【勝手気ままに映画日記】2019年12月

あけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。2020元旦

上は足和田山から、下は足柄山から、富士山を見に行けるようになりました!

2019年は、2月のスキーでの大怪我入院で、みなさまに大変ご心配をおかけし、猛反省の年でした。すっかり半分は棒にふってしまった?というような気もしますが、なんとか復活、夏には低山歩きも再開、山の頂上まで登って富士山を見るなどということもできるようになりました。寄る年波?はいかんともしがたいですが、もうしばらくは頑張って滑ったり登ったりしたいなあと、懲りずに思っているところです。
さて、今年も月1回ののんびりペースですが、映画日記を続けていきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いします。12月に見たのは以下の26本でした。印象深かった映画には🌸マークつけてみました。

①~③第20回東京フィルメックス作品として前回アップ
④ヒンディ・ミディアムー英語が話せないなんてー⑤台湾、街かどの人形劇(紅盒子・Father)➅幸福路のチー(幸福路上)➆英雄は嘘がお好き➇アルツハイマーと僕 グレン・キャンベル音楽の奇跡➈決算忠臣蔵⑩恋々豆花⑪東京裁判 4Kデジタルリマスター版⑫シークレット・スーパースター⑬樹木希林を生きる⑭トスカーナの幸せレシピ⑮エイスグレイドー世界でいちばんクールな私へー⑯ラスト・クリスマス⑰ある女優の不在⑱こおろぎ⑲テルアビブ・オン・ファイア⑳ゴッホとヘレーネの森ークレラー=ミュラー美術館の至宝㉑人生、ただいま修行中㉒スターウオーズ スカイウォーカーの夜明け㉓細い目㉔去年マリエンバードで㉕アナと雪の女王2(FROZEN2)字幕版 ㉖男はつらいよ50お帰り寅さん

④ヒンディ・ミディアムー英語が話せないなんてー
監督:サケ―ト・チョドリー 出演:イルファーン・カーン サバ―・カマル 2017インド 132分

132分といえば、長いことは長いが最近の日本映画などには珍しくないように思うが、このインド映画、なんと中間にインターミッションの文字が出た!(もちろん実際のインターミッションはなく、そのまま上映は続いたが)
インド・デリーの洋装店というか仕立て屋の若者が顧客のおしゃれな金持ちの娘と恋に落ち(こんな場面いるのかなあとも思うが)、15年後に飛んで、男、ラージはブランドの結婚衣装などを売る大きな店の主人として金持ちになり、妻は一人娘をいい小学校に入れようと躍起になっているというところから話が始まる。一家は下町から高級住宅地に引っ越して名門小学校を狙うが、結果は全滅。その名門小学校に部下の子供が合格したことから、貧困者枠というのがあることを知り、貧困者を装って書類を偽造受験(くじ引き)を申し込もうとする。しかしそういう不正があることが公になり、実際の生活調査があるということで貧困者が住む地域に一家でしばらく移り住む、というところからがインターミッション後の後半。
そこではネズミやデング熱を媒介する蚊に恐れおののき、水もないということで困り果て、また地域の人々にもなじまず排斥されるというような文化ギャップに悩む中、同じく子供を名門小学校にエントリーしている男とその妻の親切を受け、なんとかその地域で暮らしていく-貧しい人々の人間性の豊かさが描かれるわけだーようすが描かれ、そこでまあ、ラージはエゴイズムから目覚め…小学校の調査もなんとか潜り抜け親切な隣人とともに抽選にのぞむ。ところが、ラージの娘は合格くじを引き当てるものの、隣人の息子のほうは外れてしまい…というのがさらにその先。
主人公一家は金持ちであるのを隠したままその地域を去り、娘は無事名門小学校に、隣人の息子は施設も不十分な公立学校に入学し、やましい思いを抱くラージ夫妻は公立学校に援助を申し出て施設や教育設備の改善に力を尽くす。英語の本をペラペラ読む息子に感動した隣人は学校に礼を言いに訪れ、援助をしてくれた金持ちの存在を知り、お礼に行くと…という感じで英語が重視されそれができないことが貧困につながるような、そして公立と私学名門の格差などにも切り込みながら、ドタバタエンターテイメントに仕立て上げるインドの映画技術がここでも大いに発揮されていて、ま、安直なところもあるが、人気を博したのもわかるような作品に仕上がっている。(12月3日 下高井戸シネマ)


