【勝手気ままに映画日記】2018年7月
①空飛ぶタイヤ②パンク侍 斬られて候③返還交渉人 いつか沖縄を取り戻す④マンダレー・スター⑤フロリダ・プロジェクト⑥さよなら僕のマンハッタン⑦バトル・オブ・セクシーズ⑧ファントム・スレッド⑨SUKITA⑩志乃ちゃんは自分の名前が言えない⑪QUEER×APAC APOFFA傑作選20018⑫北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ⑬菊とギロチン⑭マルクス・エンゲルス⑮私はあなたのニグロではない⑯三十二⑰ハンソロ⑱男と女、モントーク岬で⑲ルイ14世の死⑳サバ―ビコン 仮面を被った街
日本映画①②③⑨⑩⑬ 中国語圏映画⑪の一部⑯
①空飛ぶタイヤ
監督:本木克英 出演:長瀬智也 ディーン・フジオカ 髙橋一生 深田恭子 小池栄子 笹野高史 寺脇康文 阿部顕嵐 ムロツヨシ 中村蒼 浅利陽介 岸辺一徳 2018日本 135分
池井戸潤の小説を原作に大企業のリコール隠しに立ち向かい告発する人々とその事件経過を描く。トレーラー脱輪人身事故で窮地に追い込まれた運送会社の二代目社長、赤松徳郎(長瀬智也)は事故の原因は製造元のホープ自動車の側の問題ではないかとホープ自動車のカスタマー戦略課課長・沢田悠太(ディーン・フジオカ)に資料を出すように請求、これを最初は相手にしなかった沢田だが、車内の品質管理部にT会議という秘密の集まりがあることを知り、その解明を志す。一方ホープ自動車から巨大な融資を求められたホープ銀行の本店営業本部・井崎一亮(高橋一生)も3年前にもリコール隠しがあった銀行の資産管理に疑問をもち、その業績を調べていく。それぞれの動きや敵対するホープ自動車幹部の側(岸辺一徳が凄みのある態度とウェーブヘアのメークで品もない悪にして大物感をだしている)をが事故を追っていくさまを正攻法で描いていく。それぞれの立場での点としての動きが最後につながり、ホープ自動車の二度目のリコール隠しが明らかになる。赤松運送の従業員たちや、赤松が自分の足で回っていく地方の、やはりホープ自動車で事故を起こした運送業のメンバー、とかホープ自動車社内の沢田に協力する盟友たち、井崎を支持する上司や彼らに協力するジャーナリスト、また事故を調べる警察官などが過不足なく描かれて点がつながっていくための力が示されているところが納得(ただし少し理想的過ぎるかも)。それに対する巨悪の方はといえば岸辺の大物感に集結してしまっているようで、人としてよりは制度しくみとして主人公たちを圧迫しているように見えるのは、社会悪の追求に少し腰が引けてしまったとみるべきか、それともこれこそ現実(圧迫する側も個人ではなく歯車にすぎない)と見るべきか。(7月2日 府中TOHOシネマズ)②パンク侍 斬られて候
監督:石井岳龍 出演:綾野剛 豊川悦司 染谷将太 北川景子 浅野忠信 東出昌大 村上淳 若葉竜也 國村隼 渋川清彦 近藤公園 永瀬正敏 2018日本 131分
町田康の原作、宮藤官九郎の脚本、監督は石井岳龍といえば、これはもう見るっきゃないでしょうという気たい作品で、うーん、私は原作にはついていきかねるところがあるのだが、そのついていきかねる感がちゃんと出ている映画ではあった・・・。豊川、浅野(妙ちくりんぶりも含め)、村上、國村、渋川、北川あたりはまあ、予想にたがわぬ普通の?演じ方であり好演。若手では染谷将太のはっちゃけぶりというか、恥じらいもない外しぶりがなかなかすばらしい。東出もま、わりとイメージ通りの方向ではあるが融通の利かない正論好きの殿様というのははまっていてがんばっている?で、まあ主役は綾野剛だが、ウーンこれもまあ彼らしいんだろう。へんてこりんでいい加減な、滅法腕の立つ浪人というわけで他の役者も含め概して役者の集中ぶりがすごくて成り立っている映画という感じはある。だけど小説にわりと忠実な?脚色ぶりのせいか、荒唐無稽な話のセリフが意外に理屈っぽいところもあったりして、それと物語のテンポが思いの外スローペースで、中盤辺りで少々眠くなった・・・これは体調のせいではなく、時間のせいでもない。なんでかな・・・目を引き込むような現代と歴史が混じったような舞台設定でありヴィジュアルでありそれこそパンクだし、下ネタも満載なんだが、わりとスローテンポでそれが延々と続いたせいかもしれない。(7月3日 府中TOHOシネマズ)③返還交渉人 いつか沖縄を取り戻す
