーで。 茅野駅現地集合で、往復は個人であずさに乗って行った。参加者14名(m1 ただし体調不良で夏沢鉱泉に留まられる)初日は桜平ゲートからゆっくりのんびりで夏沢鉱泉へ。ここには何回も立ち寄りトイレを借りたり、名物カレーライスを食べたりしたこともあるが、宿泊してお風呂に入るのは初めて。古い小屋だろうが、宿泊の部屋はきれいな2段ベッドが並び、温泉タオルも供され、おまけに部屋には人数分のコンセント(充電用)が並ぶという、まあ今風に行き届いた小屋だった。夕飯も豪華、夜は2段ベッド上段になったところ、隣のベッド上段で人が動くとこちらのベッドも揺れるのには参ったが、まあ一応眠れる。
これから出かける桜平ゲート(#YAMAKARA ©S)/夜の夏沢鉱泉(#YAMAKARA ©OGINO)
2日目がいよいよ本番で6時に荷物の一部をデポして、そろそろ明るくなるという頃に出発する(ヘッドランプは出したが結局使わず)。現地ガイドのADさんは(ちょっと羽生結弦似?)のすっきりした風貌の青年だが、大変に行き届いた丁寧なガイドで、自身はアイゼンをつけず、バックで歩きながら私たちの歩きを見て、順番の入れ替えなどもしてくれる。一方最後尾を来るのはベテラン添乗員のOKさんで、この方には昨夏の八ヶ岳はじめ何回もお世話になっているので、あちらも私を覚えていてくださったみたいで、歩いていてもとても安心感がある。
夏は何回も歩いたコースだが、シャクナゲの木がたくさんある低山部分は花の季節に来ないと気づかなかったところ。逆に苔の緑はないけれど、しかし雪はしっかりしまり大変に歩きやすい。最初自分の力がわからない(最近は足も痛いし)とトップをしばらく歩かせてもらうが、やがてガイドの指示でトップグループ5人ほどがまとまって最後尾に。あとはほぼ後ろから2番目とか最後尾とかで、これはこれで歩きやすい。
この冬一番の天気とも言われたが、風もなく、最初は木々の間から、やがて稜線に出ると,はるかに見渡せる八ヶ岳の山々、アルプスの山々が八ヶ岳ブルーと言われる空に浮かびなんとも晴れ晴れ美しい景色を楽しむ。
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| 頂上から見下ろす一行の絶景(#YAMAKARA) |
風があるとここから撤退ということもよくあるという箕冠山も難なく乗り越え、目の前の根石岳は中腹は全く雪はなかったが、アイゼンのままで乗り越え、頂上へ。ここも風なく穏やかだが、景色を楽しみのんびり写真を撮って30分ほど。下りはけっこう急坂のアイゼン下りで難儀している人もいたけれど、私もこの冬3回目とあって大分慣れた?でまあすうすう下りられ、ほ…。
根石岳を下り/根石岳山荘/根石岳山荘のプリン
根石岳山荘では下で予約してあったプリン(前日、硫黄山荘グループの大きなドローンの荷揚げを見たが、多分このドローンでしたから運び上げている?みたい。ちなみに硫黄山荘グループは夏沢鉱泉と根石岳山荘とで、冬場は硫黄山荘は休業?らしい。私は今回夏沢鉱泉泊で一応3つとも宿泊したことになった)をいただき、お茶とお菓子の供応も受け、大満足。下りも順調であったが、終わり近く、すでに林道っぽくなってから、右足アイゼン踏み間違えて、すっころんだのが唯一失敗!ただし雪の中に寝そべる形になって案外楽しかったのではあるが…立山でもキリマンジャロでも下山後の転倒があったなと、やや反省はしている。
夏沢鉱泉に昼に戻り、カレーライスと梅ラッシー(500円)を食べ、このあとまだ少し歩かなくてはならないので、入浴はパス。代わりに?地ビール1本飲んで、下る。荷物は行きも帰りも宿の送迎車が茅野まで送ってくれた。この宿では茅野駅との送迎を1日2回?かなやっていて、宿泊を予約すると車に乗れるのだとか。このアクセスの良さだと、個人でもわりと楽に来れるし、また八ヶ岳方面グリーンシーズンの登山もしたいなと思う。
夏沢鉱泉名物カレーと梅ラッシー/ビール/これから下る夏沢鉱泉前の雪道
実は、帰宅後夜中に胃腸炎症状を示し、翌日は全く動けず食べられず。美味しいものを食べ過ぎた?のか、そんなわけで、山ある記のアップが遅れました。とはいえ、1日あまり動かずダラダラしてたせいか、このところ山帰りに悩んでいた足の痛みは全然なくてケガの功名?かしらん…。
⑰ボーイ・ミーツ・ガール
⑯Returanees 元子ども兵、それぞれの再起
⑮ブライアン・エプスタイン世界最高のバンドを育てた男
⑭ポーラX
⑬在日ミャンマー人 わたしたちの自由
⑫石炭の値打ち
⑪富士山とコーヒーとしあわせの数式
⑩フランケンシュタイン
⑨リプライズ
➇ブゴニア
⑦射鵰英雄伝 侠之大者
⑥白い馬
⑤赤い風船4K
④素晴らしい風船旅行
③ツーリスト・ファミリー
②役者になったスパイ
①アル・リサーラ
2月の1本目は、過去10年ほど、この時期に行われて昨年で終結したという『イスラム映画祭』の上映作品をまとめた『イスラム映画祭エンサイクロペディア』(藤本高之)先行販売上映会と銘打った1日限りの特集。会場はなるほどの、ほぼ満員?