⑤台湾、街かどの人形劇(紅盒子・Father) 
監督:楊力州 監修:侯孝賢 出演:陳錫煌  2018台湾 99分

原題の「紅盒子」とは、神様「田都元帥」を収めた高さ2~30センチぐらいの赤い木箱。台湾布袋戯の巨匠・李天禄の長男として生まれながら、父が婿入りした陳家の跡継ぎとして、布袋戯のほうは、李姓を継いだ弟が後を継ぎ、父からはある意味で「訣別」することになった陳錫煌がいわば「父」として長年、常に傍に置き上演の前後に祈りをささげてきたものを指している。したがって英題は「Father」と、なかなか含蓄深い題名であるわけだ。
このドキュメンタリーは、父を継いで有能な演者でありながら、父とは一歩距離を置かざるを得なかった確執と、その中でも父からの伝統を受け継ぎ、次につないでいこうとする意識とが2本の柱としてテーマになっている。なかでも伝統を、世界中の受け継いでくれる人ならば台湾人であるか否かを問わず伝えていき、台湾の布袋戯を絶やさず守っていこうとする老いた陳のあたかも追い詰められたような情熱が画面からひしひしと伝わってくる迫力。ほんの一コマ、侯孝賢が出てきて李天禄が出演した映画『恋々風塵』や『戯夢人生』について語り、『戯夢人生』で若き日の李天禄を演じた林強も語る場面があり、印象的ではあるのだが人形劇師としての李の話ではないし、どうなんだろうなあ…。
父の後を継いだ弟に関してもほぼ、その葬式とそれにまつわる後継者を陳を含む人々が語る場面くらい。最後に演じる舞台や、人形を動かす手の動きの撮影がとーってもきれいで心惹かれる。あと台湾(中国?)の婿養子制度って、本人は姓が変わらないけれど(嫁入りも同じ)第一子(男女にかかわらずらしい)を婚家(母方)の姓にするんだとは、初めて知った。嫁もそうだし婿もそうだけれど要は、本人は中継ぎにすぎず、子孫を残すことが何より大事ということね…。(12月4日 下高井戸シネマ)


➅幸福路のチー(幸福路上)
監督:宋欣頴 出演:桂綸鎂 魏徳聖 2017台湾(台湾語・普通話)   111分 

2018年東京アニメワールドフェスティバル・グランプリ、その後もいろいろなアニメーション映画祭で受賞してきたこの映画、台北郊外幸福路での祖母、父母、少女李淑淇(小淇 シャオチ―)の少女時代、小学校で知り合った友達、受験勉強に励んで「何事かをなそうという夢」を持っていた中学・高校時代、戒厳令が解かれた時代、その後の台湾の民主化運動に参加した従兄弟ウェンとのエピソード、1999年台湾地震などを経てアメリカにわたったチーが現地で結婚するも、夫と不仲になっている、そんな中で祖母の死去の知らせで台湾の実家に帰って来るところから、変わった街の様子、おとなになったかつての友人たち、老いた父母などと交わりつつ、過去を回想するという形で描かれるアニメーション。
時に道に迷うチーの前に祖母の幻影が現れて助言したり、台湾のさまざまな社会的・自然的脅威が暴れる竜?と、闘う王子で表されたり、アニメーションで作る意味を大いに生かし、かつ結構重厚な現代史ドラマなので多分実写で撮ったら長編大作コスパ高になるはずで、そう言う意味でもよく考えて作られた映画なのだが…。
あまり可愛くないけれどアニメ的リアル感のある子ども時代のチーや周りの友達はいいとして、おとなのキャラクターが、動く100分越えの映画のキャラクターとしてはイマイチ魅力に欠ける??―そのためか?声はチー桂綸鎂、ウェン魏徳聖と、なかなか豪華だけど…ー気がする。
『おもひでぽろぽろ』(高幡勲1991)とも比べられるこの映画だが、あちらは同じ「故郷」的田舎を描いてもヒロインは新しいその世界に飛び込んでいくが、こちらはいったん飛び出した故郷に、夢破れ(破婚、なのに妊娠中、無職という状況)帰ってきて、友人や父母の暖かさに身をゆだねる?というわけで、この故郷回帰の物語自体がどうにも私の趣味にはあわない。90年代からの台湾を描く歴史性については興味深く見たが。
(12月5日 新宿・シネマカリテ)


➆英雄は嘘がお好き
監督:ローラン・ティラール 出演:ジャン・デュジャルダン メラニー・ロラン ノエミ・メルラン フェオドール・アトキン 2017フランス 91分

1800年代初めのブルゴーニュの邸宅、次女の求婚に現れる赤い軍服白馬にまたがった大尉、しかしそこに戦地に行けという命令が来て…手紙を出すと言いつつ手紙は届かず、弱る次女。そこで長女(なぜか結婚する気はなく、親も次女の結婚だけを関心事としているのは??)が乗り出して大尉に代わって戦地からの手紙を書き続けるが…やがて激戦の末大尉は戦死したということにして最後の手紙を書き、妹はあきらめて別の男と結婚二児をもうける。ところが3年後、尾打ち枯らした大尉が帰還…焦る長女、屋敷にやってくる大尉ということで、ここから大尉の戦果と戦死からの帰還のいきさつを長女は大尉を助けてさらに捏造することに。しかし大尉の話はエスカレートしてインドのダイヤモンド鉱山で大もうけしたという話になり投資を申し出る人々が続出…要は詐欺師の大尉と心ならずも共犯者になっていく長女を描くロマンティク・コメディで単純に楽しめる?ような映画は久しぶりに見たかも。
でもまあ、2人に乗せられる貴族の面々の言ってみれば「バカ面」にはハラハラだし、突然に攻め込んでくる「コサック兵」に大尉が立ち向かい格好いいところを見せて長女の評価も挽回するとかいうのは単に荒唐無稽というよりか、なんでここでコサック兵?という言ってみれば民族差別臭もなくはないし…。ウーン、ちょっと微妙かな。メラニー・ロランはなかなかに強く・可愛く、コメディエンヌぶりも発揮して魅力的。ジャン・デュジャルダンはもちろん達者ではあるが、次女の求婚者としては見かけがちょっとオジサンぽすぎない?という気も。いやいや19世紀のフランスの貴族社会の男の魅力はあんなものなのかな? (12月5日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