監督:柳川強 出演:井浦新 戸田菜穂 中島歩 佐野史郎 大杉漣 尾美としのり チャールズ・クラバー 2018日本 100分
NHKドラマ(前に見たと思う)の映画化。1972年の沖縄返還に関して、核兵器の撤去とベトナムへのB52の出撃拠点にさせないという外交交渉を担った北米一課課長千葉一夫を描く。頑固に理想を説き交渉に邁進したという伝説的な外交官だが、やはり官僚の立場としては映画に描かれただけでもハッピー・エンドとはいかず、B52配備がなくなったかわりにファントムが飛来し、関東圏の米軍基地は減ったものの、沖縄の基地はなくならず(2017年全国基地の70%が沖縄に)、彼自身も4年の交渉ののち、モスクワの大使館総務といういわば一線からの撤退的立場に追いやられという(実際だから仕方がないが)映画的カタルシスはないんだけれど、中央官僚でありながら沖縄に何度も足を運び地元の人の声を聞き、その立場に立とうとした部分が強調される。まあ、そういう描き方をするしかないかも…。石橋蓮司の屋良朝苗がいい感じ。ところで夫の留学時にはともにアメリカに行き、英語も達者で、家庭内にあって「私に何でも話して」と頼もしいことを言い、ときに夫を強くいさめるといういわば良妻賢母の象徴みたいな描き方をされる千葉の妻、これも当時としては「現実」だったのだろうが、今の眼で今の役者である戸田菜穂が演じているのを見ると、なんか違和感だなあ…(演技が下手とかいうことではない。うまくて格好良ければそれだけ、なんかそういう家庭像を称揚する立場が強調されるようで)。(7月5日 ポレポレ東中野)④マンダレー・スター
監督:川端潤 撮影・取材:万琳はるえ 2018日本 92分
まったくみる予定がなかったレイトショー(夜9時開始、トークショー付き)だが、前の映画を見終わって出てきたらロビーに結構待っている人がいて、そんなに人気映画なのということと、夕飯も済ませていたので、特別売り出しのミャンマー・ビールにひかれ急遽鑑賞。おまけにチケットには映画で演奏される曲を収録したDVDがついてくるというサービスぶりに驚く。話はミャンマーの伝統音楽を演奏するサインワイン楽団の歌姫ピューちゃん(16歳~19歳くらいまでの2~3年を描く)を中心に、撮影・取材の万琳と、ミャンマー人のコーディネータ兼通訳のミンちゃんが、楽器や、楽団やを追ってマンダレーを探訪する数年間を描いたドキュメンタリー。2人は2人だけで「偶然」をも利用しながら取材をしていき、ピューや、途中でなくなってしまうその父親などとも接触してインタヴューなどもしていて、この映画での監督の位置づけって何?とちと悩む。編集しているということか?サインワインは21個の銅鑼を連ねた楽器で、その周りを他の楽器も合わせ木彫り金箔張りの枠で囲んでキラキラの舞台を作る。そこに家族や周辺人物で作る楽団が演奏し専属の「コメディアン」が司会や漫才をしてピューやその弟は演奏もし歌い、他に専属ん歌手や楽器の弾き手もいるという家族構成の楽団で、祭りなどに行って演奏すること年間200回というプロ楽団だ。楽団の長であった父が病に倒れなくなって、16歳の子どもっぽかったピューが、いわば楽団を背負うことになり見る見るうちに成長しオーラを発揮してスターになっていくのも見もの。映画としては楽器探しとか製作の家庭とか、何回かのミャンマー訪問が地元の人々の様子も含めて断片をつなげるように描かれるので、少し冗長な感じもしないではなかったが、この地域に流れる時間や、その中でのエピソードを重ねていくという意味ではまあ、なるほどというリズムなのだと思えた。(7月5日 ポレポレ東中野)⑤フロリダ・プロジェクト
監督:ショーン・ベイカー 出演:ウィレム・デフォー ブルックリン・キンバリー・プリンス ブリア・ヴィネット 2017米 112分