【2月の映画日記】 各映画の末尾の数字は今年になって劇場で見た映画の通し番号です
①アル・リサーラ ②役者になったスパイ ③ツーリスト・ファミリー ④素晴らしい風船旅行
⑤赤い風船 ⑥白い馬 ⑦射鵰英雄伝 侠之大者 ⑧ブゴニア ⑨リプライズ
⑩フランケンシュタイン ⑪富士山とコーヒーとしあわせの数式 ⑫石炭の値打ち ⑬在日ミャンマー人 わたしたちの自由 ⑭ポーラX ⑮ブライアン・エプスタイン世界最高のバンドを育てた男 ⑯Returnes 元子ども兵それぞれの再起 ⑰ボーイ・ミーツ・ガール
日本映画⑪⑬⑯
中国語圏映画⑦
その他のアジア圏映画①③
下線はドキュメンタリー映画です。
★はナルホド! ★★はイイね! ★★★は是非とも見てね! の個人的感想です。
本文中の赤字からは、その映画の前回鑑賞など関連のページにとぶことができます。
⑰ボーイ・ミーツ・ガール
監督:レオス・カラックス 出演:ドニ・ラヴァン ミレーユ・ペリエ キャロル・ブルックス 1983フランス 104分モノクロ
カンヌで「ヤング大賞」をとったという、カラックスの長編デビュー作。アタマ、半分あけた窓から顔を出す幼女を抱きながら夜の道を車を駆って走る(なんか危なっかしくてすごく衝撃的)女性から始まり、川辺で出会って別れる男とか、要は主人公のアレックスの別れ、また、恋人と行き違い家を出て行ってしまう彼を見送るミレーユ(なぜか彼が出ていくアマートメントの門前にアレックスがいる…)みたいな(ってのはあまり意味の分からない(ってのは私の理解力がない?)アレックスとミレーユの映像が繰り返され、ある、パーティの台所で二人が出会い…そして新たな恋人関係になるけれど…。不思議に眠くはならないーつまり吸引力はある、しかしやはり若い人の、すでに忘れていた内的心性にたどり着くのは難しいなあと、ちょっと疲れた2月最後の1本だった。(2月27日 渋谷ユーロスペース052)
⑯Returanees 元子ども兵、それぞれの再起
監督:菊地啓 2026日本 102分 ★★
ウガンダは元イギリス領だが、独立後イギリスが南部の政府を支援したことにより取り残された北部に起こった反政府組織LRAとの内乱状態がおこり、LRAは20年以上にわたり、ウガンダ国内や隣国コンゴの子どもたちを誘拐し、男の子は兵士とし、女の子は兵士の妻として強制的に結婚させてきた。2004年?最初にこの実態の調査に行ったNPOテラ・ルネサンスは、その後現地に法人を立ち上げ、誘拐された子供たちの帰還と、その後の自立支援の活動を続けている。2023年元兵士とその家族(つまりは兵士との間に生まれた幼い子たちを連れた母親)140人が北から逃げて、この活動の支援を受けて洋裁などを学んだり、故郷への帰還の準備をしたりしている、その2年間の様子をずっと現地で活動している小川真悟氏を通して描いている。子連れで帰った若い女性が帰ろうとするのが、戦死した夫(当然強制結婚させられた相手である)の故郷であるが、そこに帰着するなら牛4頭(子ども一人につき1頭という感じ)の妻の故郷の親戚から死んだ夫の家族に要求されるという場面に、この問題が単なる帰還者の受け入れ・生活自立というだけでなく伝統や風習にも基づくきわめてジェンダー的な問題をはらんでいることがわかる。また、この帰還者たちの中には、年かさでLRAの中間幹部?に昇格して後から来た若い子たちに殺人の命令を下した(従わなければ殺すことを含め)人たちもいる。その人々と、命令された若い人々が同じ集団の中で今後を模索しているというのもすごいと思うが、その年かさの方のドクターと呼ばれる代表格の男は2人の妻を持ち、しかもDVも含め片方の妻は虐待されていると悩んでいるとか、しかもその男が、あとから帰ってくる若い兵士たちには今は支援者の1人として向き合っている様子など、ウーン、なんていうか一筋縄ではいかない問題というか人々というか…。多分理念や倫理で立ち向かったとしたらテラ・ルネサンスの活動は成り立たないだろうと思われるが、小川氏は現地に定住し、本人も難民だったという現地の女性と結婚しともに活動しながら、リーダーシップを取るというより、あくまでも人々に寄り添いながらその困難を実務的にというか、できる方法を探して解決して助けていくという感じ。
ウガンダの誘拐による少年兵というのはニュースとしては知っていたし、それだからこそ予告編で知ったこの映画を観にも行ったのだが、もっともっと悲惨で救いようのない状況を突き付けられるのかとちょっと不安もあったが、その予想は良い方に裏切られて、逆に自らの意志によって人を助け社会を変えようとする、国境をも越える意志に感動させられる。とはいえ、自らを「神の抵抗」として誘拐を今でも続けているLRAだから、単にそこから助けるだけでなく、紛争自体を止めなくてはならないという小川氏の悩みもまことにもっともで、いずれにしても考えさせられることの多い、では、おまえは何をするのかと、またもや突きつけられるような映画であった。
2週間限定上映の最終日平日10時半からであったが、支援者?も含め観客多い。上映後テラ・ルネサンスを小川氏とともに立ち上げたという鬼丸氏と、ボーダレス・ジャパンという組織の起業家田口一成氏の対談トークあり。興味深く聞いた。(2月27日 渋谷フーロスペース051)
