【勝手気ままに映画日記】2018年8月

①レディ・バード②ビューティフルデイ③30年後の同窓会④ミッション・インポッシブル フォールアウト⑤フジコ・ヘミングの時間⑥告白小説、その結末⑦国家主義の誘惑⑧天皇と軍隊⑨詩季織々⑩欧州攻略⑪セラヴィ(C'est La Vie!)⑫オーシャンズ8⑬カメラを止めるな⑭沖縄スパイ戦史⑮ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ アディオス⑯カランコエの花⑰ヒトラーを欺いた黄色い星


8月8日南アルプス仙丈ケ岳に行った!登るときは晴、下りは台風と競争下山だったが…


①レディ・バード

監督:グレタ・ガ―ヴィグ 出演:シアーシャ・ローナン ローリー・メドカーフ トレイシー・レッツ ルーカス・ヘッシズ 2017米 94分

クリスティーナという本名を嫌い、自らをレディバードと名乗る少女の高校最後の1年を描く。サンティアゴを出て東部の大学に行きたいと願うが、成績も足りず、家計の問題(リストラされる父、一人介護士?をして働く母、大学生でアルバイト中の兄=顔立ちが一家で一人だけアラブ系なので、養子なのかも?、GFと家で同居している)から母にはひどく反対され、母の運転する車から飛び降りて骨折、という思い切った行動に出るヒロイン。二人のボーイフレンドと知り合うが、憧れの家に住む祖母を持つ優し気で紳士な最初のBFはゲイであることが判明、ちょっと孤高な感じで読書好きな2人目(『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ)はベッドをともにしてバージンを捨ててみると、童貞のはずが6人目かな?というプレイボーイ?で裏切られ続けれヒロイン(まあ、本人も本気で恋をしているというより恋に恋しているわけだが)何事も今一つ裏目に出、その陰には支配的というのではないがなんか、彼女と似た性格で彼女に対する希望もある母との確執がからむわけだ。母に内緒で応募した東部の大学の1つに補欠合格し、父のバックアップも得て大学に行き、母の気持ちもようやくわかりというハッピー・エンド(前途はまだまだ多難そう)ということで、すごく目新しいテーマで押してくるということはないが、ヒロインの気持ちに寄り添って一緒に一喜一憂できるような、その意味では親近感もある、おさまりのいい映画だった。(8月3日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)

②ビューティフルデイ

監督:リン・ラムジー 出演:ホアキン・フェニックス ジュディス・ロバーツ 2017英 90分

元軍人という体力系の何でも屋ジョー(身元不明者の捜索を請け負う)?が家出して2年という少女の捜索を請け負い、探し出す。囚われの身になっていた少女は薄物のキャミソール1枚というような格好で無表情、彼女を背負って逃げるジョー。
ところが少女の父である依頼人の州上院議員が飛び降り自殺、ジョーの母も殺され、(私には)何が何だかわからぬままに話しが進みしまいにはジョーが自分の頭に弾を撃ちこみ(でも、これはどうも幻想?らしい)と、ウーン話の展開がぜんぜんわからない。主人公を演じるホアキン・フェニクスの濃い顔とたくましい体つきも存在感はあるが押しつけがましい感じで苦手だし、『レオン』みたいな話かと思ったら全然そうでもないし、ウーン。もう1度見ればわかるかな?でもあまり見たくない。映像はくっきりインパクトがあって音楽もなんかすごい感じで、セリフはほとんどなく、でも不思議に眠くはならない。血の流れ方はエグイ!自分の鑑賞力のなさを感じさせられるカンヌ映画祭脚本賞・男優賞(これは納得?)受賞作品。
開幕10分、通路をへだてて私の右側に座っていた女性が突然に「カシャカシャうるさい!」と叫ぶ。するとその人の前に座っていた女性が席を立って出て行ってしまった。たしかにスーパーの袋かなんかを持っていて歩くと多少カシャカシャはいっていたが、なんか気の毒。と思っていたら後半突然その叫んだ彼女がペットボトル?かなんかを通路をへだてた私の足元に飛ばしてきた。軽いもので足に当たったが別に痛いというほどではなかったが、びっくり!こちらはカシャカシャしたわけではないのだが、何か気に障ったのか…、暑さのせいかイライラしている人がいるのかも。コワ!とはいえ、そのおかげで、少しだれ気味(理解できないから)眠くなりかかっていた目はしっかり覚めた!絡まれるのはいやだなと、エンドロール早々に(時間も忙しかったので)出てきてしまったので、どんな人かは明るいところでは見ていないのだけれど‥‥。
(8月3日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)