➇アルツハイマーと僕 グレン・キャンベル音楽の奇跡
監督:ジェームズ・キーチ 出演:グレン・キャンベル キンバリー・キャンベル アシュリー・キャンベル カール・キャンベル シャノン・キャンベル ブルース・スプリングスティーン ポール・マッカートニー 2014アメリカ 104分

2011年にアルツハイマーであることを公表したグレンキャンベルの最後の『Goodbye Tour 』を、ステージやその準備の様子、本人や妻キム、ツアーバンドの参加者である息子や娘たち、またツアーを支えた様々な人々や、観客のインタヴューも含めて綴る。
150か所以上の会場で公演をおこなって2012年カリフォルニア州ナパまで。さらに2012年2月12日、グラミー賞授賞式の『Rhinestone Cowboy 』の最後の演奏も。歌詞をわすれてプロンプターに映る文字を追いながら唄うのだけれど、ギターとか、音程とかは間違わず、体の中に音楽が染みついているのだろうという述懐もあるが、とにかくすごい!勇気の人!というかこれは本人もだけれど、しっかり者の妻キム(この妻4人目?グレン・キャンベルは4回結婚し8人のこどもがいるらしい)と、彼女とグレンの間に生まれた2人の息子、1人の娘―いずれもミュージシャンで父のバックバンドに参加―の勇気や協力の賜物という感じ?そしてまあ本人の映画だから当たり前かもしれないが、彼の陽気な雰囲気や、まわりでマネージメントしたり、バンドに参加したり、またかつて共演したミュージシャンたちが誰もがグレンを敬愛しつつさせているという感じが滲み出ている映画でもある。グレン・キャンベルはその後長期療養型の介護施設に入り、2017年、81歳で亡くなっている。  (12月5日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


➈決算忠臣蔵
監督:中村義洋 出演:堤真一 岡村隆史 濱田岳 横山裕 妻夫木聡 石原さとみ 竹内結子 2019日本 125分

『武士の家計簿』系列?で、12月がシーズンの討ち入りを勘定方の視点から描いたコメディ。当時そばが1杯16文、これを現在の480円(駅そばだね)に換算し、最初は開城、討ち入りはしないという方針で江戸にいる討ち入り派をなだめる?ために国元赤穂と江戸を行き来する人の旅費からはじまり、討ち入りまでのあらゆる出費を数え上げ…
もともとは浅野内匠頭の妻瑶泉院(高飛車女性がなんかはまり役になった石原さとみがなかなか好演)の持参金を赤穂の塩作りに投資した金というのがその出所なのだが、9000万くらい?でそれほど潤沢にあるわけではない金の使い道にハラハラしながら家中をなだめたりすかしたりおだてたり、そして頭を抱えたりという大石内蔵之介(堤真一)と、若い時からの朋友であった勘定方(岡村隆史)の友情?もからめ、実際の討ち入りの場面はなくてシュミレーション(これを金に糸目をつけず、大石をハラハラさせながら引っ張るのが妻夫木聡クン)で白い衣装や、赤い衣装などの案をそろえ、CGなのかもしれないが案外お金もかかっていそうだなと思わせる。現代視点の語りなので、忠臣蔵に題材を借りた現代劇―会社劇?という感じもするが、まあなかなか楽しめる。岡村の死が一つのターニングポイントとして映画の中で重要な位置を担っているが、他の場面にそぐわない血みどろで、ちょっと何も殺さなくてもいいんじゃない?という気もしないではないのだが。
(12月9日 府中TOHOシネマズ)


⑩恋々豆花
監督:今関あきよし 出演:モトーラ世理奈 大島葉子 椎名鯛造 利重剛 2019年日本・台湾 101分

大学4年目だが留年中、ボーイフレンドとの関係もうまく行っていない奈央が、父の新たなパートナーになる女性に誘われて台湾にグルメ旅に出るという話。そこここで食べる台湾B級グルメはとってもおいしそうだし、食べる店や泊まる宿や、そのたの観光スポットも、心誘われるように撮られてはいるんだが、グルメもあれこれ出されると、なんか食傷気味?自分が食べるわけではないしね…なんかなあ…。今風のおいしい台湾、おしゃれな台湾に尽きている感じ。
旅をしながら歴史とか社会状況とかにはまるで無縁という感じだし、そこで出会う人々も台湾人でなく、世界放浪をして台湾が気にいったという青年とか、来年は北京に拠点を移したいという台湾の俳優とカメラマン?とか、日本から来ている女優や歌手とか、まあ、設定自体が、父はプロデューサー、そのパートナーは元女優とかというヒロインなので、そういう世界がすべて?なのかもしれないけれど、そして彼女、モデルになれと誘われ、父のパートナーのほうは、かつて10歳で別れた娘に再会するが、そのせいかどうか結婚はやめる、でもウェディング写真だけは家族で撮るとか、わけわかんないし、ウーンなんか安直な感じだよなあ…。
その後同じ監督が同じモトーラ世理奈を主演に撮った『メモリーズ』(35分)というサービス上映?があったが、ウーン。これはまたなんか…博多人形みたいなちょっと二重のあご白塗りの感じのヒロインを動かしつつ語られる話は???でポール・ルーラー(シルクド・ソレイユのバイオリニストとか?)の情緒的なバイオリン演奏ばかりが耳に残る。(12月10日 渋谷・光塾 試写会)