⑮ブライアン・エプスタイン世界最高のバンドを育てた男
監督:ジョー・スティーブンソン 出演:ジェイコブ・フォーチュン=ロイド エミリー・ワトソン エディ・マーサン エド・スペリア―ス 2024イギリス 112分
渋谷からの帰り道、井の頭線に乗って時間を見たらちょうどこの映画の開始にピッタリ…、というわけで下高井戸で急遽下車して見に行った。ビートルズを世に売り出した敏腕マネージャ―の早世の人生を描いたというのだが、家具屋の息子がレコード部門で売り出したという初めの部分は意外にポップで楽しめたが、その後はゲイであることに悩み薬物中毒に苦しみ、伝統的なユダヤ人家庭で父との確執にも苦しみという感じで苦しみの場面がけっこう多くて、ビートルズの映画だというのに期待したビートルズの演奏や楽曲はあまり出てこないし、ビートルズの面々は有名バンドのボーカルなどもいる人々らしいのだが、みんなエプスタイン役よりは大分チビ(若いという設定だから?)でオーラも感じられないような軽薄なソックリさん?という感じで、映画全体がなんというかよく言えばマジメな地味な感じだし、悪く言えば?成功譚なんだろうけれど成功の裏の苦しみにばかり焦点が当たっているのに、エプスタイン役自身が進行役でそこだけは明るくポップに語りながら背景から手前に歩いていくという演出で、これがまたなんか浮いている感じだなあ…(2月24日 下高井戸シネマ 050)
⑭ポーラX
監督:レオス・カラクックス 出演:ギョーム・ドパルデュー カテリーナ・ゴルベワ カトリーヌ・ドヌーヴ デルフィーヌ・シュイヨー ローラン・リュカ 1994 フランス・ドイツ・日本・スイス 134分
ユーロスペースで上映中のレオス・カラックスの作品群、未見の『ポーラX』は『ボーイ・ミーツ・ガール』(1983)『汚れた血』㉔(1986)『ポンヌフの恋人』(1991)から8年たって、メルヴィルの原作を映画化した大作。主人公の小説家(というか、匿名で書いた1本の小説が世に出たものの、映画の間中次の作品が進まずに悩むという、若者にとっては「何者かになる」ことの難しさが描かれる息のつまる感じの青年)ピエールが異母姉と称するボスニア難民の女性イサベラ(とその家族?小柄な女性と映画内で殴られて死ぬ幼い少女。この二人とイサベラの関係が私には最後までよくわからなかった)と、裕福な暮らしも母も捨て駆け落ちをする。そこにもともとの恋人リュシーが追いかけてきて、3人の女とともに追い詰められるような破滅への道を歩んでいく青年が描かれる…。金髪の豊かなフランス娘とボスニアの貧しい(しかしもちろん独特の美しさを持って描かれる)黒髪の女性を対比して白人・富者の優位性のようなものを否定しているとか、姉と弟の禁断の愛の破滅とか、見方は様々あるのかもしれないが、ウーン。主人公を演じるギョーム・ドパルデューは2008年37歳で亡くなっている。この映画はその14年前で彼は23歳か…。意外に成熟した感じのスタイルだけれど、若さのはかなさとか痛々しさを感じさせられて、それもなんか映画から目を離せない一因?イザベル役のカテリーナ・ゴルベワは当時カラックスのパートナーだったらしいが、この人も2011年?44歳で亡くなってしまう。ますますはかなく…。一方今も活躍中のカトリーヌ・ドヌーヴは前半はお城の中でバスローブなどに身を包みゆったりのマダム何だけど、終わり息子を探してバイクをすっ飛ばしパンクな化粧のまま事故死。ウーン。もうホントに破滅の愛だワ…。(2月24日 渋谷ユーロスペース 049)
⑬在日ミャンマー人 わたしたちの自由
監督:土井敏邦 出演:ワナトン エィミィミィ レーレールィン 大槻美咲 チョウチョウソウ 根本敬 永井浩 石橋通宏 田辺寿夫 渡邊彰悟 2025日本 171分★★★
1988年の軍政後、日本に亡命したチョウチョウソウを描いた『異国に生きる 日本の中のビルマ人』(2012)は当時観ているが、本作はその続編として作られたという2020年軍クーデター後の新カマーとして日本に暮らすミャンマー人(とはいっても難民・亡命とかでなく、留学や技能実習生としてそれ以前から日本にいて、いわば帰れなくなった人たちが多いよう?少なくとも映画に出ている範囲では)や、彼らの周辺にいる人々へのインタヴューに、一部クーデター映像や、また2部ではタイ国境に暮らす難民やその支援者などを描く。一部は「異国・日本での闘い」二部「国境のミャンマー人」三部「ミャンマーと日本」という構成。一部・二部は、軍政で民主主義が失われ人々が殺されていくミャンマーで、生活を失った人々を案じ、支援する外部(おもに日本に渡って民主化運動にかかわっている人々)や周辺の動きを丁寧に描いている。三部、「日本ミャンマー協会」の前で抗議の声を上げる人々、また2016年当時民主化されてきたミャンマーに帰り、日本企業の入る「サクラタワー」の前で、日本とミャンマーとの経済関係のありかたについて語るチョウの姿などから、「日本ミャンマー協会」や「日本財団」という経済組織がミャンマー軍と結び、その傘下に属する企業と深い関係を持ち続けてきたゆえに、日本政府にも手が出せないというか政府もその意向で動かざるを得ないような状況で軍政府(政府として正式に認めているわけではないようだが)を支持し、結果として民主化を求める人々を無視(もっと言えば弾圧?)しているような状況が明らかにされてくる。ミャンマーに詳しい学者やジャーナリスト、また立憲民主党の政治家などの分析も交えて、このような視点をはっきりさせたことはこの映画の功績だと思う。