③30年後の同窓会(Last Flag Flying)

監督:リチャード・リンクレイター 出演:スティーブ・カレル ブライアン・クランストン ローレンス・フィッシュバーン 2017米 125分

中高年が何年ぶりかで再会して旅をするというロードムービーで、たとえば『ラスト・ベガス』(2013ジョン・タートルトーブ)みたいな向きを予想して言ったらさすがのリンクレーター映画、もう深刻というか理屈っぽいというか、オジサンたちの落剝・上昇?・変化ぶりもなかなかのドラマティクで、30年前ベトナム戦争時代の海兵隊での罪と罰?みたいなことも絡んで、けっこう疲れる映画だった・・・『ラスト・ベガス』というよりは『50歳のスタンド・バイ・ミー』(とチラシのコピーにある)と言えば、確かにその通りで、3人のオジサンたちは、自らの青春を、バクダッドでいわば戦死というにはちょっと情けない中の一人・ドクの息子とその戦友に重ね合わせながら、最初は軍に反発し息子をアーリントン墓地に葬らず故郷に連れ帰ると決意し、友人たちも協力するところから最後に息子に軍服を着せ、友人たちも海兵隊の制服を着て葬儀に参加し星条旗を畳む(これが原題の由来?)ところまで、結局過去30年の軍隊への意識を変えていくという話で、であるとすれば、なんかきな臭いトランプのアメリカ状況を称揚する映画のようにも思われて、ちょっと心から楽しめないところもある・・・アメリカ人中年男性の琴線に触れるという映画なのかなあ。理解はしにくいけれど。(8月3日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)

④ミッション・インポッシブル フォールアウト

監督:クリストファー・マッカリ― 製作:J.J.エイブラムス 出演:トム・クルーズ サイモン・ペッグ ヴィング・レイムス レベッカ・ファーガソン アレック・ボールドウィン ミシェル・モナハン ヘンリー・カヴィル  2018米 143分 

楽しめるだろうとは思いつつ、結末もわかってるわけだしなア…と思いつつやっぱり見に行ってしまうMI、今回は盗まれた3つのプルトニウム球?をめぐって正体不明のテロ組織のリーダーや、核爆弾を作れる科学者(囚われの身となっているのだが奪還が企てられる)とのイーサンチームの時間との闘いが世界中を飛び回り繰り広げられる。ビルからビルへと飛び移り、カーチェイスや崖っぷちでの落下すれすれ。その上ヘリコプターの飛び移りとヘリコプターチェイスとあいかわらず体を張ったトム・クルーズの絶対絶命アクション(なんとトム・クルーズ55歳!とか、見かけは若い時ほどのシャープさはないが、動きは全然変わらない?)は言うまでもないが、今回はチームの新しい相棒(とはいってももう3作目?)のベンジー(サイモン・ペック)のエイジェントとして体を張った、しかもコミカルなアクションとか、離れた場所でのルーサーも含めた3人の協力ぶりもぐっとくるし、何よりイーサンにとってはライバル?にして心惹かれる美女イルマとの事件を介しての遭遇、そのうえ別れた(というか、ミッションがらみで身を隠さざるを得なくなった)妻ジュリアとの思いがけない邂逅と協力、彼女がイーサンあってこそ今の自分の幸せがあると、観客をも含めいわば慰労する幕切れもあって一種大団円的設定になっている。イルマとジュリアの遭遇もちゃんとあるし、思いがけない事件の真犯人というのもちゃんとあるし、重要人物が命を落とすというのもあり、143分と、長いことは長いが時間に見合った盛りだくさんのアップテンポな映画だ!   (8月6日府中TOHOシネマズ)