⑪東京裁判 4Kデジタルリマスター版
監督:小林正樹 ナレーター:佐藤慶 1983(2019)日本 277分 🌸

裁判の元映像はアメリカの公文書館が公開したものだそうで、それにさまざまな映像を組み合わせ、日中戦争や、三国同盟などテーマごとに歴史映像(こちらは見た記憶のあるものが多い)を組み合わせ、さらに裁判にからみ、天皇の戦争責任を問わないというマッカーサーの方針が裁判にどう絡んだかとか、戦勝国が裁くことに対する裁判官や弁護団の意見とか、戦犯どうし間の利害というか意見・主張の対立とかまで明らかにし、私たちに東京裁判の全貌?を見せてくれたような気にさせるーそれも怖いことかもしれながー必見?のドキュメンタリー。見た記憶のある映像もあるのだが83年最初の公開当時幼児の子育て真っ最中の私は、多分こんなに長い映画を劇場に見にはいっていないはずということで、見に行ったが、4時間半長くて肋間神経痛が起こり鎮痛剤を塗りウンウン言いながら見ていた。それがちょうどピッタリの内容の重さでもあり、インパクトでもある作品だった。
(12月11日 下高井戸シネマ)


⑫シークレット・スーパースター
監督:アドヴェイト・チャンダン 出演:ザイラー・ワシーム メヘル・ヴィシュ アミール・カーン 2017インド 150分 🌸

『ダンガルきっと強くなる』『バーフバリ』に続きインドでの興行成績史上第3位とかいというこの映画、少女が歌でスーパースターになるというサクセスストーリーだが、現代世情を反映したユーチューブでの顔を隠したシークレットスターとしてブレイクするとか、それに何よりも伝統的なジェンダー認識とそれに裏打ち?された暴君である父親による母へのDV、娘に関して「女の子は望まなかった」と生活や生き方を規制する父との確執から飛び出そうとする少女ということで、社会への視点ががっちりあり、そこで最後に少女のみならず母は自らの生を選び取り娘も母を見直すという展開が、単なるアイドル少女の成功映画みたいにはしていないところがさすが。
脚本にほれ込み自らプロデュースをしたというアミール・カーンが超軽薄だが、少女を見出し支えるプロデューサー役で、少女とはまた違ったタイプの歌や踊りで楽しませてもくれ、コメディアン的役回りも演じ(少女のボーイフレンド・チンタン役の少年も何か、そういう素質を感じさせる)画面を盛り上げている。(12月12日 下高井戸シネマ)


⑬樹木希林を生きる
監督:木寺一孝 出演:樹木希林 2019日本 108分

樹木希林死後10日くらい後にNHKスペシャルで放映されたというドキュメンタリーに30分間の映像を加え再構成したというドキュメンタリー映画で、あちこちで結構ロングラン上映しているみたいだし、とアルテリオ最終日に見に行ったが…。
樹木希林最晩年の4本の映画『モリのいた場所』『万引き家族』『日々是好日』そしてちょこっとだけ『いのち短し恋せよ乙女』の撮影時の樹木に監督が一人ハンディカメラを持って密着して撮ったいわばメイキング映像的な部分は映画撮影の裏側?みたいなものも見えて興味深い。
前3本の撮影は樹木自ら車を運転し、木寺をピックアップして撮影所まで送り迎えをしながら車中でインタヴューに答えているという映像で、こちらはとりとめなくまとまりなく、時によってニュアンスももちろん変わるし、ウーン。まあ、この年で、癌に侵された体で結構な距離を自分で運転していくという姿は感動的だが。そしてこの対話で、監督自身が妻とうまく行っていないという私生活を明かし、それに樹木が切り込みつつ、この映画撮影の意味を問うていくというような展開になり、監督はどんどん責められていく。まあ、そういうふうに人に切り込んでいきながら、自分が撮られる意味がない、面白くもないと言い募る樹木の姿そのものに興味を惹かれるという視点もあるのかもしれないが、私はなんか死んだ大女優に言うもはばかられるという批判も受けそうだが、樹木希林ってなんか傲慢?というか自信家(自分は美人ではない、しわが好き、与えられた仕事をこなすだけ、そして人から見られる個性を「そう見えるだろうねえ」と肯定する、自分の全身癌に侵された写真をインタヴュウーで見せる)で、おつきあいするにはエネルギーが要りそうな人だなあ、と監督のだらしなさに同情もしつつ、思ってしまう。とはいえ、この監督もあれだけけなされておいて、しっかり彼女を題材に1本仕上げ面白いかどうかはともかく話題作として劇場ロングランにしたわけだから、こういう業界の人は転んでもただでは起きないんだなと感心もした。(12月13日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


⑭トスカーナの幸せレシピ
監督:フランチェスコ・ファラスキ 出演:ヴィニーチョ・マルキオーニ ルイジ・フェデーレ ヴァレリア・ソラリ―ノ
2018イタリア 92分