監督・土井は映画の中でも、また終わりに行われた出演者の1人在日ミャンマー人の民主活動家ワナトンさんへのインタヴューでも、「自分の生活は安定しているのに、自分のことでもないタイの人々のために私生活の自由を犠牲にして、どうして募金活動を続けるのか、それはミャンマー人特有の優しさではないだろうか」というような問いを続ける。その裏には、自身の生活の自由を優先し、他者を顧みない傾向の強い日本人への批判や不満があるのだろうとは思うのだが、そして確かに私自身もこういう映画を見るといつものごとく、自分に何ができるのか、自分は何もしていないではないかというような反省にとらわれるのではあるが、ワナトンさんも言うように「ミャンマー人が他人のために生きる」という特性を持っているわけではない?少数民族を圧迫し、民主運動をする人々を無残に虐殺している軍も、実行者は「人」、それもミャンマー人で構成されているわけだから…。と考えると、経済力と結びついた「軍隊=国軍」そのものが、このような非民主的な思考・政策・行動に結びついていく元凶?なのかとも思われる。
であるとするならば、ひるがえって、日本を「戦える強い国」にして行きたいと考え、自衛隊の存在、憲法改正(改悪)、非核三原則の見直し?までを視野に入れている高市政権の選挙での圧勝は、まさに日本も「軍」の発言が強い力をもって民衆の生活を規制していくような国への一歩を歩み続けているのではないかと思いつつ、ーもちろん在日外国人を規制している入管法の問題にも絡んで(この映画では弁護士渡邊氏を除いて、こちらの問題にはあまり触れてはいないが)、まったく他人事ではないと思いつつ見に行った。朝初回ののみの劇場、入場者は10人余り?でいささか寂しい。トークの土井監督はワナトンさんへの発言(「ミャンマー人特有のやさしさ」「仏教ゆえ」…このあたりはすでに映画の中でもワナトンさん自身が発言しているのに…とかワナトンさんの日本語は下手だが責めるな、みたいな)などちょっと思い込みで突っ走り果たして出演者やまた観客の意識との間にも齟齬がある面もある?運動家的な押しの強さを感じてしまったが、この寂しい劇場状況では仕方がないのかな…。
出来れば今の日本を感じつつ、できるだけ多くの人に見てほしいなと思った次第。写真は土井監督(左)とワナトンさん(2月18日 Ksシネマ 048)
⑫石炭の値打ち
監督:ケン・ローチ(ケネス・ローチ) 出演:ポビー・ナット リタ・メイ 1977イギリス168分 ★★★
1977年40歳ぐらいのケン・ローチ(クレジットではケネスになっていた)がBBCぼテレビドラマとして作った2部構成の作品。間10分の休憩が入り、一部「炭坑の人々」(77分)はチャールズ皇太子(遠景チラリだけれどチャールズ皇太子そっくりさん?)の視察が訪れることになった炭鉱の右往左往。労働組合側と経営者側がともに(主人公?の最初のシーンでの発言は「他にもっとやることがあるはず」と、お金をかけての整備に反対する発言だが)皇太子を迎える準備をする様子からその当日までを対話ドラマ的部分も含めけっこうコメディカル・アイロニカルな描き方?知った役者とかは出てこないみたいで、気を付けてみていないと人間関係がつかみにくかったり…。そして皇太子が急造のヘリポートに下りて視察が始まって一部は終わる。二部「現実との直面」(91分)は炭坑内での爆発事故。主人公と長男はともに炭鉱員だが、父親のほうが炭鉱内に他の7人の同僚とともに閉じ込められ、駆けつける救急隊、ボランティアで崩落個所を片づけることに志願する息子、家族の待機所に駆けつける母(妻)、家で落ち着かずに待つ娘とまだ比較的幼い次男の一家を含め、閉じ込められた8人を救おうとする人々の息もつかせずの働きをドキュメンタリータッチで描いて、ハラハラドキドキが続き、家族の不安や悲しみも画面から湧き出てくるようで画面から目を離せない。出勤前、炭住の庭でクリケットをする兄弟、見守る両親みたいなのどかさの次に、不穏な事故―爆発と続き、兄が不安に陥れられる演出もすごく臨場感があるし、まあ夫婦は旧来的な夫婦ではあるが『家族を思うとき』⑰(2019)みたいなヘンな男尊女卑的?夫婦観みたいなものは前面に出てこないので、正攻法に投げられたボールという感じの安心感もある。(2月17日下高井戸シネマ047)
⑪富士山とコーヒーとしあわせの数式
監督:中西健二 出演:豆原一成 市毛良枝 酒井美紀 八木莉可子 長塚恭三 2025日本 100分