⑤フジコ・ヘミングの時間

監督:小松荘一良 出演:フジコ・ヘミング 大月ウルフ ナレーション:三浦透子 2018日本 115分

1週間前、この映画館での第1週上映(1日1回)の最終日、レディスデイだったが上映の30分以上前に「満席(定員は111人)」の表示が出ていたのに驚いた人気作品。で2周目最終日はどうかというと、朝10時からの開映30分前に劇場について66番。その直後には85番以後は最前列になる可能性ありとの表示が出、開映時はやはり満席ウーン。どこからこんなふうに乗客が湧いてくるのだろう。平日なので中年以上の女性が多いが、他の映画に比べ友人どうしでとかご夫婦らしい人も目立つ。斜め前のご夫婦(70代くらい?)お茶の間と間違えたか一々ダンナが感想を述べ、妻がうんうんとうなずくのが耳障り(だって画面はピアノの演奏だ)―まあ、劇場慣れしない人まで集めているということなのだろう。出だしのパリの景色の美しさが何より印象に残る。彼女が年の半分を過ごす好きな街らしいが、それらしく(好きになるのだということがわかるように)撮影されている。演奏会でピアノが悪くあまりいい印象を持たなかったという南米の街はそれなりに、日本の画面はまた鮮明にと言う感じで登場人物の心情を反映するようなカメラワークのすごさ!フジコ・ヘミングという人の数奇?な運命はもちろん知ってはいたが、単に運に恵まれずデビュー・ブレイクが60代を過ぎていた名ピアニストというだけでなく、その後の20年間で世界各地に何軒もの「住家」を持ち自分好みに飾り、90代近い今もその家をわたり歩き、さらに世界各地で精力的な演奏活動を行い(しかもマネージャーを持たないのだそうだ)、その上片耳は聞こえない、そして様々な友達をそれら各地に持ち、というそのエネルギッシュに感服。しかもこの人北欧の血を引く美女というよりはどちらかというとバイキング系の一種いかつい顔つきに丸まった背中、けっこう奇抜なファッションとそういう全体の雰囲気そのものの吸引力があるのだろうな、そしてずんぐり肉厚な手の印象とそこから奏でだされる繊細でロマンティクなピアノ・・・俳優の大月ウルフが本名で彼女の弟というのも初めて知ったのだが、なるほどなという姉弟コンビでこれもおもしろかった。あ、あと1946年に彼女が書いたという絵日記が物語の流れを作る形で紹介されているが、そのいかにも昭和の子ども風な端正な絵と文にもこの人の「真面目なアート才能」を感じさせられ、ちょっと長いかな(エンドロールの後にまだ映像が出てくる)とは思ったが魅力的な映画(というより人物)だった。(8月10日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