一流シェフだが気が短くケンカ・傷害事件で収監された主人公アルトゥーロが、義務付けられた社会奉仕でアスペルガー症候群の人々の自立支援施設で料理を教えることになる。そこで天才的な舌を持つ青年グイドに出会い、彼の希望で「若手料理コンテスト」に参加することに。コンテストの審査委員長はかつてアルトゥーロと同じ師の下で彼と並ぶシェフとなり、共同で店を持つが、アルトゥーロを陥れるように店の権利を奪い、今やメディアへの露出も多い男、彼との絡みや、アルトゥーロにかかった出店のテストの機会、そして自立支援施設の心理学者の女性などがからみ、まあ、言ってみれば危なげのない(あっても何らかの方向に解決するであろうことがわかる安心感)至福に至るサクセス・ストーリー。そしてアスペルガー症候群をかかえた青年が料理コンテストを通して人間関係の機微を知ったり、頼れるシェフに成長していく姿もしっかり見せて予定調和的な出来上がりの作品だ。となると見るべきはその障害ぶりと成長ぶりを演技で見せる若いルイジ・フェデーレということになるのかなあ。だが、そう考えるとちょっといやらしいテーマだよなという気もしてしまうが。トスカーナを車で走るロードムービーとして楽しむ手もあり?(12月13日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


⑮エイスグレイドー世界でいちばんクールな私へー
監督:ボー・バーナム 出演:エルシー・フィッシャー ジョシュ・ハミルトン エミリー・ロビンソン ジェイク・ライアン 2018米 93分


ケイラという中学最終学年(8年生ということ?)の日常と心の悩みとそこからの脱却?をSNSの動画投稿サイトへの彼女自身の語りと、そこから遊離した日常や人間関係の悩みと絡めて描いていく。彼女は可愛らしいことは可愛らしいのだがちょっと太目、ニキビいっぱいで俯き加減猫背で歩く。卒業学年で一番無口な少女として表彰されてしまう―日本の高校生もクラスに中で「一番…な人」をピックアップして卒業文集に載せたりはするが、学校をあげて「美女」とか「瞳がきれいな」とかいうのはなんかオソロシイしくみだなあ―。
その彼女の自己認識ーSNSの朗らかな語りと実際のずれの苦しみはまさに現代の若者的悩みなのだろう、ひりひりするような痛み、おとなから見るとハラハラ感とともに伝わってくるが…ただ解決が仲良し(普段はそうでもない。やっぱりすごくウザがっていた)お父さんの励ましと慰めというのはどうなんだろう…。終わりが少し安直、というのはハッピーエンドになっているということでもあるが、という気もしないでもなく。しかしドラマティクではないこれがリアリズムかもとも思う。でもやっぱり15歳?のケイラよ幸せに、という気にはさせられるかな。(12月15日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


⑯ラスト・クリスマス
監督:ポール・フェイグ 出演:エミリア・クラーク ヘンリー・ゴールディング エマ・トンプソン ミシェル・ヨウ  2019米 103分

ロンドンを舞台に、旧ユーゴスラビアからの移民のケイト(実はカタリナ)がヒロイン。家族とうまくいかず家には寄り付かず友達の家を泊まり歩いている。仕事(ミッシェル・ヨウがオーナーのクリスマス・ショップ。そこで妖精エルフの格好で店員をする)もいい加減、歌手を目指してオーデションを受けるがこれも努力不足―友達ともトラブり泊めてくれる友達もいなくなるという八方ふさがり、なぜそうなのかは少し意味深という感じに描かれてあとで種明かしがされる。
そこに現れたのが謎の人物トム。ケイトのピンチに現れて、今までとは違うもののみかた(空を見上げようとか…)や、ケイトの問題解決の道筋を示してくれたり、教会でのホームレス支援のボランティアの道筋をつけてくれたり…泊まるところがないときに家に泊めてくれたり、もちろんケイトはだんだんに彼に心惹かれるわけだが、なぜか、彼はケイトがうまく行っているときは行方不明になってしまうし、出会った時も一定の距離をくずそうとはしない。それでもケイトはだんだんに失った友や家族との関係も修復し、ホームレスの人々とともに音楽会をひらくまでになる。しかしこの時もトムは現れず、家を訪ねていったケイトは、そこが1年間も空き家になっている売り家であることを知る。
実は彼女は心臓移植の経験者。そして彼は…というわけで、このあたりになるとまあ展開は割れるわけだが、ちょっと『ゴースト・ニューヨークの幻』的要素も加味されるわけだ。意外に丁寧に書かれているのが移民としての家族の暮らし、母親役がこの映画の原案・脚本担当でもあるエマ・トンプソンで、文化のはざまで解放されない、それゆえに娘とも今一つうまくいかない母親をちょっと今までにないイメージで好演。また、ホームレスの人々とか、ケイトの姉の同性の恋人との関係と家族の理解への繋がりとか、ちょっとあれこれ盛り込みすぎという気もするくらいあれこれの問題を盛り込んだ社会派映画の趣もある。ただそれがどれほどにこの映画に必然性を持って存在しているのかは若干疑問のむきもある?社会派映画としてもゴースト・ファンタジーとしてもちょっと中途半端だったかなという感じは否めなくもなく、特に前半はいささか眠気をこらえるという感じだった。なお、ヘンリー・ゴールディング(マレーシア出身)とミッシェル・ヨウは『クレイジー・リッチ』(2018米 ジョン・M・チュウ)のシンガポールの富豪母子役。ここでは全く違う関係だが、映画としては何かつながりがあるのだろうか…。
(12月16日 日比谷TOHOシネマズシャンテ)


⑰ある女優の不在
監督:ジャファル・パナヒ 出演:ベナーズ・ジャファリ ジャファル・ファナヒ マルズィェ・レザイ 2018イラン(ペルシャ語・トルコ語) 100分