母が半年のフランス出張(研修?)ということで、祖父をなくしたばかりの祖母(母の母)の家に行かされることになった大学生のタクマ。富士山好きでいつも富士山の絵を描いていた祖父の部屋でWi-Fiのパスワードを探していて見つけた、祖母の大学市民カレッジの入学許可(実は祖父から祖母へのサプライズだったというのだが…)と祖父のノートに残された謎の数式(これが案外謎でもなくて、私なんか意味はともかく指していることはすぐにわかってしまったというシロモノ…「八/5=2305」だけど)を見つける。カフェでバイトをするコーヒー好きのタクマは将来の夢も希望も持てず、母から見ると物足りない青年。その母と祖母もまた意見が合わずというわけで、二組の親子の相克のなかでもがく青年ということかな…。途中2週間の一時帰国した母は、自身の母と息子が仲良くしているのを見て、これからはひとり暮らしさせると息子を家に連れ帰ってしまう。この強引さも大学生の息子に対するにはいささかビックリ。
ただ大変に穏やかな青年の穏やかな模索という感じで、まあ見ていてハラハラドキドキはなく、しかし感動もイマイチ?…。祖父役の長塚は穏やかで品よく、妻を愛する男として妻にも愛されているという見かけの風貌からきれいにはまっているが、妻の意向もきかず妻の大学入学を決めたり、自分ひとり富士山を愛し、娘の理解者ではあっても妻を理解していたと言えるのか、私なんかに言わせれば大いに疑問という気もしなくもないが、全体が穏やかな作りで、青年やその恋人も祖母信じる笹しい青年たちで、それゆえにちょっと物足りなくはありつつも、まあ安心して見られる題名通りのホーム・ムービー。祖母が映画の中で読む本の著者島田依史子(文京女子大―文京学院大の前身本郷女学院創設者)の著書が原案だそうで、祖母と孫が通う大学も実名文京学院大がで、キャンパスや教室を含め撮影にも大学が全面協力しているようだ。(2月17日 下高井戸シネマ046)
⑩フランケンシュタイン
監督・脚本・製作:ギルレモ・デル・トロ 出演:オスカー・アイザック ジェイコブ・エロルデイ ミア・ゴス フェリックス・カメラー 2025アメリカ 149分
出だしは北極圏を目指して進むが氷に閉ざされてしまう船。そこに現れた片足の瀕死の男と、あとから追いかけてきて船を襲い6人の船員を殺す怪物。で映画は前半助けられた男の父子にかかわる相克がらみのビクター・フランケンシュタインの語りと、後半、死ぬことのできない体として生み出されたモンスターの孤独で悲しい語りという構成で進む。まあ、前半フランケンシュタインの経験部分はメアリー・シェリーの原作にわりと忠実なのかなと思われるが、怪物部分は彼の不死性とか、知性とか、出だしは怪物として荒れ狂うようにも見えるが、意外と「好男子」(縫い目はあるけれど、むしろ痛々しい感じの白い透明感のある肌とか、端正な顔立ちとか)で、知的で、ことばも前半は「ビクター」一言で、ビクターを参らせ、喜ばせ?するが、後半に至り山奥での老人との経験で文字も読め自省もする精神性のある存在になっている。ーそれほど見ているわけではないがデル・トロの怪物は基本的に怖いというよりは可哀そうな存在として描かれることが多いように思う―その彼が船内の「会話」で人間性に目覚め、船を閉ざしている氷から救いだし、去っていく、というのはウーン、どう考えても怪物映画(本来の怪物映画でなくてデル・トロ流の)としては、ちょっと安直では?彼は閉ざされた氷の世界でこのあと永遠不滅の生を1人、いかにして生きていくのか…
怪物の苦しみを知りつつ、単なる倫理に目覚めて彼の伴侶を作ることを断り、謝罪はしつつも結局怪物に寄り添うことはない(まあ。これはビクター=父、怪物=子という関係で、ビクター自身の、あるいは一般論的な父子関係をたどっているのであろう)というのも、絶望としてよりは、怪物の物分かりの良さに依拠した解決?みたいなのがなんか割り切れず、ハッピー・エンドとみるべきなのかもしれないが、怪物を犠牲にしたハッピーエンドだわね、と思えてしまう。画面CGや特殊メイクはさすがの完成度!(2月15日 下高井戸シネマ 045)
⑨リプライズ
監督:ヨアキム・トリアー 出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー エスペン・クロウマン=ホイネル ビクトリア・ビンゲ 2006ノルゥエイ 106分
ヨアキム・トリアーはデンマーク出身だそうだが、この映画は彼の長編デビュー作にして、「オスロ三部作」の1作品。『わたしは最悪』②(2021)もその一つ、だというが、この映画けっこう若い女性の迷走が痛々しくもありくたびれる映画だった…と劇場に行ってから思い出す。で、こちらは作家志望の若い男性二人が、一緒に書きあがった原稿を投函する場面から始まって、2人のその後何年か、片方のフィリップは成功して作家となるが精神を病み恋人とともにいたり別れたりみたいなウロウロ、もう一方のエリックは、成功して作品が売れるシーンもあるのだが、どうもそれは彼の幻想?なのか、なかなか世に出ることもなく…、「何かになりたくてなれない」青年たちの悩ましい日常が二人の美青年の、時系列的にも行ったりきたりで、舞台のオスロの景色はじめちょっとくすんだというか白夜?の雰囲気もあるような白っぽい品のいいビジュアルが素敵なのだが、それもやがてけっこう疲れる要素に…ウーン。とても繊細に描かれた映画だというか、目があいているのに頭が眠る?という不思議な体験をしてしまった。その中で覚醒するのは、意外と出てくる二人以外のオスロの青年たちの女性をモノのように品評したり蔑視したりする発言で、う?『わたしは最悪』のときも感じたのだが、この作家の「男のコ」性というか、北欧社会の意外な男性主義?の存在というか、ウーン。三部作、最後に残った『オスロ、8月31日』(2011)を見るか、見ないか。間もなく公開の『センチメンタル・バリュー』(2025)を見るか見ないか。悩ましいところだが、そう思わせるところが、この作家・作品群の魅力?なのかもしれない。(2月14日 渋谷文化村ル・シネマ宮下 044)