⑥告白小説、その結末

監督:ロマン・ポランスキー 出演:エマニュエル・セニエ エヴァ・グリーン 2017仏・ベルギー・ポーランド(仏語)100分

(ネタバレありです!)
心を病んで自殺した母のことを書いた私小説がベストセラーになった作家デルフィーヌ(この映画の原作そのものがデルフィーヌ・ド・ヴィガンによるそうで、作者を投影した人物像と思われる)のサイン会にあらわれる謎の美女エル。次の作品が進まずスランプ気味の彼女は話を聞き共感してくれるエルに心を開いていく。デルフィーヌを支え、助言してくれる彼女は、ときにエキセントリックな激昂を見せたり、デルフィーヌに変わって勝手に彼女の仕事をコントロールしたりしようとするが、それは彼女自身の生い立ちによるものだというような話でデルフィーヌの気を引いて・・・前半いったん決裂?のあとでデルフィーヌは階段から落ち足を骨折、エルに誘われ郊外の別荘に・・ここからはお定まり的な監禁モノホラー的な展開(前半の心理劇と後半の直接的な語り口が少し乖離しているような気はする)というわけで100分でこれだけ作れてしまうのだなと思える。デルフィーヌの創作メモを奪って?デルフィーヌの名でエルが書いた小説がベストセラーになるというのは表面的にはエルによってデルフィーヌは致命的な破滅に追い込まれるわけではない?のだろうが、最後に自分が書いたのではないのに不本意にも出版されベストセラーになった小説のサイン会にあらわれるデルフィーヌが、最初の小説のときのデニム姿とは違い、エルそっくり真っ赤なルージュで黒いスーツにびっしりと身を固めているのはうまい演出で、見るとエルに乗っ取られたデルフィーヌを見るようでゾッとする。(8月10日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)

⑦国家主義の誘惑

監督:渡辺謙一 出演:ピエール・フランソワ・スイリ バラク・クシュナー ミカエル・リュッケン 白井聡 2017仏 54分

元はフランスのTV番組用に作られたドキュメンタリーとかで、明治維新から日清・日露戦争、関東大震災、経済危機、15年戦争と、日本人にとってはある程度知っている(つもりの)ことも含め、欧州人にも遠い日本のことがわかるように?丁寧に映像化説明し、内外の歴史学者や政治学者、ジャーナリストなどがコメントを入れるという構成。誰もが現在のナショナリズム的傾向を1930年代の戦前と重ね合わせているのは、実感どおりではあるが戦慄する。作者は1997年以来フランスを拠点に日本のことも含めドキュメンタリー作品を作ってきているが、遠く日本を離れた視点が客観性も説得力も生み出しているように感じる。中学生、高校生あたりに是非見てほしいなと思える作品だ。会場は土曜午後ということもあってか、満席。ただし中高年中心。(8月11日ポレポレ東中野)
⑧天皇と軍隊
監督:渡辺謙一 出演:田英夫 ジョン・ダワー 樋口陽一 髙橋哲哉 小森陽一 五百旗頭真 葦津泰國 ベアテ・シロタ・ゴードン 2009仏 90分
こちらは、敗戦からマッカーサー統治時代を経て、天皇が戦争責任を問われることなく天皇制が維持され、戦争を放棄する憲法が制定されることになった経緯を、映像と諸氏のコメントで綴る。必ずしも護憲派ばかりでなく改憲派も出て来るし、靖国神社に参拝する人々なども登場する一方、反対の立場の人も出てくるので視点は公正?というより国外からの比較的客観的な視点で描かれている感じ。それゆえに現憲法に9条が1条とセットで制定され、それは日本国民の希求というより、占領下での統治をしやすくするような政治的な含みを持っていたというあたりは改憲派にだから改憲、9条は非現実的(実際に描かれる過程もそうだし)という言質を与えてしまうような気もして、その冷静さこそが価値なのだろうと思いつつ、けっこう見るのが難しい映画だと思った。こちらもほぼ満席。(8月11日ポレポレ東中野)