ディズニー・ランドの隣?に位置する安モーテルに住む若い母と小学生(中学年くらい)娘、そのモーテルの管理人をする男のひと夏。中盤すぎまでさしてドラマがあるわけではなく、母は求職して仕事を得られず、社会保険でも救われず、香水を仕入れて行商というか売り歩くと、その敷地の管理人から追い出されとうとう売春に手を出す・・その間に隣人や管理人とのごたごたもあり、娘は娘で近所の子どもたちとつるんで、遊び歩き、買い食いの小銭を他人にねだったり、空き家に入り込んで遊んだり夏休み(なのか夏が終わっても学校には行かないのか)たくましく楽しそうに生きているという感じで、これも管理人にひそかに心配されていたりはするが、むしろものともせずという感じ。中盤に至り、娘とその男友達が入り込んだ空き家でトラブル。その結果仲がよかった男友達の母(ウエィトレス)と母は絶交、息子とも遊べなくなり娘は別の女の子といつも一緒にいるようなる。男友達の母の密告?から母親の売春稼業がばれ、ある時警察や児童保護局の人々が摘発に来る。さてそこで親子は…というわけで暑いフロリダの風光の中で母子の窮乏生活が、しかし少しも深刻そうではなく描かれる(これはやっぱり演じる二人の力だろう。じめじめしていないのがこの映画のいいところだ)。でも、明るく彼女たちがものともせずに笑ったり、おしゃれをしたり、漂々としているので、いささか映画世界が単調に見え時間が長く感じる。あ、長く感じさせるというのはこの明るい深刻な夏の特徴を観客に感じさせる仕掛けなのかも…。ウィレム・デフォーは見事な普通のオジサンぶりで二人やモーテルを見守り、ときに翻弄され、それでも住人たちを心配する、寡黙で見かけはけっこう強面(デフォーだからね)の、ちょっと今までに見たことがまいような役柄だけど、印象深く、さすがに映画を引き締めている。 (7月6日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)⑥さよなら僕のマンハッタン(THe only Living Boy in New York)
監督:マーク・ウェブ 出演:カラム・ターナー ケイト・ベッキンセール ビアース・ブロスナン シンシア・ニクソン ジェフ・ブリッジス 2017米 88分
ニューヨークを知らないと、主人公イーサンの苛立ちやもどかしさはわからないんじゃないかなあ、とニューヨークを全然知らない私は最初の方の彼の目に映るマンハッタンや、家族のディナーシーンでの会話がイマイチ入ってこない。ということで、出版社重役で息子の生き方を理解してくれないと感じている父からは離れたいが神経症的な母(シンシア・ニクソン)を心配し、家から離れつつ、近くに住むという中途半端な青年(作家志望らしいが、スペイン語の個人教授などはしているものの自分で食べているのかしらん??)が父の浮気シーンを発見、ストーカーまがいに相手の女性を追いかけるが、逆襲されて自分のほうが彼女のとりこになってしまうというようなところから。このなんだかオタクっぽいしかっりしろよ系の青年、一度ベッドをともにした恋人?(でも彼女には別に相手がいるらしい)との関係にも悩み・・・という中で同じアパートに越してきたこれも何をしているのか正体不明の中年男に迫られ?(でもそういう感じ)彼に悩みを打ち明けるようになる。で、後半父の出版社のパーティで、全員が一堂に会し、イーサンは二人の彼女に去られ、父の会社に乗り込んで父ともいさかい、そこで父の彼女から1枚の写真を見せられ、「事実」がバラバラとほどけて、ちと一皮むけるというわけだが、この事実がなんかご都合主義的に嘘くさく、えー、こんな終わり方!というようなものだった。原題はサイモン&ガーファンクルの曲名で、隣家に住む謎の男WHが書く小説の題名でもある。その小説には多分、彼が隣に住んだ理由も書かれているというわけで、こういう凝り方ってなんかあまり好きにはなれない。ドラマティックと言えばドラマティックなんだろうけど… (7月6日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)⑦バトル・オブ・セクシーズ
監督:ジョナサン・デイトン ヴァレリー・ファレス 出演:エマ・ストーン スティーブ・カレル アンドレア・ライズボロー ビル・プルマン 2017米 112分