➇ブゴニア
監督:ヨルゴス・ランティモス 出演:エマ・ストーン ジェシー・プレモンス エイダン・デルビス スタブロス・ハルキアス 2025アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ 118分 ★
『女王陛下のお気に入り⑩』『哀れなるものたち㉚』『憐みの3章➇』と、ヨルゴス・ランティモス映画、けっこうお気に入り(いや、決して心地よい世界ではないんだけれど)と思いつつ、またも見に行ってしまう…。夕方からの劇場は若い人ばっかり。
丸坊主のエマ・ストーンはヨルゴス映画では相変わらずの異形というか汚れ役っぽい、クリームまみれ、血まみれ、異様な感じのゴチック風半裸?ドレスとかと、CEOの長身ハイヒール、スーツの対比もすごい。一方彼女を誘拐し髪を刈り取り手錠・足錠でつないで監禁する側のテディのなんか成育不全の乱暴者という感じと、気は優しそうだがテディの言うなりで、なんか一本足りない感じのドンという組み合わせの異形な不穏さというのも、ヨルゴス映画のビジュアル・音響(しかも今回この映画館は「爆音」上映で音響はさらに激しく)満載で、気味悪さと不穏さに満ちた誘拐劇。2人の誘拐犯はアンドロメダ星雲人が地球を支配しようとしていると信じる陰謀論者で、彼らがアンドロメダ星雲人と目したーマザコンのテデイとはそれだけでないいきさつもあるー製薬会社CEOのミッシェルをこれでもかというふうにいたぶり、それに倒されつつ頭も使って抵抗しようとするのが前半だが、そこに地元警官が介入してきて話は急展開の血みどろアクション劇の様相を示し、警官も犯人も死に、知恵を使って彼らと渡り合いなんとか、瀕死で窮地を抜け出すが、なぜか助けられた救急車から逃げ出したミシェルが実は…という、なんともシュールというか皮肉というか、あるいは怖い(んだけれど、なんかおかしくもある)というか、陰謀論者と思われた者たちが実はそうではなかったという価値の転倒もあり、で最後まで引っ張られる(最後の静かな…場面がとーーても怖いというか気味悪いというか、他人事でない気も…)。実はこの映画『地球を救え』(2003チャン・ジュナン監督)のリメイクだそうで、あ、この終わりは韓国映画っぽいのかもとも思わされる。(2月13日 立川シネマシティ・ツー 033)
⑦射鵰英雄伝 侠之大者
監督:徐克 出演:肖戦 庄達菲 梁家輝 バヤルトゥ 張文昕 胡軍 蔡小芬(エイダ・チョイ)2025中国(普通話・モンゴル語) 147分 ★★
言わずと知れた金庸原作、ツイ・ハークの大スペクタクル映画化というわけで、昼間(午後~夕)の回とはいえ、公開5日目くらいですでに入りはパラパラ?大丈夫?というシネマート。主人公郭靖は今風イケメン(と思う)肖戦、相手役黄蓉は『長安のライチ』㉒で野性味たっぷりのライチ農園主人だった庄達菲。今回もしっかり自立した感じで、カンフーは抜群?だけどちょっとお人よし?という感じの郭靖を、むしろ叱咤激励、自身の生き方も自身で決めてしまう女性で格好いい。で話の舞台はほぼ蒙古で、チンギス・ハンはじめ蒙古の武者たちは蒙古族の役者たちがモンゴル語で話し、肖戦も蒙古のシーンではモンゴル語。これが、なんというかしゃっくりみたいな区切りがすごく目立つので、すぐにわかるのだが、あれ?モンゴル語ってこんなだっけ?と思えるかなりの訛り?肖戦はすべて丸暗記で覚えたのだそうだが…。蒙古で育った宋人の郭靖の宋への愛(と言っても実際に宋でそだったことはない?)と宋を開門させそこから金を攻め滅ぼそうとする蒙古への抵抗(と蒙古への愛もあるよう…)の板挟みや、合戦などをまあ、息もつかせず見せてくれるし、この映画では完全にヴィランの西毒のレオン・カーフェイの妖怪じみた凄み、一方で北丐の胡軍は出番も少なくいい人っぽいだけで、んん?他に郭靖の母役のエイダ・チョイも香港の女優だと思うので、ベテランを香港人で固めて、辺境異民族攻防の物語とそこに翻弄される男女の話にして、娯楽作品に仕上げるあたり、さすが徐克と思うばかり。面白く見た。(2月10日 シネマート新宿 032)
⑥白い馬
監督:アンドレー・ラモリス 出演:アラン・エムリー ローラン・ロッシュ フランソワ・プリエ パスカル・ラモリス 1953フランス モノクロ40分 ★★
⑤『赤い風船』とこの映画は2本立てで1本という上映形態。しかし作られた年代も3年ほど離れているし、詩的洗練というかそういう点では『赤い風船』の完成度はすごいが、こちらはより若々しい感性(あと悲哀も)に満ちている感じで好きな一本。別々の映画として見たい。少年アラン・エムリーはこの映画では裸馬を乗りこなす訓練もしたそうで、ちょっと古典的な映画作りが生きていた時代の作品でもある。広い荒野に群れを成す野生馬のリーダー格の白い馬を捕えようとする牧童たち、一方荒野の端に住む少年フォルコも白い馬に魅せられ、馬を牧童から救おうと、またがって逃げ出す。最後の自暴的というか、悲しみにも満ちた終わり方って、いかにもラモリスの今回見た3作に共通するものだなあと、今更ながらに思う。パスカル・ラモリスはこの映画ではフォルコの弟(妹かと思った。可愛らしいおかっぱ頭)で亀と遊ぶ3歳幼児である。なお、今回4K版については当時を知っている75歳のパスカルが、製作に参加しているのだとか。(2月9日 下高井戸シネマ 031)