⑨詩季織々

『陽だまりの朝食』 監督:ジョシュア・易小星 北京―湖南省 三選米粉

『小さなファッションショー』 監督:竹内良貴 

『上海恋』 監督:李豪凌 

 2018日本 74分 

新海誠作品の影響を受けた中国アニメ界のブランド李豪凌が音頭を取って中日三人の監督がそれぞれに衣食住をテーマに撮ったオムニバス映画。で完成度はウーン。北京、広州、上海の都市、湖南省の村、北京の石庫門を高層マンションの上から眺めた景色とか、アニメーションとしての美しさはなるほど、だけど。『陽だまり』と『上海恋』は20~30前後くらいの少年期から青春時代の思い出と現在を重ね合わせたノスタルジックな作品、『ファッションショー』は広州を舞台にモデルとして成功するも疲れた姉と、地味だが洋服づくりが好きな妹の姿を描いて、ちょっと他の2つとは異質な感じがする(日本人監督だから中国の街に少年時代の思い入れはないということだろう)3作品に変化はつけているが、アニメとしておもしろいかなあ?? 姉はイジワルそうな美女だし、妹は暗そうな地味なキャラクターであまり惹かれない。いずれにしても日本語で思い入れたっぷりなナレーションをするし、セリフも日本語だし、そうしてみるとキャラクターの作画(ほとんどは日本人、日本で作られた日本作品だし)も中国人っぽくはなく、中国の景色になじまない感じもあって、キレイはキレイだが新海作品のような吸引力があるとは思えず、ふーん、と思いつつ映画館を出たのだった。公開から1週間、立川の177席の劇場には10人ほどが寒そうに座る…(苦笑)(8月12日 立川シネマシティ2)


8月13日~18日中国西安・敦煌へ。莫高窟を見に行きました!
これは陽関からみた雪の5000m峰 祁連山脈
敦煌郊外の夕空。夜9時半・・白く小さいのは月、まだ空は少し明るい


⑩欧州攻略

監督:馬楚成 出演:梁朝偉  唐嫣 杜鵑  呉亦凡  林一祥 2018中国 100分 

2001年のジングル・マ監督による『東京攻略』、その後の『ソウル攻略』に続く20年近くをかけた3部作の3本目、ということで行ったわけではなく、西安滞在の最終日、ホテルから最も近い影院の時間的に最も合う作品として、まあいわば偶然に見ることになった。夜9時15分611座あるという1号館(5号ぐらいまであるシネコン)劇場にそれでも40人くらい?若い人たちが多かった。映画の主な舞台はイタリアでミラノ、フィレンツェ、ローマなどの景色がちょいちょいと出てくるが、話そのものはイタリアである必然性はまったく感じられない。今や50代も後半?のトニー・レオンは3部作通じて「CIA]スパイの林(リン)。すごいアクションシーンは多々あるが、まあかなりはスタントではないかとも思われる。ともかく格闘、アクションのオンパレード映画で、話そのものは12年前の因縁が姉弟を敵味方とし、弟側に林がついて悪の枢軸側の姉に対するというわけだが、この姉を演じる杜鵑(スーパーモデル)が長身のクールビューティでしかも辣腕の殺し屋というわけできわめて格好いい。その弟役はクリス・ウーで、トニー・レオンと並ぶとヤッパリ若いオーラバリバリで何というか、そういう点では目の保養になる映画。2人の亡くなった父で、林の元CIAの同僚がなんと70歳?のジョージ・ラム。懐かしい顔を映画で見た感じ。この父とのいきさつをめぐり、姉はCIAに恨みを持って黒組織に入っているということに。唐嫣は昔別れて再会した?林の彼女という役回り。2人の女性はどちらもトニーよりは長身で、時の流れを感じさせる。そういえば映画の翌朝西安空港入口に立っていたセキュリティの若い女性、身長は180以上?すらりとして顔が小さく12頭身くらい?思わず見入ってしまうようなスタイルだった!映画の方は話そのものは途中までは涙涙の姉弟再会シーンがあったりして、登場人物はみんな燃え盛る溶鉱炉状のポットに転落してしまう、と思いきやなんともご都合主義的なハッピーエンドで唖然。シリーズといっても進化を遂げる『ミッション・インポッシブル』とは大違いだが、おしゃれをしてもなんとなく決まらないトニーはこれからも林を演じ続けるのだろうか??? なお、20年近く前の『東京攻略』は「香港映画」だったけれどこちらは純然たる竜のマークの「中国映画」でことばも(吹替え版はあるにかもしれないが)普通話。これも時代の流れ! (8月17日 西安曲江国際影院)


⑪セラヴィ(C'est La Vie!)