イランで撮影を禁止されているパナヒの最新作。ドキュメンタリーとドラマの中間?のような作り。実在の女優ベナーズ・ジャフリのもとに未知の少女から自殺しようとしている動画が贈られてくる。彼女は女優になりたくて映画大学に合格するが家族に阻止されていると述べる。驚いたベナーズは自身の撮影を放って、友人の映画監督パナヒの運転で、少女の村へ出かけていく。村に行くと少女は行方不明だが、女性に強いられる伝統的生き方を語る男たちなどが出てきたり、その中で彼女が厳しい抵抗をしているらしいことがわかる。少女は実はかつてイランの有名女優だったが体制変更などの中で歌も演技も封じられ隠遁した元有名女優(実在)の一軒家にかくまわれていることがわかる。自殺画像でだまされたとしてベナーズは怒り、少女の無事を見届けて村を去ろうとするが、途中有能な種牛が怪我をして道の真ん中で横たわっており、車を進めることができず村の元女優の家に戻ることのする。―この場面トルコ語が分からない女優を気にししながらペルシャ語で生殖器の用語などを使って牛の種付けの話をする村人ーこちらにはその差を聞き取ることは残念ながらできないが、言語的にも複雑な状況にある村なのだなとわかる。元女優の家は自動車道路からは少しはなれた1軒家で、男性であるパナヒは入ることができず、車の中で一晩を過ごす。老・現・卵の3人の女優はいっしょに一晩を過ごし、翌朝、ベナーズとパナヒはくねくね曲がった山道を帰途につくが…。途中で車を降りて遠景に歩いていくベナーズ、それまで黒っぽい恰好だった少女が白いガウンを翻して彼女を追いかけていく姿が点景になるまで描かれて、この映画の意外と希望のある行く末を示唆しているよう。
(12月18日 キノシネマ立川)


⑱こおろぎ
監督:青山真治 出演:鈴木京香 山崎努 安藤政信 伊藤歩 2006日本 101分

青山監督の「幻?の未公開作」。伊豆当たりの別荘?で目も見えず、ことばをもほとんど発しない老人と同居する女。2人の生活(露骨な性生活という感じではないが、べちゃべちゃと食べる老人=すさまじい演技を見守る女になんかすごく性的なものを感じさせられる)を描く。そこにかかわって来る若い男女、キリシタンが隠れたとかいう洞窟とか、まあ言ってみれば脈略泣く出てくる感じで、話の筋とか帰結を追うとついて行けず、実は特に前半中心(後半も?)ところどころファーっと意識をなくしていた気はする。老人はいったん死ぬのだけれど、なぜか最終場面ではまた生きてベランダに座っている。ウーン、再生と繰り返される生活の象徴かしらん。イマイチわからない。鈴木京香の立ち姿のすっきり…。それと伊豆?の街や海の鄙びた陽光の感じも、これはまあよいが。
(12月19日 新宿Ksシネマ)


⑲テルアビブ・オン・ファイア
監督:サメフ・ゾアビ 出演:カイス・ナシェフ ルブナ・アザバル ヤニブ・ビトン 2018ルクセンブルク・仏・イスラエル・ベルギー97分 🌸

エルサレムに住むパレスチナ人青年がヨルダン川西岸地区のラマッラーで作られているパレスチナのTVドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』という1967年舞台のスパイ物(パレスチナの女性がイスラエル軍に侵入して将軍を篭絡する…)製作のヘブライ語原語指導兼雑用係として通っているというのが設定。この男どうしようもないダラしないヤツでドラマプロデューサーの伯父のお情けで仕事をもらっている)エルサレムから出るためには毎日検問所を通らなくてはならず、ある日そこで検問所係官に引き留められ『テルアビブ・オン・ファイア』の脚本家だと名乗ったというか成り行きでそういうことになってしまったとたんに検問所の司令官に脚本のあれこれに口を出され、おりしも脚本家が彼の横やり?で下りてしまいちょうど脚本書きに四苦八苦というところから、彼は検問の旅に司令官の応援やおせっかいを受けるようになる…パレスチナのスパイものだから当然イスラエル側は悪役なのだが、それをイスラエル側の人々も楽しみに見ているところが、へーーメディアの力かな。そして司令官は、パレスチナ側のスパイ女性とイスラエルの将軍が恋に落ち結婚する話に持って行かせようとし、パレスチナ側はもちろんそうはいかず、スパイ女性にはちゃんとパレスチナ人の恋人もいるという設定で、結婚までは持って行ったものの、結婚式で花嫁が自爆テロをするという設定を迫られる。脚本家青年は板挟み、さあどうするの?というところでなかなか粋な解決策に持っていくところがこの映画、まさにコメディなのだ。難しい社会情勢の中で文化が人間の意識を変えていく可能性を示唆していて元気が出てくる作品だ。 (12月19日 新宿シネマカリテ)


⑳ゴッホとヘレーネの森ークレラー=ミュラー美術館の至宝
監督:ジョバンニ・ビスカーリア 出演:ヴァレりア・ブルーニ=テデスキ マルコ・ゴルディン 2018イタリア(仏語・伊語・英語)90分