⑤赤い風船4K
監督:アンドレー・ラモリス 出演:パスカル・ラモリス サビーヌ・ラモリス ジョルジュ・セリエ 1956フランス 35分 ★
『赤い風船』『白い馬』は2008年のデジタルリマスター版公開時にも見ているが、もう一度というわけで…。監督の息子パスカルは当時6歳、今と違って浮かぶ風船などはCGとかで撮るわけではなく、見えない釣り糸?のようなもので宙に浮かして撮ったらしいが、この風船を相手に芝居をするというか、学校の行き帰り、いじめっ子?の少年たちに取り囲まれ、風船を失いというような状況を演じる少年と、パリの街角の光景も忘れられない一本。少年が上は毛糸編のセーターだが、下はジャージのようなスエットを着ているのが、さすがはフランス、50年代?。少年がすれ違う青い風船を持った少女は妹(監督の娘)のサビーヌだったとか、終わり、赤い風船をいじめっ子につぶされた少年パスカルを囲むように街中の子どもたちの風船が寄り集まり、彼を囲んで空に運ぶシーンは、ウーンこれも至福?とみるか、風船しか相手のいない少年の孤独ととらえるべきか…(2月10日 下高井戸シネマ 030)
④素晴らしい風船旅行
監督:アンドレー・ラモリス 出演:パスカル・ラモリス アンドレ・ジレ モーリス・パケ 1960フランス 84分
『白い馬』『赤い風船』4k版公開に合わせて組まれた特集で、3本上映されるが、時間の関係で見られたのはこれだけ。『白い馬』『赤い風船』に続いて、ラモリス監督の息子パスカル(1950年生まれの今や76歳とか)が主演している。少年パスカルは気球学者の祖父の発明した気球に祖父には隠れて乗り込み祖父とともにフランス国内上空を旅することになる。気球は熱気球ではないし、下を車で父(かな?)が追いかけ、泊る場所を指示して、持参の食糧で晩餐、そこにしつらえた簡易ベッドで一夜を明かし、また朝になると出発するという素朴というか牧歌的というか…。その過程で遭遇する出来事を綴っていくわけだが、事件に関してはパスカル少年の身体能力とか、なぜか出てくるパリのサロン?の人々の気球ばなし?とか、ちょっと古風な作りでもあり、CGなどもない時代に、ヘリコプターを使って上空から
撮影したという映像のパリや郊外のフランスの景色は十分以上に楽しめて…。終わり近くパスカル少年だけを乗せて飛び立った気球がいわば迷子、になる、そして…この終わり方解放?とみるべきなのか、それとも孤独に悲劇とみるべきかー『白い馬』や『赤い風船』(はちょっと違うかな…)を受け継いでいるニヒリズムというかシニカルなというか、が気にはなる。そこが子ども映画というよりは大人向けの作品となっている所以であろうか。(2月10日 映像詩人アルベール・ラモリスの知られざる世界 下高井戸シネマ 029)
③ツーリスト・ファミリー
監督・脚本:アビシャン・ジービント 出演:シャシクマール シムラン ミドウン・ジェイ・シャンカル カマレーシュ・ジャカン ヨーギ・バーブ 2025インド 127分 ★
出だしにまず「この映画は不法移民を容認するものではありません」ということば、ついで「映画内のスリランカ・タミル語については文語?の字幕をつけます」と出る。スリランカはシンハラ語とタミル語が公用語だが、シンハラ語人が7割だそうで、この映画スリランカでの暮らしの困窮に悩む少数派のタミル語人の一家が船で夜のインドの海岸に漂着するところから話が始まる。たちまちに警官に誰何されるが何とか切り抜け、先にインドに移住していた妻の兄の助けも得てチェンナイのある家の二階に間借りする。あとは1階に住む大家の警察官一家とか、いろいろな隣人との付き合いー実は義兄にはスリランカ人であることを隠してタミル語もつかわないように忠告されるのだがーの中で家族、特に主人のダースの人柄が周りの人々との関係でをコミカルながらいろいろに働き、じんわりさせるような人情劇に仕立て上げる。ダースは「話す」を「語らう」と字幕で示されるような、文語というよりやや古めかしい雅語をついついしゃべってしまうのだが、映画は終幕この「ことば」が隣人たちに奇跡を起こし、ダース一家が救われるという、なかなかに素敵な展開をする。まあ、「不法移民は容認しない」とは言うのだが、これは検閲逃れの皮肉?なのかな。ただ、スリランカからの難民だから認めるというわけでなく、あくまでダース一家の人間性によって周囲に奇跡を起こしていくという描き方ー多分語ることばの差異が分れば、それも皮肉?で実は混合多文化の共存を実感できるのだろうなと思える。マサラムービー風の歌も踊りもあって、インド映画にしてはコンパクト?な127分。寒い平日の午後、観客もまあまあの入りだった。