監督:エリック・トレダノ オリヴィエ・ナカシュ 出演:ジャン=ピエール・パクリ ジャン=ポール・ルーブ ヴァンサン・マケーニュ 2017仏 117分

気難しそうな真面目なウエディング会社社長が請け負った古城での結婚式。200人の参加者がなんと午後から明け方まで徹夜でする結婚パーティというのもすごい、がそこに集まるスタッフの面々が何というかイマイチ…それぞれにさぼったり、恋愛模様に陥ったり、シェーバーを使うのに勝手に冷蔵庫の電源を切って肉が全部だめになったりと、また能天気な新郎も言いたい放題、新婦の方はスタッフの一人がかつて恋していた?元同僚というわけで、次々に起こるトラブルとそれに翻弄される主人公の社長という半日間を描く。最終的には移民出稼ぎの正規にではなく雇われているような人々を中心とするスタッフの機転により場が取りおさめられ盛り上がりハッピーエンド?というのが今風で作者の主張も込められているところだろうか。それにしても一々のトラブルへの当事者の言い分が結構理屈っぽくて、フランス映画ってこうだようなあ、というかフランス人の文化性?を感じさせられる映画、題材の割にはだから少し疲れたかな…。(8月19日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)


⑫オーシャンズ8

監督:ゲイリー・ロス 出演:サンドラ・ブロック ケイト・ブランシェット アン・ハサウェイ リアーナ アン・ハサウェイ  ミンディ・カリング  オークワフィナコンスタンス サラ・ポールソン ヘレナ・ボナム・カーター リチャード・アーミテージ 2018米 110分

ダニエル・オーシャンの妹デビー・オーシャンが5年余りの刑期を終えて刑務所を出るところから話が始まるオーシャンズシリーズのスピンオフ?というのだろうか。デビーは相棒のルーに刑務所の中で計画を立てたカルティエの1億5千万ドルのダイヤのネックレスを盗み出すという話を持ち掛け、二人がそれぞれの役割をする、その道の女性たちに声をかけ女性オーシャンズを結成する。女優ダフネにメットガラでこのダイヤを身につけさせそこを盗むということで、まずばダフネのダイヤに合う衣裳を作るデザイナー(ヘレナ・ボナム・カーター)を探しそこからちょっとした離れ業?で過去には栄光があったもおの今や落ち目のこのデザイナーをダフネの衣裳デザイナーにするというあたりは大変丁寧に描かれる割に、その他の人物の中には、なぜこのひとがここにおさまるかわからんという描き方をされるものもあり、話の展開も意外と丁寧な部分とすっ飛ばしているところが入り混じり、目を凝らしていてもよくわからないところも実はちょっとあったが、おおむねはデビーの綿密な計画と、それぞれの着実な働きにより、あるいは問題勃発時の機転というより意外な人物の出現による解決とかであまりハラハラする場面もなく話は進んでいく。まあ、見るべきはそれぞれの扮装、特にメットガラでのゴージャスな衣装とか、そこに一人だけずれてシェフの服装からライダースーツへと変貌するルー(ケイト・ブランシェット)の格好よさ!8人の女優たちは新旧取り混ぜ人種もさまざまという感じでそれはオーシャンズシリーズの特徴でもあり、今の映画の群像物の特徴でもあると思うが、どの女優もそれぞれに十分な見ごたえ。というか、それに尽きるというのがこの映画かも…。中でもダフネのアン・ハサウェイなるほどね!、頭の軽そうな美人女優、ではなかったというトンでも展開が面白い。この映画、ダニエル・オーシャンは死んでいる❔らしいのだけれど(お墓も出てくる)でも、ほんと?とも思わせるところが、次回作の可能性かしら…。(8月19日 府中TOHOシネマズ)