ゴッホの死後20年後からその作品の収集を始め300点の作品を集めて美術館を開いたのが富豪夫人のヘレーネ・クレラー=ミュラーだそうだ。で、この映画はゴッホの生涯をたどりながらその美術館の作品を紹介しているという感じ。女優のヴァレリア・ブルーニ=テデスキと、キュレーターのマルコ・ゴルディンが交互に説明をするのがなんかすごくうるさい。絵を見るのはとても楽しかったけれど、ヘレーネのほうは題名に名前が入っている割には通り一遍の紹介に過ぎないし、ウーン。実際にこの美術館にゴッホの絵を見に行きたいという気分にはさせられるかな…映画ではやっぱり物足りないから。
(12月20日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


㉑人生、ただいま修行中
監督:二コラ・フィリベール 2018フランス 105分

『ぼくの好きな先生』(2002)『パリ・ルーブル美術館の秘密』(1990)の監督の11年ぶりの新作は彼自身の入院体験から想起されたという、看護師の卵たちの実習風景、そして後半は実習を終え、次の実習に進むところでのインタヴューというかカウンセリング風景で綴る。まじめに自分の仕事や技術や、そして患者との人生を考えたり、中には実習中の上司のパワハラを訴えるものもいたりして興味は惹かれるが、ウーン、こういう映画はあってもいいとは思うけれど、むしろ時代の記録?的な感じもする。芸術的に楽しむという感じでもない。話はすべて登場人物によるもので『ゴッホ…』のようなうるさいナレーションは前作と同じくない。(12月20日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


㉒スターウオーズ スカイウォーカーの夜明け
監督:JJエイブラムス 出演:デイジー・リドリー アダム・ドライバー ジョン・ボエガ オスカー・アイザック マーク・ハミル キャリー・フィッシャー 2019米142分

最後と言われるスター・ウォーズはレイとカイロ・レンの闘いから協調?までと、いっぽうレジスタンス軍の激しい空中(宇宙中)戦。シス?は滅び、レイの出自が明らかになる。とまあ、単純だけど盛りだくさんに話が進み普通に楽しめる。亡くなったキャサリン・フィシャーの生前の映像で構成したとかいうレイア姫、それに光輝くマーク・ハミル、さらに1シーンだがハリソン・フォードの登場シーンもあってサービス満点の集大成版。だけど映像が豪華であればあるほど、これって全部グリーン・バックの前で演じられているんだよなと思うと、ちと覚めてしまうところもなくはなく。また、その豪快・大展開の宇宙戦争シーンなどのわりには、最後の闘いは剣術?というのもなんかまあ、物語としては仕方ないんだろうけれど、ん?もっともこれはたいていの近未来SF戦闘映画には感じるところだが。 (12月23日 府中TOHOシネマズ)


㉓細い目
監督:ヤスミン・アフマド 出演:シャリファ・アマニ ン・チューセン 2004マレーシア 107分

何回目の鑑賞かはわからないけれど、うまく行きあえばついつい見てしまう『細い目』。最初に見るまで(2009年?)にすごく待った記憶があるので、そのあとちょいちょい見てもそう思う。なんか愛しいオーキッドとその両親と家政婦のヤム、だ。ジェイソンはちっとも金城武似ではないけれど、ま、それはそれで…最後はとっても哀切だし、でもなんというかもう一人の女の子と妊娠した赤ん坊の存在はどうなのよ…と今回はそこが気になる。満ち満ちている香港映画とその音楽(リンとヤムが上海灘のテーマ曲を口ずさむとか)が印象的でなつかしい。(12月26日川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


㉔去年マリエンバードで 4Kデジタル・リマスター版
監督:アラン・レネ 出演:デルフィーヌ・セイリグ ジョルジュ・アルベルタ 1961イタリア・フランス 95分

1961年の金獅子賞受賞作品…、ウーンなんかアーティスティクでセリフ満杯、場所はバロック様式の城?なんだけどモノクロ場面だとなんか今風で少しチープな感じもしてどうなのとは思うけど。に終始してそこで去年あなたに会ったと言い募る男と、あんたなんか知らんと逃げる女って、フランス語の連射される響きに酔って半睡というところもなきにしもあらず。でも満席の劇場はメンズデイだからか男性が珍しくあふれかえっている。ふーん。(12月26日川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


㉕アナと雪の女王2(FROZEN2)字幕版 
監督:ジェニファー・リー/クリス・バック 出演(声):イディナ・メンゼル クリスティン・ベル ジョシュ・ギャッド 2019米 103分 


前作後アンデール国を治めるエルサと、妹アナ。幸せな暮らしだがエルサはどこからか彼女を呼ぶような、彼女だけが聞こえる声を聞く。そして王国が何者かの影響で灯りを失い道は崩れという危機に。国の人々は崖の上に非難し、アナ・エルサとクリストフ・オラフは王国の背後の霧に閉ざされた森に声の元を求めて向かう。(話の前提として祖父の代に王国が森の民にダムを贈り、その式典で戦争が起こり2人の祖父である王が死に、2人の父は何者かに助けられ王になるという物語が幼い娘たちに父から語られる)閉ざされた森に入っていくと祖父の代から仕えていた将軍とサーミ?(物語はノルウェイが舞台らしい)の一族が現れ…後半は魔法で声を突き止め国を救おうとする姉と、魔法は使えないけれど「自分ができることをする」と頑張る妹が遠く離れながら協業しながら森を解放し、王国を助けめでたしめでたし。でキーワードはオラフの水はすべてを記憶している…というわけでスケールの大きな森救いのハラハラ映像はなかなかで、ビジュアル的には大満足かな…。前作悩めるエルザはここでは自己犠牲によって人々を救おうとして魔法世界に解放されるというより超人的な人物像として描かれ、結末もそれゆえなるほどという感じで邦題『アナと…』というのが納得できる。(12月26日 府中TOHOシネマズ )