1972年全米1位の女子テニス選手ビリー・ジーン・キング(昔「キング夫人」としてなじみがあった…)は、全米テニス協会に女子選手の賞金が男子の8分の1であることに抗議し協会を脱退、あらたに女子の協会を立ち上げる。そこに「男権主義者のブタ」と自称し、55歳の男性シニアのボビー・リックスが「女は男に勝てるはずがない」と試合を挑むという話。これだけだと、バカみたいなあらすじだが、協会のトップ、ジャック・クレイマーの「男の賞金が女より多いのは男が家庭を養っているからだ」というようないかにも70年当時の暴言からはじまり彼女たちがさらされたひどい差別的な言辞とか(とはいえ、強い女たちがモデルなので、弱者差別という印象ではないが)夫がいるが、女性美容師に心惹かれ引き裂かれ悩むキングとか、賭け事への依存から抜け出せず妻に愛想をつ課されて、崖っぷち状態の中で、自らを「男権主義者」の道化としてことさらに、いやらしさを振りまき試合もバカにしているような態度でいながら、やがて戦う中で、キングにある種の敬意をもつという複雑なボリー・リックスをそっくりに扮したスティーブ・カレルが演じて妙ということとか、テニスの試合シーンがロングショットで、本物の試合のようにしっかりと撮られていることとか、なかなかの見ごたえで、「時代」を学ぶ・・・でも今も差別の本質はそんなに変わらず、強い女ならば浮かび上がれるという構造は変わっていないのかもしれないが・・・という意味でも見ごたえのある映画。(7月7日 立川シネマシティ1)⑧ファントム・スレッド
監督:ポール・トーマス・アンダーソン 出演:ダニエル・デイ=ルイス レスリー・マンヴィル ヴィッキー・クリーブス 2017米 130分
うるさくわがままな著名デザイナー・レイノルズと彼をマネージメントする姉、その工房に彼に見初められてお針子兼モデルとして入りつつ、彼の愛人になる女性アルマの三つ巴の関係。アルマは彼を独占すべく、彼女の姉に対抗しつつ(歯も立たないが)ある種異常な決断をし、レイノルズは結局そこに引きずり込まれていく。これは才能(仕事)か愛かという問題でもアルノだろうな。ダニエル・デイ=ルイス(引退作とか銘打つのはいやらしいけど)の酷薄な暴君にして繊細な芸術家の演技もさることながら、姉のレスリー・マンヴィルの静かな凄み、そしてヴィッキー・クリーブスの美しいのだが、あごのあたりのずぶとさを感じさせる量感(ちょっと品がない感じなのだが、これが役柄にはぴったり)なんか衣裳はもちろん、すべて細部にまで行き届いたビジュアルがこの薄気味悪い心理ミステリーの世界を美しく支えているのがすごい。(7月13日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)⑨SUKITA
監督:相原裕美 出演:鋤田正義 布袋寅泰 ジム・ジャームッシュ 山本寛斎 永瀬正敏 糸井重里 リリー・フランキー 細野晴臣 坂本龍一 髙橋幸宏 クリス・トーマス ポール・スミス 2018日本 115分
デヴィッド・ボウイはじめ内外のアーティストを撮影し、彼らから絶大な信頼を誇る写真家鋤田を、本人を含め内外の被写体や、関係者がこもごも語るインタヴュー。要は彼が被写体に対して愛を持っているのだということがそれぞれに言葉を変えて語られるという感じで、間に挟まれる彼の撮った写真軍はさすがの見ごたえがあうのだが、映画そのものはいささか食傷というか115分でも少し長いなアという感じも…。(7月13日 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館)⑩志乃ちゃんは自分の名前が言えない
監督:湯浅弘章 出演:南沙良 蒔田彩珠 萩原利久 奥貫薫 原作:押見修造 2017日本 110分