⑬カメラを止めるな

監督:上田慎一郎 出演:濱津隆之 真魚 しゅはまはるみ 神谷和明 2017日本 96分

「著作権騒動」も含め、今を時めく?話題作。ようやく見に行く。朝10時半の劇場は平日だが(夏休み中?の)若者中心でそこそこの人出。普段私が見るような映画とは全然客層が違い、まあ一番近いのは映画祭のアクションやコメディのふうかな(観客は)? 映画はと言えば前半のワンカット?ゾンビ映画はぎくしゃくしていかにも作り物という感じでゾンビ映画を作っている最中にスタッフがどんどんゾンビ化していくが、それでも監督は「カメラを止めるな!」と叫ぶという展開のいかにも素人っぽい、演技もへたくそという感じでエンドクレジットまで行く(ただし音楽は場違いに重厚)が、一転して後半、1ヶ月前から始まる物語がいわば前半映画のメイキングフィルムというつくりになっていて、前半のギクシャクや下手さ加減もみな伏線として後半で回収されていてなーるほど!ウソっぽいところはもちろんあるけれど、短編のワンシーンワンカットライブ映画という設定で強引にそれらを踏み倒していく強さもあって、いや、なかなかうまくできているのに感心。さらにさりげなく「家族もの」も組み込んで「ドラマ」を作っている。演劇としての原作・上演者が「著作権=原作」を申し立てているようだが、この内容だったら舞台でみるより映画のほうが設定も裏話も生かされるようにも思える(舞台未見なので映画だけを見た感想ではあるのだが…) (8月30日渋谷ユーロライブ)


⑭沖縄スパイ戦史

監督:三上智恵・大矢英代 2018日本 114分

6・23~敗戦以後も続いた沖縄北部での山間にこもってゲリラ活動をした現地の少年部隊出身者や遺族へのインタヴューを中心に綴る。護郷隊と名付けられ、陸軍中野学校出身の青年将校たちによって指揮された沖縄北部の16~17歳の少年兵たちは、現地の普通の少年を装って米軍に潜り込んでの爆破活動(当然自分も爆死する)をさせられたリ、投降してスパイになることを戒められ病気などで部隊の移動についていけなくなったものは友軍によって射殺された。また同時にこのスパイ戦は、北部の各村の一般村民の中スパイをあぶりだし処刑するということも行われたということが語られる。また波照間島では潜入した日本軍の工作隊員によって、島民たちが戦争遂行のためとしてマラリアの蔓延する西表に集団移住を強制され三分の一の島民が亡くなったという事実も孤児となって生き残った少女(もちろん今や老女)の口などから、また地元の研究者たちのことばで語られる。インタヴューや語りはこの取材を行った監督たち自身で行われているが、語りのプロではない、しかし元論事実に寄り添う関心や意識の高いインタヴュアーとして、自分もそこにいて話を聞いているような臨場感がある。戦後まで助かって生き延びた少年たちもさまざまに「後遺症」を背負い、苦しんで生きてきていること、また、当時少年たちを指揮したスパイ将校たち自身が苦しむ青年でもあり、少年たちにとっては大変「いい人」だったとのことで、戦後内地に帰ってからも贖罪意識をもって沖縄に慰霊に訪れたり、植物を送ったりしたことなどもいわば公平に描かれるが、それだけにどんなに純真ないい青年であっても加害者として少年たちをスパイ兵士として苦しめた、多くの沖縄島民を殺した罪はあるのだということを思い知らされるような、つまり「戦争ができる国」になりたい今だって、だれでも加害者とも被害者ともなり得るのだということをも思い知らされるような重い映画…沖縄の自然が美しいだけにさらに…頭と終わりで、亡くなった友人の数だけのカンヒザクラを植えているという方の話の中で、内地に帰った部隊長だった元将校が沖縄の激戦地に植えてほしいと送ってきたソメイヨシノが沖縄では根付かなかった…という話が印象に残る。まさにそういうことなんだろうな…好意的な本土が沖縄には的外れにしか響かないということだ。 (8月30日渋谷アップリンク)