㉖男はつらいよ50お帰り寅さん
監督:山田洋次 出演:渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 後藤久美子 前田吟 池脇千鶴 夏木マリ 浅丘ルリ子  2019日本116分 

妻ひとみと死に別れて7年目、中学3年の娘と暮らす駆け出しの小説家諏訪満男の小説家生活とサイン会で邂逅する初恋の人、今や難民高等弁務官事務所の職員になって国際的に活躍、家庭ももっている泉と、その両親の問題を絡めて、そこに過去の寅さん映像の数々を組み込んで、満男が過去の伯父とのあれこれを回想しつつ、今を生きていこうとする姿を描く。というわけで満男の吉岡秀隆はじめ倍賞千恵子、前田吟、それにリリーの浅丘ルリ子、泉の後藤久美子などは現映像と過去の姿両方出演、その他ととらや一家は昔の映像でという感じで過去を想いつつ今を語るという作品でした。渥美清はもちろん、3人のおいちゃん役、おばちゃんの三崎千恵子、タコ社長の太宰久雄などはクレジットされているが今は故人?ということで現映像はなし。過去映像は当然過去の映画から引き抜いた名場面集だがきれいにデジタル処理?されていて映像的には今の部分とまったく変わらない鮮明さ。今だからできるようなった作品だなあ。数々のマドンナもワンシーンずつ出てくるのだけれど、なぜかこちらはクレジットされていない。面白くというより懐かしく見る作品だろうが、いい子の中3満男の娘(桜田ひより)の「わ」「わよ」「名詞よ」などのことばの古風さに、あんな中3いまどきいないよなあ…とすごく違和感があった。ま、このへんは山田作品の常?ではある。(12月27日 府中TOHOシネマズ)


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第111回多摩中電影倶楽部例会を以下とおりに行います。こちらもどうぞよろしく!

   『クレイジー・リッチ』(2018米 ジョン・M・チュウ 120分)


    とき:1月18日 午後1時15分~(会場12時45分)
    ところ:立川:多摩中教室(中国料理五十番4F)
    詳細は以下に
    
              華影天地
     https://tamachu-huayingtiandi.blogspot.com/2019/12/no111.html


コメント

  1. 超亀レスでごめんなさい。なかなか、全てを読む根気もなくご無沙汰ばかりですみません。でも、毎月、これだけの映画を見て、書くというエネルギーに感嘆しています。スターウオーズの最終回、見たいなあと思ってまだ見ていません。そのうちフライトの映画で、と思っていたら、そんなこともできなくなるどころか、映画館にまで行けなくなるような事態が起こるなんて想像もしませんでした。
     今更ながらこれを書いているのは、スターウォーズの「グリーンバック」ということばに、そうだったのか、と感心したからです。というのは、同じく、この5月からオンライン授業がはじまり、古いパソコンでZoomを立ち上げても、家の中が写らないようにするバーチャル背景の設定ができず、グリーンスクリーンが必要ということがようやくわかったからです。布を買ってもつり下げるのも大変なので、段ボールに緑の紙を貼るという工作までやらねばならなかったので、最近のCG映画の事情も知り、まさにドンと胸に響いて納得いたしましたので。さすがによくご存じですね。こんな時期ですが、どうぞお健やかに。   GATA

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  2.  コメントありがとうございました。 
    オンライン授業・背景設定のためのグリーン・バックは通販で2000円ぐらいからあるようです。私も段ボール?やらなんやら試したあげく、ホームセンターに行き、グリーンのフェルト(cm単位で切り売り)を購入し、なんとか設定しました。ところが、同時期に使いすぎでPCが1台寿命?ダウン。新しいPCも購入(ほとんどオンライン授業のため!です)。こちらはグリーバックなしでも背景OKなんですよね。あらら、あの苦労は何だったかしらと思いつつ、教材を仕込んでいます。
     学校は学生も教員も自前のPC,Wi-Fi環境を持っていることを前提オンライン授業を組んでいますが、ウーン、緊急事態とはいえ、そういう環境が得られない学生・生徒・児童が教育貧民化していきそうだし、教員のほうもなかなかに負担が大きいと悩みつつ…です。

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    1. 返信くださっていたのですね。今頃すみません。「ストーリーオブマイライフ」だけは見に行ったので、感想を見たくて、訪れました。パソコン、私も結局新しいのを買ったので、苦労したグリーンスクリーンの段ボールは無駄になりました。結局、語学ではないので、ZOOMはあまり使わなかったのですが。でもひどく疲れました。毎週お返事を書くのに。一つは113名です。返信はしませんが、毎週レポートを見るのに疲れました。といってもまだ、9月はじめまであるのですよね。この年で、こんな思いをするとは。さて、6月の映画日記、見に行きます。

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    2. ありがとうございます。状況は全く同じ。113名はいませんのでちょっと楽ですけれど。
      でも大変ですね。コロナ禍もますますという感じですが、どうぞくれぐれもお大事に。

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