家の中では大丈夫なのに外にでると吃音で特に母音から始まる自分の名などはいうのが大の苦手の「大島志乃」のつらい高校入学。同じクラスになるミュージシャン志望にもかかわらず音痴の少女加代(歌の音程は取れないにもかかわらず、ギターを弾き作曲もする、しかもミュージシャン志望の少女というものがはたしてリアルに存在するかは疑問。とはいえ、その性格造形と演じた蒔田彩珠(あじゅ)のちょっとすねたような意志の強さとにもかかわらず柔軟な心性を演じるリアルさに支えられてこのドラマ成り立っている気がする)がバンド「しのかよ」を組み文化祭出場をめざして歌うが、空気が読めないお調子者実はいじめられっ子でこれも孤独な少年の介入によってバンドが崩壊。それにもかかわらず踏み込まないけれど語り掛け、音痴なんだけどひとり文化祭で歌う加代-最後になっても3人の関係は具体的には修復されずバラバラなのだが、それにもかかわらず希望を感じさせるという秀逸な終わり方。沼津当たりの海と、街と、ちょっと霞むかのような距離感をもって彼らを切り取るアングル、とてもとても印象的な映画。主役二人が美人過ぎなくていかぬもそのあたりにいそうなビジュアルというのもいい。まだ高校生が携帯を持たない1990年代ぐらいが部隊のよう。呼んでいないけれど原作はコミックらしい。7(月14日 新宿武蔵野館)⑪QUEER×APAC APOFFA傑作選20018
『新入生』(First Day)監督:ジュリー・カルセフ 2018オーストラリア 18分
『言葉にできない』(Sisak)監督:ファラーズ・アリフ・アンサリ 2017インド 1
『繭』(Cocoon) 監督:梅リーイン 2017中国 26分
『LOOKING FOR?』(你找什么?)監督:周東彦 2017台湾 61分
『新入生』トランスジェンダーの「少年」が初めて少女ハンナとして登校する中学校。多目的トイレの使用を言い渡されてなやむが、友達もできて学校になじみ始めたとき、小学校時代自分を男の子と知っていていじめていた子に構内で遭遇する。夏でも長袖のその少女も何か悩みを抱えての登校らしい。さあどうするか・・・ハンナの決断はちょっと理想的過ぎるかもしれないけれど勇気を感じさせられ励まされる。『言葉にできない』同性愛が犯罪とされるインド・ムンバイの電車内が舞台。民族衣装風の若者と、ビジネスマン風の男の出会いと、無言のままに毎日の電車の中でその関係が少しずつ深まってく様子が繊細に描かれる。金属ポールだらけの明るく無機質な感じの電車内での二人の男の息遣いが印象深く伝わってくる。『繭』1997年香港返還のころの武漢。深圳や香港に出張がちの父の留守、母とダンス教師の女友達の仲を知る少女。彼女もクラスメートの少女と友情とも恋ともつかぬ関係を深めつつ、母への抵抗感とそれにもかかわらずその恋を父からは隠そうとする微妙繊細な感情が描かれる。『LOOKING FOR?』自らもゲイである監督(ちょっと横顔レスリー・チャン似)が60人?ほど台北、北京、ソウル、ニューヨークのゲイの男性たちにアプリによるカジュアルセックスとか、恋愛観などなどをインタヴュー、あいまに演劇風につくられた彼らの生活や性を表すような部隊場面がちりばめられる。うーん。まあ、彼らの饒舌とエネルギーには驚かされるが、まあちょっと長く感じないでもない。意欲的なドキュメンタリーではある。(7月15日 渋谷スパイラル・ホール 27thレインボー・リール東京-東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)⑫北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ
監督:ウギス・オルテ モルテン・トロ―ヴィク 出演:ライバッハ 2016ノルウェイ・ラトビア 100分
北朝鮮が初めて外国から招いたロック・バンドコンサートの記録。このバンド「ライバッハ」を選んだ北朝鮮の選定基準??受けたライバッハのネオナチ風コスチュームや戦闘的な低音ロックの真意(素顔の彼らは別にファシストっぽくないし、あのスタイルは皮肉なのか、本気なのか、北朝鮮はどう受け取っているのかとか)、あとはコンサートまでのごたごたいらいら、たくさんの検閲によって削られる曲やバック動画、そして当日動員された?観客たちがなんかいかにもお行儀よく来てやっている、自分たちと芸術感は違うけれどあれはあれでいいんじゃないという態度とか、どれも面白く、しかし最大の謎はこのバンドが北朝鮮の体制というか政府に受け入れられた理由かな…北朝鮮の女声合唱やピアノとのコラボ、サウンドオブミュージックのリメイク演奏とか、音楽もなかなかに面白かった。(7月15日 渋谷イメージ・フォーラム)⑬菊とギロチン
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