強引な衆議院選挙で自民党圧勝。高市政権は戦争も辞さず、非核三原則もいじりそう、そして移民問題についてもますます排撃方向かなと思われる不安な午後、自分が「民意」とはかけ離れたところにいるのも感じてつらかったが、ここにこの映画を見に来ている人は少なくとも「高市派」ではないだろうとは思え、共感的に映画を楽しむ(ホントはわからないんだが)。(2月9日 新宿ピカデリー 028)
②役者になったスパイ
監督:ミヒャ・レビンスキー 出演:フィリップ・グラバー ミリアム・シュタイン ミヒャエル・マールテンス ピーター・イェックリン 2022スイス(ドイツ語) 102分
スイスは永世中立国だが、軍隊組織はしっかりありーそうだバチカンの衛兵もたしかスイス兵?ー、この映画の時代1980年代には国がソ連共産主義のを恐れて反体制派(特にソ連と親しい?)の10万人規模の国民の監視をしていたのだとか(この映画の監督も、学生時代興味を持った研究の目的でソ連大使館に問い合わせをしたことから監視対象になったのだそう)。そんな中、さかんにデモ活動を行う劇場と劇団員への潜入を命じられ、エキストラとして劇団に入ることになる真面目で孤独な警察官シュエラーの物語。孤独で無味乾燥な警官生活から、刺激もあり主演女優(必ずしも優遇はされていない。演出家に舞台で裸になることを迫られるなど、シュエラーにとって許しがたい事態も起こる)を好きになったりと、まあ、そのあたりは予想内の展開ではあるのだが、ミッションを与えた警察と、劇団でのアートや人情のはざまに立って…とそうこうするうちに89年ベルリンの壁が崩壊してという社会の大変動の中で、悩み揺れる男が描かれ、けっこう社会状況がわからないと難しいところもあるのだが、特に後半はハラハラドキドキでナールほど!ポリティカル・ロマンンティクコメディというそうだ。1月23日公開のロードショーが2月5日には終わるというので慌てて見に行ったが、それもその難しさ?ゆえ?夕方5時過ぎの回、観客は10人ほどの男性中高年と女性は私を含めて2人だった。(2月2日 新宿武蔵野館 027)
①アル・リサーラ
監督:ムスタファ・アッカド 出演:アブダラー・カ゚イス ハムディ・ガイス
リビア・モロッコ・エジプト・サウジアラビア 1976 207分
2月の1本目は、過去10年ほど、この時期に行われて昨年で終結したという『イスラム映画祭』の上映作品をまとめた『イスラム映画祭エンサイクロペディア』(藤本高之)先行販売上映会と銘打った1日限りの特集。会場はなるほどの、ほぼ満員?
映画は、アラー(唯一神)の啓示を受けたムハマンドが、マッカ(メッカ)の支配層からの迫害を受けながら、砂漠を流浪?し、支配層や、遊牧民たちに襲われつつ闘いながら、やがてメッカに戻ってイスラム教を定着させるまでのアクティビティ?冒険譚。作者アッカドはシリアからアメリカに渡って活躍した人で、この映画、実はハリウッドの俳優を使ったバージョンが『ザ・メッセージ』という題名(これはみてはいないけれど、なんか記憶にはあった)で同時に作られたという。厳密にいうとセットなどは同じものを使い、先にアラブ人俳優、次にアメリカ人たちで同じ芝居をして撮影したとか(最初は「手本」としてハリウッドの役者編を先に撮ろうとしたらしいが、それだとアラブ人らしさが出ないということで逆にしたという話ー終わってのトークショーで聞きナルホド!)。モロッコやシリアで、時の政権の援助を受け、援助が中断され、ムスリム教会から排撃され?となかなかに大変な経過で作られた2本ということだ。面白いのは偶像崇拝が許されないゆえ、ムハマンドは役者なし声なし。役者たちはあたかも目の前にムハマンドがいるかのようにカメラに向かってセリフをしゃべったり、画面の中にいない目線で彼の存在をあらわしたりしていること。ま、そういうことだからムハマンドの悩みとか弱さのようなものは描かれるはずもなく、対する支配者側が葛藤しつつ帰依していく(帰依していく振りも?)有様などの心理面は描かれるが、ムハマンドや、彼を支える側はあくまでりりしく迷いなく?というまあ英雄譚。イスラム教や、その流布した地域の状況などを知らないと、登場人物の名前一つ覚えるのも大変で、鑑賞にもなかなか技術がいるようにも思われるが、大規模にちょっと嘘っぽく様式化された合戦場面なども含め、楽しめる部分は多々あり―ヒロインが支配者の妻たる残虐な悪女っていうのもまあ、このような砂漠地帯では楚々とした美女では生きていけなかったろうなと思うとナルホド!207分の映画にはインターミッションがつき、上映後、主催者藤本氏と、アラブ映画研究者の佐野光子氏の1時間にわたるトークあり。)
ちなみに、同時撮影されたという『ザ・メッセージ』(1977)はアンソニー・クイン、イレーネ・パパス、マイケル・アンサラらが出演し、第50回アカデミー賞にもノミネートされたとか(作曲賞?)。アッカド監督は『砂漠のライオン』(1981)、『ハロウィン』シリーズなどを作ったが、2005年ヨルダンで自爆テロに巻き込まれて亡くなった。(2月1日 渋谷ユーロライブ 026)


































































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