⑮ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ アディオス

監督:ルーシー・ウォーカー×ヴィム・ベンダース製作総指揮 2017英 110分

10日間映画館に行かなかったから、というわけではないが映画デイとしたこの日3本目はまったく予定がなくて、ただ次の予定までの時間を埋めるのにちょうどよい時間設定なので見た、というわけで、2000年日本でも公開された『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(ヴィム・ベンダース)のいわば続編?というか後日談的にみられるのかなという、まあ期待通り?ただし後日談というよりはじまり当時の未公開フィルムなども交え、老いた音楽家たちが再起をした楽団の結成から、映画が作られ、世界的な人気グループとしてヒット、ワールドツアーも行い活動を続ける中で老いたメンバーが亡くなっていく、そして最後に2016年アディオス・ツアーが行われるまでが描かれる。その間20年近くのメンバーの老化ぶり(でも歌声や演奏が衰えない=というか若い時とは違った魅力を増してくる)や死は身につまされるが、それでも残ったメンバーの意欲があふれた演奏を堪能する2時間弱。小さい劇場だが珍しく前方席で音を堪能した。(8月30日 渋谷アップリンク)


⑯カランコエの花

監督:中川駿 出演:今田美桜 石本径代 永瀬千裕 笠松将 須藤誠 2016日本 39分

昨年の「レインボー・リール東京 東京国際ゲイ&レスビアン映画祭」のグランプリ受賞作。今年のレインボー・リールの頃新宿K'sシネマで1日1回上映があった時、1時間近く前に劇場に行ったが満席で見られないということがあり、あらためて今回はネットで予約してから見ることに。7月の1週間の学校生活とヒロインの母子の生活のごく1部を切り取ることによって綴る39分の短編。クラスの中で自然に友達に恋心を抱いて喜ぶレスビアンの少女(これの明かされ方がなるほどね、けっこうおもしろい)とそれを気遣いつつ過剰反応する周囲の心情をさりげなく描い、「周りには個人的には「そういう」人はいない」と思っている多数の側に静かながら生き方を問うているという感じ。声高だったり主張的ではない学園ドラマとして仕上げているところがリアリティがある(でもあるかな?もっと本当は残酷かも・・・この夏自殺した大学生の例もあるし)。    (8月30日 渋谷アップリンク)


⑰ヒトラーを欺いた黄色い星

監督:クラウス・レーフレ 出演:マックス・マウフ アリス・ドワイヤー ルビー・O・フィー アーロン・アルタラス  2017独 111分 

600万人がのユダヤ人が殺されたナチスのホロコーストの最中、ベルリンに身分を偽るなどして潜伏したユダヤ人は7000人、戦後まで生き延びたのは1500人だという。そのうち4人の当時の若者が老いてインタヴューに答えて経験を語る場面、当時のベルリンの粗いモノクロ映像、そしてそれぞれの若者の当時の生き方をドラマ化して組み合わせた、いわばセミドキュメンタリー映画。周りの両親やユダヤ人の活動家などは捕まえられ収容所に移送されたり殺されたりするが、4人については現在の映像があって生き延びたことがわかっているから、ある種安心感もありハラハラ度は少ない。しかし本人の語りと相まってドラマの効果は当時の暮らしが過酷なものであったことを示すに十分。それとともにわりと控えめな描き方ながら、彼らを助けることによってナチズムに抵抗し、また結果祖国ドイツをスっくことになったとされるドイツ人を描いたというところがこの映画の一つの視点であり眼目なのだと思う。まさかホロコーストが今後も起こるとは思いたくないが、同じように迫られた時、そういう行動をとれる日本人がどのくらいいるか?自分は大丈夫かと迫られるような映画だ。(8月31日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)

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